✒ 男は黙って、迸る●●●●,滾る●●●● 3
セロフィート
「 ──マオ、面白そうな依頼書はありました? 」
マオ
「 セロ──。
う~~ん……あるのはゴブルコンの殲滅依頼ぐらいかな?
王国騎士が被害に遭ったんだってさ 」
セロフィート
「 王国騎士です? 」
マオ
「 受けるか? 」
セロフィート
「 放っておきましょう。
他の冒険者が受けるでしょうし 」
マオ
「 そうか? 」
オリバー・デグンス
「 ゴブルコンって雌ばっかりのゴブリンですよね?
受けないんですか? 」
セロフィート
「 おや?
オリバさんはゴブルコンの種馬になりたいです?
お望みなら巣穴へ転移しますよ? 」
オリバー・デグンス
「 え…遠慮させてください!!
ゴブルコンの種馬にされたら死んじゃいますよぉ~~!! 」
セロフィート
「 死にはしません。
生かさず殺さず、老衰死するまで種馬として生かしてもらえます。
毎日、様々なゴブルコンに盥回され、様々な体勢で楽しませてもらえます 」
マオ
「 ハーレムはハーレムでもゴブルコンのハーレムか。
ははは…… 」
オリバー・デグンス
「 マオ師匠!
笑い事じゃないですよぉ~~ 」
セロフィート
「 弟子を取っている間は〈 S・G 〉で依頼は受けません。
安心してください 」
マオ
「 そうだな。
見習い冒険者のオリバを連れてランクの高い依頼は受けれないもんな。
下手したら死ぬし… 」
オリバー・デグンス
「 へ……死ぬ──ですか?? 」
マオ
「 だってなあ?
〈 S・G 〉は天下のランクSだぞ。
底辺のランクGの見習い冒険者なんか同行させられないよ 」
オリバー・デグンス
「 …………ですよね…。
僕も夢を叶える前に死にたくはないです…… 」
マオ
「 あっ──、帳簿の付け方は良いのか? 」
セロフィート
「 一通り教えました。
後は慣れです。
御贔屓にしてくれる御得意様の飲食店へ行きます。
ロブグルーの身を買い取ってもらいましょう 」
マオ
「 そうだな!
オリバ、喜べよ。
今から臨時収入が、ガッポリ入るぞ! 」
オリバー・デグンス
「 は、はい! 」
セロ,オリバーと冒険者ギルドを出たら、《 ギルド街 》から《 飲食街 》へ向かって歩き出した。
──*──*──*── 飲食街
《 飲食街 》は平民エリア,富裕層エリア,貴族エリアと3つのエリアに分かれている。
《 宿屋街 》も同様に3つのエリアに分かれていて、平民エリアには至って普通の宿屋,富裕層エリアには旅館,貴族エリアにはホテルが建てられている。
ロブグルーの身を買い取ってくれるのは貴族エリアの飲食店やホテルの厨房だ。
富裕層エリアにある飲食店と旅館の厨房には、セロが下処理を直してくれた6つを買い取ってもらえると思う。
マオ
「 先ずは富裕層の飲食店かな? 」
セロフィート
「 交渉はワタシがします。
オリバさんが独り立ちした時は、必ず自分で交渉をするように心掛けてください。
どんな小さな交渉であっても、決して交渉を他人任せてにしてはいけません。
何故か分かりますか? 」
オリバー・デグンス
「 …………検討も付きませんけど…… 」
セロフィート
「 帳簿も必ず自分で付けるようにしてください 」
オリバー・デグンス
「 帳簿もですか? 」
マオ
「 自分の財産管理を “ 他人任せにしない ” って事だろ。
どんなに信用,信頼の出来る仲間も所詮は赤の他人だ。
人を信じる事は尊い事ではあるけど、信じ過ぎるのは良くない。
人付き合いってのは、程々を弁えて一定の距離を保ちながら仲良くする事だ。
家族ですら平気で裏切るんだから、赤の他人なんて掌を返すように簡単に裏切るもんだぞ。
金絡みなら尚更だ 」
オリバー・デグンス
「 …………そんな事を言われたら人間不振になっちゃいますよ… 」
マオ
「 悲観すんなよ…。
良いか、誰かに選ばれる人間にはなるな。
常に自分は選ぶ側だって言い聞かせるんだ。
胸を張って強気に堂々と振る舞ってれば、選ばれて不愉快な思いをする事も、不当な扱いを受ける事もないよ 」
オリバー・デグンス
「 選ぶ側になる──ですか?
なれるんですか? 」
マオ
「 なるんだよ!
なるのが無理なら、なりきれば良いんだ。
演技すれば良いよ 」
オリバー・デグンス
「 演技──ですか?
出来るかなぁ~~ 」
セロフィート
「 演技等案外簡単に出来るものです。
何事も慣れです。
1番は演じる自分を心から楽しむ事です。
楽しむ事が出来れば、無理なく長続きさせる事も出来ます 」
マオ
「 セロは吟遊詩人じゃないのに吟遊詩人を “ 演じてる ” もんな~~。
吟遊詩人を楽しんでるしさ、説得力あるよな 」
セロフィート
「 ふふふ♪
( 演じているのは吟遊大詩人だけじゃないんだよ、マオ── )
オリバさんも別人の自分を楽しんで演じてください 」
マオ
「 ははは…。
まぁ、難しく考えなくても良いんじゃないか?
誰でも場所,立場,相手に合わせて仮面を被って生活してるらしいからさ 」
オリバー・デグンス
「 仮面…ですか?? 」
セロフィート
「 人は誰しも無意識に様々な仮面を生み出し、状況に合わせて付け替えているものです。
皆、同じです。
ですから、必要以上に他人を信頼してはいけません。
信じても良い相手は、“ 騙されても構わない ” と心の底から思える相手にしなさい。
それ以外の相手には不用意に心を開かない事です 」
オリバー・デグンス
「 はい…… 」
セロフィート
「 オリバさん、ワタシの交渉術を観察して我が物にしてください。
必ず、オリバさんの役に立ちます 」
オリバー・デグンス
「 セロフィート師匠…… 」
セロフィート
「 さぁ、行きましょう 」
──*──*──*── 富裕層エリア
──*──*──*── 飲食店
セロ曰く「 御贔屓にしてくれる御得意様 」の飲食店へ出向き、出入り口で出迎えてくれる店員へセロが “ 何か ” を見せると店員に奥の部屋へ案内された。
それは何処の飲食店でも同じで、セロが店員に見せた “ 何か ” が何なのか気になる。
飲食店の奥にある商談室に通されたセロはソファーに腰を下ろして座る。
オレとオリバーは何処の商談室でも、セロが座るソファーにの後ろに立ったまま、セロと飲食店の責任者との交渉を黙って見守っていた。
慈母神も霞む程の微笑みを浮かべるセロの交渉術はエグかった。
これをオリバーに「 我が物にしろ 」って──、セロは無茶な事を平然と言う!
こんなの真似れるわけないだろが!!
オリバーの表情なんて青ざめていて即答寸前の状態だった!!
でもまぁ、飲食店の責任者ともなると2癖,3癖はある人ばっかりで、交渉するには多少なりとも強気で強引に行かないと足元を見られて値切られ兼ねないから、相手の痛い弱点をつつきまくって穴だらけにした挙げ句の果てに粗塩を揉み込むような手段をゴリ押ししないと高値では買い取ってはもらえないんだよな。
セロの交渉術によって、本来ならば一切れ1枚で2.000G程度の価値しかないロブグルーの身の値段が、一切れ1枚で5.000Gの価値に上がった。
3.000Gも上げさせるなんて、流石は慈悲も容赦のない鬼畜なセロだ!
こんな巧みな話術をオリバーは物にする事が果たして出来るんだろうか……。
出来たら怖いんだけど……。
まぁ、セロの人並み外れた交渉術のお蔭もあってか、貴族エリアの飲食店の商談室にてロブグルーの身を予想以上の高値で買い取ってもらえたのは有り難い事だ。
《 飲食街 》から出て、《 宿屋街 》の貴族エリアにあるホテルの厨房にもセロの “ 御得意様 ” とやらがいて、厨房責任者やホテル経営者の責任者とも交渉をした。
予想以上のガッポリぶりで、金貨の入った銭袋が一杯だぁ~~~♥️
セロフィート
「 何とか全てのロブグルーの身を高値で買い取って貰えましたね。
オリバーさん、金貨の銭袋を見た感想はどうです? 」
オリバー・デグンス
「 しゅ……しゅごいでしゅ…… 」
マオ
「 オリバ……涎は拭けよ?
取り敢えず、今日は此処迄かな? 」
セロフィート
「 そうですね。
宿屋へ戻り、稼いだ分を帳簿へ書き込みましょう 」
オリバー・デグンス
「 …………金貨がおっぱ……じゃなくて、いっぱい…… 」
マオ
「 オリバの目には金貨は毒みたいだな~~ 」
セロフィート
「 直ぐ慣れます。
金銭感覚が狂わなければ良いですね? 」
マオ
「 セロ……面白がってるだろ…… 」
セロフィート
「 ちっとも 」
セロは眩しい程の笑顔をオレに向けて微笑んだ。
絶対に態とだな~~~~。
オレは確信したぞ!!




