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91話「謀反! 愚かな水勇の蒼騎士!」

 不死鳥は上層地殻の浮遊大陸を滑るように飛び、灼熱のラインを引く。

 その軌道上にあった村、町、国は次々と消し飛ぶ。


《好きなモノは最後に取っておく性質(たち)でな……。全て済ませてから光の国へ参ろうぞ……。楽しみに待っているが良い》




 ────水のブルークア王国。


「蛇行しながら、こちらへ接近中です!!」

「時間は? あと、どれくらいで来る!?」

「二時間四十六分ですっ!」


 王城の広域察知(サーチ)システムにより、不死鳥の軌道を把握していた。

 そして目指すのが()()だと、魔道士(マジシャン)たちはザワザワ騒然としていく。放送で注意喚起が王城中に響き渡った。

 兵士たちも騎士たちにも緊張が走り、思わず身が竦んでしまう。


「サギハン国王様! 最後まで戦……」


 覚悟を決めたウォタレンをよそに、サギハン国王は(きびす)を返す。

 思わず振り向くと、他の慌てている兵士たちとは対照的に国王は妙に落ち着いている。


「国王様……!?」

兵士たち(こいつら)(おとり)に使う。お前は余の護衛だ。来い!」


 (うつむ)いてる故に影で覆う冷酷な顔の国王。そのねっとりした残忍な目線に、ぞわりとウォタレンの背筋に悪寒が走った。


「……はい」


 仕方なく従い、青い水晶玉の魔法炉を抱えながら上の階のフロアへ移動した。

 見渡せば、高そうな骨董品や彫刻や絵画など、あらゆる趣味のものがたくさん置かれている。本来は国王のプライベート部屋なのだろう。

 サギハン国王が暖炉の中をガチャガチャすると、その下で魔法陣が広がっていく。そして中心部に渦潮のような空間のひずみが生まれた。


「それは一体!?」

「緊急用の転移魔法陣だ。創作した魔道士(マジシャン)どもは始末したから余以外誰も知らん。だが、お前は護衛として特別に公開してやったのだ! 光栄に思え!」

「では……、一体どこへ行かれるのですか……!?」

「光のライトミア王国だ!!」


 ギロッと睨むように振り向いてくる。その言葉に絶句して見開くウォタレン。

 魔法炉を抱えたまま国王に「なぜ?」と問う。


「この国はもうダメだ! 後世に残すべき高貴なる余が真に治めるべきは、国際で一番信頼を勝ち得ているライトミア王国! ここの水晶魔法炉を譲渡する代わりに、王権を戴く!」

「ほ……本気で言っているのですか!?」

「そもそも穏健派であるオルキガ王は甘いのだ! 国を治めるには微温(ぬる)すぎる! 大国を治める器には到底(とうてい)収まらん!

 この余のように、神がごとく高潔で優秀な人間にこそ相応しいのだ!」


 ウォタレンは悟ってしまった。人の皮をかぶった悪魔なのだと…………。


 脱力し軽蔑するほどに、深く失望し、やりきれなさが胸中を締め付ける。

 この独善的な国王の為に罪のない民衆は犠牲になってしまった。そしてあまつさえ不利になりそうだったら、騎士兵士をも見捨てて自分だけ安全な国へ逃げようとする。

 そして他国の王に成り代わろうとする醜悪な野心……。


「早く来い! 時間がないのだぞッ!?」

「……その言葉、残念ながら聞きませぬ!」


 しばしの沈黙……。

 サギハンは「もう一度申して見よ! 今、なんと?」と怒りに滲む顔を見せた。

 ウォタレンは魔法炉を収納本に収め、国王と向かい合う。


「……人とは、過ぎた地位と力を持つと自惚(うぬぼ)れ、慢心(まんしん)し、(おぼ)れる程、弱い生き物! そして自分を見失い、心を(にご)らせてしまう! あまつさえ自らの力も(にぶ)らせてしまう!」

「何を言っておるかッ!? そのような事を聞いておるのではないッ!」


 ()まし顔でウォタレンは更に言葉を続けた。


「私の師匠の言葉です!」


 頭に血が昇っているサギハン国王は「そんな事聞いておらんッ!!」と怒鳴る。

 ウォタレンは回想する────────────……。




 陽の反射によってキラキラ煌く広大な湖。それを見渡せる切り立った地形。その上の草原で二人がいた。


 金髪の初老の騎士は陽気に笑う。その側で息を切らしながら尻餅(しりもち)を付いている若いウォタレン。両者ともに木刀を手にしていた。

 どうやらいつもの場所で剣の鍛錬(たんれん)に励んでいるようだった。


「バカタレン! まだまだだな!」

「バブプール師匠! そういう名前はやめてくれ!」


 からかわれたウォタレンは赤面して怒鳴る。

 バブプールは清々(すがすが)しい顔で湖の中心に建つ水のブルークア王国を眺める。


「……お前も勇者(ブレイバー)として相応の力を付けてきた。さすがは勇者の血を引きし者よ」

「当たり前ですよ! この高貴なる血に恥じぬよう、日々鍛錬を繰り返しているのですから!」

「だからバカタレン……」


 ジト目で見やってくる初老の騎士に、ウォタレンは「だからー!」と苛立つ。


「高貴なる血だの、勇者の血統だの、そんなもの足枷(あしかせ)でしかないわ!」

足枷(あしかせ)…………?」

「ワシは見てきたよ。王族や貴族から指南(しなん)を頼まれて、多くの人を師事(しじ)してきたから分かる。どいつもこいつも「高貴な血が~」とか「秀でた才能が~」とか偉そうにしていたぞ。しかし実際は恵まれた才能がありながらも中途半端な強さに満足して、しまいには腐っていってしまった」


 呆然するウォタレンに、バブプールはニッと笑う。


「この世にはな、良血や才能に恵まれた王族や貴族より、もっと強い雑種の人間もゴロゴロいるのだぞ?」

「そ、そんなのは有り得ない!」

「ほら見ろ! そうやって否定して事実から目を背ける。他の王族や貴族もそんな反応だったぞ」


 ウォタレンはギクッとする。


「王族だから貴族だから強い! は“世界”に通用せぬ!」


 マジ顔でバブプールは木刀を握り締める。


「現状に満足して(おご)らず、常に高みを目指して切磋琢磨と己を磨き続けるヤツが一番強い! そこに地位や血統は関係ない!」

「常に高みを……!」

「それを「高貴だの」「血統だの」で自分から成長を邪魔するのが致命的だ」


 バブプールは間近に来てしゃがみこんで、額を突っついてくる。


「人とは、過ぎた地位と力を持つと自惚れ、慢心し、溺れる程、弱い生き物! そして自分を見失い、心を(にご)らせてしまう! あまつさえ自らの力も(にぶ)らせてしまう! ……お前はそうなってくれるなよ?」



 ────────すみません、と回想の師匠に謝った。


 いつの日か、己自身も地位や力に溺れ、心を濁らせてしまっていた。

 目の前の驕った国王の愚行を目の辺りにして、ウォタレンはようやく自身の愚かさに気付けた。そして大いに恥じた。

 マメード姫にも逃げられるのもやむなしと自分を()いた。



「……潰すぞ!」


 恐ろしい威圧を漲らせ、サギハン国王は上目遣いで睨んだまま低い声で凄む。

 この狭い広場にミシメシと破裂しそうなほどの強烈な威圧。ウォタレンにとっては山のように巨大な国王が睨みを利かせているかのような錯覚さえ覚える。


「その力、直に使って戦った事がありましたか?」

「必要ない! 使うまでもない! そもそも貴様と兵士たちが命を懸けて戦えば済む事だ!」


 それでもウォタレンは冷静に質問を続けた。


「鍛えてもらった師匠は誰ですか? それとも自分の親からですか……?」

「何を(たわ)けた事を! そんな非効率な事などしなくとも、代々継承される力でもってすれば、無駄な修練などせずとも絶大な力を振るえるわ!!」


 サギハン国王は右手の甲を見せた。そこには青く輝く紋章。


「それは…………?」

「『継承刻印(インヘリタンス)』! 我が王家が正当な後継者に代々引き継ぐもの。大昔より先人たちの戦闘力とスキルと経験が積み重なってきた最強の刻印だ!」


 地響きを起こすほどに、サギハン国王の全身からエーテルが漏れ出てくる!

 ビリビリ威圧が激しさを増していく!

 怒りに漲ったサギハン国王はトライデントの形をした聖剣を引き抜いて、構える!


「これぞ代々伝わる『六柱蒼(ブルーシックス)』の武具(ぶぐ)が一つ、『蒼天槍(ブルテンソー)』!!」


 ひと振りするとズガッと周囲の壁を横薙ぎに斬り裂き、上の部分が横へズレていって(かたむ)き、転がり落ちて下方で崩壊音を響かせた。ガラガラドォ……ン!

 天井がなくなって暗雲が広がる空があらわになる。

 それでもウォタレンは(まゆ)一つも動かさない。


「先人たちも残念に思ってる事でしょう……。こんな愚かな国王に継承されるとは、と」

「口が過ぎるぞッ!! ウォタレンッ!!」


 激昂して叫ぶサギハン国王に、ウォタレンは自嘲する。


「そこはバカタレンですよ! 貴方のように驕り高ぶった愚か者ですから……!」

「もういいッ!! 貴様は万死に値するッ!! この場で処刑だッッ!!」


 ズオッ!!!


 爆発するようにサギハン国王は全身からエーテルを放射し、周囲の骨董品や彫刻を押し流し、周囲の壁をも弾け飛ばした!

 吹き荒れる烈風と煙幕、そして全身をビリビリ貫く威圧に、気圧されながら苦い顔でウォタレンは剣で頭部を庇う。

 国王から発される圧倒的で膨大なエーテルの揺らめきに恐怖すら覚える。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!



 激しくなっていく地響きに、王城にいる人々は驚き戸惑っていく。


「なっ、何だっ!!?」

「まさか……、もう不死鳥がっ!?」


 魔道士(マジシャン)たちは不死鳥が迫ってきたかと焦ったが、発生源が王城の上部だと察知(サーチ)システムで知る。一体何が、と焦燥(しょうそう)していく。



「この愚か者めが!! 跡形もなく消し飛べいッ!!」


 悪鬼のような形相の国王は激昂しながら床を爆発させて、猛スピードでウォタレンへ飛びかかる!!

 破片を押し流す凄まじい烈風を引き連れながら国王は得物を振るう!!


 それに対し、ウォタレンはカッと鋭い眼光を見せた!


 ドギャアッ!!

あとがき雑談w


マメード姫「なんで父上とバカタレンがケンカしてんの~??」

大精霊ピョタ「モニターからはあまり声を拾えないようですや。大体察するやけど」

マメード「まぁ、どっちも自己チューだから不思議でもないけどねー」

ピョタ「ほーん」


 ピョタは思った。

 マメードはまだまだ13歳……。ウォタレンは37歳。

 姫の護衛に行き着く頃のウォタレンはとっくに腐っていた。だからそれ以前の彼を知らない。

 悪いイメージしかないのは仕方のないものである、と。


ピョタ(実は純粋だった頃があっただなんて、言っても信じないだろうやー)

マメード「???」



 次話『国王の威力値は54万3000です! 41万のウォタレンより強いです!』

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