80話「集結!! 各国の勇者たち!」
黒いスミで絡まれたウォタレンは水底でもがいていた。
「あのアマ……!!」
ふつふつ沸く怒りで歯軋りし、全身からエーテルを噴き上げて周囲を揺るがすほどに大きく膨れ上がっていく。
それで強引にスミを爆ぜさせた。パン!
湖からウォタレンは猛スピードでボンッと間欠泉を噴き上げて飛沫を散らしながら上空へ高く飛び出して、エーテルを纏って魔導列車へ真っ直ぐ追いかける!
「マメードォォォ!! 許さんぞ────ッ!!」
しかし魔導列車はどんどん突き放していく。
剣を振るって超高速水弾を乱射するが、魔導列車を覆う強固なバリアがそれを弾いてしまう。何度乱射するが破れる気配を見せない。
血眼で歯軋りしながら、突き放していく魔導列車を見送るしかなかった。
「ぐ……! くそぉ……!! 全然追い付けやしないぜ……!」
拳を固く握って、やり場のない怒りでワナワナ打ち震えていた。
仕方なく城へ帰還すると、サギハン国王は怒りの形相で唸っていた。
「この体たらくで逃すとは!!」
「……申し訳ございません。まさか最後の最後で『分霊』で出し抜くとは」
「ええい! 他に魔導列車はないのかっ!?」
萎縮している将軍は「あれだけです……」と絞り出す。
幻獣界直行便は一つの魔導列車だけだ。
誰も避難しないから王女だけ乗って逃げられる結果になってしまった。こうなっては誰も連れ戻す事はできないのだろう。
メイドが「大変です!!」と駆けつけて、サギハンは「またか!? 今度は何だ?」と苛立った。
ニョキ、ニョキ!
ブルークア王国の湖の底で赤黒い結晶が次々と生えてきていた。それに伴って徐々に水が赤くなっていった。
それだけじゃない。
湖を囲む緑生い茂る自然も、赤黒い結晶が蝕んでいって範囲が広がっている。
「まさか……こんな事が…………!?」
「サギハン国王様! うろたえてはいけませんぞ!」
青褪め、動揺してフラつくサギハンを、ウォタレンは支えた。
「必ずや私が、私が、この水のブルークア王国を守ってみせる!! だからサギハン国王様は堂々としていてください!!」
「う、うむ……!」
ようやく世界に危機が迫っている事を察して、ウォタレンは気を取り直して将軍や騎士兵士へ向き直る。
「ここを死守するぞ!! 皆の者、何が襲ってこようとも迎撃する準備を整えろ!!」
「「「「ハッ!! 勇者様!!」」」」
そして今度は魔道士団へ趣いて「あの結晶を調べろ! 何かヒントが見つかるかもしれん!」と指示を出す。
腐っても勇者。ウォタレンのキビキビとした指示で活力を与え、迅速に行動させた。
慌ただしく駆け回る者たちを尻目にウォタレンは「む! 勇者念話……、緊急招集だと?」とベランダへ向かう。
広大な青空で雲に囲まれた白い神殿が悠然と浮いていた。
──それこそが『勇者神殿』なり!
上下左右無作為に建築されている神殿。あちこち緑のコケが覆っている。点在する花壇には花と木が生えている。かなり広大な遺跡とも思えるほど無人……。
流星のように弧を描いて飛んできた光で包んだ一人が、開けた場所に降り立つ。
ウォタレンだった。
静寂を保つ神殿を見渡す。相変わらず無駄に広大で複雑に入り組んでいるものだと呆れる。
ゆっくり歩き出して中へと入っていって、登ったり降りたり進む。
「来たか!」
四方を等間隔で並ぶ柱に囲まれた広場。床は複雑な彫刻で刻まれている。そして柱の間からは雲がたゆたう青空が窺える。
ウォタレンが来るのを見て、他の人たちは待ちくたびれたとため息をつく。
光のライトミア王国の勇者セロス。
水のブルークア王国の勇者ウォタレン。
緑のフォレスト王国の勇者ププラト。
風のヒュング王国の勇者バベナス。
火のルビレッド王国の勇者ゴーファド。
土のダイガ王国の勇者マグア。
氷のアイスバレー王国の勇者ラルゴ。
砂漠のロゼアット帝国の勇者ボゲー。
大地のタイガーラン帝国の勇者アリュール。
なんと七大王国と二大帝国の勇者が集結したぞ!
「オレは“聖雷の勇者”セロス!」
赤いマントをなびかせ、額の煌びやかな頭輪、逆立った黒い髪、精悍とした真っ直ぐな目。得物は翼を模した鍔が特徴の聖剣エクスセイバー!
威力値:107500(勇者の魂波動:430000)
「私が“水勇の蒼騎士”ウォタレン!」
やや長めの七三分けの金髪、眉毛のグルグルが特徴のイケメン顔だが偏屈した目線。水をイメージしたような光沢を放つ青い騎士鎧を身に包み、青いマントをなびかせる。得物は六柱蒼の武具が一つ、水を操るという聖剣トリアデン!
威力値:102750(勇者の魂波動:411000)
「僕が“神聖樹の勇者”ププラトだよ」
センター分けの緑髪、無垢な丸い目で幼さそうな少年。ジャンパーを着た緑の軽快な服。緑のマントをなびかせている。見た目と裏腹に達観している。得物は柄が白い木の枝の聖剣ティエルーシャモ!
威力値:86000(勇者の魂波動:344000)
「吾輩は“疾風の勇者”バベナス……」
長身細身の男。センター分けのロン毛を後ろに結んでいる銀髪。三角の目、鼻、アゴとか色々尖っている。胸元を開けた白い衣服。ツバメみたいな白いマント。得物は双剣である曲刀の聖剣キュルミュル!
威力値:93200(勇者の魂波動:372800)
「あたいは“火勇の守護士”ゴーファドだざー!」
大柄な体格の女勇者。赤いパンチパーマの褐色肌。大胆不敵そうな目で強気な顔。露出度の高い服で大きい胸と尻が目立つ。炎の模様の赤いマント。得物は背負う大剣である聖剣ガクラク!
威力値:119500(勇者の魂波動:478000)
「ワイは“堅牢の勇者”マグア!」
ドワーフかと思うほど小柄で体格が太い少年。ツーブロックの黒髪、丸い鼻が特徴で無垢な目。半裸でズボンだけ、茶色のボサボサマント。得物は斧の形をした聖剣インファルナ!
威力値:110500(勇者の魂波動:442000)
「ワシは“氷河の国勇士”ラルゴだ……」
初老で水色のツーブロック髪に鼻ヒゲ、冷静そうな目。暖かい毛皮を身に包み、ふっくらとした毛布のような薄茶のマント。得物は槍の形をした聖剣ゲレカシレオ!
威力値:150000(勇者の魂波動:600000)
「オラァ“砂漠の蛮勇者”ボゲーですけ!」
ギザギザ短い黒髪の肌黒くて毛深い小太りオッサン。卑しそうなタレ目。盗賊のような衣服で勇者には見えない。破けた茶色の臭うマント。得物は棍棒型の聖剣ボグ!
威力値:85000(勇者の魂波動:340000)
「俺か? 俺はな“土龍の勇者”アリュール様だ!」
茶髪ボサボサの赤いバンダナを額に巻く強気な顔。黒いロングコート。腕を組んでいて近寄りがたい。得物はレイピア型の聖剣サーロック!
威力値:118000(勇者の魂波動:472000)
各々の威圧は抑えているとはいえ滲み出るソレは重々しく感じさせる。
恐らく数々の死線を越えてきた勇者どもだ。面構えが違う。
ウォタレンは真面目なセロスを見て、相変わらず気に入らねぇヤローと蔑む。
「ハッ! 女たらしのバカタレンじゃねーか! 悪い噂しか聞かねーぜ?」
「貴様にだけは会いたくなかったよ。アリュール!」
「……俺と? 俺だけだと思ってんの?」
挑発気味なアリュールにウォタレンはピクッと癪に障り、剣の柄に手を添える。
「あ? 聖剣で分からせるか?」
セロスは「止せ! 場所を考えろ!」と語気を強めて注意。ウォタレンはギッと睨みつける。
すると初老のラルゴはため息。
「セロス殿の言う通りだ。ウォタレン殿も勇者なら、ここは慎んで欲しい。それと良からぬ行為は感心できんぞ?」
ウォタレンは「ぐっ!」と苛立つ。
「自分の国の王女様をストーカーしているんだよね。ムカつくわ」
紅一点の大女のゴーファドはギロッと睨む。女の敵は許せないらしい。
ウォタレンは「国王様に認められている。とやかく言われる筋合いはないぞ」と突っぱねる。
しかし彼を見る勇者たちの視線は厳しい。四面楚歌だ。
「嫌がっている姫様で喜んでるんだよね。コイツ最低」
少年のププラトは曇った顔でそう言うと、ウォタレンは「黙れ! ガキが!」と怒鳴り返す。
尖った鼻を突き出すようにバベナスが前に出る。
「もうそういう情報はみんなに伝わっていると思え。我輩とて貴殿は鼻持ちならぬヤツと思っている。国を想う使命は確かなようだが、第三王女を始め多数の女性にセクハラをして嫌われている事も周知だ。驕った力は自ら身を滅ぼすぞ……」
ドワーフぽいマグアは「言っても無駄とワイは思うわ。二年前にこの事で罪をさらされて懲罰を受けてたじゃん? 懲りてないじゃんよ?」と肩を落とす。
ウォタレンは「ぐぬ……」と歯軋り。
味方をする勇者は一人もいない。誰もが侮蔑したような目線だ。
「オラァも女好きなんですけどね、気持ち分かりますわ。でもまぁ先ほど姫さんに逃げられたって聞くし、そういうワケですけ」
ボゲーがその情報を暴露し、ウォタレンも流石にギョッとした。
「貴様……!! いつそれを!?」
「あんさんが来る前にププラトさんがね、いち早く言ってたですけ」
「うん。精霊様の力で悪行を知れるんだよ。姫様の衣服を剥ぎ取って何しようとしたかまで、ね。でも出し抜かれて逃げられたのは良かった良かった」
ウォタレンは「このガキャッ!!」と激昂し、剣を抜き放ってププラトへ瞬時に斬りかかる!
しかし疾風が如くバベナスが瞬時に割って入り、双剣を交差してガッチリ一太刀を防いだ! 周囲に衝撃波が吹き荒れ、ズンと振動が神殿中に広がった! ビリビリビリ……ッ!
それでもなお、間近のププラトはおろか、周囲の勇者は平然と突っ立っている。
「恥を知れ恥を! 今回もまた懲罰がくだされるかもしれんぞ!?」
「長っ鼻ァ……!」
ギリギリとウォタレンとバベナスが鍔迫り合いして一触即発だ!
あとがき雑談w
ウォタレン「ププラトは本当に精霊様と交信できるのか?」
ププラト「あんたでも精霊“様”って言うのね。まぁ、そーだよ」
妖精と精霊は似てるけど違うっぽい。
厳密に言うと“精霊”は水や火などの自然概念と深い関係にある。その為、外見が該当する属性と半同化してるように見える。決まった実体はないらしい。
逆に“妖精”は精神界へ干渉できるとはいえ、決まった実体を持つ。寿命がある。
エルフ、ドワーフ、ホビットなど。
両者とも高次元である精神界に干渉できる上位生命体。
元々からそのように生まれた者と、『妖精の種』を摂取する事で進化した者の、二通りの誕生が存在する。
エルフ、ドワーフ、ホビットは生殖器官を持っていて繁殖は可能だが、性欲が限りなく弱い為に滅多な事で増えない。
更に上位の妖精王は生殖器官による同種族の繁殖が不可能。
ちなにに精霊よりも深い領域の『素妖精』は名前こそ妖精だが、生物学的に妖精ではない。素霊の集合体としての呼称である。普通の人間には視えない。
通常は主に『自然霊』と呼ぶ。
セロス「……妖精王であるナッセたちも、こいつらの仲間って事か」
次話『勇者の神様が降臨!!?』




