魔法学院高等学校 通信制 助手コース
「それでは皆の者、我の詠唱に続きなさい。【魔素よ 熱く燃え この指に灯さん】」
『【魔素よ 熱く燃え この指に灯さん】』
黒ずくめのローブ姿の学生達が、指にライター程度の炎を灯している。ま、魔法を初めて見た。これが学校の授業として学べるとは……
息子と来た、高校の見学会。貰ったパンフレットには[ 魔法学院高等学校 通信制 ]とある。
この学院は、送られてくるプリントで高校卒業の資格を取りつつ、異世界の学問も学べるという、地球の通信制高校と同じ仕組みだ。
異世界学問の選択肢はかなりの数があり、魔法学の助手コースなんかは、卒業までに低位程度の魔法詠唱と魔法陣が書ける様になるそうだ。おお、凄い。
『当学院では地球の皆様にも、我らの世界の学問を学ぶことにより、突然の異世界転移にも対応できる人材を育てており、それは卒業生の活躍が実績として表れている所であります』
パンフレットを見ると、卒業生の実績が大きな文字で書かれている。
この人も、あの人も、ラノベで見た事がある主人公だ! ニートで始まり、異世界転移でチートを自在に扱い無双する。このパターンに違和感を感じていたが、なるほど! ニートの時に通信制で予め学んでいたのか!
『はあぁ!! 雷剣!』
『まだまだ! 踏み込みが甘い!』
異世界の広い青空の下、若人達の声が響く。まるでゲームやアニメの登場人物の様な技術の学問に、彼らは真摯に汗を流していた。そこに、場所や年齢なんてあまり関係ない、そんな気がした。
◇
「という感じの学校があってさ」
「へえ」
見学会を見てきた感想をウキウキで伝えると、かみさんの肩透かしで気の抜けた返事。
「で、大人でも入れるみたいで入学案内もらってきちゃった。あとコレ、見学のお土産の『魔法の杖』!見てよ、炎出せるんだ!」
「……ほーん」
見学会で盛り上がってしまい、実は子供等より率先して魔法体験をしてきてしまった。あとはかみさんを説得できるか、だが。
「会社辞めるとか言わないよね」
料理の手を止め、振り返ったかみさんの周りを黒い靄が覆う。あれ奥様ちょっと怖いですわよ。
「私、専門学校の時に『暗黒剣士』の資格取ったんだよね~。『暗黒スラッシュ』でカボチャの様にズバン!と切るのと、『黒炎竜』の召喚でパリッと焼き目付くのと。アンタどっちがいい?」
刹那、ギン!と睨む暗黒剣士かみさん。
俺の遅れてきた中二病は、『邪眼』を受け灰になった魔法の杖の様に、儚く崩れていった……