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87話「竜族の呪縛に抗う、最凶の大災厄!!」

 なんと下層地殻ヘルズプレートは未曾有(みぞう)の危機に(ひん)していた。

 魔境から出てこれないはずの深層部のラスボスが、外に出て暴れだそうとしてるらしかった。それを予見していた竜族たちが総出で複雑で強力な魔法陣を重ねて封印をしようとしていた。

 超重力をかけたかのように大地を陥没(かんぼつ)させ、不死鳥を(かたど)る大災厄を抑え付けていた。


「グオオオオオオオオオオオ!!」


 火の粉をまき散らしながら灼熱の大きな翼を羽ばたかせ、クチバシを開いて咆哮(ほうこう)

 美しくも恐ろしい大災厄の化身!

 吼えるだけで下層地殻は震え上がり、亀裂が走って次々噴火してしまうほど!


 マイシの保護者である“征閃の光竜王”バルディマスを中心に、数千もの竜族が封印の魔法陣をかけ続けていた。

 しかし封印するどころか、維持(いじ)するので精一杯。

 加えて、大災厄は更に力を増しているようだ。


「このままでは五日しか持ちませんっ!!」

「むうっ!」


 総攻撃は既に試した。ダメだったからこそ封印に(かじ)を取ったのだ。

 封印ならば威力値六〇〇万相当の負荷をかけられるのだ。しかしそれでさえ跳ね除けられそうで絶望的だ。


「例え威力値三〇〇万の猛者(もさ)が束になってさえ敵わんだろう!」

「これほどの大災厄を解き放っては、星の危機であろう!」

「なんとしても出すな!!」


 すると、向こうの空から大勢の竜族が羽ばたいてやってきていた。援軍だ。下層地殻は広いから時間差で竜族が集まるのに時間がかかっていた。

 様々な属性や、異なる竜種であるものの、この非常事態に竜族は一致した。


「我らも助太刀に入る!!」

「この封印式か!」

「世界最大級の強力な封印術! それを複数でもか!?」

「これより更に同じ封印式の魔法陣を重ねる!!」

「おお!!」


 ズン! と複数の魔法陣が連ねられて、大災厄ごと大地を更に陥没させた!


「グオオオオオオ!!」


 とは言えバルディマスは苦い顔のままだ。

 せいぜい持ちこたえる日数が増えただけだ。五日から十二日くらいに()びた程度。ただの時間稼ぎでしかない。

 これから加勢してくる竜族次第で封印までこぎつける事を期待するしかない。




 ────それをオレたちはマシュ様のいる部屋のモニターで観ていた。


 思わず震えてしまいそうなぐらい、想像を絶する大災厄。

 これまで戦ってきた魔境ラスボスとはケタ違いだ。確かにこれならマシュ様が「絶対勝てません」って言い切るのもムリもない。

 あと、引っ張ってきたティオス先輩も震えていた。


「さすがに……もうこれ以上の威力値は規格外だぞ……」

「ライトミア王国付近の魔境ボスは?」

「単純に目測すれば五三万。実態は一〇〇万相当。だが、不死鳥(コイツ)はきっと五〇〇万超えているぞ! と、とんでもねぇバケモン、この世に存在してんのかよって感じだ!」


 腰を抜かしたかへたり込む。

 息を飲んだ。ここまで高いとは想像以上だ。モニター越しだから分からない部分は多いけど、もはや手に負えないレベルだってのが分かる。

 そりゃ星消滅(きえ)るわ。


「くっ! バルディマスめ……! なにもかも言わないで勝手に背負い込みやがってし……!」


 マイシも悔しそうに震えている。


「じ、じゃあ……八日か!?」

「ダメよ! それじゃギリギリかもしれない! せめて一〇日以上じゃないと!」

「…………た、確かに!」


 ヤマミと話し合っていたら、アクトたちが怪訝(けげん)に「何の話だァ?」と聞いてきた。

 クックさんは不安そうな顔で見つめてくる。

 思わずクックさんを抱きしめて内心「すまねぇ! すまねぇ……!」と申し訳ない気持ちを沸かせた。


「お、おい? 一〇日以上って、何するつもりだよ?」


 戸惑うティオス先輩に「前に一回見せた妖精王になったオレたちの威力値どんくらい?」と聞く。


「あ、ああ……。二人とも魔界の魔境でレベルアップしてて通常は一四万、妖精王は四二万だったな? 連動(リンク)すれば約八四万か……?」

「ありがてぇ……そんだけ分かれば充分だ!」

「ど、どうも……。で、それが一〇日にどう関係が……??」


 さすがはスカウター先輩だ。経験かスキルかどっちか知らねーけど、大体あってると思う。二つの魔境を潜っただけあって精度は増してる。

 ヤマミと一緒に神妙な顔でアクトたちへ向き合う。


「……今からオレとヤマミは十二日ぐらい、()()()()()!」


 ザワッとアクトたちに動揺が走った。

 一体何の話か、全く見えていないだろう。当然だ。既にその魔法陣の構築図は決まっていたからだ。

 このままの戦力では絶対に勝てない。だからこそ別方面でなんとかできないかと探った。

 それで見つかったのがこの秘術……。まだ試してねぇけど。


「そんなのいやだぁー!! いなくならないでー!」


 飛び込んでしがみついてきたクックさんを抱いて立ち上がる。

 そして左腕に腰掛けさせて、同じ目線でクックさんを見つめ、精一杯に笑む。


「あたし嫌いになったの!?」

「そんなこたねぇ……。もちろん一緒に遊びたいさ。ずっとこれからも旅していきたいさ……」

「ナッセぇぇ…………」


 うるうる泣きそうなクックさん。見てて辛い。


「でも、放っておくと星が消滅(きえ)るんだ。リエーラ婆さんの家も、ライトミア王国も、何もかも……。それは嫌だろ?」

「うん……」

「だろー? オレもヤマミもクックさんが好きだし、一緒に旅したい。だから新しく作った秘術で戦いたいんだ!」


 クックさんの涙を優しく拭って、頬をさする。


「だから、十二日だけ! 十二日だけ我慢してくれ!」

「十二日…………?」

「ああ! 二週間ぐれぇだ! そっからあの大災厄をババーンってやっつけちまう! そしたらずっと一緒にいられるぞー!!」


 笑うのは苦手なんだけど、クックさんを安心させたくて笑ってみせる。

 クックさんは涙目で呆然……。


「あのロープスレイ星の各国を巡って、美味しい料理とか、珍しいお土産とか、一緒に楽しんでいく未来をオレはクックさんに与えたい! 頼む!」


 真剣に向き合って頼み込む。

 子どもだからこそ、希望あふれる未来を与えたい。これから明るい未来に目を輝かせてワクワクさせたい。それだけは守りたい。

 その想いが届いて欲しい、と目を合わせて真摯(しんし)に訴える。


 クックさんは涙目で不満そうに口を(すぼ)める。

 ヤマミが歩み寄ってきて、オレが抱きかかえているクックさんの頭を撫でる。


「たった十二日だけだからね……?」

「十二日ながい……。いやだ。あたしも一緒に闘う……」

「旅行の時、欲しいモノ買ってあげないわよ?」

「うぃい……」


 クックさんをオレたちの未知の秘術に巻き込めねぇ……。

 どんなリスクがあるかも分からない。実験なしの本番ぶっつけ。十二日後にいきなし飛ぶから何が起きているかも分からないから怖い。

 いざ戦おうとしたら、既に星がなくなってるって可能性も高い。


 黙ってしまうけど、万が一の時はアクトたちと一緒に未来へ歩ませたい。


「絶対……! 絶対だよ? 十二日がんばってガマンする! 終わったら……旅行する! ヤマとナッセと一緒に!」

「ああ! ぜってー約束する!」

「もちろん! 絶対帰ってくる!」


 幼いながらも決意してくれたクックさんをオレとヤマミで抱きしめる。


 オレはクックさんの事を分かってない! 全然分かってない!

 きっと幼いなりに現実と向き合っているんだろう!

 それでも大切な人と一緒にいたいと切望(せつぼう)している! でも、これから知っていきたい!!


 だから…………!


「絶対! オレたちは勝つぞぉ────ッ!!」

「まだまだ、これからなんだから────ッ!!」

「か、勝つんだ────!!」


 三人で拳を突き上げて叫ぶ!

 絶対に明るい未来を勝ち取るんだ、とオレたちは意気込んだ!!


 クックさんを床に降ろして、アクトたちへ歩ませた。ほんのり寂しげに振り向いてくる。


「アクト! リョーコ! 後は頼んだ!」

「あァ……」


 リョーコは元気良い笑顔でガッツポーズを取る。


「心配しないで、クックさんはあたしたちで育てるから!」

「あァ! 今からこっちで世話すっから心配いらねェ! だが、信じてるぜ? 帰ってこいよなァ?」


 アクトも察した。だからリョーコと一緒に覚悟したのだと……。

 そう「面倒を見る」ではなく「育てる」と言い換えているからだ。一抹(いちまつ)の不安は誰もが感じている。何が起こるか分からないけど、子どもの未来だけは守りたいと思っている。

 マイシは「どいつもこいつも勝手ばっかだし!」とそっぽ向く。


「お、おい!? オレも手伝える事ねぇか?」


 付き合って、まだ日が浅いからかティオス先輩がおずおずと聞いてくる。


「……時空間の()へ入れる妖精王じゃないとできねー秘術だしな」

「高次元に干渉(かんしょう)して十二日分の私たちを()()するからね」


 ティオス先輩は「えっ?」と素っ頓狂になる。

 腕を組んだままマイシは「そういう事かし……」と眉を潜めて舌打ち。


 足元に花畑を広げ、背中から羽を展開し、オレとヤマミは揃って妖精王化。花吹雪がブワッと舞い散っていく。

 手を繋ぎ合い、それぞれ片方の手を床に向けて足元に魔法陣を血で描く。それは拡大していって更に組み立てられていく。

 あそこをこーして、これをこーして、今もなおも構築図に書き込んでいく。

 ヤマミがこうした方がいいという部分も入れて、今ここで完成させた。


「行くぞ!! 新秘術『タイムマジック・インテグレーション』発動ッ!!」


 魔法陣が輝き出して、溢れた光の帯が上昇していく。

 オレは「心配しないで」って笑顔でクックさんへ手を振り「またね」と!


 星屑を散らしながらオレたちは魔法陣と共に消えていった──────……!



 鎮座していたマシュ様は「勝手に話を進ませないでください……。私、(すね)ねちゃいますよ……」とボソッと。

あとがき雑談w


 無事避難した水の国のマメード姫と大精霊ピョタは二人きりで、ちょっと小さなコロニーにいた。

 閉塞感のある空間でマメード姫はそわそわ……。


マメード「質素な食べ物しかないし、なんなのよー!」

ピョタ「ナッセさまは、ここにここにいるよー」

マメード「……会えないの?」


ピョタ「ナッセさまは妖精王だからやね。マメードちゃんは人間なので神殿へ入れませんや」

マメード「えー! 人魚だもんっ!」←いつの間にかフランクになってるw


 水のブルークア王国の人間は下半身を魚に変態させて人魚になれる種族能力を持つ。

 それは大昔から代々遺伝された特殊能力。

 魔法力を使って高速変態させている所を見るに、かつては『血脈の覚醒者(ブラッド・アウェイク)』の生態能力だったと思われる。


 実は『血脈の覚醒者(ブラッド・アウェイク)』は遺伝する。


 ただし、遺伝するとオリジナルより劣った状態になる。

 それは発現者が受けたトラウマを、子孫は持っていないからだと一説もある。

 劣化版でも修練によって精度や威力を増す事こそあれ、オリジナルが持っていた反則級(チート)は再現不可能。


ピョタ「そういうワケで、普通の人間扱いなんすよな」

マメード「むぅ……納得いかないぃ……」



 次話『呪縛敗れる!! 大災厄大暴れ!! 星の危機!』

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