✒ 護衛の依頼 3
昼食は馬車の中で済ませて、夕食は馬車を停めて野営をする。
野営の準備は依頼主達もするけど、オレ達も野営の準備をする。
護衛する側が依頼主の世話になるわけにはいかないからな。
今まで狩って来た動物や獣の死骸を解体して、下処理をした肉を依頼主達にも御裾分けする。
こういう御裾分けをしたりする助け合いの精神は大事だ。
食材,調味料,香辛料を分け合ったり、出来上がった料理を交換し合ったりして、行動を共にする間御互いがギクシャクしないように親睦を深めていくんだ。
勿論、護衛役と必要以上の付き合いをするのを嫌う依頼主も居るから、見極めないといけない。
2泊3日の短い付き合いになるけど、出来る限り此方から話を切り出して、御互いに探り合ったりする事も必要だ。
セロはセロなりに巧みな話術で依頼主のゴイズさんと仲良くなってるだろうけど、セロに任せっきりにする分けにはいかない。
オレも頑張ってコミニュケーションを取らないとな!
オレが調理をし易いようにテスが土魔法を使って簡易調理台,簡易竈,簡易水場を作ってくれる。
オレが作るのは塩,胡椒で味付けをして串に刺したシンプルな炭火焼きだ。
薄くスライスして香草と香辛料で味付けした肉に野菜とキノコを巻いて、コトコト煮込んだクリーム煮だ。
貴重な卵を使って、ふわっトロなトマト入りオムレツも作ってみた。
御裾分けする為に沢山作ったから、ゴイズさん達にも食べてもらいたくて持って行った。
ゴイズさん達の口に合うかは分からないけど、喜んで受け取ってもらえたから良かった。
──*──*──*── 就寝時間
ゴイズさん達は馬車の中で寝るけど、護衛を受けてるオレ達は馬車の中では寝ない。
セロは寝なくても平気だから前方の見張りをしてくれる。
後方の見張りはオレが担当するんだけど、オリバーも見張りを体験したいそうだから、3時間交代で見張りをする事になった。
眠る必要のないテスも一緒に見張りをしてくれるそうだから、仮にオリバーが見張り中に寝てしまっても安心だな。
セロフィート
「 そろそろゴイズさん達が寝ます。
テントを張りましたから、ミグリさんも眠ってください 」
ミグリ
「 ……ググも…起きてる! 」
セロフィート
「 ミグリさんは護衛依頼は初めてでしょう。
慣れない護衛で疲れている筈ですよ。
初日から無理をしない事です。
今夜は早目に寝て、身体を休めてください。
明日は、一緒に見張りをしましょう 」
ミグリ
「 …………はい… 」
セロフィート
「 宜しい。
聞き分けが良いですね 」
ミグリは有無を言わせる気が全くないセロフィートの笑顔に屈した。
セロフィートの言う事は別に間違っていないとミグリも思っているが、微力でもセロフィートの役に立ちたいと思っていたのた。
完全にセロフィートに出鼻を挫かれてしまったミグリは、大人しく1人用の小テントの中へ入る事にした。
──*──*──*── 小テント
テントの中へ入るとブーツを脱ぐ場所があり、土足厳禁となっていた。
ミグリは履いているブーツを脱ぐと、5本指の靴下を履いたままの状態で絨毯の上に上がる。
絨毯はテントに合うサイズでカットされているようだ。
絨毯の上にはモコモコで暖かそうな大きな動物の毛皮が敷かれている。
どういう仕組みになっているのかミグリには分からないが、テントの中は外の気温よりも暖かくて過ごし易い温度になっている。
寝る為に装備品を外して、5本指の靴下も脱いで、既に用意されている寝間着に着替える。
大きめの毛布を2つ折りにして縫われたような寝袋風のモコモコ毛布の中へ入った。
裸足でも冷えないようになっているようだ。
ミグリはマオもオリバーも起きて見張りをするのに自分だけ眠ってしまう事に申し訳なく思いながらも眠気に負けてしまい深い眠りに就いたのだった。
──*──*──*── フィールド
──*──*──*── 馬車・後方
マオ
「 ミグリは眠ったみたいだな 」
オリバー・デグンス
「 マオ師匠、ミグリさんは成人してるんですよね?
子供扱いしてませんか? 」
マオ
「 成人してるっても未だ10歳だからな~~。
それに期間は知らないけど奴隷商人に捕らわれていた訳だしな。
あまり無理はさせられないだろ 」
オリバー・デグンス
「 そうかも知れないですけど…… 」
マオ
「 オリバはミグリより6歳も上なんだから、“ 不公平だ! ” なんて幼稚な事を言って駄々を捏ねるなよ? 」
オリバー・デグンス
「 駄々なんて捏ねませんよ~~。
不満は言いますけど! 」
マオ
「 オリバ、ミグリを自分の弟妹だと思って相手してやってくれよ。
お兄ちゃん! 」
オリバー・デグンス
「 マオ師匠ぉ~~!
“ お兄ちゃん ” は勘弁してくださいよぉ~~ 」
マオ
「 ははは!
オレが先に見張るからオリバは寝てろよ。
3時間経ったら起こしてやるからな 」
オリバー・デグンス
「 絶対ですからね!
間違いなく起こしてくださいよ! 」
マオ
「 あぁ、分かったよ。
起きなかったら蹴り飛ばして起こしてやるから、覚悟しとけ 」
オリバーはレジャーシートの上に寝転がると剣を抱き締めて眠りに就いた。
マオ
「 テス、オリバを頼むな 」
オリバーの近くに陣取っているテスに声を掛けると、テスは体をプルプルと揺らしてくれた。
「 任しとけ! 」って事かな?
オレにはテスの鳴き声が聞こえないから、オレは勝手にそう思う事にした。




