79話「終末の未来に抗う者たち!」
オレたちはマシュ様のいる神殿頂上へ呼び出された。
「もうロープスレイ星は終わりです」
マシュ様の沈むような物言いに言葉を失う。耳を疑ってしまったぞ。
物憂げにも見える顔で、観念しているのを察した。
オレもヤマミもクックさんもアクトもリョーコも絶句するしかない。
「もしかしたら恒星系周辺にも地球にも被害が及ぶのかもしれません。でも貴方たちは他の異世界へ移り、新しい暮らしを始める事は可能です。いずれ避難者たちにも説得を試みて移住を促すつもりです。もちろん蛇蝎のごとく罵られるでしょうが、私の責任として受け止めます。よしなに」
マシュ様は事前に「もう予知夢が見れない、これすなわち未来が存在しない」とおっしゃっていた。
これから異世界ロープスレイは消滅るのだ。
素妖精が言ってたように、未来には複数の結果が同時に裏で存在していて、たどり着いたらどちらかに決まる。予知夢もまた、そのどちらかの結果を覗くものなのだろう。
それが無いという事は、結果そのものが存在しないって事になる。
「マジでロープスレイ星がドッカーンなのかぞ……?」
「星ドッカーンだー!」
クックさんが両腕を挙げてドッカーンの仕草する。
「何もない宇宙空間を予知夢しても仕方ないでしょう。よしなに」
「そんな事って……」
ヤマミも愕然として震えるしかない。
世界が焼き尽くされて人類が滅ぶ、なんてレベルではない。
その程度で済むなら、荒廃した世界でも数千年もかければ元通り緑生い茂る美しい自然が蘇る。避難した人たちがまた新しく歴史を作っていける。
それすら無いのだ…………。
「冗談だろァ……」
「地球も……?」
「可能性の問題ですが、恐らくアリエルさんの通気口ダンジョンを通って災厄が訪れるのはあり得るでしょう」
アクトもリョーコも何も言えなくなった。
認めたくなくても、否定したくても、相手は未来が見える妖精王様だからなぁ。
身近な妖精王で力を思い知ってるし。
「絶対信じない、って思ってもいいでしょう。地球へ帰って残りの日々を過ごすのもいいのでしょう。私は無理に止めません……」
「ち……地球の未来も予」
「見えませんが、この異世界とあなたたちの異世界が融合される際に対消滅を生じさせていますので、この災厄があろうとなかろうと遠い未来ではありません。一応、地球へ帰れるよう魔導列車は用意できますが……」
すっかり忘れてた! 二つの世界が融合してきてるっつー話……。
アリエルさんが対消滅を遅らせる為に通気口ダンジョンを設置してるんだよな。
オレは力が抜けて、膝を地面に付けてしまった。
「でも、まだ貴方たちには未来がある。できる事なら他の異世界へ行って生き延びて欲しい……」
相手は大災厄だの、対消滅だの、どうしようもねぇ事ばっかじゃん……。
地球の大魔王だって師匠のおかげで倒せたようなもんだ。
諦めるしかねぇじゃないかよぉぉぉ…………!
「ナッセ……」
ヤマミがそっと抱きつく。気付けば、頬を熱いものが流れていた。
悔しくてもどかしくて、煮え切らない悔しい気持ち。どうあったって諦めるしかない悔恨。せっかくの異世界の旅がこんなんにブチ壊されて……。
勇者セロスもモリッカもヤミザキもオレの両親もみーんな消えちまう。
…………いや!
「ヤマミ……、図書館行こう!」
「ナッセ?」
燻る憤怒の感情。このままじゃダメだ!
「バッドエンドで終わらせちゃダメなんだよ!!」
オレの吐き捨てるような叫んだ声で誰もが目を丸くする。
立ち上がってくる自分の体は沸騰するかのような激情で満ちている。終末に抗おうとオレは燃えてきているんだ。
終わった世界を切り捨てて、新しい異世界へ行けるかぞ!
胸糞エンドでワクワクできるもんか!!
ハッピーエンドで終わってから、次の異世界へ飛び立つんだ!!
「ヤマミ行くぞ!! まだ解き方を見つけてねぇ!!」
「あ、うん……!」
ヤマミも口を結び頷く。オレは感情に駆られるままに走り出した。
一方、ロープスレイの上空は一層濃くなった暗雲が立ち込めていた。
その下で、七大王国が一つ、水のブルークア王国。
上層地殻ヘヴンプレートの大陸を領地とする。ライトミア王国の大陸と、緑のフォレスト王国の大陸と近所となる大陸。
更に言えば南方向には風のヒュング王国の大陸がある。
水のブルークア王国は貿易としては各国の中心部として経由されている事が多い国だ。
不穏な上空の暗雲に不安げながらも避難もせず、いつもの通りに暮らす住民。
幻獣界からの避難勧告を、その国の王様が無視した為に、状況を知らぬまま変わらぬ日常を送っている。
それでも戦争に備えるかのように物々しく騎士兵士たちが城へ集合していた。
「“海鱗の君主”サギハン国王様……、よろしいのですか?」
「……“水勇の蒼騎士”ウォタレンか!」
中年の長身の男。水色の色調のローブを着ていて、王冠を頭に乗せている。細いが厳つい顔。
その後ろで七三分けでややの長め金髪の、眉毛のグルグルを伴うイケメン。水をイメージしたような光沢を放つ青い騎士鎧を身に包み、青いマントをなびかせる。
「ふん! 幻獣界がなんだ! 妖精王がなんだ! こんな事で避難とか馬鹿げている! 貿易王国として利益が上げられんではないか!」
「まったくもってその通り!」
「万が一があろうと、我が国最強の勇者であるお前がいる! 有事の際に、必ずや我が国を守ってみせろ! 騎士たちの指揮権は任せよう!」
「は! 必ずやご期待に添えてみせましょう!」
すると一人のメイドが駆け寄ってきて、サギハンは「余の御前で無礼だぞ!」と怒鳴る。
「い、いえ!! それが!! 第三王女マメード様が脱走しました!!」
「なにい!!!」
サギハン王もウォタレンも目を丸くして驚く。
「おい! ウェイバーズ将軍!! 今すぐ連れ戻せ!! 逃すな!!」
後方で沈黙していた将軍は「はい!」と迅速に駆け出して、周囲の兵士もそれに倣って駆け出していく。
たちまち慌ただしくなっていった。
サギハンは歯軋りして「あのバカ……!」とこめかみに血管を浮かばせていた。
「婚約者として、私も行きましょうか?」
「ああ! 連れ戻してまいれ!! あとは懲罰するなり好きにせい!」
ウォタレンは不穏に笑む。ニヤ……!
地下水中都市。透き通った水路の中で複数のメイドが王女マメードを取り囲みながら猛スピードで進んでいた。
下半身は魚のようにウロコで追われていてヒレがある。
王女も含めて王族やメイドなどが一般で言う人魚だった。彼らは水の中に入ると下半身が魚に変形してスイスイ泳げる種族能力を持っていた。
そして騎士二人も全身を魚のような魚人状態で三叉の槍を手に後ろを窺いながら追従していた。
水のブルークア王国は、大きな湖の中心で構える大国。
国全体の半分が湖に浸かっており、陸と水中で二つの都市があるとされている。
今は不穏な予感で戦力を陸地の城に集中させた為に、警護が薄くなった水中の方を狙ったのだ。
「見つけたぞっ!! 王女ッ!!」
なんとウォタレンが凄まじいスピードで追い付いてきた!
彼もまた人魚族で、カジキのように頑強な下半身とヒレだ。その突進だけで二人の騎士を吹き飛ばし、壁に激突させた。ドゴゴン!
王女マメードは苦い顔で振り向く。
「今度ばかりは許しませぬぞ!!」
「そちらこそっ!」
マメードは魔法陣を展開し、激流が渦を巻いてウォタレンを押し流そうとする。
しかし速度が鈍っただけで追い付くには些か問題ない。
「折檻させてもらうぞ!! そして婚前で早いが私と交わってもらうかっ!! ふははははっ!!」
瞬く間に周囲のメイドを吹き飛ばし、マメードの腕を掴み、乱暴に洋服をビリビリ引き裂いて裸に剥いていく。
嫌がってもがくマメードにウォタレンの情欲がそそられる。
「げっへっへー! エロエロエッチさせてもらうぞっ!」
下卑た顔で麗らかな女体に手を────……!
ボン!
なんと粘着性のスミに爆ぜてウォタレンに絡みついてしまった。
「ぬあ??」
顔から被ってしまったために視界を奪われ、もがきながら水路の底へ沈んでゆく……。
「な、何が起きた!? ち、ちくしょおおおお!!!」
粘着性のスミは厄介で、振りほどこうにも絡みついてて剥がせない。
そして滞在していた魔導列車はゆっくり出発していく。
その王族専用車両でマメードはグラスを手にワインを飲み干す。
避難しない為に誰もいない魔導列車で一人と一匹が乗車していた。
「バカタレンを欺く為に『分霊』を最後の最後まで取っておいて良かったわ」
「さすがさすがマメちゃんや! 機転が利く利くぅ~!」
マメードの側で猫ぐらいの大きさのカエルが佇んでいた。
青い模様のアマガエルって感じで、丸い目がクリッと可愛い。
「師匠である“水の大精霊”ピョタ様の教えが良かったんですわ!」
「いえいえ」
「それにしても最後の最後でバカタレン、本性見せてたわね!」
「うんうん!」
どこかしら下品な目で見られている事に気づいていた。
第三王女だからと、勇者の嫁として引き込もうとする下卑た企みを薄々感じていた。慕う素振りをして粗暴な面を隠す。警護とうそぶいて執着する。勇者とは名ばかりの狡猾な乱暴者。
しかし父である国王は暴君で、同類のウォタレンを気に入っている様子。
いつかは勇者の血と交わらせて、優秀な子孫を王族に残そうとしていた。
あくまでも交配の道具としか見ていないのだ。
第一王女、第二王女も人形のように綺麗に飾られて、優秀な“産む機械”として監禁しているようなもの。
華やかな王族とは名ばかりの監獄……。
だが、それも今日で終わる。
「行きますわ! 私の自由な世界と未来へ!」
「ボカァも共々にしますや!」
囮になったメイドと騎士を騙すのも気が引けたが、そうでもしなければ逃れられなかった。
自由への渇望が強く、何を犠牲にしてでも厭わない意志だった。
王女マメードと精霊ピョタ、幻獣界へゴ────!
あとがき雑談w
第三王女マメードが単身で抜け出すほどの手際の良さが怪しいので、実は師匠がいたという後付け設定されたとか!?
ピョタ「ボカァ新キャラ登場登場ですや」
マメード「実はバカタレンも父様も知らないの。なので、こそーり精霊様が私を鍛えてくれたのですわ」
ピョタ「この青カエルめですがですがヨロヨロシクや!」
マメード「バカタレンは鋭いから見つかったらと戦々恐々でしたわ。王国最強で威力値が41万でしたし」
ピョタ「ふひっ! ツヨツヨ過ぎですなー! 敵わないなー!(笑)」
マメード「そうなのよねー!」
“水の大精霊”ピョタ
妖精の種を食べたアマガエルが千年もの年月を経て力を鍛え高めてきた熟練の精霊。水魔法に特化している。
水と同化し透過して気配すらも完全に消してしまう為、見つけるのは容易ではない。
普段は傍観者。穏やかな性格で滅多に争う事はしないが、戦う事になれば天変地異のような水災を起こして大陸の国を壊滅させるほどの力を持つ。
通常は猫くらいの大きさだが、巨大化もする。
威力値:2850000
次話『ついに勇者集結! だがバカタレンは四面楚歌に!?』




