90話「終焉迫る火の国! 託された魔法炉!」
火のルビレッド王国 vs 大厄災の不死鳥デマイズ!
灼熱燃え盛る両翼を羽ばたかせ、優雅に空を舞う不死鳥!
そして威圧だけで、世界一の山をも覆い尽くす灼熱の火炎地獄の錯覚! 何もできない人間はその威圧に耐え切れず苦しみもがきながら絶命していく!
「来たなァ!!」
赤髪パンチパーマで褐色肌の大柄な体格の女勇者。大胆不敵な態度。露出度の高い服で大きい胸と尻が目立つ。炎の模様の赤いマントが風に揺らめく。
そんな“火勇の守護士”ゴーファドは大剣である聖剣ガクラクで構える!
《ほう! 無意味に強気な小娘よな……。それでどう愉しませてくれる?》
「ほざけッ!! 女傑を舐めるなよ! 今日が貴様の命日だッ!」
ゴーファドは燃え上がるようなフォースを噴き上げ、同時に掲げた聖剣から真紅の刀身を象るフォースが徐々に巨大化していって天を衝くかのような大きさへ変貌!
聖剣が振り下ろされるに従い、巨大なフォースの刀身が不死鳥へ強襲ッ!!
「全てを断罪せよ!! 絶天の巨斬刀ッ!!!」
ズガアアァァァァァンッ!!!
不死鳥に炸裂し、天地震わせる衝撃波が荒れ狂う!
これが“火勇の守護士”としての戦闘力! そしてゴーファドの真の実力!!
「続きます!!」「支援する!」
メガネをかけた黒髪ロングの女魔道士のクーレロは巨大な氷塊の『衛星』をズゥンと重々しく浮かす。
桃色の髪の毛でロールを巻いているロリっぽいマブポルトは本を広げて、魔法陣を足元から展開して、クーレロの巨大な氷塊をそのまま『分裂』で五個に増やす。
「氷塊五連撃ヒェタワーズ!!」
クーレロが右手を振り下ろし、轟音と共に射出された氷塊群が不死鳥へ殺到!
炸裂して吹雪の爆発が巻き起こって氷結が覆い尽くさんとする!!
《おお……、心地よい……! 実に涼しいおもてなしぞ!》
今度はスゴエヴォラがハンマーを振り下ろし、それを巨大にした残像がドン、と天から降らせる!!
不死鳥の胸の両眼が見開き《おお! 面白いショーだ!》と歓喜。
「ワイルド・ギガントプレス────ッ!!!」
ズガァァァン!!
そのまま大地を穿つかのように叩き潰し、強烈な地響きと共に飛沫を高々と噴き上げていく!
ゴーファドが「行くぞ!!」とフォースを纏って高速で飛び出して、再び巨大な刀身を象って振り下ろす!!
スゴエヴォラもそれに続き、クーレロとマブポルトが魔法を唱えていく!
バゴガガアアアアアアアアンッ!!!
それを王城のベランダから一人の女王が悲しげな面持ちで見守っていた。
「……頼みましたよ」
女王は回想する────────────…………。
────王城内部の地下に無機質な広大なフロアがあった。
複雑な魔法陣が床に敷かれていて、中心に装飾を拵えた台。その上の天井にも逆さまの台があって、間で浮いている巨大な真紅の水晶玉。
その水晶玉は内部から光を発していて、放射状に閃光が漏れている。
「……恐らく“火勇の守護士”ゴーファドは聞く耳を持たないでしょう」
煌びやかなティアラと首飾りと白いドレスで飾る、凛とした女性が端麗な顔で目の前の二人に告げていた。
彼女こそルビレッドを治める最高権力者である女王だ。
「……アリシャス女王様!」
「で、重要な話というのは────」
三角帽子、装飾が施された優美なローブの、メガネをかけた黒髪ロングの女魔道士“叡智の大魔道士”クーレロ。
小柄なナリで大人びた女性。桃色の髪の毛でロールを巻いている。ロリっぽい風貌で、本を抱え持つ“氷震の策士”マブポルト。
この両名が女王へ跪いていた。
「予てより竜族と妖精族の二人に信頼を寄せる故、極秘任務を与えたい」
「それは……」「何ですの?」
アリシャス女王は両腕を挙げて、呪文を唱えていく。
それに応えた巨大な水晶玉は眩い光を放つと徐々に収縮していって、片手に収まるくらいの宝珠になった。
「この水晶魔法炉を、光のライトミア王国へ託して欲しい!」
女王の手から放たれるようにフワフワ浮いて、二人の前へ移動していく。
クーレロはそれを手にする。女王の意思で王城から切り離されたのだ。それを察して大事そうに両手で抱え持つ。
マブポルトは神妙に見つめる。
「この王城に残した魔法力で囮くらいにはなるでしょう。
そしてこの国はもう終わりです。誠に残念ながら、悪しき習わしに取り憑かれた国にふさわしい末路とも言えるのでしょうか。今になって頑なな人間による業の深さを噛み締められます」
「女王様…………」
クーレロとマブポルトは、切なげな女王様の心情を察して悲しげな顔を見せる。
普段は民衆や騎士たちを前に毅然と振舞っているのが当たり前だっただけに、初めて見せる態度で、この国の最期を悟ったんだと汲み取れた。
「人間を止めてしまってもなお、こんな国に最後まで奉仕してくださってありがとうございます」
なんと女王が頭を下げて、惜しみない感謝をあらわにした。
気分が沈むクーレロとマブポルトに構わず、女王は「さぁ、お行きなさい! 我が国の最後の希望よ……」と儚げに微笑んだ。
「……はい!」
クーレロは足元から水色に灯る花畑を広げていって、黒髪を水色に染め、目の虹彩に五弁の花模様が浮かぶ。背中からは水色のグラデーションの羽が三対と浮き出す。
凄まじいフォースを内包し、毅然とした表情を見せた。
「この“水蓮の妖精王”クーレロ!」
ロリっぽいマブポルトは全身を白く濃密度のフォースの衣を纏い、頭上からツノを象り、尻からは尻尾を象り、背中からは両翼を広げた。
瞳の瞳孔が縦筋になり、牙が生えたりなど彼女自身の身体にも若干変化を及ぼす。
荒々しく烈風が周囲に吹き荒れていく。
「この“白嵐の風竜王”マブポルト!」
二人揃ってペコリと丁重に頭を下げ、託された使命を胸に刻み!
「「この魔法炉を、必ずや光のライトミア王国へ届けて見せます!」」
「はい! よろしくお願いします! 竜王さま! 妖精王さま!」
女王も種族的地位を理解し、敬意を払うべき頭を深々と下げた。
「……でも! 本当にそれでいいんですか?」
「できれば一緒に? アリシャス女王様?」
女王は首を振り「火の国の忌まわしき風習に幕を下ろすべき、最後の女王として責任を果たせねばなりません!」ときっぱり断った。
男を奴隷まがいに扱い女を輝かせるという不平等な社会が、未来への道を阻害しているのを彼女は憂いていた。
貴婦人や女傑こそが偉い、だなんて驕っているにもほどがある。
この国に限ればいいが、国際へ交流するにあたって障害となる。男を蔑視する風習は国際の反発を招きかねない。
だからこの代でもって終わらせねばならない…………。
「そうする事で“男女が愛し合える自由”を、未来のみんなに与えたいのです」
もう覚悟は決めている、と強い意志が伝わってくる。
これで過去の罪を精算しようと女王様は命を賭しているのだ。そして!
「あなたたちはもう自由です! これからの未来を、自分の為に生きてください!」
温かい涙が頬を伝い、顎から滴り落ちていく……。
嗚咽したいのを堪えて、最後まで毅然とあるべきと女王の矜持でもって見送る姿勢だ。
それを察してクーレロとマブポルトは頷き合い、女王様へ真っ直ぐな目で向き合う。
「……では、私たちは行きます!」「いってきます! 女王様!」
「いってらっしゃい!」
二人は左右対称のように片手を差し出すと、間に黒い渦が拡大していく。
その時空間魔法の渦は、名残惜しそうな寂しげな目を見せる二人を吸い込むと収縮して消えていった。ズズッ!
後は何もなかったかのように静けさを取り戻した…………。
「さようなら…………。クーレロ、マブポルト………………」
堪えきれず肩を度々竦ませながら大粒の涙を溢し、床に幾度なく滴り落ちていく。
──そう思い返して涙する女王に見守られながら、勇者たちは奮闘していた。
「女傑の誇りでもって、この国を守る!! みんな来い!」
「はい!」「はい」「おう!」
最期まで戦い抜こうとゴーファドが剣を掲げ、それに追従するクーレロとマブポルトとスゴエヴォラ。
しかし事情に薄々気付いていたのはスゴエヴォラ。
一緒にいるクーレロとマブポルトは『分霊』による分身でしかないと……。
いまだ堪えていない不死鳥が翼を踊らせて襲いかかってくる。
「マジ、囮とか勘弁なんだケド」
自嘲するスゴエヴォラを閃光が覆っていく……。
ゴウッ…………!!
勇者たちもろとも国は無残にも無慈悲な灼熱に呑み込まれる。轟々と巨大な火柱を噴き上げて、火の国の歴史に幕を下ろした。
世界一高い山をも呑んで巨大な火柱はしばらく天高く昇り続けていた……。
悲しく儚げに散った火の粉が四方八方へと遠く遠く舞っていく。
光のライトミア王城、そしてオルキガ王を前にクーレロとマブポルトは強い意志を窺わせる顔で、魔法炉を差し出した。それは燃えるような真紅の水晶玉……。
「……我が火のルビレッド王国を支えてきた遺産を、光の国へ託します!」
「承知した。その方の想い、しかと受け取った」
オルキガは労いながら、魔法炉を手にしてズッシリ感じる重みを噛み締める。
真紅に輝き続ける火の国の水晶魔法炉……。
それは古い風習に囚われ、深い業を背負い、忌まわしい歴史を引きずり、それでも明るい未来へ繋げたいと足掻いた者たちの想いが込められているかのようだ。
悪い風習と分かりながらも守るべきと聖剣を振るったゴーファド。
業の深い歴史に囚われながら王族として振舞ってきたアリシャス女王様。
そんな彼女らの想いを背負って生き延びたクーレロとマブポルトの両名。
まるでその火の国の人々の生き様が垣間見えるような輝きだった……。
「火の国の代表として、よくぞ届けてくれた。大変ご苦労であった。そして辛かったであろう。……しばしゆるりと休むといい」
「はい!」「……は!」
涙が溢れるクーレロとマブポルトは顔を隠すように頭を下げ、悲哀の水粒が床へ滴り落ちた。
あとがき雑談w
クンコバ皇帝&アリュール&ロゼアット皇帝&ボゲー(白目)
ゴーファド「……なんでスゴエしかいないんだい?」
スゴエヴォラ「こっちも聞きたいんだケド?」
アリシャス女王「……ヨシ!(ぼそ)」
クーレロ、マブポルト、あとは頼みましたよ……。
次話『水のブルークア王国に異変が!? ウォタレンの変貌!』




