⭕ いざ、フィールドへ
──*──*──*── フィールド
≪ 町 ≫を出て、フィールドへ出る。
暫くは平地が続いている。
道らしい道は無くて、馬車が通った後が道になっている感じだ。
オリバー・デグンス
「 …………怪物と遭遇しないですね…。
≪ 町 ≫の周辺だから怪物の出現率や遭遇率が低いのかな? 」
ははは…。
怪物と遭遇しないのはセロが原因だったりする。
怪物は本能でセロを避けているんだ。
態々怪物の方からセロヘ近付くなんて自殺行為だからな。
マオ
「 良いんだよ。
コブリンやコポルトと遭遇する前にヘトヘトだったら困るだろ? 」
セロフィート
「 そろそろコブリンの生息地帯に入ります。
何時遭遇しても戦えるよう、剣を構えて歩くようにしてください 」
オリバー・デグンス
「 はい! 」
セロフィート
「 マオはコブリンとコポルトを倒さないように棍棒を使ってください 」
マオ
「 分かった。
オリバ、オレも戦闘に参加するけど怪物へトドメを刺すのはオリバだからな! 」
オリバー・デグンス
「 はい!
頑張ります! 」
──*──*──*── コブリンの生息地帯
膝まで伸びた草の中を歩いていると、1体で行動しているコブリンと遭遇する。
オリバーが構えた長剣を振り下ろす。
マオ
「 へっ?
片手ぇ!?
然も空振ってるじゃないかよ!!
オリバ、何で剣を片手で振り下ろしてるんだよ! 」
オリバー・デグンス
「 片手持ちで倒せた方がカッコイイじゃないですか! 」
マオ
「 あのなぁ~~~!
何処の世界に使いなれてない剣を片手で振る奴が居るんだよ?
慣れる迄は両手で持って振るもんだ!
片手で振ったら当たるもんも当たらないだろ! 」
オリバー・デグンス
「 両手持ちなんてカッコ悪いじゃないですか 」
マオ
「 あのなぁ~~。
カッコイイとかカッコ悪いの問題じゃないんだよ… 」
セロフィート
「 マオ──。
一先ずは、オリバさんの好きなように剣を振るってもらいましょう。
何回空振りしてくれるのか見ていましょう 」
マオ
「 セロ……、面白がってるだろ… 」
セロフィート
「 心外です。
ワタシはオリバさんの実力を知りたいだけです 」
マオ
「 ………………はぁ~~~。
コブリンなんてザコ・オブ・ザコみたいな怪物なんだから、手こずってもらっても困るんだけど…… 」
セロフィート
「 オリバさんは見習いですし──、寛大な心で大目に見てください。
ふふふっ………………ふふっ(/////)」
マオ
「 セロ……苦戦してるオリバ見て、めっちゃ楽しんでるじゃんかよ…。
…………こりゃ先が思いやられるかもな… 」
──*──*──*── 40分後
オリバー・デグンス
「 ──い、やったぁっ!!
当たったぁ~~~~!!
師匠っ~~、コブリンを倒せましたよ!! 」
マオ
「 そだな……。
ザコ中のザコを1体倒すのに40分も掛ける奴は──、お前ぐらいだろうな、オリバ…… 」
オリバー・デグンス
「 いゃあ~~それ程でも有りますよね~~(////)」
マオ
「 全く褒めてないから!
呆れてるんだから、照れるな!
次の戦闘からは片手持ち禁止だ!
両手で柄を確り握って振り下ろせよ! 」
オリバー・デグンス
「 えぇ~~~~。
僕は片手剣士でやって行きたいんですけど…… 」
マオ
「 つべこべ言うな!
口答えしない!
お前──、自殺志願者じゃないよな? 」
オリバー・デグンス
「 はぁいぃ??
自殺志願者ぁ!?
そんな訳ないじゃないですか!
僕は冒険者になりたいんですよ!!
Sランク冒険者になってぇ~~~、僕だけのハーレムを作ってぇ、楽しくてウハウハな余生を過ごしたいんですよ! 」
マオ
「 お前が何ランクを目指してようが、どうでもいいんだよ。
1体のコブリンを40分も掛けて倒すような腕前じゃあ、夢のハーレム生活ってヤツは海の海蘊!
泡になって消えるだけだよ! 」
セロフィート
「 マオ──、“ 海蘊 ” ではなく “ 藻屑 ” です。
言い間違えないでください………………ふはっ(////)」
マオ
「 笑うなぁ!!
──セロも師匠らしい事、言ってやれよ! 」
セロフィート
「 はいはい。
オリバさん、片手剣士を目指すなら、体幹を鍛えるようにしてください。
重心が安定していれば、バランス感覚も養われます。
片手で剣を放り下ろしても命中させる事が出来ます 」
オリバー・デグンス
「 たいかん??
セロフィート師匠、“ たいかん ” って何ですか?? 」
セロフィート
「 宿屋へ戻ったら、表層筋と深層筋の鍛え方を教えます。
基礎体力作り,肉体作りと共に実施してください。
体幹を鍛えられれば、夢のハーレムが実現に近付きますよ 」
オリバー・デグンス
「 本当ですか?!
セロフィート師匠、是非とも僕に “ たいかん ” の鍛え方を御教授くださいっ!! 」
セロフィート
「 鍛え方を覚えたら独り占めしないで皆さんにも教えてあげてください。
女性は紳士の善意に好感を持ちます。
女性に好かれたいなら独り占めせず、出し惜しみをしない事です 」
オリバー・デグンス
「 分かりましたぁ!!
セロフィート師匠の言う通りにします!! 」
セロフィート
「 ふふふ。
ハーレムを実現させる為にも尽力してください。
体幹が鍛えられる迄は、両手を使って剣を振りましょう 」
オリバー・デグンス
「 分かりました… 」
セロフィート
「 剣の振り方を見させてもらいましたけど、脇の締めと踏み出しが甘く、隙が有り過ぎます。
剣術の基礎が身に付いてません。
独学ですか?
剣の握り方,構え方も1から学び直す必要があります。
おなしな癖が付く前に気付けて良かったですね、オリバさん 」
オリバー・デグンス
「 あはは……駄目出しのオンパレードですね… 」
マオ
「 お前……やっぱり、自殺志願者だろ… 」
オリバー・デグンス
「 違いますってぇ!! 」
マオ
「 自殺希望なら怪物の巣窟に連れてってやるよ。
何時でも言えよ 」
オリバー・デグンス
「 マオ師匠っ!
言いませんからぁ!! 」
セロフィート
「 マオ、その辺にしてください。
残りは9体です。
コブリンを探しましょう 」
マオ
「 そうだな。
オリバ、気合い入れて残りのコブリンを倒せよ!!
先ずは1体を5分以内で倒せるようになれよ! 」
オリバー・デグンス
「 5分以内ですか?!
いきなりハードル上げないでくださいよぉ!! 」
マオ
「 上げてない!
コブリンなんて1分 ~ 3分以内で倒せる怪物なんだからな! 」
オリバー・デグンス
「 えぇっ?!
そんな短時間に倒せるもんなんですか?? 」
セロフィート
「 コブリンとの戦闘は練習に打ってつけです。
10体も倒せばコツも掴めます 」
オリバー・デグンス
「 そうなんですね。
頑張りまぁ~~す! 」
オリバーは熱心にコブリンを探している。
遭遇する度に、両手で柄を握って、コブリンへ目掛けて剣を振り下ろす。
ザシュ──と言う音がした後にコブリンが地面に倒れる。
両手持ちだと重心がズレず、バランスが安定するから、的にも命中し易くなる。
仮に的が動いても、大して素早くはないから体勢を崩しても直ぐに立て直す余裕もある。
戦闘には一応オレも参加してるから何時でも加勢が出来る状態だし、セロも後方で控えてくれているからイレギュラーが発生しても対処は出来る。
オリバーには安心してコブリン退治に集中してほしいと思う。
セロフィート
「 残り4体ですね。
折角ですし、コブリンの巣穴へ行きましょう。
巣穴へ煙を入れてコブリンを燻り出します。
煙たがり巣穴から出て来たコブリンを倒してください 」
オリバー・デグンス
「 マジですか?
燻り出して殺すなんて、卑怯な方法なんじゃ…… 」
セロフィート
「 何事も経験です。
マオ、焚き火の用意をしてください 」
マオ
「 セロ、幾ら何でも其処迄するのは……。
オレは反対だよ 」
セロフィート
「 マオ……。
分かりました。
マオの気が進まないなら別の方法を使いましょう 」
マオ
「 セロ!
有り難な! 」
セロフィート
「 では怪物を呼びましょう。
わんさか出現しますから倒してください 」
マオ
「 えっ?!
ちょっ──セロ、待って── 」
オレはセロを止めようと動いたけど、手遅れだった。
セロは吟遊詩人らしく、詩歌を歌い始めた。
セロの歌声はフィールド場に響いている。
周囲の空気が明らかに変わった。
サワサワ…すらしていなかった草むらがガサガサ……ガサガサ……と音がし始める。
セロの歌声を聴いた怪物達が、自分の意思とは関係無く強制的に集まり始めている。
怪物側からすれば実に迷惑千万な歌声だ。
不運としか言えない。
オリバー・デグンス
「 えっ??
急にどうしたんですか??
何が起きるんですか?? 」
マオ
「 オリバ、剣を構えろ。
何処から怪物が飛び出して来ても取り乱すして慌てるな!
平常心で剣を振るうんだぞ! 」
オリバー・デグンス
「 えぇっ!?
どう言う事ですか、マオ師匠ぉ~~~~!? 」