71話「奥義・殺陣進撃の本来の使い手!?」
起きると明るくなっていて、窓を見ればちゃんと地平線から太陽が昇ってきていた。眩しい。
未だ眠気でまどろんでて「ふぁ~あ」とあくびする。
ヤマミも眠たそうだ。
「……幻獣界へ来てたわね」
「ああ」
昨日、幻獣界まで来て妖精王マシュ様に出会って、ここで泊まったっけな。
まるで夢のようだが夢ではない。
ここは巨大な球状の浮遊神殿で、内部が空洞になっている。オレたちはその外殻部分の内部の部屋で寝泊りしている。
そして窓から見下ろせば、土星の輪のように雲海の上で大小まばらな浮遊島が無数囲んでいる。遠くまで行くほど綺麗な輪に見えてくる。
そう言えば素妖精はいないな。
昨晩、集まってきてたようだけど起きたら、いなくなっていた。
「また、そのうち出てくるかな?」
トイレ、歯磨き、着替え、それらを済ませると部屋を出た。
未だクックさんは眠たそうで「ふぁ~あ」とあくびする。
クローゼットには幻獣界特有の衣服があったから、今日はそれで着ているぞ。
オレは白いキトンに左肩から右腰まで斜めの青い帯っぽいのを被せている。
ヤマミは胸元と肩が広く露出している白いキトンで、太ももが露わになるよう腹と腰から白い布を垂らす色っぽいデザインだ。赤面してて恥ずかしがっているぞ。
……と言うのも他は露出度の高い衣服しかないので、最低限これしかなかったっていう。
クックさんは水色のキトンのワンピース。
あどけない彼女を表すかのように、可愛らしくフリルが備えられている。
「よし行くか!」
「いっくぞ────!!」
ヤマミは恥ずかしそうに「ち、ちょっと心の準備が……!」とモジモジ……。
通路を歩いていると、亀裂から覗く空洞内部が窺える。
ドンブリ型の浮遊物に草木が生い茂ったり、水場となってたり、緑が目に付く。更に上方の亀裂から差し込んでくる光の帯で神秘的に見えた。
鳥の群れが飛び交ってたり、色んな人類が闊歩してたりと不思議な光景に見とれる。
朝飯は食堂で済ませたが、相変わらず質素で実と豆ぐらいだったぞ。後は水。
「お主らが今世代の妖精王さまか?」
足音がして声に振り向くと、茶色の毛並みの狼の獣人が長身で現れていた。
体格からして骨格も筋肉も人間と変わらないのだが、足だけはカカトが上がっている獣足。手足には鋭い爪が窺える。
冒険者風のマントのみで全裸だが、全身モフモフ。
「御獣族……?」
「私は道士が一人、御獣族“茶毛の牙”エァミヤラだ。今後お見知りを」
ペコリと会釈してくる。
「あ、ああ……。オレはナッセ」
「私はヤマミよ」
「あたしはクックさんだー!」
ペコリと頭を下げてくる。
「朝の“無気”手合わせ願いたいが、よろしいですかな?」
平原となっているドンブリ型でオレはエァミヤラと対峙している。
周囲は他の道士たちが囲んでいて、瞑想するかのように静かに合掌しながらあぐらを組んで見守ってくる。まるで仙人の世界で闘技の組手をするみたいな雰囲気だぞ。
ヤマミとクックさんは後方で待機。
「では参る!」
なんと長身のエァミヤラが間合いを詰め、刀身の長い剣を横薙ぎに振るってきた!
オレは屈んでやり過ごし、逆に顔面へ剣で斬り上げる。が、高く跳躍してきて剣を振り下ろしてくる。
咄嗟に後方へ飛び、エァミヤラの剣が大地を割る! ゴォン! そのまま引きずるように地面を切りながらこちらへ振り上げてくる!!
オレはカッと見開き!
「スラッシュ!!」
横薙ぎの剣閃でエァミヤラの斬り上げと激突し、十字の軌跡が空震を呼ぶ!
鍔迫り合いしたままギリギリと力比べ!
「うおんっ!」
「おおおッ!!」
気合いの咆哮を発し、激しい剣戟の応酬になり一進一退の攻防を繰り返していく。体格差にも負けずオレは粘り続けて捌ききっていく!
数十分も幾重の軌跡が交錯し続けていた────!
「わんっ!」
一喝するエァミヤラのひと振りに敢えて弾かれて間合いを離れる。着地し飛沫が上がる。
煙幕が足元を流れ、しばしの睨み合い…………。
「妖精の白騎士! 連撃の大技があるだろう? それで来い!」
まるでこちらを知っているかのような言いぶり……。二つ名まで知っている。
何者かはさておき、リクエストに応えるべき光の剣を正眼に構え──……!!
「ならば受けろッ!! 流星進撃────、五十連星ッ!!」
突進しながら、鋭い剣戟を数十撃を撃つ!! エァミヤラもカッと見開く!!
「殺陣進撃ッ!!」
なんと、こちらと同じような一撃必殺の剣戟を数十発撃ち込んできた!? 無数の軌跡が飛び込んで、一撃一撃相殺し合って、けたたましく衝撃音が重なるように鳴り響いていった!
互いビリビリと衝撃が突き抜けて、後ろへ滑っていく。ザッ!
ヤマミは「まさか殺陣進撃!? それも洗練されてる!」と驚く。
クックさんは「うおおお! 二人ともそっくり! 鏡みったいだー!!」と興奮する。
オレも感じた。
殺陣進撃を初めて披露したオカマサとドラゴリラのとはまるで違う!
まさに一撃必殺を連撃で繰り出す超瞬発力! 敵陣営を壊滅させ、本体を滅多打ちできるほどの必殺技!
本物、と言うなら今のがそうだと言える!
「……いい太刀筋だ。やはりデスさまの理想とする殺陣進撃に近いものがある」
「で、デス…………??」
「ワイだ」
あらぬ方向から飛んできた声に振り向くと、手を挙げる男がいた。
据わったような邪険な目をした死神。破けた風の黒いローブを纏い、ツノの生えた禍々しい頭蓋骨をカブトのようにかぶっている、銀髪ロングの美形男性だ。
「おう! 妖精王の小童、ワイがデスだ!」
ひねくれている風にぶてぶてしく歩み寄ってくる死神。
これで鎌でも持ってたらそれっぽくなるんだが、これは……。
「殺陣進撃は元々はワイが編み出した技だ! 勝手にパクってんじゃねーぞ」
「あ……スマン……!」
「チッ! 素直に謝ってんじゃねーぞ」
そっぽ向かれて舌打ちされた……。
「デスさま……。素直になった方がいいですよ?」
「はぁ? 弟子のくせしてナマ言ってんじゃねーぞ!! 会えたからって嬉しかねぇやい!!」
なんか赤面して取り乱して、エァミヤラの脛を蹴る。いてぇ、とエァミヤラは飛び上がる。
「いいか? あんなヘナチョコ進撃を今後使われるのが我慢ならないだけだからな!? アレをオリジナルって勘違いされると困るだけだから、直に会ってとっちめてやろうと思った次第だ! 勘違いすんじゃねーぞ!」
びしぃ、と赤面しながら指さしてくる。
なんかツンデレされたぞ……。これが本当の性格……?? 言うほど悪い人じゃないみてぇ?
「どっかの馬鹿が殺陣進撃を、おめーら地球へ持ち込まれてたのは知ってる」
「オカマサとドラゴリラね」
ヤマミの言葉にデスは首を振る。
「元々はワイの弟子だったんだがな……、破門して幻獣界から追放したら異世界から地球へ転がり込んでアホ二人どもに教えたっつーのが事の真相だ」
「そ、そんな事が……?」
「なんで知ってるの──?」
クックさんが首を傾げると、デスは舌打ちする。
「殺陣進撃ってー概念はワイと繋がってん。何しろワイが編み出したからな!」
「ええっ!?」
そ、そういえばヤマミから聞いたけど、スミレが殺陣進撃の事を「タネ坊とキンタのは本当に真似事で、ただの連撃技。誰が本来の使い手か分からないけど、かなり物騒な技なのよね~~」とか言ってたっけ。
その本来の使い手が、今目の前に!?
「ワイはとある功績により昇格されている。故にどこで殺陣進撃が繰り出されたかも把握できる。おめぇの流星進撃もエレナちゃん進撃さえも例外ではねぇ」
「めっちゃ使ってたし、それも分かんだな……」
「ったりめーだろ! 馬鹿弟子が地球のアホ二人どもに軽々しく教え、それをてめぇが見様見真似でパクってくれた事までな! ぜーんぶ分かってんだよ!」
いつの間にか、デスは包丁のような形状の大きな刀を手にしていた。
「そこ動くなよ?」
「え? えぇ??」
思わず竦んだが、息を飲んで頷く。ニッとデスは笑う。
その瞬間、デスから輪みたいなのがドォ────ンと世界へ広がっていって周囲の時間の流れが停滞していく! そしてデスは神速の剣戟を幾重も放ち、尋常じゃない殺気が突き刺さる!!
頭上、胸、肩、脇、腹、足、腕、全身を斬り刻まれる感覚を覚え、衝撃と重みが体内にまで響き、再び時は動き出した!
気付けばオレの後ろでデスが屈んでいた。ヒュウウウ……。
しばしの間を置いてオレは糸が切れたようにフッと意識を失って、倒れていく。
目を覚ますと、ヤマミとクックさんが覗き込んでいた。
思わずヤマミの膝枕から身を起こすと、目の前でデスが仁王立ちしててニッと笑う。黒いローブが風になびく。
「寸止めだったが、実際に斬られた感覚しただろ?」
「あ、ああ……」
そういえば傷も何もない。本当に斬られて死んだかと思っちまった。錯覚?
「殺陣波動……。真髄は斬る意志を具現化し、それを叩き込んで敵の心を斬る事にある」
デスは刀を空振りして、こっちの胸を斬撃が抉った感覚と共に仰け反った。
が、当然血も出なければ傷もない。奇妙な感覚だ。
気付けばデスが横でしゃがみ込んでいた!? 瞬間移動ッ??
「さっきは気づいたのに、今のは気付かなかったかぁ?」
ドキッ! 思わず胸が飛び出そうだ……。
「時の狭間に突入して、擬似的に時を止める……。地球では奥義のひとつっつーか」
「超越到達の領域ね」
ヤマミの言葉にデスはニッと笑い「そうそれだ」と立ち上がる。
「それを行えるのが殺陣極致だ。真髄は極限に高めた集中力によって刹那の世界へ突入する事にある。そして“殺陣進撃”に“殺陣波動”と“殺陣極致”を加えて初めて真の力を発揮する三位一体の“奥義”だ!」
「……奥義!? 異世界の……!」
思わず息を飲む……。
デスは満足そうに去っていく。数歩してから足を止め、半顔で振り向く。
「来い! てめぇに“真の殺陣進撃”を授けてやる!」
あとがき雑談w
エァミヤラ「朝の“無気手合わせ”願いたいが、よろしいですかな?」
ナッセ「無気??」
エァミヤラ「オーラや魔法を発さず、身体能力だけで手合わせする事です」
オーラやエーテルを噴き上げて気合いを入れて戦うのが定石だが、それをやらずに手合わせする事。その為、インフレ戦闘による地形破壊を起こさずに済む道理。
とはいえ平常でも体中に相応量のオーラが浸透しているので、頑丈なのだ。
余談だが、体への損傷を若干消費で肩代わりしてる事があるので、頑丈さに輪をかけているのだ。
なので、この状態でなら真剣で斬り合っても傷はつかない。
話は変わるが威力値十万を超えると、平常であっても素人の針攻撃でも目にすら刺さらないほどの異常な防御力になるらしい。
ナッセ「ミス! オレはダメージを受けない!」
エァミヤラ「笑うw」
次話『アクトたちと再会だ!! しかし勇者セロスは……!』




