96話「繋がった希望! 真打ち登場!!」
幻獣界の避難者たちは、ロープスレイ星を映すモニターに呆気に取られていた。
三日三晩の奮戦も虚しく王城の巨神像と勇者たちは、何度でも蘇ってくる不死鳥を前に敗れた。
そして轟々と燃え盛る極大火柱の光景で、星の終末を突きつけられた。
「そんな…………!! 嘘だろ…………! おい!!」
ライトミア王国の人々が避難されている所でも、第一王子アスールと第二王子ミレアは愕然としたまま膝を落とし茫然自失に陥ってしまった……。
五輝騎士の一人“雷鼓天の主”シュルアも目の前の光景が信じられず言葉を失ったままだ。
「うええええ~~ん!」
“双剣浪人”オズラッチと“魔射手”ヨーレンは、泣きじゃくる新米冒険者レアックスとマレーシを宥めていた。
でも無理もないか、とやりきれない想いだ。
なんせ、住む所はおろか星すらも失ってしまったのだから……。
逆に水のブルークア王国第三王女マメードは淡々とした顔で眺めるのみ。
カエルの姿をした大精霊ピョタは何かを察してか何も言わない。
暴君であった父の本性を目の当たりにした上で、勇者ウォタレンにも良い感情を抱いていない以上、もはや未練はなさそうな雰囲気だった。
終わって当然、みたいに冷めている。
勇者神殿でアサペンドラとベィエールもその結末を見届けていた。
「みなさん、お疲れ様……。そしておやすみ……」
「みんなも勇者として名に恥じぬ奮戦だった。しかし……」
誰もが「終わった…………!」と絶望し諦念ムードに沈む。
────だがしかし!
その灼熱の火柱が中心部から次第に光へと置き換わっていって、数千万もの蝶々の群れに飛び散っていく!
ついに一縷の望みは、ついに繋がった!
勇者たちの死力を尽くした時間稼ぎが実を結び、閉ざされた未来はこじ開けられた!!
不死鳥は《な……なっ……!?》と絶句して見開いていく……!
吹雪のように純白に輝く蝶々の群れが軽やかに舞い続け、中から二人が!
「────デコレーションフィールド! 攻撃無効化!」
なんと、妖精王ナッセとヤマミが共に片手を突き出して、凛然とした表情を見せていた!
ラルゴたち勇者たちは呆気に取られ、眩い暖かい光に表情を照らされていく!
バベナスも、マグアも、ププラトも、クーレロも、マブポルトも、茫然自失……。
初顔合わせとはいえ二人の妖精王の背中を見て、何故だか感激して熱いものが頬を流れていく。
絶望で凍えそうになっていた心を温めてくれる光に癒される想いだ!
「セロスたち、待たせたなぞ!!」
振り向いてきたナッセの中性的な顔の柔らかい笑み。
セロスとウォタレンは「やっと来てくれたな……!」と安心し笑んでいく!
四魔将のアマリビグ、ホノヒェラ、ソネラスも同様だ。
モリッカも「やっぱり真打ち来ちゃいましたね~!」とにっこり。
ファリアもメーミも安堵のため息をつく。
オルキガ王は「あれこそが我らの希望じゃ!」と嬉しそうに紹介する。
それを聞いて風の王国のナムベジ王と土の王国コマ王は目が潤んでいく……。
クーレロとマブポルトは「妖精王が他にも!?」と感嘆を漏らす。
希少な種族なだけに、微かに寂しさはあったのかもしれない。
ラルゴはなんとなく狙いを察していたが、想像した以上に神々しい二人の背中に暖かいものを感じた。希望の光を体現したかのような風貌に、思わず年甲斐もなく涙が溢れる。
これまで死に物狂いで戦いの人生を進んできた彼の傷んだ心にもじんと伝わる暖かさ。
「これが……、セロスの言っていた妖精王かッ…………!?」
雲海を明るく灯る花畑で覆い広がっていって、妖精王ナッセが大きく広げた白い翼を五対浮かせ、宇宙にも届かんとする純白のフォースが高々と噴き上げていく!
そしてナッセは相棒のヤマミと共に不死鳥へ向かい合う!
希望そのものが降臨したかのような神秘的輝きに不死鳥は忌々しい、と憤怒に表情を歪ませていく!
「今度はオレたちが相手ぞッ!!」
「この星をこんなにしたアンタを今に卵にして、後悔させてやるわッ!」
戦意を昂ぶらせたナッセとヤマミは手を重ね合い、眩い光を放った!
天地を揺るがすほどの膨大なフォースが立ち上っていく! それに不死鳥さえも脅威を感じ見開いていく!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
幻獣界で妖精王マシュが佇む広場で、ジャオガとアクトとリョーコは自信満々な笑みでモニターを眺めている。マイシは腕を組んだまま仏頂面。
クックさんは目をキラキラさせて「がんばれー!!」と声を張り上げる。
そしてティオス先輩は眼を見開いて身を震わせていた。
「……ナッセとヤマミの威力値一〇〇八万だと……!?」
────思い返す。
ついに十二日が来て、再び魔法陣が現れて噴き上げてくる光の帯と共にナッセとヤマミが複数現れたのだ!
その摩訶不思議な光景には驚かされた!
まるで複数の鏡で映したかのようにナッセとヤマミがそれぞれ十二人並んでいた。それらは一つになるかのようにスススススッと重なっていく。そして光が溢れた。
秘術『タイムマジック・インテグレーション』
彼らの時空間秘術は、高次元に干渉して十二日分の自分自身を統合する事で倍加させる効力。単純、威力値が十二倍になるのだ。
この時点でナッセとヤマミの威力値は一六八万、妖精王状態だと五〇四万! 『連動』する事で更に一〇〇八万へ達した!
その日限りのものではあるが、驚異的なパワーアップだ。
そして十二倍にパワーアップしたヤマミは時空間転移で幻獣界からロープスレイ星のライトミア王国の位置まで瞬時に移動したのだ。
今までの彼女ではできなかった芸当だ。
遠く深く隔てている空間を飛び越えるなど、成体の妖精王マシュでさえ無傷のままで転移はできない。これは侵略しようとしていたロゼアット帝国を追放した強制転移でも明らかだ。
……それを涼しい顔でやってのけたのだ!
ティオス先輩は「すげぇ……」と口走る。
上層地殻の浮遊大陸も灼熱地獄になっている最中、巨神像は傾いたまま鎮座。
立ちはだかるナッセことオレとヤマミの真打ち登場に、不死鳥は怒ってるみてぇだ。
《邪魔した代償は高くつくぞッ!! この灼熱の業火、その身に受けよッ!!》
燃え盛る灼熱の両翼を大きく広げ、超高速で飛びかかってくる!
オレたちもろとも後方の巨神像ごと完全に焼き尽くそうと突進してくるようだ! 灼熱の尾を引きながら轟々と巨体が迫ってくるのにはビビっちまうぜ!
だが! 幻獣界で学んだ事を! 今活かすッ!!
「オレが行くぜッ!!」
「気を付けて!」
オレは一人で真っ向から不死鳥へ飛び出す!
短い杖の聖剣を握り「また頼む!」と思いを込めて、従来の星光の剣を形成する!
次は大剣の太陽の剣に進化するよう形成ッ!!
しかしここで終わらない……ッ!
「おおおおッ!! 見ろッ!! オレの新型を────ッ!!」
《なッ!!?》
太陽の剣をかざして眩い閃光で全てを覆い、不死鳥は目を丸くしていく!
幻獣界で『刻印』の基となる魔法陣の特殊記号や魔法文字によるプログラムを学習して理解し、新たに刻み得た新型────────!!
ビッグ太陽の剣を構えたままオレは飛翔する!
しかしこれまでと違うのは、その太陽の剣の円形のツバ部分を中心に、尾を引く球状の衛星がいくつか周回しているのだ!
不死鳥は《それは……ッ!!?》と驚愕に満ちる!
「これがオレの『太陽の剣 S・S』だぁ────ッ!!」
それでも不死鳥は体当たりを止めない!!
オレの太陽の剣を周回する衛星がチカチカチカッと輝き消えた!!
ザザザザザザンッ!!
なんと幾重の剣閃が通り過ぎて、不死鳥の巨体が八つ裂きに!? 鳥頭、腕、足、翼が細切れッ!
そう、衛星を星光の剣に変えて飛ばし斬り刻んだのだ!
これこそオレが『暗殺者』『魔道士』『弓兵』の特徴を活かした『衛星』だッ!!
「受けろッ!! サンライトォ────・スパァ────クッ!!」
オレはすかさず残った不死鳥の顔面というか胴元を横薙ぎし、破片を四方八方に散らすほどに炸裂させたッ!!
《がはあッ!!?》
一瞬にして不死鳥は吐血し、火の粉を散らしながら猛スピードで吹っ飛んでいく!!
次第に散り散りと跡形もなく木っ端微塵になっていった……!
「……あれ? 呆気なく終わったぞ?」
そんな圧倒的な瞬殺に、ティオス先輩は妙にドキドキしてきて少年だった頃のワクワク感を思い出す。
これなら何とかしてくれそうな頼もしい感がする。
「すげぇ…………!」
あとがき雑談w
アクト「なァ……、妖精王になると『刻印』関係なく具現化できるんだよなァ……?」
ナッセ「ギクッ!」
リョーコ「えーw どういう事かなーw」うりうりと尋問w
クックさん「正直に吐け────w」
ナッセ「白状すっぞー。読者には分かりにくいかもなので、前置きで説明しただけで後は具現化してましたー」
ヤマミ「つまり、妖精王じゃなくても『太陽の剣 S・S』を形成できるって事よ」
だが、まだ他に秘密がありそうだ…………!? お楽しみに!
次話『真打ち登場!! 中ボスと最終決戦だぞッ!!』




