✒ フィールドワーク 1
──*──*──*── フィールド
冒険者ギルドを出た後、≪ 村落 ≫を出て明日に備えてフィールドワークを始めた。
本来のフィールドワークでする事とは違うかも知れないけどな!
マオ
「 えぇと……依頼書に書かれている森は──、彼方か。
≪ 村落 ≫から西の方角だな。
此方の依頼書に書いてある森は──東だな 」
オリバー・デグンス
「 東の森には湖があるんですよね?
西の森には崩れた遺跡がある──って書いてます 」
ミグリ
「 マオちゃん,オリちゃん……南にも森がある 」
マオ
「 本当だな。
南の森には花畑が有るみたいだ。
依頼書は方角別に仕分けとこう。
──よし、じゃあ、≪ 村落 ≫から近い西の森へ行ってみるか! 」
オリバー・デグンス
「 道っぽい道が無いですね。
立て札でも立ってれば分かり易いんですけど…… 」
マオ
「 馬車の跡を辿れば≪ 町 ≫へ戻れるけど、立て札があれば確に分かり易くなるよな 」
セロフィート
「 無ければ作れば良いです。
魔法を使えば直ぐです 」
オリバー・デグンス
「 セロフィート師匠は道まで作れるんですかぁ!? 」
セロフィート
「 完全な道は作れません。
小さな竜巻を起こし、≪ 村落 ≫から森までの道モドキを作ります。
道幅は2m程で良いでしょう。
魔法でコーティングすれば道が消えてしまう事もないです。
魔法で用意した立て札を魔法で立てます 」
セロは風魔法を発動させて、小さな竜巻を4つを起こすと、竜巻を自在に動かして道を作り始めた。
竜巻はフィールド上の土を舞い上がらせながら、道モドキを作りながら勝手に先へ動いて行く。
セロが発動させたコーティング魔法は、出来上がった道モドキの上を包んで行く。
道モドキの上は暫くの間キラキラと輝いていて綺麗だ。
セロは4つの立て札を創造魔法で作ると、別の魔法を発動させて立て札を地面に突き刺す。
抜けないように固定して安定させる魔法も掛けたみたいだ。
セロフィート
「 これで良いでしょう。
どうです?
少しは分かり易くなりました? 」
オリバー・デグンス
「 すげぇ……。
セロフィート師匠の魔法は他の魔法使いが使う魔法と違うんですか? 」
セロフィート
「 ふふふ。
ワタシは超越の魔法使いですからね 」
オリバー・デグンス
「 超越の魔法使い…ですか?
聞いた事ないです 」
セロフィート
「 ≪ オオカザッシュ大陸 ≫では初めて聞く称号でしょうね。
先へ進みましょう 」
マオ
「 ミグリ、どうした?
西の森へ行くぞ 」
ミグリ
「 ………………うん… 」
マオ
「 ミグリ? 」
セロの魔法を見てから、ミグリの様子がおかしい?
もしかして、セロの使う古代魔法にビビってるのか?
だけど、それは仕方無いかも知れないな。
≪ オオカザッシュ大陸 ≫には魔法使いが居て、魔法を使えるけど、元素魔法はあまり発展していないみたいだ。
魔法は怪物を倒す為の有効な手段の1つだと思われていて使われているから、魔法を生活に活かしたら便利魔法として扱えるような魔法使いは少ないみたいだ。
調節するのも難しいみたいだしな。
そういう魔法事情もあってか、魔法を日常生活に活かして便利に使うセロに驚いているのかも知れない。
“ 超越の魔法使い ” なんて言葉を「 聞いた事が無い 」ってオリバーも言ってるし。
竜巻を箒代わりに使って道モドキを作るとか「 誰の発想だよ? 」って思っちゃうかもだよな~~。
ミグリ
「( ………………超越の魔法使い…………。
白い悪魔……。
セロフィート様が……生命を滅ぼす者……白い死神……… )」
ミグリは両性種の先祖代々、一族から脈々と伝えられて来た、世界を破滅させる力を持つ強大な脅威の存在──生きとし生ける全ての “ 人類の敵 ” だと言い伝えられている “ 白い衣を纏いし雪の精霊のような美しい容姿をした白い悪魔──白い死神の話を思い出していた。
世界中を旅して回り、多くの生命を破滅させている白い悪魔こと白い死神と呼ばれている決して関わっては “ いけない ” と聞かされ続けられている最も恐ろしい存在。
その存在が現に、ミグリの直ぐ近くに居た。
ミグリから見てもセロフィートは、白くはあるが悪魔や死神にはとても見えない。
マオもオリバーもセロフィートに懐いているように見える。
穏やかで優しくて親切で──、「 恐れる程の人物ではないのではないか 」「 何かの間違いなのではないか 」とミグリは思っていた。
マオと冗談を言い合ったり、共に笑い合ったり、オリバーの師匠としても仲良く接している。
ミグリに対しても親身に接してくれているし、弓矢の使い方,矢尻へ魔法の込め方も丁寧に教えてくれている。
セロフィートの一体何処が悪魔で死神と言うのだらうか?
ミグリは一族の言い伝えが「 嘘なのでないのか 」と疑い始めていた。
生命を滅ぼす存在が人類──人間と仲良くする訳がない。
セロフィートは言い伝えで聞かされた白い悪魔でも無ければ白い死神でも無いと信じたいと思いたかった。
マオ
「 東の森と南の森も確認したし、明日は大丈夫そうかな? 」
セロフィート
「 道モドキも出来てましたし、これなら迷わず辿り着けます 」
オリバー・デグンス
「 これで怪物と遭遇しなければもっと良いんですけどね 」
マオ
「 それだと★を貰えないだろ~~。
夕暮れまで時間あるし、怪物を倒そう 」
セロフィート
「 高ランクの怪物を呼び寄せましょう。
LVを上げ易くする為に高めに設定します。
マオはトドメを刺さないように加減してください 」
マオ
「 分かったよ。
トドメはオリバとミグリに刺させるんだろ 」
セロは高ランクの怪物を呼び寄せる為に、詩歌を歌い始める。
フィールド上に怪物が出現すると、オレは愛剣を構えて怪物を迎え撃つ。
セロフィート
「 ミグリさん、先程から顔色が悪いですね。
冷や汗も掻いてます。
戦闘に参加するのは止めて少し休みなさい 」
ミグリ
「 …………平気…です! 」
セロフィート
「 無理をすると命取りになりますよ。
不調の時は身体に無理をさせない事です 」
ミグリ
「 でも…… 」
セロフィート
「 ミグリさん、今のミグリさんは1人ではないでしょう。
マオが居て、オリバさんが居て、テスさんも居ます。
此処には頼れる仲間が居ます。
仲間に頼らないで誰に頼る気です?
体調の優れない時は遠慮せず、仲間を頼りなさい。
仲間というのは御互いに頼り合い,助け合い,支え合い共に困難を乗り越える存在です。
背中を預けて甘えて良いのです。
ワタシも居ますし、安心して休んでください 」
ミグリ
「 …………セロフィート様…… 」
セロフィート
「 ふふふ。
ワタシの事も “ セロちゃん ” と呼んでくれて良いですよ 」
ミグリ
「 ──っ?!
そ…それは……で…出来ない……です! 」
セロフィート
「 おや?
何故です?
ワタシだけ “ 様 ” 呼びされると仲間外れにされているようで悲しいです。
遠慮しないでワタシの事も “ セロちゃん ” と呼んでください 」
ミグリ
「 …………でき…でき……出来ない…ですっ!
セロフィート様は──。
( 言っても良いの??
言ったらググは…どうなるの?? )」
ミグリは不安そうな表情をしながら口をつぐむ。
セロフィートに対して言っても良い言葉なのか迷っていた。
セロフィート
「 ワタシがどうしました? 」
ミグリ
「 あっ……あの………… 」
セロフィート
「 言い難い事ですか?
正直に話してみてください。
ワタシはミグリさんをどうこうしたりしません。
聞かせてください 」
ミグリ
「 …………セロフィート様は……生命を滅ぼす力を持つ御方…ですから……。
そのような……畏れ多い存在……のセロフィート様を……ちゃん付け呼びは…… 」
セロフィート
「 ははぁ…。
ミグリさんはワタシの正体を知っていましたか 」
ミグリ
「 正…体……?? 」
セロフィート
「 歴代の先代達が残した記憶の中には両性種に関する記録があります。
白い悪魔,白い死神と言われ、“ 脅威の存在 ” として恐れられていたようですね。
先代達と同じ容姿のワタシをミグリさんが恐れる事は仕方無い事です。
ワタシはミグリさんを責めたりしません 」
ミグリ
「 ……セロフィート様…… 」
セロフィート
「 ミグリさんに知ってほしいのは、先代のセロフィートと現在のワタシは別人だという事です。
信じられないでしょうから、別人である事を理解する事も認める事も容易ではなく難しいとは承知の上です。
それでも──、外見は同じでも中身は違います。
先代のセロフィートとワタシは別人です。
現在のワタシはミグリさんにも両性種にも危害を加える気はないです。
次のセロフィートへ作り替えられる迄は、両性種に酷い事はしません。
安心してください 」
ミグリ
「 …………セロフィート様は……本当に……白い死神…… 」
セロフィート
「 前先代が白い死神と呼ばれていました。
作り替えられる200年前でしょうか。
ワタシに代替わりをして4000年は経ってますから、約4200年程前の事になりますね 」
ミグリ
「 …………そんなに昔の事……。
……セロフィート様は…………人類の…敵…ですか? 」
セロフィート
「 ワタシに与えられた役目を全うするならば、否定はしません。
ワタシは人類ではなく、母なる惑星の味方です。
惑星の生存を守る側のワタシは、人類側からすれば間違いなく “ 敵 ” と呼ばれる立場となります 」
ミグリ
「 …………マオちゃんも? 」
セロフィート
「 マオはワタシとは違います。
ワタシを選び、人間である事を捨て、ワタシと旅を共にしてくれているマオは──〈 皇 〉です。
本来ならば惑星を守る使命を与えられた〈 ゴデッセルロド
〈 皇
ミグリ
「 ……マオちゃんが〈 皇
セロフィート
「 ≪ オオカザッシュ大陸 ≫の〈 皇
≪ エルゼシア大陸 ≫と呼ばれる別の≪ 大陸 ≫の〈 皇
ミグリ
「 …………別の≪ 大陸 ≫から来
セロフィート
「 地
ミグリ
「 ………… 」
セロフィート
「 さて──、どうでしょう、ミグリさん。
ワタシの事も “ セロちゃん ” と呼んでくれますよね? 」
セロフィートはミグリに微笑みながら再度、同じ問いをしてみた。




