69話「幻想的な神殿で宿泊するぞー!」
「私は成体なので、こうして佇むだけで暮らしていけます」どやぁ!
犬の妖精王マシュ様は得意げにヒキコモリを自慢していた?
とはいえ、高次元生命体である妖精王は成体になると、通常の生物のように食ったり寝たりする必要もなくなるみてぇだ。
イリリス聖域の王として即位されてから、会合を除いて外出がほぼない。
外出の予定がなければ数百年以上も引きこもっているらしい。
ちなみに退屈、運動不足、空腹、孤独による辛苦や劣化の概念がねぇみたいだ。
頂上から外殻の中へ連絡する階段を降りながら、オレたちはマシュ様の生活事情に驚いていた。
二匹のウサギが先頭で歩いていて案内役をしてくれている。
「おっどろくよなぁ……。なんつーか無機質っぽい生活だなぞ」
「そうね…………」
「あったしたちも、そうなるのー??」
一歩一歩降りながら、クックさんの言葉に引きつる。
まだ幼少期なので人間らしい生活習慣で過ごせるが、最終的にあんな風に無機質になるかと思えばゾッとする。
師匠が「どんなになっても人間らしく」って言ってたのが分かる気がする。
複雑な想いで通路や階段を淡々と歩いていたら、結構広大だなって感じてきた。
まるで綺麗なダンジョンみてーだ…………。
「……ここ、外壁の中なんだよな?」
この神殿の外殻となる部分は卵の殻のように空洞を覆っている部分だ。
しかしそれでも殻の層は厚くて、幅が約五〇メートルと広い。なので階段やら通路やら部屋やらたくさん整備されている。アリの巣みてーなもんだ。
それにマンションのように多くの部屋が等間隔で並んでいて、色んな住民が住んでいるようだった。
「しかしたまげたなぁ……。不思議なモンばっかだ」
「そうね。正しくファンタジー世界だわ」
エルフ、ドワーフ、御獣、竜族など多様性に富んでいるが、一切争わないらしい。
なぜなら洗練された精神を持つ方々で、地上界のような俗世の者たちとは全くレベルが違う。悪意もなければ欲もない。真理を悟って俗世の生活習慣から逸脱している。まるで仙人みてーな世界だ。
穏やかに歩いてくる二足歩行のネコに「こんにちは」と頭を下げると、にこりと微笑んできて「こんにちは。避難された方ですね。ごゆっくり」と頭を下げてから通り過ぎていく。
御獣族って、本当に色んな種類があるなって思う。
ライトミア王国にいた緑毛色のヨーレンは狼の耳と尻尾が付いているタイプだったが、ここでは色々いるみてーだ。
歩きながらジャオガさんがその事について説明してくれた。
言語を話す四足歩行の獣がケモ度5、二足歩行する獣がケモ度4、人族並の体格の獣がケモ度3、顔と手足が獣がケモ度2、耳と尻尾だけが獣のケモ度1、人族はケモ度がゼロ。
意外な事だが、御獣族は幻獣界で生まれた種族なのだと言う。
……獣といえば、地上界で長い歴史を経て種類を増やして進化していったから、そこから御獣へ進化したんじゃないかと考えそうなもんだけど、全然違うらしい。
ここの濃度の高い霊素を浴びて霊的進化してきたっぽい。
エルフもドワーフも元は人族から霊的進化して来たとか言うけど、人族じゃ暮らせないし行けないんじゃなかったのかと矛盾が気になった。
「死者の魂が精霊や妖精に導かれて幻獣界で生まれ変わったからだ」
ジャオガさんがそう言ってきたのでビックリ!
更に話は続いていて、エルフは精神生命体に近しい存在なので長寿だが、生物生来の生態が残っていて子孫を増やす事もできる。
とは言え、従来の獣や人族と比べると性欲が弱い上に受精率も低いので、際限なく増え続けて人口爆発って事にはならないそう。
御獣族は寿命が人族並の為かそれに該当しない。
傍目で全裸の薄金髪エルフが胸を揺らしながら、平然と歩いてくるのを見てビックリ仰天!!
大きい胸がぼよんぼよん、細いウェストがキュッとしてて、豊満な尻がぷりぷり! 加えて整った絶世の美女! つい凝視してしまう!
「こんにちは。ここは良い所でしょう? どうぞ、ごゆっくりね」
「あ、ああ……。こんにちは……お邪魔します……」
全裸のままニッコリと微笑んできて手を振って、歩き去っていく。綺麗な尻が揺れる。
「あんまり見ないで!」
ヤマミのチョップがオレの頭上に落ちた。ドスン!
と言うか、露出度の高いのが多いな。僅かな布で覆うならまだマシも、葉っぱだけで衣服にしてるヤツや、さっきみたいに全裸のヤツもいる。
性に対して無頓着で羞恥心がほとんどない。こっちには刺激的すぎる……。
なお御獣族は体毛で覆われているせいか、フツーに全裸が多い。
全裸のイケメンエルフと剛毛な全裸ドワーフが平然と歩いてきて、ヤマミは赤面して慌てて顔を逸らす。
フルチンでなに食わぬ顔で行き交いするのも如何なものか。
……ってもドワーフは下の方も剛毛ボサボサなので、ほとんど見えてない。
「ここは地上界と倫理観が全く違うからな」
全く影響しないジャオガさんはなに食わぬ顔で、二匹のウサギに付いている。
そーいやジャオガさんもマントを羽織る事はあるが、基本的に全裸なんだよなぁ……。一見、女性っぽいホノヒェラもただ体がデザインなだけだしなぁ。
「ソネラスさんって竜族から魔族になったんだよな?」
「特殊な儀式が必要だ。……なんだ魔族にでもなりたいのか?」
半顔で振り向いたジャオガさんに、オレは思わず首を振って「い、いや……」と否定する。
構わず話をしてくれた。
魔族になるには色々面倒な準備をする必要があって、儀式も更に面倒な手順を踏まないと効力を発揮できない。
なにしろ、魔族は他の種族と違って何度死んでも記憶をそのままに生まれ変わり続ける生態だからだ。生半可な気持ちで転身する事などもっての外だ。
だからソネラスさんは相当な覚悟でもって望んだのが分かる。
「じゃあ人族に生まれ変わったベルセムも魔族に戻れるの?」
「ヤツが望めばな」
「ほへーそうなんだー!! 初めて聞いったー!」
神殿内部を一望できる大きな亀裂に差し掛かると、空洞の広さに感嘆を漏らしてしまう。
その空洞は大小様々なドンブリ型浮遊物が浮いている。外部から差し込む光と年季の入ってそうな木が幻想的だ。
それに光飛礫がポワポワ漂っている。
オレの周りにも意志を持ったかのように光の玉がフワフワ飛んでくる。
《やぁやぁ、ついに来ちゃったね》
《幻獣界で会えるとは思わなかったよ》
《どうどう? ここって良い所でしょー?》
まさか『心霊の会話』で話し合っていた自然霊と同じ?
光の玉が集まっていってポンとクリオネみたいな半透明の妖精っぽいのに姿を変える。愛着の湧く子どもの顔で、にっこり微笑んでくる。
胴体から生える翼のようなヒレがぐにぐに動く。手足みたいなもの?
「ああ。妖精王様に誘われて……」
《それにしても、相変わらずヤマミとイチャイチャしててリア充だね》
《結婚しちゃいなYO》
《いつもコービしてるのよー》
《……ハダカのつきあい! まぐわう艶めかしさ! グッド!》
思わず赤面する。そういや何でも知ってるんだよな。
ヤマミが「やめて! やめてぇ!」と顔面真っ赤で狼狽しているようだった。
しかし、幻獣界では具現化できるんだな。
物質界である地上界では『心霊の会話』で目をつむった先に浮かんでくるのみ。体の周囲で光飛礫が舞うのは“こもれ出た”ものに過ぎない。
まさか直に話せるとは思わなかったけどぞ……。
《でもさー自力で奥義できるようになったら頼るの止めるなんてひどーい!》
《どうせなら一緒にやろうよー!》
《そうだそうだー!》
《わたし拗ねちゃうぞー!!》
不機嫌なのが分かるくらいプンプンしてる。
思わず「わりぃ……忘れてたワケじゃないんだ」と頭を下げる。するとその中の一体がオレの肩に乗ってきた。
気付けば、わらわらと多くの妖精っぽいのが群がってきた。
「さすが妖精王様。素妖精に懐かれておられるとは」
「さすが妖精王様。素妖精に懐かれておられるとは」
今まで自然霊ってたのは『素妖精』って言うみてーだ。
元々は世界の自然を支える属性元素を司る精霊よりも、更に深い次元の素霊。物質で言えば素粒子みたいなモンだという。
ほぼ概念の存在で時空や空間に縛られない存在。
その意識集合体である素霊が集まって具現化してコミュニケーションを取ってくる個体が『素妖精』らしい。
ジャオガさんの一室、オレ、ヤマミ、クックさんの一室で、案内された。
オレたちの部屋は三部屋で構成される3Kだ。ベッド二つに小さいベッド一つ。キッチンもある。トイレとシャワーも兼備だ。
インテリアとしては洞窟の中といった感じで古風な感じがする。
「妖精王様マシュ様はお見通しのようね……」
「だなぞ」
三人で普通に暮らせるだけの環境がそこにあった。
「ごゆっくりなさいませ」
「ごゆっくりなさいませ」
そう言うとウサギ二匹は頭を下げて薄ら消えていく。ひとりでにドアが閉まった。パタン!
思わずビクッと身が竦んだよ……。
「うわーおー!!」
目をキラキラさせたクックさんはベッドのある部屋へ突撃して、ポヨンポヨンとトランポリンしていった。
それを見てヤマミと一緒に微笑ましく思った。
居間の大窓は外側の風景が見渡せる。眼下に広がっている泡の雲海と数多の浮遊島。そして上空に広がる黄緑の上空が気持ちいい。
黄緑の空に溶け込んで薄らな惑星がいくつか浮かんでて幻想的……。
まるでファンタジーの世界へ入り込んだかのようなワクワク感が高まる。
《ナッセ嬉しそー!》
《もっとワクワクしていこー!》
《いえーい! 一緒に盛り上げていこー!》
オレの肩で頬ずりしてくるヤツ。頭上に抱きついてさわさわしてくるヤツ。周囲を飛び回るヤツ。素妖精ってノリノリなんだなぁ……。
あとがき雑談w
マシュ「まず人類史を授業しましょう!」
ヤマミ「質問! 世界史ではなくて?」
マシュ「はい。いい質問ですね。世界史はあくまで現在の人類が書き記した歴史の事ですので、それ以前の歴史は無い扱いなのです。よしなに」
【人類史】
発生と壊滅または絶滅を一世代として数えている異世界の人類の歴史。
魔法は最初の第一世時代から開発されていた。
・第一世人類時代(7000億年前)身長五〇センチの人類。隕石で絶滅。
・第二世人類時代(6590億年前)犬と猫が宇宙へ進出した。絶滅扱い。
・第三世人類時代(5400億年前)蟻の知的生命体。神の怒りを買って絶滅。
・第四世人類時代(3355億年前)魚人。海を汚染させてしまい絶滅。
・第五世人類時代(1320億年前)猿から進化。現在の人類に近い。隕石で壊滅。
・第六世人類時代(760億年前)恐竜人。時空の魔導師により絶滅。
・第七世人類時代(388億年前)漂流してた宇宙人が住み着いた。壺で壊滅。
・第八世人類時代(387億年前)七世からの遠い子孫。隕石で壊滅。
・第九世人類時代(350億年前)五世の遠い子孫。混沌帝王竜が暴れて壊滅。
・第一〇世人類時代(220億年前)八世時代の遠い子孫。星獣が暴れて壊滅。
・第十一世人類時代(130億年前)植物人。氷河期で壊滅。
・第十二世人類時代(25億年前)宇宙から来たが僅か1万年で絶滅。
・第十三世人類時代(13億年前)鳥人。大航空大戦による環境汚染で壊滅。
・第十四世人類時代(7億年前)九世と十世の混血。星獣が暴れて壊滅。
・第十五世人類時代(5億年前)十四世の子孫。隕石で壊滅。
・第十六世人類時代(2億4300万年前)馬人。感染ウィルスで壊滅。
・第十七世人類時代(1億5000万年前から現在に至る)前世代の子孫による混血。
最初期は世界大戦で壊滅し絶滅しそうになったが、現在は持ち直している。
今世代で塔の魔女誕生。星塔システム確立。
マシュ「第七世人類時代で生まれた私は宇宙人の子孫なのです!」
ナッセ&ヤマミ&クックさん「な、なんだって────────!!?」
驚愕の真実にポカ────────────ン! 顎が地面に着きそう!
次話『蝕んでくる異変……!』




