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88話「ついに始動! 大厄災の不死鳥!!」

 塔の魔女たちは、ナッセたちの様子を映しているモニターを眺めていた。


 秘術によってナッセとヤマミが存在ごと消えていくのを見て、サラカートは不機嫌な顔でソファーの上で(うずくま)っていた。その(かたわ)らでエムネは冷静に鎮座(ちんざ)


「あーもー! 腹立つぅー!」


 不満そうにサラカートはごろんと横になって不貞(ふて)(くさ)れる。


「……マロ姉さんのように自己犠牲も(いと)わない……。全く(はなは)だしいと私も思ってるよ……」

「そーそー! せめて自分を大切にしろってのー!」


「ほんとにね!」


 カツン、と足音が聞こえてサラカートとエムネはビクンと(すく)んで、ぎごちなく振り向く。

 普通なら誰も入れないはずの『星塔(スタワー)』へ入り込めた人が、ここへ歩んでくるのが見えた。そして絶句する。

 カツンカツンと足音を鳴らす主は、頭上がデフォルメなウニの形に逆立つ青い髪で漆黒のドレスを纏う女性。


「「ウニ魔女クッキー様!!?」」


 クッキーはしっとり微笑む。


「はろぉ。バカ弟子がお世話になってなにより」

「……! 弟子!!?」

城路(ジョウジ)ナッセが!?」


 サラカートとエムネは竦みながら、弟子という言葉に絶句。

 クッキーはおしとやかに「うん」と頷く。


「あれは私が教えたものではないけど、まさか自力で開発できるまでに成長するとは思わなかった。キッカケとして『刻印(エンチャント)』は教えてたけれど……」


 洗練されたような魔女の雰囲気と威圧……。

 サラカートもエムネも「格が違う」と思わせられるほど!


 かつて大昔に起きた、神々の世界『創世界』の滅亡の危機を見事収めた英雄。

 そして創世神たるアテナ様の実の娘。

 姉妹にあたる漆黒の魔女アリエルと同等の魔女。

 威力値では()(はか)れないほど卓越(たくえつ)した創作術は無敵とも、他の神々に言わしめるほどだ。


「なぜ……貴方(あなた)様が…………!?」

「ここに…………??」


 クッキーはニコリと「(となり)いい?」と聞き、二人はコクコク頷く。

 ソファーに(つつ)ましく腰掛けた。


「バカ弟子が心配になってきたからかな?」


 微笑んではいるものの物憂(ものう)げそうにモニターを見上げた。




 ────ナッセとヤマミがいなくなってから五日目!


 幻獣界の神殿の外殻部分での図書館。

 アクトとリョーコは気になって(おもむ)いていた。


「クックさーん!」

「おーう! 昼飯だァ……」


「もうそんな時間なんだ。アクトさん、リョーコさん、いつもありがとうねー」


 本を抱えながらクックさんが歩いてきて、笑顔を見せる。なんか大人びている。

 見た目は十歳にも満たない幼い女の子なのに、雰囲気は十五歳くらいだ。




 通路を歩いている途中で、クックさんが依然(いぜん)落ち着いているのがアクトとリョーコは気になった。


「クックさん、大丈夫? 無理してない?」

「あ、うん。リョーコさん、あたしなら大丈夫。あと七日だもん」


 にこりと振り向いてくるが、どことなく(さび)しげだ。

 アクトは危惧(きぐ)し始めていた。彼もまたナッセがいなくなった後の虚無を知っているからこそ察し取れる。

 側にいてくれた大切な人がいないと言うのは心に穴を開けるほど辛い。

 そしてクックさんは恐らく、自分の無力に(なげ)いて図書館に入り浸っていたのだろう。


 ワガママ言ってでもナッセとヤマミと一緒にいたかったという後悔。

 時は戻らない。いずれ七日後に会えるとはいえ、置いてかれた悲しみは後日にも響く。


「ナッセのバッカ野郎……! おめぇは子どもと(あなど)りすぎたァ……」

「ホントにね…………」


 子どもを持った事はない。けれど、子どもなりに寂しさに耐えているのが見えて分かる。


「うーん! そんな心配しすぎだよぅー」


 クックさんは困った顔で言ってくれるが、到底本心は隠しきれるものでもない。

 抱えている本だって高校生が勉強するレベルのものだって分かる。

 彼女も背伸びしてでも追いつきたいんだ……。


 一足先に行っちまったナッセとヤマミへ!



 すると、ドガアアアアンと轟音を立てて神殿が震えた!!

 慌てて走っていくと、とある部屋の前へたどり着いた。中で爆発が起きたかのように部屋からモワモワと煙が漏れている。床に、倒れた扉と破片が散乱。


「ジャオガさん!!」


 クックさんが入っていくのをアクトとリョーコも追いかけた。

 中に入ると、なんと大柄な魔族の男が仁王立ちしていた。前に見た魔王ジャオガとは色が違う。それに感じる威圧も段違いだ。

 ズン、と一歩踏み鳴らす。


 白い肌だったのが、真紅に染まっている。両こめかみと額の角がより仰々(ぎょうぎょう)しく大きくなっていた。

 目のフチに黒い墨が走っている。

 そして全体的にやや大きな体格。顔型もややゴツめになっている。


「おお! クックさん! ……あと人間どもか!」

「うわーおー! なんかすっごく強くなってるー!!」


 アクトはぽかんとした。


「く、クリムゾンジャオガ……!」


「一時的に大魔王級へと昇華できる秘術だ。己の潜在能力を更に引き出す為に長い期間瞑想(めいそう)した。リスクは厄介だが、今はそうも言ってられんからな」

「クリムゾンジャオガー!! カッコいいー!!」

「まぁ、その名前でいいなら構わんが」


 はしゃぐクックさんの頭を撫でるジャオガ。優しい笑みをこぼしている。

 しかしアクトたちへギロッと睨む。


「別にお前らと仲間になるつもりは毛頭(もうとう)ない。利害が一致したからこそ共闘しているのだと(きも)(めい)じておけ!」


 あくまで人族には敵対意識は忘れないと、突き付けている。

 アクトはニッと笑う。


「そうでなきゃァ……人族は調子に乗るからなァ! ナッセからあらかた聞いたからなァ?」

「今は共闘! 共・闘! わーってるから!」

「……ならいい」


 ジャオガにも、ナッセとヤマミの事を話した。

 驚くどころか「そこまでとはな……。やはり天才か」とむしろ嬉しそうだ。

 アクトとリョーコは妖精王って種族はもう人族とは違う世界なのだと、くっきり意識してきた。いずれ遠い世界に行ってしまうかもと薄々は勘づいていた。


 だが!


「ナッセは俺の親友であり相棒だからなァ……!」

「あったりまえでしょー! 例え妖精王だろーが関係ないんだから!」


 ジャオガは「いい仲間に恵まれたな」とフッと笑う。

 シュン、と体格が縮んで白くなって通常の形態へ戻って、アクトとリョーコは「うわぁ! 急に縮むな!」とビックリした。

 あとから聞くと、いつでもクリムゾンへ変身できるみたいだ。


 ジャオガは何も言わないが、聞かれても言わない。


 クリムゾンは一時的に大魔王級の絶大な力を発揮するが、それと引き換えに現存ボディの寿命を縮めてしまう。

 変身を繰り返せば繰り返すほどにな。

 魔族は死んでも、生きていた期間だけ時間をかけて復活できる。だが、このクリムゾン変身によって縮んだ分は適用されない。

 つまり、この変身が影響で早めに死んでも、それで復活までの期間が短くなるワケでもないのだ。


 魔族なら誰でもこの変身方法は知っている。

 やらないのは昇華する手間がかかるのとリスクが重いからが理由だろう。


「ナッセたちの未来を守る為かァ……! 殊勝(しゅしょう)なこったァ……」

「フン! 分かってるなら黙っておけ! ナッセとヤマミにもな!」


 ジャオガはぶてぶてしく部屋を出ていってしまう。

 リョーコは「全く無茶する人ばっかりー」とため息をつく。




 一方その頃、下層地殻ヘルズプレートでは……!?


 数万に及ぶ竜族が包囲し、塔のように高く積み重ねられた封印の魔法陣。

 絶えない地響きと共に超重力を受けたように(くぼ)んだ大地に張り付けられたままの不死鳥。以前は羽ばたいていた翼も大地に引っ付いている。今は身動きがとれない感じだ。

 印を結んだ両手を震わせながらバルディマスはハッとした!


 不死鳥が笑んでいるような気がしたからだ!


《────本当はもう破っても良かったのだが、あまりにも心地(ここち)良くてうとうと寝てしまったわ》


 響く声に、囲んでいた竜族に動揺が走っていく。

 拮抗していたと思っていたはずが、向こうにとっては何でもないと余裕ぶっていたのだ。

 信じられないとバルディマスは見開き、ドクンと衝撃を受けた。


 へたばっていた不死鳥は寝起きのようにむくりと身を起こし、その反動で上の積み重なった魔法陣が押し退けられていく。

 今度は背伸びするように両翼を左右に広げた。

 すると胸元が(うごめ)いて、鎖骨を(まゆ)として冷徹(れいてつ)な顔面が浮かぶ────……。


「ばッ、バカなッ!? さっきまで何だったというのだッ??」


《いや、一昨日(おととい)まではちゃんと拮抗(きっこう)していたぞ。喜べ。確かにこの負荷は恐るべきものであったぞ。それでもなお今日まで力を振り絞って封印を完遂(かんすい)せんと邁進(まいしん)するその姿勢や見事であったぞ》


 大地を震わせ続けたまま魔法陣が超強力な負荷をかけているにも関わらず、それをなんとも思わずに不死鳥は流暢(りゅうちょう)にしゃべってくる。

 徐々に滲み出る圧倒的な威圧にバルディマスは絶望を感じた。だが!


「なんとしても逃がすなッ!!」

「「おおおッ!!!」」


 更に死力を尽くそうと竜族は一斉に(りき)む!!


《今までご苦労であった……! そろそろ休暇(きゅうか)を取らせねばな》


 途端に、灼熱の大地が広がり陽炎(かげろう)が視界を覆い尽くす! プロミネンスのように炎がぼうぼうと地表から息吹く!

 全身を焼き尽くされるかと思うほどに圧倒的すぎる威圧で、そう錯覚(さっかく)された!!

 バルディマスは絶句し、畏怖し、絶望で胸中を覆われた。


《もう良い下がれ!! 我は『大厄災の不死鳥カタストロフィー・フェニックスデマイズ』なるぞ!!》


 カッと眼光を凝らすと、四方八方へと閃光がパァンと弾けた!

 すると包囲していた幾万(いくまん)もの竜族を(まばゆ)い光の彼方(かなた)へと消し飛ばした!


 ゴッッ…………!!!

あとがき雑談w


ジャオガ「とは言え、クリムゾンジャオガってのは何とかならんのか?」

アクト「あァ……。親しみあっていいじゃねェかァ」

リョーコ「うんうん! 色違いみたいなもんだしねー」


ジャオガ「ふざけるな!! 人族ども!」


クックさん「……嫌だった?」シュン!

ジャオガ「あ、いや……。そうじゃない。もうちっとマシな名前がいいなと」


 クックさんには甘いジャオガさんに、アクトとリョーコはジト目……。


クックさん「じゃー(スーパー)ジャオガさん!」

ジャオガ「えっ……??」

クックさん「だってナッセが自分のこと(スーパー)ナッセって言ってたよー? カッコイイって言ってたー!」


ジャオガ「ううむ。もっと良いのないか……?」(困惑)

クックさん「んー! デリシャスハイパージャオガさん! 邪王破壊神ジャオガさん! レッドテカテカキングジャオガさん! ゴージャスイチゴジャオガさん! どーれ??」


ジャオガ「……わかった。クリムゾンジャオガでいい」(諦念(ていねん)


 って事でよろしくぞ!



 次話『大厄災の不死鳥カタストロフィー・フェニックスデマイズによる蹂躙開始!! YABEEEEEE!!』

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