73話「リョーコの秘めたる覚醒の力!?」
勇者セロス、戦士ファリア、賢者メーミ、魔道士モリッカ、二匹のウサギに転移させられて忽然といなくなった。
何とも言えない煮え切らない気持ちに唇を噛み締める。
するとマシュ様はオレと同じ目線に首を低くしてきて、その長い口で頬をスリスリしてきたぞ。
「ナッセ、許してやってくださいまし。人族こそ表の世界を彩る主役なのです」
「マシュ様はあんな事言われてて平気なんか?」
しかしむしろ笑んできた。どこか頼もしそうに。
スリスリされたお返しに、オレはその長い口を手で優しくさする。
「人族は善し悪しかかわらず多種多様な個性を持ち、あらゆる可能性を秘める生き物。ああくらい元気な方がいいのです」
マシュ様は大人だなぁ……。それに比べればオレなんか直情的で短気だから突っ走るし情けなく思う。
するとヤマミがグイッと曲げた腕でオレの首を引き寄せ「比較しない! 落ち込まない!」と励ましてくれた。
なんかリョーコが「だいたん~」とニヤニヤ。
なんだか気分が和やかになってきた。
朝飯食べてねぇから「あ、一緒に朝飯食うか?」とぎこちなく聞いてみる。
「あァ……魔導列車で寝てたからなァ……。腹ァ……ペコペコよ」
「なんか途中で風景真っ暗になって寝れたには寝れたけど、今は朝なの?」
あー、狭間のあのグニョグニョ模様見れねーんだっけ……。
ティオス先輩は「ふあ~あ」とアクビしている。ヤマミは念話で《マズイの食べさせるのは気が引くけど仕方ないわね。あと念話はアクトたちにはしないでね》と伝えてきた。
オレも《わ、分かったぞ》と返す。
魔族から教えてもらったとかバレると面倒かも。
案の定、幻獣界の朝飯はアクトたちにも不評でしたぞ…………。
リョーコは斧を振りかざし、クックさんのウニメイスを受け止めて衝撃波が爆ぜた!
震えるドンブリ型浮遊盤、されど囲んでいる道士たちの張った結界によって衝撃や破壊を防いでいた。前に狼のエァミヤラと手合わせした時も同じだった。勝手に集まってくるなーって思ってたら、こういう事か……。
ガッガガガッガガッガガガガッガガガガッ!!
いつもはオレがしてたんだが、今はリョーコが付き合ってくれてる。
嬉々とクックさんは思いっきり暴れられてるようだ。オレはというとアクトと一緒にあぐらをかいていた。ヤマミが乙女座りでオレの側にいる。
「さァて……! 俺らァの冒険譚を語る時間だァ……!」
嬉しそうにアクトは秘宝である聖杯っぽいのを床に置く。
────ロゼアット帝国付近の深淵の魔境!
そこはゾンビやスケルトンなどアンデット系を主体にした、墓地や沼地が大半の魔境だった。
やはりと言うか、普通のダンジョンではなく高難易度のダンジョン。素早くアクロバットするゾンビや破壊規模の大きい高火力のスケルトンなど一筋縄ではいかぬモンスターだらけだった。
第一階層は、地下空洞の中で無作為に墓石を並べられた不気味な墓地の荒野。
第二階層は、緩やかな起伏の草原に古びた教会があちこち建つ、洋風の墓地。
第三階層は、紫の沸騰する毒沼を下地に、切り立った崖の起伏激しい群島の墓地。
第四階層は、赤と紫の混濁する空。墓石みたいな立法長方形の浮遊物があちこち漂い、その上部には西洋の墓がいくつも羅列する墓地。
アクトが言うに、前に戦った事があるリッチを更に凶悪にしたような死骸王っていうラスボスがいて、苦戦させられたらしい。
他の歴戦の冒険者が殺されてゾンビ化されていくのが相当にヤバかった。
際限なくゾンビ軍隊を増やしていく戦況に絶望すら覚えた。
さすがの万覇羅弐状態のアクトや勇者セロスでさえ火力で押し切れず、ジリ貧で追い詰められようとした時に、リョーコは覚醒した。
それがもの凄くて、地球に戻ったら四首領に認定されるであろう超パワーで戦況を覆した。
「────日章紋!!」
アクトは不敵に笑みながら、聞いた事のないワードを口にした。
クックさんは調子に乗ってか「妖精王だー!!」と足元から灯る花畑を広げ、ボウッとフォースを噴き上げて、背中から翼のように四つの羽が浮き出した!
リョーコも驚いてポカンとする。
アクトは目を丸くして「あいつァ、オメェと同じ妖精王かァ!?」と驚き、オレは「そ、そういや言ってなかったっけ!」と慌てたぞ。
ヤマミも「待ちなさい!」と制止するも……!
「いっくぞ────!!」
瞬足で襲いかかるクックさんに、リョーコは身構えて唐突に肌を褐色に変えてオカッパの髪の毛が若干外側へハネて固形化! ドン!!
急激な威圧感が溢れ、そんなリョーコの変貌に驚かされた!!
「せいやッ!!」
リョーコの斧によるひと振りで、ズオッと四方に弾けた爆裂波がクックさんを押し流す! ゴゴォンと衝撃波が荒れ狂い、震撼が響き渡っていく!
遠くへ吹っ飛ばされたクックさんはクルクルと宙返りして着地。スタッ!
オレもヤマミもポカンとする…………。
「あ、あれが!?」「こんな……うそ?」
アクトは後頭部をかき「説明がちったァ省けたァ……、そう、あれこそが日本人特有の『日章紋』だァ……!」と衝撃的な事を言ってきたぞ。
つまり、インド人でなければ発現できない『心髄』と同様に、日本人にもまた特有能力が秘められているのだという。
「そ、そういや! シナリってヤツも中華仙国特有の『仙人力』を持つ仙道民族だったなぞ!」
「あァ……、インド人や中華人や日本人だけじゃない。地球には各国それぞれ特有の能力があるんだァ……」
「は、初耳だぞ! 日章紋も含め」
するとヤマミは「いえ!」と首を振る。
「聞いた事あるわ! 大昔で活躍していた、あの卑弥呼や日本武尊も『日章紋』の発現者だったという!」
「えぇー……マジかぞ!?」
「うん、一般の歴史には書かれてないけど、かなり古い古文書には記述されてるの! 夕夏家の書物にあったわ!」
悠然とリョーコはこちらへ向き直る。
金髪のオカッパがややハネ気味。全身の褐色肌に、そして顔面の左目を中心に太陽を象ったマークである日章が白肌として浮かび上がっていた。ただならぬ風貌であるのは間違いない。
「うん! これであの死骸王をボカーンって圧倒したおかげでクリアできたんだからー!」
自信満々と斧を肩に乗せて笑む。
クックさんは目をキラキラさせて「カッコい────!!」と駆け寄ってきてグルグル回ってはしゃぐ。
「えっと! リョーコもオレたち並にスゲー強くなったって事か!」
「それもあるがなァ……、どうやら日章紋によって発せられる『大和魂』は光属性にも匹敵するほどの破邪力も兼ね備えているみたいだァ……」
ヤマミは息を呑む。オレもつられるように息を飲んだぞ。
「いわば、アンデット族にとって天敵ってヤツかぞ……」
なんかオレ体が震えてくるぞ! まさかの朗報! リョーコすげーパワーアップだぞ!
日本人にも、そんなスゲー能力があったなんて!!
興奮して、いてもたってられず立ち上がって踏ん張り始めた!
「じゃあオレも日本人だし、妖精王と併せて────……」
「いや無理だァ……」
そんなアクトの一言に、ガクッと前のめりに崩れそうになる。
「なんでだぞ!?」
「四首領ヤミザキもその特有能力を知らんワケがねぇだろァ……」
「それがなんだよ?」
「簡単に発現できんなら、あのヤミザキもできてたはずだろァ?」
ハッとした! そ、そういえば!!
あの貪欲だった頃のヤミザキはあらゆる血筋を自分の家系に招き入れて何百年も力を培ってきた。それなのに、未だ発現できていない。
アイツなら、大切な人ヒカリを取り戻す為にあらゆる力を身につけるはず!
もしヤミザキか、他の王子が『日章紋』を発現できてたら、オレたちは絶対勝てなかっただろう……。
「……って事は!」
「ヤミザキと同様、ナッセもヤマミも日本人として“日章紋の遺伝子”があるんだろうが生涯懸けても発現は難しいだろうなァ……」
「そう」
ヤマミは目を伏せて、肩を落とす。
オレはそんなリョーコを頼もしすぎる、と感嘆を漏らし震えが止まらなかったぞ。
「俺ァ……、あの状態をリョーコ・サンって呼んでるァ……。太陽をかけてリョーコさんってなァ!」
あとがき雑談w
アクト「で、トドメを刺して秘宝をゲットしたんだァ……」
ナッセ「じゃあ、魔境は残り三つかぞ?」
リョーコ「今度は魔界の魔境の事聞きたいなー?」
ナッセはギクッとする。
ヤマミ「魔王ジャオガに反転空間を仕掛けられて魔界へ引きずり込まれたわ」
以降、言ってもいい部分だけを上手く話すヤマミ。
ナッセはホッとした。自分が話したら絶対ボロ出しそうだ。
クックさん「あのねージャお」
即座にヤマミが「一緒に遊びましょ」とクックさんを抱えて去っていった。
ナッセは冷や汗をかいてホッとした……。あっぶな……。
アクト&リョーコ(なんか隠してる??)
次話『白面の疫病神トビー、恐ろしい企みを!?』




