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86話「ナッセとヤマミ喧嘩する!?」

 ────幻獣界。


 別名、宇宙の最果て。宇宙の外側の表面世界。(から)のように泡の雲海で包んでいる。そんな世界にも神殿と呼ばれる巨大な球状の浮遊建造物が悠然(ゆうぜん)と浮かぶ。

 知的生命体が存在する星の数だけ、神殿が存在しているのだと言う。

 オレたちはその中の一つ、ロープスレイ星担当のイリリス聖域地方の神殿に在留(ざいりゅう)していた。



 妖精王マシュ様の絶対的とも言える予知夢で星が消滅(きえ)ると聞かされて、愕然(がくぜん)させられた。

 せっかくの異世界冒険も、余計な大災厄によって台無しにされようとしている。それに我慢できず、滅びの結果を(くつがえ)そうと神殿内の図書館で古今東西の知識を吸収する事に執心したぞ。

 そして導き出された『解き方』として、新しい魔法陣の構築まで行き着いたが……。


「だから、あんたはいい加減なのよ!」

「そっちこそギッチギチ詰め込んでばかりっ! 頭固いぞーっ!」

「でもこうしないと危ないからっ!」


 広いテーブルを手でバンと叩き、オレとヤマミは広げた魔法陣の構築図について口論しているぞ。

 お互い違う生き物ゆえ、思考が一致するとは限らない。

 すれ違ったり、勘違いしたり、価値観が違ったり、思い通りにならなかったりで、激情に駆られて怒り散らす。

 その頃になると引っ込みがつかなくなり、余計険悪になっていく。

 それぞれ相手の悪い事ばかり気になって嫌悪を(もよお)してしまう。だから!


「運命の鍵!」

「魔王化!」


 オレたちは人差し指を立てて掛け合った!


 しばし睨み合う形で沈黙。激情に(とら)われていたはずのオレたちは徐々に気持ちが落ち着いていく。

 オレはふうと息をつく。

 ヤマミも同じく気分が落ち着いていくのが見えて分かる。


「これは置いときましょ」「だなぞ」



 ────そうやってオレたちはケンカを収めていた。

 ずっと仲睦(なかむつ)まじく全くケンカがなかったワケじゃない。今まで幾度もなく意見の相違(そうい)だけでも言い争う事もあった。

 だが、その度にある出来事を思い返す()()()()()を二つ掛け合う。


『運命の鍵』『魔王化』


 それには深い理由(ワケ)があった。

 まだ地球で並行世界(パラレルワールド)を飛び越えていた頃の話────……。


 オレは運命の鍵で転生を繰り返したり願いを叶えたりする内に因子(いんし)が無限に貯まり続けて、限界を迎えた時に魔王化してしまう状態にあった。もちろん自分自身(オレ)がその事実を知れば、どうしようもない絶望に()ちても魔王化する。

 だからヤマミはその真実を打ち明けられず、ただ「運命の鍵を使うな」を強要するしかなかった。それでオレは嫌われたかと勘違いして彼女を拒絶してしまった。

 それで険悪になって離れ離れになった時期があった。


 ついに運命の鍵を使う事になって魔王化しそうになった時に、その真実を知った。

 駆けつけてきたヤマミが涙を流しながら、魔王化を防ぐ為に一番愛しいオレを殺さぜるを得なかった。すれ違ったがゆえに起きた悲劇────……。


 またそうならない為にオレたちは、ケンカするたびに掛け合う事にした。


 激情に駆られていると自分では止められず、周りが見えなくなって大事な物を見失ってしまう。だからその激情すら上回る記憶回帰で止めてきたのだ。

 その時に味わった悲劇の記憶を思い返して、後悔しまいと激情を(しず)めていく。


 それがオレとヤマミへの教訓でもあった…………。



「ヤマ……ナッセ……。まだ?」


 なんと、しおらしくクックさんが図書館の出入り口から歩いてきた。


「今はまだ────」「待って! 息抜き必要じゃないかな?」


 ヤマミはいつも効率よく詰め詰めで行動する傾向が多く、オレは適当でいい加減。

 先ほどの掛け合いもあってか、(さえぎ)っても抗議してこなかった。

 そう、このようにオレとヤマミは折り合って気持ちを収める事ができた。


 しかし……!


「いつも図書館ばっかり! つまんなーい!」

「すまん……。星が消え消滅(きえ)たら、一緒に旅する事もできねーからな。寂しかったか?」


 クックさんは「うん!」と頷いてきた。

 この数日間、全然構わなかったもんなぁ。寝るのもここだったし。ほぼアクトとリョーコに任してたけど、それでも寂しいんかな。

 やはり子どもというのは分からない事が多い……。


「うにゅう……、遊んでぇ……」


 オレはクックさんの頭を撫でる。よしよし。

 子育てした事がないから分からないけど、親子ってこんな感じなのかな?


「オレから言い出しててすまんけど、ちょい休もう?」


 ヤマミへそう振り向くと、引き締めていた顔を(ゆる)ませてきて無言で頷いてくる。

 掛け合いしなければ、きっと「星が消滅(きえ)るのにノンキにしてる場合?」「もう猶予(ゆうよ)ないでしょ!」「時間が惜しいから、クックさんはアクトたちに遊んでもらいなさい!」ってなっていただろう。

 オレはそれに反発してたと思う。余裕がなくてキツいし。


 クックさんを「よっ」と肩車して図書館を出る。

 ずっと本読んだり魔法陣考えたりでは息がつまるし、どこか息抜きがしたかった。


「私も付き合うわ」


 ヤマミも「ここに残る」とは言わず、こちらの調子に合わせてくれた。




 土星のような球状の神殿内は空洞になっていて、大樹が(そび)えるドンブリ型浮遊盤がいくつも浮いている。小さい木の茂みや草花、更に小さな湖など瑞々(みずみず)しい。

 その中で平らなだけのドンブリ型浮遊盤もあって、修行をするに最適な広場にもなっていた。


「うおっ! ここにも仮想対戦(バーチャルサバイバル)システムが!?」


 クックさんを肩車したままヤマミと一緒に着くと、アクトが振り向いて「おう!」と手を振ってくる。

 オレたちは目の前の円柱サーバーといくつかの魔法陣に驚いていた。

 更に上部の半透明ウィンドウによるモニターにはドカンドカン爆裂する激戦が映っていた。


「かああああああああッ!!」

「せいやーッ!!」


 なんとマイシとリョーコがフォースを纏い縦横無尽に飛び回りながら、互角に得物を打ち合っていた!

 かたや灼熱の火竜王のマイシ、かたや日章紋(にっしょうもん)のリョーコ・サン。

 裂帛の気合いが(ほとばし)るほどに手加減無用の死闘だ。


 オレは正直驚いた。


 リョーコは日章紋を発現できるスーパー日本人と垣間(かいま)見てたけど、まさかマジで本気のマイシと互角とは!

 っていうかマイシは何故ここに?


「あァ……、マイシか? アイツも避難されたんだァ。不本意らしいがなァ」

「そう。来たのね」

「そーいや“征閃の光竜王”バルディマスさんと一緒に竜の国にいたんだったな」


 これも魔界の出来事と含めてリョーコたちに白状してる。

 マイシもまた人族の世界にいてはいけないので、竜族に連れられて人外としての教養を身に付けさせられていた。

 オレも魔王ジャオガさんと一緒に討議をしてた時に会って知った。


「そのバルディマスって竜の王様ァ……、マイシを逃がしてから例の大災厄を抑え込む為に頑張ってるらしいなァ」

「え? ちょっと!? 大災厄?? どういう事?」


 ヤマミが驚いた顔で食ってかかる。




 ────ロースプレイ星、下層地殻ヘルズプレート!


 広大な海と広々した大陸が特徴の地殻。されど一番下だけあって、上空の何重もの雲の層と浮遊大陸によって太陽の光が届きにくいゆえに極寒地帯となっている。

 真昼でさえ、太陽が沈んだ後の明るさしかない。(まれ)に何重もの雲が晴れて垣間見える青空から暖かい日差(ひざ)しが来る事もある。


 基本、凍えているから海は海氷で覆われ、大陸は氷山と雪原に包まれている。

 しかし活火山も多く、その付近では雪が積もらず荒野が広がっているものの高温の為に草木も生えず、溶岩流が流れ出してきたり地震がきたりと劣悪な環境には変わらない。

 たまにオアシスみたいな(わず)かな緑が付近で()(しげ)る湖もあったりする。


 とはいえ、人族はほとんどいない。ほぼ竜族の領地だ。



 だが! そんな下層地殻に恐るべき大災厄が(うごめ)いていた!!


「グオオオオオオオオオオオオッ!!」


 全てを震わせる恐ろしい咆哮(ほうこう)で、大陸のあちこちに亀裂が広がり、そこから活火山とは無関係に、次々とマグマを噴出していく。

 その為、温度が上昇して氷河地帯が徐々に(せば)まっていく。そして蒸発していく大量の水分によって上空へ巻き上げられて雲の層を厚くしていった。

 なおも高熱は増していく。



「踏ん張れ!! なんとしてもコイツを出すな!!」

「はい!」

「ハッ!」

「命に代えても!!」

「おお!」

「ふんッ!」


 黄金竜こと“征閃の光竜王”バルディマスが印を組んで吠えた! それに応える竜族たち!


 下層地殻中から集まってきた数千もの大勢の竜族が包囲して、体を震わせるくらい一斉に渾身の力を絞り出していた!

 超巨大で複雑な魔法陣が何重も重ねられて大地が(くぼ)んでいる先に、大災厄と呼ばれる()()()が火の粉を散らしながらもがいていた!!


「グオオオオオオオオ……!!」


 それは(まばゆ)い灼熱の不死鳥のようで、クチバシを広げ、燃え盛る巨大な翼を羽ばたかせている!

 しかし何重もの強力な魔法陣がしっかり呪縛して、一歩たりとも動かせさせない!


 バルディマスは汗を垂らしながら、印を結んだまま手を震わせている。


「なんて……力だ! 完全に封印しきれぬとはッ!!」


 封印しきって小さな『魔封像』に変換できれば、千年以上解かれる事はない。

 そしたら祭壇(さいだん)に収めて定期的に儀式などを行って、封印期間を伸ばしていく。その手はずが、思ったより難航(なんこう)してて苦心(くしん)している。

 バルディマスは「ぐぐ……!」と苦い顔をする。


 この封印力を威力値に換算すれば約六〇〇万以上に達するはずだ。なのに……。


「グオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!」


 再びの咆哮! その度に大気と大地が震え、あちこちで噴火を起こす!

 以前より規模を増してきている!

 恐らく上の地殻にも振動が届いているのかもしれない!


「厄介だ……! 徐々に力を増していくというのはッ!」


 ググッと、次第に呪縛を跳ね除けられる勢いに(あせ)りを(つの)らしていく!

あとがき雑談w


 ────日輪のファイファドラ竜国。

 保護者である“征閃の光竜王”バルディマスたちが治める竜の国。


バルディマス「マイシ、連絡が来た。星ヤバいので幻獣界へ避難してくれ」

マイシ「はぁ!? 逃げろっていうかし! あたしも戦うぞし!!」

バルディマス「やれ」


竜族A「二人がかりで失礼しまーす!」

竜族B「はい! 封印術ー!」


 なんと魔法陣がマイシを包み込んで小さな『魔封像』へ変換された。カキーン!

 それはマイシをデフォルメにした像だぞ。

 そのまま幻獣界へ郵送されて、自動的に解かれた。


怒りマイシ「く……くそったれし……!!」


 その鬱憤をリョーコが引き受けて、仮想対戦(バーチャルサバイバル)で戦ったとか!



 次話『竜族のみなさん頑張って封印したいんだけどヤバい! なんとかして!』

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