✒ ビフォーアフター
──*──*──*── 1ヵ月後
オリバーに体力が付いて、身体付きも良くなった頃から更に1ヵ月が経った。
剣に関する基本を身に付けさせる為に、基本的な知識,応用的な知識をオリバーに学ばせて、正しい剣の持ち方,正しい剣の握り方,正しい剣の扱い方,正しい剣の振り方…等々を身に付けさせた。
セロからOKが出ると、いよいよオリバーに本格的な剣術の稽古を付ける。
人間相手に手加減の出来ないセロがオリバーの相手をするとオリバーが死んじゃうから、オリバーと剣を交えるのはオレだ。
オレも手加減が苦手なんだけど、最悪でも死ぬ事はないだろう。
オリバーと仮契約しているスライムのテスが回復魔法を使えるから、大丈夫だと思いたい。
オレは木剣を使うけど、オリバーには真剣を使ってもらう。
オリバーに対するせめてものハンデってヤツだ。
手取り,足取り,腰取り、オリバーの身体に剣術のノウハウを叩き込む。
オレの稽古指導はラオインダから受けた剣術稽古を参考にしている。
何でセロの稽古指導を参考にしないのかと言うと、オリバーが人間だからだ。
セロの稽古指導は人間向きじゃないから、オリバーには耐えられないだろう。
剣術に関して未熟だったオレに剣術のノウハウを叩き込んでくれたラオインダも、今のオレみたいな気持ちだったのかな……。
此処に伯父さん,マーフィ,ラオインダが居てくれたら、オレよりも確実に的確な指導をオリバーにしてくれたに違いない。
伯父さんもマーフィもラオインダに負けじ劣らず剣術に長けていたらしいからだ。
オレの母さんの兄である伯父さんが3人の中で1番強いみたいで、2番目に強いのはラオインダらしい。
暴走したラオインダを負かせて正気に戻せるのは、マーフィでは力不足で伯父さんの役目だったそうだ。
3番目だからと言って、マーフィが弱いって事はないらしい。
守護衛所で守護衛士をしていたオレの同僚達は、ふざけた奴等だけど体格差,腕力差,実戦経験なんかも含めて、オレよりも遥かに強かった。
そんな強者の同僚達が、マーフィには震え上がっていたんだ。
誰1人としてマーフィから1本を取れた奴は居ないぐらい、マーフィの剣術の腕は相当だ。
オレはセロからの剣術稽古を受けたお蔭でマーフィには勝てたけどな!!
オレの教え方が正しくて合っているのか判断してくれるのは、誰でもないセロだ。
セロも口答でオリバーに指導をしてくれる。
オレの時より教え方がソフトのが解せない!!
剣術の稽古も上々で、剣術の腕を磨いている間にオリバーの肉体も更に逞しくなった事もあって、久し振りに武具屋へ行った。
オリバーの装備品を新しく買い換える為だ。
武具屋は中古品しか扱ってないけど、中々上質な防具類,装飾品類が揃っている。
使わなくなった防具類,装飾品類は次の弟子の為に売らずに持って置く事にした。
サイズが合わなければセロが古代魔法でサイズの変更するだろう。
今回もオリバーの出世払いって事で、セロヘの借金が増える結果になった。
セロは100Gに1Gの利子を付けているけど、どえらい額の利子が付いてる事だろう。
利子を支払うだけでも大変だ。
セロは弟子にも容赦ない。
プロテインサプリメントなる怪しげな栄養剤の実験台に使ってるんだから、利子ぐらい無しにしてやっても良いと思うんだけどな…。
防具類も装飾品類も買い換えたら、足りない道具も買い揃える。
イレギュラーが起きた時の事を考えて最低でも50個は持っていたい所だ。
また、セロへの借金と利子が増えちゃうな~~~。
オリバーは使わないかも知れないけど、パーティーを組んだ時に仲間へ使う事を考えたら100個は持っていても良いと思う。
セロがオリバーに渡した魔法の鞄,魔法の袋は、中へ入れた物の劣化を防ぐ効果があるらしいから、何年入れっぱなしでも鮮度は悪くならないようになっているそうだ。
勝手に整理整頓もしてくれるらしく、購入日別に消費期限が早い順で並び替えてもくれるらしい。
実に便利だから、盗まれる可能性は大だ。
魔法の鞄,魔法の袋狙いで命を狙われる事もあるだろう。
その為にも殺人剣術だけじゃなくて、身を守る為の護身体術な護身剣術もオリバーにはマスターしてほしいと思う。
命あっての物種だからな!
セロフィート
「 そろそろ頃合いでしょう。
冒険者ギルドへ行きます。
怪物退治の依頼を受けて達成してみましょう 」
マオ
「 漸くか~~。
長い2ヵ月間だったな~~。
オリバ、トレーニングの成果をセロとオレに見せ付ける時だぞ! 」
オリバー・デグンス
「 はい!!
何か、イケる気がします!! 」
マオ
「 トレーニングの成果かな?
自信満々じゃん!
体幹も確り鍛えられてるし、体操で培って養われたバランス感覚も冴えてるから、片手剣士として十分に戦えるよ。
小さいけど、防御力の高い盾も左右セットで買えたしな!
オリバに必要なのは、実戦経験だけだな! 」
セロフィート
「 新生オリバさんの初陣と行きましょう 」
セロとオレは弟子のオリバーを連れて冒険者ギルドへ意気揚々と向かった。
──*──*──*── 冒険者ギルド
2ヵ月振りの冒険者ギルドは、相変わらず冒険者達で賑わっていた。
傭兵達の姿が無いって事は、老朽化した傭兵ギルドの工事が終わったのかも知れないな。
向かう先は壁に貼られている依頼書の掲示板だ。
マオ
「 結構あるなぁ。
前より増えてないか? 」
セロフィート
「 怪物退治の依頼は増えてます。
ロブグルーの依頼は報酬額が高いです 」
マオ
「 コブリンとコポルトの退治依頼書もあるな。
ラビボッチの依頼も良いんじゃないか? 」
セロフィート
「 キマウモンキの依頼も良いですね 」
オリバー・デグンス
「 ちょっ、一寸待ってくださいよ!
依頼を5件も受ける気ですか?! 」
マオ
「 今のオリバなら余裕だよ。
狩る数も少ないしな 」
オリバー・デグンス
「 30体は “ 少ない ” って言わないんじゃないですか? 」
マオ
「 オリバ、冒険者ランクを上げる為には多くの依頼を達成しないといけないんだ。
今日からガンガン受けるから覚悟しろよ! 」
オリバー・デグンス
「 えぇ~~~~ 」
マオ
「 『 えぇ~~ 』じゃないだろ。
借金を返す為にも、気張って行くぞ! 」
セロフィート
「 取り敢えず、5件は受けます。
最低でも10件は受けれますよ 」
オリバー・デグンス
「 10件も嫌ですよぉ~~!! 」
マオ
「 情けない声、出すなよ…… 」
受け付けカウンターで受けたい依頼書を提出して、受付嬢に受理してもらった。
請け負い側が受け取る依頼書を貰って、冒険者ギルドを出た。
──*──*──*── ギルド街
冒険者ギルドを出たら《 ギルド街 》の中を歩く。
色んなギルドの建物があるから、見てるだけでも飽きない。
一般人でも気軽にギルドの中へ入って受付嬢に話を聞けるから、意外と人の往来が多いくて賑やかではある。
旅行者ギルドは家族連れの客が多く出入りしているし、旅人ギルドは自由の利く独り身の人が多く出入りしている。
旅行者ギルドや旅人ギルドに登録すると、護衛をしてもらう為の傭兵を個人で雇う必要がなくなるし、自分で馬車の手配する必要もなくなる。
傭兵や乗り合い馬車をギルド側から手配してもらえるサービスが付いているんだ。
だから他のギルドよりも年間登録料が高いんだけど、自分で手配する手間が省ける分、楽が出来る。
金に余裕があるなら、旅人ギルドと旅行者ギルドの両方に登録しておくと、両方のサービスが受けられるからお薦めだ。
何を隠そう、セロとオレも旅人ギルドと旅行者ギルドに登録してたりするから、お得なサービスを受けられてるんだよな!
冒険者ギルド,商人ギルド,商業ギルド,解体屋ギルド,下処理屋ギルド,臓物屋ギルド,素材屋ギルド……色んなギルドに登録している。
ランクの高い怪物の臓物は金になるから、地面に埋めて処理なんかしたら勿体無い。
ランクの高い怪物の臓物は臓物ギルドへ売ると簡単に大金が手に入るんだ!
まぁ、これは臓物屋ギルドの需要性をセロが教えた事で開業したギルドだったりする。
素材屋ギルドも同様だ。
冒険者ギルドだからと言って、どんな素材も買い取ってくれる訳じゃない。
冒険者ギルドが買い取ってくれない素材って意外と多かったかりするんだ。
冒険者ギルドでも手に負えないような素材や買い取り拒否をされた素材を買い取って金に変えてくれるのが素材屋ギルドだったりする。
実はオリバーにも登録させたいけど、いかせん登録料に半端なく金が掛かる。
見習い冒険者のオリバーには多額の登録料なんて支払えない。
セロの紹介で他のギルドへ登録させても良いけど、セロヘの借金がネズミ算式に増えるだけだし、16歳で借金漬けにしたらあまりにもオリバーが可哀想だ。
マオ
「 オリバ、登録すると便利なギルドを教えるから、無事に1人立ちが出来て安定して稼げるようになったら── 」
セロフィート
「 他のギルド登録なら、オリバさん名義で済ませてます。
安心してください 」
マオ
「 は?
なん──!? 」
セロフィート
「 オリバさんの師匠として当然の事です 」
マオ
「 えぇっ!? 」
セロぉ~~~~!!
何時の間にぃ~~~~??




