表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/200

78話「徐々に暗冥してゆく人間界……!?」

 コロニーでは、不安やら戸惑いやらザワザワしながら住民が行き交いしていた。


「みんな! 大丈夫だ!! ライトミア王国は必ず災厄に打ち勝つ!! だから今は安心して過ごしててくれ!」


 ティオス先輩は率先して、不安になっていたコロニーの民衆を励ましていた。

 実際、騎士ながらも王国中を回って顔が広いティオス先輩は民衆に人気があった。その為、彼が励ましてくれるだけで活気が沸いたようだった。


「ねぇティオスさんは、なんで裸足(はだし)なの?」

「ん、ああ。クツ破れててなー」

「いつも飛び回ってて限界迎えたのかしら?」

「かもなー! でも足のマッサージにいいから、そのままでいるんだぜ!」


「はははははっ!!」


 人々が集まってきて和気あいあいしてきた。暖かい笑い声がする。


 幻獣界でのコロニーは各国や独立組織ごとに用意されていて、お互いに交通もできず情報交換も叶わない。

 その為、避難者の中に国を渡り歩いている商人などは商売が不可能だ。

 モンスター討伐やダンジョン探索がメインの冒険者も、ここでは何もできない。

 最低限、不自由なく暮らせるだけのものしかない……。


「こんな事なら避難しなければ良かった!!」

「退屈すぎる!!」

「元の国へ帰らせろー!!」


 これらの不満を持つ人たちのケアも、一緒に渡ってきた騎士たちや聖職者などが引き受けていた。

 更に幻獣界からコロニーへ転送される食料を配膳したりと、ティオス先輩を含む騎士たちは日々忙しく動き回っていた。


 ティオス先輩は賑やかに人々が行き交いするコロニー中を見渡す。

 仮設住宅とは言え、頑丈な建造物で並んでいて都市と何らも変わらない風景だ。

 時折、モニターがあちこち設置されていてロープスレイ星の地表の様子が映っていた。今は何も起きていないようだ……。


 ティオス先輩は「これから起きる事を見れるのか……」と不安げだ。

 とは言え安心してる部分もあった。何も知る必要なく避難者としてコロニーにひきこもってろ、ってなってたら自分も納得いかないだろう。


「ナッセたちが上手くやってくれる事を信じるか!」


 これまでの旅でティオス先輩は割り切った感じで、自分ができる事に専念する事にした。




 一方、オレは当惑していた。

 ヤマミと一緒に神殿内の図書館にいた。数え切れないほどの本棚が縦横無尽に羅列していて、奥行きが見えないくらい広がっていた。

 それこそが幻獣界の図書館だ。


「クックさんやアクトたちみてーに修行しなくて、いいのかぞ?」


 ヤマミはこちらに振り向かないままコクッと頷く。

 本当はアクトたちと一緒にガンガン実戦訓練して少しでも腕を上げたかったのだが、ヤマミは何を思いついたのか幻獣界の図書館へ行こうってなってた。


「もう自分たちは人間離れしている」

「……それと図書館とどう話が繋がるんだぞ?」


 ヤマミはオレの方へ神妙な顔を見せていた。


「ジャオガさんから言われたでしょ? 人間の知能指数が平均一〇〇の中で、私たち妖精王の知能指数は一五〇。これは破格のスペックよ」

「言ってたなー」

「例え高い知能であっても()()()()()()()()()()バカと変わらない。だから、私たちは()()()()()()()()!」


 思わず息を呑む。


「……って、解き方??」

「分かってるでしょ? 半年以内に事が起きるのなら、短時間の実戦訓練では焼け石に水」


 妖精王マシュ様もハッキリ「確実に全滅します」だからなぁ。

 ちょっとそこそこ強くなった程度で勝てるなら、そもそも世界中に避難勧告なんかしない。


「半年でどんなに頑張っても凶人王(マッドロード)クラスにすら勝てるかどうかも怪しい」


 確かに、あれは勢い任せにタッドと競争しながら己を高め合った結果だからこそであって、本当に実力で勝ったかと言えば微妙だ。

 オレの威力値は基本一四万だから、絶え間のない血の滲む特訓でも半年後には一七~一八万くらいかと思う。妖精王になれば基本値の三倍。それでも五〇万未満。ヤマミと『連動(リンク)』すれば一〇〇万近くが精々。

 とてもじゃないが、凶人王(マッドロード)にはまだ届かねぇ。

 数年やれば話は違うんだろうけど、半年以内では爆上げはムリだ。


「ただ脳筋のように修行しても仕方ない。今の私たちに足りないのは()()!」

「で、貴重な幻獣界の知識が必要だから、ここに?」


 ヤマミは頷く。


「今の私たちなら水を吸うスポンジのように知識を吸収できるはず! そしてこれから来るであろう大災厄の()()()()()()!」


 つまり、今のままではどんなにやっても()()()()()()から、その()()()()を図書館で探すって事ね。

 知識を吸収するのは時間がかかるので、手遅れにならない内に()()()やるのだ。

 とは言え、難しそうなの読みきれっかな?


「まずは言語関連の本から!」

「え?」

()かる言語が増えれば、理解も比例して幅広くなる」


 ヤマミはスタスタと図書館へ入っていく。オレは思わず「ま、待ってぞ」と追いかけていく。


 ……オレは勉強が苦手だ。

 だから地球にいた時は英語を覚えるのがなかなかできなかった。

 思い返すと転生し続けてヤマミと出会ってからアメリカで英語をすんなり取得した。当たり前のように覚えてたけど、その頃からオレの中で妖精王が目覚めてた影響からかも知れない。


 この数日間で言語に関する本を読み漁って、驚くほど吸収できた。

 魔法陣の特殊記号や魔法文字はおろか古代文字すらも……。


「今度は、魔法陣を理解する!」

「お、おう……」

「心配しないで、言語の時と一緒! 私がいる!」


 魔法陣は『円環(サークル)』を元にプログラムを入力した術式。

 入力した術式によって様々な効果をもたらす魔法陣を展開して発動させる、が一般的認識。

 オレたちは創作士(クリエイター)センターやギルド、魔導協会などで、予め作られた魔法陣を引用して使う事がほとんどだ。

 いわゆるコピペで使う感じぞ。


 だからヤマミは自分からオリジナルの魔法陣を作れる技術を取得しようとしているのだ。

 これらに特殊な文字が多い。だからこそ事前に言語関連の本で勉強したのだ。

 皮肉な事に分からなかった事がスイスイ分かるようになると、勉強も面白く感じてしまったぞ。


 面白い事に『刻印(エンチャント)』とも共通しているのでスイスイ学ぶ事ができた。今までは光の剣や盾などカンタンなものしか入力できなかったが、今なら複雑な設定も作れそう。


 そして時空間関連、量子力学、精霊学など難しそうな本まで読み耽る毎日に没頭していったぞ……。




 ロープスレイ星……。


 どんより雲が空を覆い、徐々に不穏な雰囲気が募ってきている。

 黄緑生い茂る草原、緑生い茂る森、透き通った水流の川、連なって聳える山脈……。


 ニョキ、ニョキ、ニョキ、ニョキ!


 芽が出るように赤黒い結晶があちこち自然界で数を増やしていった。

 その度に、赤黒いモヤが薄らと漂い始めていた。

 避難して無人になって静寂する小さな村や町に、赤黒い結晶がこびり付き徐々に領域を増やしていく。


 盗賊団や闇ギルドなど、避難勧告を無視、または追放された悪人は不穏を紛らわすようにアジトで酒を浴びるように飲んでいた。グビグビッ!


「けっ! 奴隷も一緒に追放しろよってんだ! なんで俺たちだけだァ!?」

「どうでもいい!! どうせ何も起きんだろ!」

「いなくなった町から酒を奪い放題ってのはいいんだが、なんか物足りねーな!」

「ああ! 馬鹿な羊がいるからこそ略奪の醍醐味だからな!」

「ともかく、今は俺たちだけの世界だァ!!」


 ヒャハハハハハハッと悪党どもが快楽に溺れる日々に浸っていた。


 そんなアジトにも赤黒い結晶がニョキニョキ忍び寄るように生えてきていた。

 それだけじゃない。いくつかのダンジョンにも赤黒い結晶がジワジワ生えてきて、生息する野良のモンスターは「ギギィ!?」と戸惑いしていた。


 それと魔族たちは忽然と人間界に現れなくなっていた。

 各国のギルドはそれを不審に思ったが、気に留めなかった…………。


 ズズズズズズズズ…………!



 避難勧告を無視した、または追放された各国はそこで賑やかに人々が交流していた。

 周囲の、無人になった村や町で多少不便を被っているが問題ない生活を続けていた。相変わらず平和に住宅地の世界で平和な日々を送る人々。


 無邪気な子どもたちがワイワイ走り、大人たちが商売や運搬したりして、オバサンが囲んで談笑する道路。立ち並ぶ住宅。猫がアクビし、犬が狭い路地を歩く。上空で鳥が飛び交う。

 相変わらず馬車で獣道を走り、船で海を渡り、空を飛空挺が飛び、各国へ渡り歩く商人と冒険者たち。

 今でもダンジョンなどを潜ってモンスターを狩ったり宝箱を漁ったりする冒険者たち。


 彼らは、これから大きな厄災に燃やし尽くされるとは夢にも思ってないのだろう。

 ずっと変わらぬ日常が毎日続くと信じて疑わない。




 神殿頂上の環状列石に囲まれた台座で妖精王マシュは寝息も立てず無機質に睡眠していた。

 しばししてスッと目を覚まし、懸念する汗が頬を伝う。


「ちょくちょく見えていた予知夢が、見れない…………!?」


 それはすなわち、ロープスレイ星に()()()()()()()という事に他ならない!

あとがき雑談w


 15年歴ベテランの“双剣浪人”オズラッチと“魔射手”ヨーレンもコロニーに避難しているぞ。

 ついでに青髪少年レアックスとタヌキ獣人マレーシも一緒だぞ。


オズラッチ「なかなかの建物じゃないか」

ヨーレン「そうね」

レアックス「仕事はどうするんだ?」

マレーシ「食べ物は??」


オズラッチ「仕事は休みだ。食料は幻獣界から配膳されるから大丈夫だ。酒類はないけどな」


 相変わらず木の実とか豆とかで飲み物は水。


マレーシ「うえ~! 焼肉食べたーい!!!」

レアックス「ジュースもないのかよ!?」


オズラッチ「退屈だろうが我慢してくれ」

マレーシ「こんなんいやよ……! もう帰りたい!!」

レアックス「ああ、こんなの耐えられない!! 帰りの列車あるでしょ!?」

ヨーレン「帰っても王国は店やってないし誰もいないから諦めな」


レアックス「」

マレーシ「」


 しばらく豆ポリポーリ質素生活ェ……。



 次話『マシュ様が告げるバッドエンド!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ