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85話「次々と合併! ドッキング王城!」

 風が突き抜けていくヒュング王城の最上階。

 その謁見の間にて、勇者バベナスが王を前に(ひざまず)いていた。


「“風間の王者”ナムベジ王様……。この王城を、ライトミア王国へ移動させる事を許可していただきたい」


 ナムベジ王は「そうせざるを得ない事態か?」と問うと、バベナスは頷く。

 王の側近で控える六人の騎士はざわめく。

 なぜなら勇者バベナスの感知能力は極めて高く、どれだけ危険かを察知しやすい。その能力を知っているからこそ動揺をしているのだ。


「かつてない大災厄……。我々と王城だけでは正直敵いません……。無駄に命を散らすより、ライトミア王国と併合して戦力をアップさせる方が生存率が上がります!」

「お主の事だ。そう言えばその通りであろう……」

「恐縮です」


 王も、勇者バベナスの忠誠心を誰よりも買っている。

 愛国心が高く、その為にならば危険をかえりみず双剣を振るう男。それでいて人格者。仲間からの信頼も厚い。

 勇者として戦い続けて二十年以上……。

 その経験に裏打ちされた能力は信頼するに値する。


「分かった。では、連絡した後に数百年ぶりに王城を起動させ、ライトミア王城へドッキングを行う!」

「ハハッ!」


 こうして山頂に(そび)えていたヒュング王城は粉塵を巻き上げて、上昇していく。

 無人となった城下町を置いて悠然(ゆうぜん)と空へ飛び立つ。



 通路に等間隔で並ぶ窓の風景をバベナスは眺めていた。

 流れてゆく多くの雲。地平線が見えぬほど多くの雲が重なっていて、異常さを(かも)し出している。とてつもない異変が起きている(きざ)しだと察していた。


「バベナスさん。三日でライトミア王国へ着く算段ですね」

「……パックウリか!」


 振り向くと、明るい少年がやってきていた。


“暴風の猛獣”パックウリ。

 金髪のオールバック。幼い顔の丸い目が無垢っぽい。満面な笑顔が天真爛漫さを表している。

 黄色を上着として下の衣服は緑色。腰には剣とナイフを差している。


「ライトミア王国へ合併するとは思い切った事をしますね」


 なんと窓から降り立つ少女が、鳥のような爪をむきだしにした両足で、壁際の手すりに降り立つ。


「む! ソルマトか!?」

「へへーん!」


“天衝姫”ソルマト。

 銀髪のおかっぱの少女。青いラインが走った白い衣服。両腕には鳥の翼が同化している感じ。手と足は鳥のようなもので鋭い鉤爪(かぎづめ)がある。

 実は古来存在していたハーピィ族の末裔(まつえい)。幻獣界の純血と違い、世代を重ねながら色々な種族と交わってきた雑種。


「気を抜くな! これから大変な戦いになる。気を引き締めて欲しい」

「出たよ! カイロット!!」


“空の踊り姫”カイロット。

 黒髪ショートの女性。身軽な衣服で手足に金属の装飾品が装備されている。スレンダーな体型で引き締まってるのが窺える。

 真面目な性格でキリッとしている。


「……避難は済ませた以上、住民の方は大丈夫だろう。しかし幻獣界の王が滅多な事では避難勧告(かんこく)はしない。それは我々がベストを尽くしても敵わないからか?」

「ライトミア王国へと各国の城が集まってきてるらしいじゃないですか? それで敵わないとかありえないじゃないですか?」

「えー! うそー? 王城動かす前を前提に言ってんじゃないの?」

「各個で待ち構えた場合と、合併して待ち構えた場合と、どっちを指すか分からないのか?」


 バベナスは首を振る。


「結果がどうあれ、我々は勇者として退くワケにはいかん! それを見本として後続の者が切り開けられるようにな!」


 勇者バベナスは「他の勇気を奮わせる為に、己は退くべからず!」と信念を胸に、これまで戦ってきた。勝てば良いが、負けるとしても後続に勇気を与えて活路を見出させるのも勇者の使命と考える。

 居合わせた仲間は、バベナスの退かぬ信念に感化されて加わった者たちだ。


「最後まで付き合わせてもらうぞ!」

「そのつもりで残ったんだし!」「もっちろん~!」「委細(いさい)承知(しょうち)!」


 ────ヒュング王城もライトミア王国へ合流を果たした。




 一方、上層地殻の土のダイガ王国と中層地殻の大地のタイガーラン帝国は世界の危機を前に触発しようとしていた。

 上下という縦の距離はあるものの、位置的には近所だからだ。

 どちらも赤道付近に位置する。


《この期に及んで帝国に逆らうとはな!》

「これまで交流をしていたのは、主従関係だからではないのです! 各国との連携(れんけい)を絶やさない為に定期的に流通を(うなが)していたのですから」


 互い通信モニターで、ダイガ王国の王とタイガーラン帝国の皇帝がにらみ合っている状態だった。

 そして互いの勇者はもちろん、騎士たちも後方で控えつつ睨みを利かせている。


「我々は信頼を寄せるライトミア王国へ移動して災厄に対抗する所存(しょぞん)である。すでに連絡し、了解(りょうかい)してくれた」

《“温厚の地精王”コマ王……。やはり臆病の恥辱王という事か……》

「では話はこれで」


 皇帝の侮辱も気に留めず通信を切ろうと、魔道士(マジシャン)に合図を送ろうとする。


《無礼な!! この“地勢の覇剣者”クンコバ様の命令に従わぬなどと!》

「一方的に、こちらの王城をタイガーラン帝国へ合併せよと言われれば、ますます聞けませぬ」

《我が国力は世界一なのだぞ! 合併すれば後の未来に莫大な利益が転がり込む! 今こそ貴殿の最大のチャンスと言えるのだぞ!》

「……それを口実に取り込むのでしょうが!」

《後悔するぞ?》

「そもそも、そちらの城と接合できん」

《なら解体して技術をいただ……》


 構わずコマ王は通信を切れ、と合図してプツンと映像が途絶えた。


「こちらにも勇者念話でかかってきます。筆記用意」


 ドワーフみたいな小柄で太った少年の勇者マグアは肩を(すく)めながら、仲間の魔道士(マジシャン)を呼び出す。

 すると念話が放送されるように部屋に響いてきた。


《全くだ! 全く無謀な事してくれやがったな! まぁいいよ? 今後、俺は俺はな、裏切り者は許さねーんからな?》


 向こうの勇者アリュールの声だ。


「災厄に勝てる見込みが?」

《あったりめーよ! 俺が、俺がいる上に、秘密兵器があるんだからな! 魔導粒子砲で災厄など消し飛ばすぜ? 次はあんたら裏切り王国の番よ?》

「ヤレヤレだぜ! それじゃ合併なんぞ要らないだろ? 精々頑張ってな」

《お前、お前よ? そんな生意気なクチ聞いていいよ? ライトミア王国とどっちに付くべきか、後で思い知っても知らねーからな?》


「はいはい。で、帝国の威力値いくつなの? まさか五〇万とか~?」

《馬鹿か? 馬鹿言えよ? 聞いて驚け! 四〇〇万以上だよ?》

「うわ~凄いね~敵わないね~。それじゃ切るね~」

《あ! おいっ! 待っ……》


 マグアは「ヤレヤレだぜ」と首を振って肩を竦める。


「魔族による被害もあって、各々は争う事はなかったのだが……」

「コマ王様……」


 深いため息をつくコマ王。気苦労も多いようだ。

 血気盛んな帝国を怒らせまいと、これまで上手く外交を行ってきたのだが全然だった。向こうは「俺様、一番! 最強!」とばかりに幅を利かせて無茶な要求ばかりする目の上のタンコブ的な存在だった。

 それでも貿易などで不当な取り引きにならぬよう協議で抑えてきた。

 魔族の脅威がなければ、とうに侵略してきたのかもしれない。


 戦争を起こせば勝ち負け関わらず多大な消耗は避けられない。そこを魔族に突かれては帝国もひとたまりもない。

 故にこれまで協議などで均衡を保てた。

 皮肉にも魔族のおかげで無益な戦争が避けられていたのだった。


 それに中層地殻を二分する帝国でさえ魔族による被害は軽視できない規模だ。魔族は闘争を重んじる為、攻撃的で強い国へケンカ売る傾向にあるからだ。



「ともかくライトミア王国へ王城を移動してください!」

「うむ。ではそのようにしよう……」


 ────後にダイガ王城もライトミア王国へ合流を果たした。



 砂漠のロゼアット帝国。

 ギルドの出入り口で、立ち込める濃密度の暗雲を見上げて勇者ボゲーは(くも)った顔をする。

 昼間だというのに夜みたいに薄暗くて、不安しかない。


「タイガーラン帝国の方は全く避難せず、迎え撃つ構えらしいな」

「バか……」

「こう言われるとバカって聞こえるな」


 一文字名前のバは困った顔を見せる。


「……こっちも幻獣界攻め込めず追放されたし、このままでいいのかねぇ?」

「ローワ。気持ち分かるんですがね。まぁ、こんでもこの帝国は故郷だしけ」

「ボゲーさん……」


 すると、ズズンと大きな地響きが足に伝わって、思わず竦む。

 一旦収まったが、とてつもない不安で胸を押し潰されそうだ……。心音が高鳴って、冷や汗が頬を伝う。


「今のは…………?」

あとがき雑談w


ロゼアット皇帝「我が帝国は百年前に築かれた新しい国だ。ロゼアットの名前を継承した余は四代目となる」

勇者ボゲー「へぇ? 比較的新しいんすけ」


 七大王国は、大昔の世界大戦で生き残った国である。

 それと違ってロゼアット帝国とタイガーラン帝国は歴史がまだ浅い新しい国なのだ。元々は周辺の村や町を統合してできたのだとか。

 なので普通に建造されてるだけで移動はできない。


 娯楽の国ピアレクス「カジノも温泉もあるリゾートだよー! 綺麗な青い湖が見渡せるぞー」

 飛空艇の都市ブレンテ「飛空挺が多く交通している貿易都市よ……」

 塔の都市バルガリン「星塔(スタワー)を意識してました。世界一になりたい」

 宝石王国ララピュレ「真ん中に巨大な宝石が輝く国です。鉱山多いです」

 神殿王国イリューバス「勝手に特定の神を信仰して作っちゃった国です」

 農業の国エチマ「広い土地を使って農業してるだよ」


 ……実は七大王国を含めて全世界の国は98か国とされています。

 しかし、ちゃんと浮遊要塞になれるのは七大王国の王城のみ。



 次話『滅びの時がチックタックやってくる……?』

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