✒ 護衛の依頼 2
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── サテサンザの町・出入り口
依頼主
「 今回は私共の依頼を受けてくださり有り難う御座います 」
セロフィート
「 〈 S・G 〉のリーダーをしているセロフィート・シンミンです。
パーティの紹介をさせていただきます。
此方から双剣士のマオ・ユーグナル,剣士のオリバー・デグンス,弓使いのミグリです。
ワタシは魔法も使える吟遊大詩人です 」
依頼主
「 吟遊詩人様,剣士様,弓使い様ですか。
吟遊詩人様が魔法を使えるとは珍しいですな。
何故、“ 魔法使い ” と名乗らないのですか? 」
セロフィート
「 吟遊詩人の方が襲わ── 」
マオ
「 セロの詩歌は、大陸随一だからですよ!
{ 「 襲われ易いから 」なんて口が避けても言うなよ!! }」
セロフィート
「{ はいはい }」
マオ
「 それにしても凄い荷物ですね。
引っ越しでもするんですか? 」
依頼主
「 いえ、祝いの品です。
親類が≪ 村落 ≫で事業を開業しますので 」
マオ
「 へぇ事業を!
おめでとう御座います! 」
依頼主
「 有り難う御座います。
私はゴイズ・ユーディットと申します。
“ ゴイズ ” と呼んでください 」
マオ
「 有り難う御座います!
オレ達の事も気軽に名前で呼んでください 」
依頼主:ゴイズ・ユーデイット
「 有り難う御座います。
では、御言葉に甘えて名前で呼ばさせていただきます 」
セロフィート
「 出発前に馬車へ怪物除けの魔法を掛けます。
馬車を中心に半径5m内が安全地帯となります。
怪物と遭遇した時は、馬車の中へ避難してください 」
依頼主:ゴイズ・ユーデイット
「 分かりました。
普通は魔法道具を使うのに、セロフィートさんは魔法を使われるのですね。
怪物除けの魔法があるとは知りませんでした 」
セロフィート
「 最近は高額な魔法道具しか効果を発揮しないようですから、魔法を使います 」
依頼主:ゴイズ・ユーデイット
「 確かに……怪物の出現率や遭遇率だけでなく強さも年々高まっていると聞きます。
護衛の報酬額も増やさないと傭兵にも冒険者にも受けて貰えなくなりそうだと懸念されています… 」
セロフィート
「 怪物が活動的になれば、盗賊や山賊に襲われる数は減るでしょう。
野犬も野良狼,獣に襲われる数は確実に減ります 」
依頼主:ゴイズ・ユーデイット
「 喜んで良いのやら、困ったら良いのやら悩みますな… 」
セロフィート
「 怪物除けの結界を張りました。
≪ 町 ≫ ─→ ≪ 村落 ≫への経路は、此方で間違いないですか 」
依頼主:ゴイズ・ユーデイット
「 はい。
この経路でお願いします 」
セロフィート
「 出発しましょう 」
マオ
「 オリバ,ミグリ、馬車に乗るぞ。
ミグリはセロと前の馬車に乗るんだ。
オリバはオレと後ろの馬車だぞ 」
ミグリ
「 ……うん…前の馬車… 」
ミグリは手招きしているセロの元へ走って行く。
セロと一緒に居ればミグリは安全だな。
マオ
「 オリバは馬車の後ろに乗って、背後の監視をしてくれ。
怪物は寄って来ないけど、動物,獣,人間は襲って来るから気を抜くなよ。
何かあったら笛を吹くんだ。
良いか? 」
オリバー・デグンス
「 分かりました 」
オレはオリバーに手渡した笛を見せる。
この笛はセロが用意してくれた特殊な笛だ。
この笛を吹くと安全地帯外に居る障害物に超音波攻撃をして動きを鈍らせてくれる効果があるんだ。
人数分あるから、ミグリもオレも持っている。
オリバーが馬車の後ろに乗り込むのを確認したら、オレは馭者の隣に座る。
問題が起きた時に直ぐに対処が出来るようにだ。
セロとミグリが前の馬車に乗り込んだのだろう、馬車が動き出す。
≪ 町 ≫を出発した馬車は、≪ 村落 ≫を目指して走り出した。
出発日の前日──、冒険者ギルドで護衛の依頼を受理してもらった後、依頼書に書かれている内容を4人で確認をした。
≪ 町 ≫ ─→ ≪ 村落 ≫への経路を地図を見ながら確認したり、要注意ポイントをチェックしたり、必要な道具を補充する為に《 商店街 》へ買い物へ行ったりもした。
幾ら≪ 町 ≫ ─→ ≪ 村落 ≫の距離が近いとは言っても2泊3日の旅路になる。
野営をする必要があるから、確りと準備はしとかないといけない。
どんなイレギュラーが起こるか分からないのが護衛依頼の恐いところだったりするから油断大敵だ。
防寒対策や雨具も必須だし、自分達の分だけ用意しとけば良いってもんでもない。
護衛依頼を受けた以上は、様々なイレギュラーを想定ながら準備をしないといけないから、以外と出費が嵩んだりする。
興味本意や軽弾みに護衛依頼を受けられない理由が此処にある。
金銭面に余裕があって、イレギュラーに対する対処能力の高い傭兵や冒険者じゃないと中々難しいんだ。
オリバーとミグリには、護衛依頼を受けるには “ 相当の覚悟 ” と “ 万全な対策と準備 ” が必要だって事を教え込んだ。
仮に万全な対策と準備が出来たとしても、それだけでは間に合わない場合もある。
人知を遥かに上回る出来事も普通に起こる可能性もあるから、万全なイレギュラー対策も準備も出来やしないんだけど、それでも何もしないよりは “ マシ ” って事だ。
守護衛士に入隊したばかりの頃は、中々戦力として見てもらえなくて、基礎体力向上トレーニングや身体作り,剣術の訓練ばかりさせられていた。
時々、裏方として雑用の手伝いをさせられた時期もあったけどな~~。
守護衛所で全て準備して貰えていたから、守護衛士は円滑に依頼を受ける事が出来ていたんだ。
準備してくれる側の苦労とか大変さを知れる貴重な体験をさせてもらえた訳だから、今思えば有り難かったんだよな。
結局は過保護なマーフィがオレを≪ 都 ≫から出さない為の命令だった訳だけど……。
今、思えば、マーフィがオレに対して過保護になっていた理由も分かる。
オレは幻のエルゼシア皇子が残したたった1人の実子だった。
死と隣り合わせの危険が付き物の守護衛士になる事をマーフィが反対して頑なに許してくれなかった理由も分かる。
オレを死なせないようにマーフィなりに考えていたんだよな……。
仮にオレへ出生の秘密を打ち明けてくれたとしても、オレは守護衛士になる夢を諦めなかったと思うけどな~~。
守護衛士になれたから、セロを護衛する守護衛士として一緒に旅が出来てる訳だしな!
≪ 都 ≫を出て≪ エルゼシア大陸 ≫を旅するって夢も叶えれたんだ!!
夢を叶えて守護衛士になれて、本当に良かった!!




