89話「無慈悲なる灼熱地獄! 不死鳥の蹂躙!」
灼熱の両翼を広げ、胸元の冷徹な顔の笑みと共に双眸が煌く。
《もう良い下がれ!! 我は『大厄災の不死鳥デマイズ』なるぞ!!》
無慈悲な閃光がパァンと四方八方へと弾け、囲んでいた幾万もの大勢の竜族を光の彼方へ消し去った!
竜を束ねるバルディマスすら唖然としたまま溢れる光に呑まれた!
ゴッッ…………!!!
下層地殻は超高熱プラズマに蹂躙され、まるで地表は太陽のように眩く轟々猛る灼熱地獄と化し、更に爆心地から宇宙へと巨大な火柱が噴き上げていった!
獰猛に燃え盛る火柱に、中層地殻や上層地殻にも激震が走り、目の辺りにした人々に圧倒的恐怖を与えた。
なおも全ての大陸はその余波で激しく震え続け、絶えず畏怖を与え続ける。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
暗雲を螺旋状に吹き飛ばしながら燃え盛る巨大な火柱が空へと伸びていく光景に、勇者たちも絶句した。
「な……なんだっ!? あれはっ!?」
「まさか……! 下層地殻からかっ!?」
セロスもラルゴも見開いて、昇っていく巨大な火柱に圧倒され続けた。
オルキガ王も曇った顔で冷や汗を垂らす。
「…………く! やはり王城合体を決断したのは正解か! だが問題は太刀打ちできるかどうか、だ!」
“疾風の勇者”バベナスも尖った鼻を上げて、冷や汗いっぱいに焦燥する。
既に合流を済ませたダイガ王国の“堅牢の勇者”マグアも「ヤレヤレだぜ……」と自嘲するしかない。
高熱が中層地殻にも広がっていって揺らめく陽炎が自然風景を覆う。
ニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキ!
妖しく輝く赤黒い結晶が猛スピードで大陸を覆い尽くさんと生え続けていく。
草木が剥がれ、湖や川を赤く染め、山脈を赤い針地獄へ変貌させる。ありとあらゆる生気を無尽蔵に吸い付くし、緑だった草木は茶色に萎びていって、緑の領域が徐々に狭まっていく。
逆に赤い霧のような瘴気が立ち込め始めていった。
それでも赤黒い結晶は加速度的に生え続ける。ニョニョニョニョ!!
「なんだとっ!? あの“厄災結晶”が生気を吸い取るだとっ!?」
水のブルークア王国のサギハン王は青ざめて震えていく。
同じく聞いていた“水勇の蒼騎士”ウォタレンは影で覆うほどの険しい顔で沈黙する。もはや逃げ場などどこにもないと途方もない絶望に内心抗っていた。
そして同時に愚策を取った目の前の国王に怨恨も募ってきていた。
緑のフォレスト王国は球状のバリアを張って、周囲の災厄結晶による侵食と瘴気を防いでいた。
同じくして巨大な火柱を目の辺りにした勇者ププラトは大精霊ドリアと月の魔女リルラーナに振り向く。
《正直言って勝てませんね……》
《ええ! 同意見だわ》
大精霊と月の魔女ですら首を振って観念した。ププラトは少し足を後退った。
切羽詰って、心音が高鳴っていくのが自分でも分かる。
どうすればいいのか苦慮していると、月の魔女が降りてきて肩に手を置いてくれる。
《“神聖樹の勇者”ププラト! この事を王に報告し、世界樹を擁する王城を光のライトミア王国へ動かしてくれ!》
ププラトは頷く。
すると直々に王が歩み寄ってきて「やはり……そうせざるを得んか」と厳かな顔で白い髭をさする。
もはや大精霊と月の魔女のお墨付きだ。動かざるを得ない。
ついに世界樹ごとフォレスト王城もゆっくりと大地を離れ、パラパラと土が散らばっていく。
火のルビレッド王国は未だ鎮座したまま!
「……他の国へ王城を合体する事などできはしない! 文化が違いすぎる!」
“火勇の守護士”ゴーファドはあくまで頑ななと首を振り、昔ながらの女尊男卑の文化を徹底的に通そうとする。
男どもを支柱として女性たちを輝かせるのが至極当然の摂理と、譲らない。
故に男どもが活躍する社会などあってはならない。
それは他の国と反発してトラブルが起きる事も容易。懸念される。
「例え、滅ぶとしても誇り高き女傑として、最後まで戦い通すまでだ!!」
分かっている。勝てない事は百も承知。だが、しかし、女傑の誇りを優先して戦いたい。
こんな古臭くて陳腐な文化であっても、そこで育まれた女として一線を越えてはならない。
……そんな頑固なゴーファドに、“叡智の大魔道士”クーレロと“氷震の策士”マブポルトは顔を見合わせた。
恐らく聞き入れてくれないと察してか、思念通話でコソコソ話し合っていた。
黙っていた“闇槌の戦姫”スゴエヴォラはなんとなく察する。
「ったく、コイツらめんどくさいんだケド」
太陽の表面のように燃え盛る地表を見下ろしながら、大厄災の不死鳥デマイズはその余韻に浸っていた。
《今までご苦労だった……。やがて世を永久の地獄へ塗り替えるまで、しばし羽を休めよ……。む?》
微かにいくつか動く影を見やり、それが生き残った竜族だと視認。必死に逃げ果せようと火炎に紛れて散開するように飛んでいる。
しかしデマイズは敢えて見逃した。
その竜族たちは加速して流星のように飛び去っていった。空間を飛び越えて幻獣界へ目指したのだと察した。
《さて、まずはこの星を鎮圧させてから……、粗相のないよう幻獣界へ訪問するとしようぞ》
薄ら笑みを浮かべ、両翼を羽ばたかせて上へと舞い上がっていく。
周囲の暗雲を蒸発させ続けて、目指すは中層地殻────……!
下層地殻からの熱波によって、未だ絶えず振動し続ける中層地殻の大陸。
膨らんできた眩さに人々は振り返った。美しく踊るように灼熱の両翼を羽ばたく不死鳥を目に焼き付き────────……!
「あ…………!」
不死鳥が通り過ぎただけで、いくつかの村と町が灼熱に吹き飛ぶ。
人間も、家の欠片も、城壁の強固なレンガも……、全て……無慈悲に跡形も無く………。
あるのは生まれ出た灼熱地獄が残るのみ……。
あちこち浮遊大陸に灼熱のラインを刻みながら、不死鳥は飛び回る。
通り過ぎるだけで数多くの国が次々と儚く消し飛び、数十万人もの命を貪った。
デマイズにとってはアリを踏みにじる以上に、小さく弱き命は無価値と蔑み、その存在自体が罪とさえ思う。その咎人が恐怖に震え、悲鳴を上げてくれるのが心地良い。
故に無慈悲に容赦なく踏み躙り続ける。
大厄災の不死鳥デマイズは、他に対する尊さも敬意も抱かず────、我こそが絶対の存在と唯我独尊と優越に浸るのみ────……。
タイガーラン帝国は事前に、不死鳥の進路を予測し、遠距離砲撃を開始。
不死鳥を追尾し、狙い違わず被弾させ、大爆発の連鎖が空に轟く。空が眩く輝くほどに爆炎が広がっていく。
その一つ一つが山を吹き飛ばすほどの超威力の魔法弾……。
まさに世界を支配するにふさわしいほどの軍事力。
「よし! よし! これで我が帝国の勝利────……」
「わはははははっ!! 見たか!! この世界一の軍事力を!!」
“土龍の勇者”アリュールは“地勢の覇剣者”クンコバ皇帝と共に歓喜に満ちた。
が、不死鳥は砲撃をものともせず無慈悲に帝国を通り過ぎ、灼熱に消し飛ばした。余りにも一瞬過ぎる決着。断末魔さえ上げる暇もなく、タイガーラン帝国はこの世から消えた。
「来たぞッ!! 全総力懸けて、あの大災厄を討ち取るのだッ!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおッ!!!」」」
ロゼアット帝国は必死に迎撃しようと遠距離砲撃を行い、空を覆い尽くすほどの爆炎が連鎖していくが、迫って来る不死鳥を止めるなど叶わず!
威圧によって、砂漠地帯を太陽の表面のように灼熱が覆い尽くしていく……。
それでも皇帝は不屈の意志でもって剣を掲げた。
「我ら人類の誇りでもって、この剣で未来を切り拓く!!! 余に続けいッ!!」
「ああ!! 最後までお供します!!」
「我らが人類万歳! 絶対にこの手で人類の未来を勝ち取ろうぞ!!」
皇帝ロゼアット及び、騎士たちや“砂漠の蛮勇者”ボゲーなどが凄まじいオーラを漲らせて、大地を揺るがすほど昂ぶらせていく。
オーラを纏って飛び出した皇帝に続いて、騎士たちと勇者たちが一斉に飛びかかる。
数千もの猛者が裂帛の気合いを吠えて、不死鳥へいざ!!
「「「「おおおおおおおあああああああああッッ!!!」」」」
そんなロゼアット帝国も、不死鳥が駆け抜けた後は灼熱の焦土────!
まるで帝国など始めっからなかったかのように跡形もなく消し飛んだ。無情にも彼らの信念と誇りを無碍に踏み躙るかのように…………。
たったの四日で中層地殻の浮遊大陸は、見るも無残に全て灼熱に包まれた。
部分部分、崩れて下の灼熱地獄へと落下していく。
《ハハハハハハ!! 美しい! 美しい! 灼熱彩る花畑! 風情があるわ!》
大厄災の不死鳥デマイズはご満悦とばかりに優雅に舞い上がり、次は上層地殻ヘヴンプレートへと目指していく。
あとがき雑談w
クンコバ皇帝「…………!(白目)」
“土龍の勇者”アリュール「…………!(白目)」
ロゼアット皇帝「…………!(白目)」
“砂漠の蛮勇者”ボゲー「…………!(白目)」
なんとか猫「戦力充実! 準備万端ヨシ! ……え? 終わった??(白目)」
次話『火のルビレッド王国と水のブルークア王国の決断……!』




