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68話「幻獣界の妖精王様はモフモフ!?」

 泡の雲海を低空飛行する魔列車が積乱雲の間を次々と駆け抜けて、輪状に周回しているであろう岩の粒々の間へ突入していく。

 まるで土星の輪へ近付くような雄大な雰囲気に呑まれそうになる。


 近付くにつれて、輪状に浮かんでいる岩の粒々は一つ一つが大小様々な浮遊島だと判明した。ほとんど上部に草木が生えている。ただの岩のもある。大きさもリンゴくらいの大きさから、小さな城くらいの大きさまでバラバラだ。

 不思議な事に魔列車が通り抜ける為の空間が空いているような気がした。


 目の前の大きな球体も近付くにつれて大きくなっていく。

 何もかもスケールがデカ過ぎる!


「で、デカいわね……」


 ヤマミも口を開けるほど驚いている。

 クックさんはポカーンと眺めている。ジャオガさんは未だ気難しい顔で座したままだ。


「そろそろ妖精王様の住まうイリリス神殿へ到着します」

「そろそろ妖精王様の住まうイリリス神殿へ到着します」


 例の二匹のウサギがペコリと頭を下げる。


「神殿って……、あのでっかい星みたいなのが?」

「左様でございます」

「左様でございます」

「下車時にお忘れ物なきよう、注意なさってください」

「下車時にお忘れ物なきよう、注意なさってください」


 裸足になっているヤマミが「そろそろ脱がないと!」と言い出して、オレは「あっ!」と気付く。

 ジャオガさんはコクリと頷く。

 クックさんと一緒に靴を脱いで収納本へしまい、裸足になった。


「そうだ。幻獣界でのマナーは裸足(はだし)でいる事だ。魔界で教えた事を忘れてなくて安心したぞ」


 ジャオガさんは安堵した笑みを見せる。


 そう、幻獣界では基本靴を吐かない種族が多い。

 それに裸足で神聖な大地に触れて、自然の恵みをありがたくいただく為でもある。それ故に遮断してしまう靴をはいていると無礼に当たる。自然の恵みを拒絶する、とも解釈されるらしい。

 ジャオガさん曰く、幻獣界の住民は注意も何も言わないけど、訪問者に対する心証が天地の差ほどに違うそうだ……。


「前もって教えてくれてありがとうな」

「礼するに及ばん。そろそろだ」


 ジャオガさん嬉しそうな気がする。あとウサギさんの表情も柔らかい気がする。

 もしかしたらだけど「下車時にお忘れ物なきよう注意」は裸足になるよう暗に促してたのかもしれない。

 アクトやリョーコたちにも教えとかなきゃな……。


 途方もない距離の輪を渡っていたのに、ものの数十分ででっかい神殿へ入っていく。

 そのまま穴もない外壁にぶつかるーって思ってたら、螺旋状に分解するように開けられた。その中を通っていく。

 真っ暗なトンネルをしばし通り抜けていると、ようやく明るい所に出れた。


 すると魔列車がひとりでにパーツごとに分解されてパラパラと地面へ吸い込まれていって、最後オレたちが立っている床までがゆっくりと地面に沈んでいく。

 気付けば神殿内部は、圧倒的広大な球状の空洞。大小様々なドンブリ型の浮遊物があちこちで浮かんでいて、大樹など草木が中心部に生えている。中には池もある。光飛礫が数多とフワフワ漂っている。

 あのでっかい星みたいな遺跡の中が空洞だったとは思わなかったぞ……。


 あちこち大小様々な窓から光が差し込んでいるのも含め、パックリ開けられている亀裂もあって、空洞の中ながらも昼間のような明るさを保っている。

 どことなく外壁がゆーっくり回ってねぇ?


「では妖精王様の所へ移転します」

「では妖精王様の所へ移転します」


 トコトコとウサギ二匹が互い離れて、こちらを挟む込むように円形の床の端まで来ると魔法陣が浮かんできた。カッと閃光がこもれ出ると視界が白光に覆われた。

 すると目の前に巨大な犬が現れた。うお、でけぇ!


 ここは巨大なストーンヘンジみたいな環状列石に囲まれた頂上。周囲は草木緑生い茂っていて、それは列石の上にもかかっていて神秘的な美しい風景だ。ホタルのように光飛礫がフワフワ飛び交っている。

 そして列石付近の台座に巨大な犬が鎮座している。


「こちらこそがイリリス聖域地方の妖精王マシュ様でございます」

「こちらこそがイリリス聖域地方の妖精王マシュ様でございます」


 ウェーブがかかった白毛で全身を覆うほどで僅かに前足が覗いている。そして長い耳を垂れた荘厳な犬の顔がこちらを見下ろしている。

 やはり足元はポコポコと花畑が咲き乱れ続けている。そして背中には翼のように花弁が六つ浮いている。

 オレたちと同じような妖精王だって分かる。


「み……御獣(ミケモ)族の……?」

「妖精王!?」

「モフモフ妖精王さんっだ────!!」


 すぐさまジャオガさんは跪いて「ご無礼を許しください!」と頭を垂れる。

 オレたちも慌てて跪いた。しかし「畏まらなくともいいです。普段通りで構いません」と言われて、揃って頭を上げた。


「ようこそいらっしゃいましたね。急に呼びつけて申し訳ございません」


 今度は妖精王マシュ様の方が頭を下げてきた。

 穏やかで謙虚そうな雰囲気で緊張が解れてきそうだ。するとこちらを見てきてドキッとする。


御獣(ミケモ)族出身ではありませんよ。元は普通の犬だったのです。よしなに」


 なんとこちらが言ってた事に返してくれた?

 話によると、かつては人族に飼われていたペットだった。とある日に妖精の種(フェアリー・シード)を食べてから、数百年もの輪廻転生を経て高い知能と能力を得ていった。自意識が強くなった頃から御獣(ミケモ)族のように言語を理解して、他の種族ともコミュニケーションを取って成長し続けてきた。

 その果てに成体になった際に神格化され、幻獣界のイリリス聖域を治める王として即位した。

 ……と親切に語ってくれた。


 さすがのジャオガさんも汗を垂らして、ポカンとしている。

 まさかここまでフランクとは思わなかったのだろう。


「申し遅れました。私はイリリス聖域地方の妖精王マシュです。よしなに」

「さっき紹介しました」

「さっき紹介しました」


 ウサギ二匹に突っ込まれて、しばしの沈黙……。

 そーいえば最初に紹介してくれてんだよね。気まずい空気……。どーすんの?


「……さておき」


 さておいた!?


「ここにお呼びした理由です。私は予知夢を見ました。恐ろしく凄惨な災厄が地上界を蹂躙する様を!」

「なんだと!?」


 跪いたままジャオガさんは驚く。汗が頬を伝っている。

 セロスが悪堕ちした夢を思い出して、思わずギクッとした。それを見透かしたかのようにマシュ様がこちらを一瞥する。


「妖精王にはふと予知夢を見る事があります。ただし可能性の問題であって、必ず起きるとは限りません。よしなに」

「可能性……」

「ただ高い確率で起きるので、事前にその未来を回避するようにしなければ正夢になるでしょう」


 ホッとしたような、してないような……。複雑な心境だ。

 最悪の未来を回避するように、前もって動けばいいって事なのだろうが……。どうすればいいのか皆目付かねぇ……。

 悪堕ちする前にセロスを説得すれば、なんとかなるんだろうか?


「災厄が起きてからでは間に合いませんから、こうして先手を打ってあなたたちを幻獣界へ緊急避難させたのです。よしなに」


 呆然とするオレを傍目にヤマミが「今は起きてないって事ですか?」と質問すると、マシュ様は「はい!」と俯いてきた。

 ……つか、何が起こるんだ!? 一体?? 魔境関係か!?


「そう遠くない内に事は起きます!」

「それなら大変だ!! まだ友達がいるんだ! 助けに行かなきゃ!!」


 思わず立ち上がった。


「ご心配なく、もう既に招待状を出しておきました。それから外周に人族用のコロニーを緊急建設しておきましたので、承諾されれば数日後に転移されるでしょう。ナッセ君の友達も含めてありますのでご安心なさってください。よしなに」


 なんつーか話が早くて助かるなぞ。

 ……でも人類全てじゃないってジャオガさん言ってたからなぁ。仕方ない。


「今は長い旅路で疲れたでしょう……。こちら神殿で部屋を用意しておりますのでごゆっくりなさってください。よしなに」

「それより地上界へ送ってくれねーかな? 災厄って『深淵の魔境(ディープダンジョン)』の事だろ? こちとら二つクリアしてんだ! オレもアクトたちと一緒に戦う!」

「私もお願いします! 一緒に戦えばクリアできるでしょう!」

「あったしも戦う────!」


 ヤマミもクックさんも立ち上がってオレと一緒に嘆願する。

 しかしマシュ様は首を振る。


「止めておきなさい! まず確実に全滅します!」

「…………ええ??」

「え────!? なんでなっんで────??」

「今までの『魔境』とはワケが違います。焦らず落ち着いてください。よしなに」


 全滅は確定だから呼び寄せたって事か……?

 こうして未来を見透かされると、言いようのない焦燥を抱いてしまう。


 するとヴン、と後方で巨大な映像が展開された。


 青く澄み切った大空、緑生い茂る大陸として平穏そうな地上界だ。まるで鳥の目線のように風景が流れている。

 山を越えると光のライトミア王国が懐かしく映し出されていた。

 いたって平和だ。これから恐ろしい事が起きるとは思えないほどに……。


「今日は何も起きません。ここで映像は開いておきますので、いつでも見に来ていらっしゃい。よしなに」


 それはともかく、地上界にも赤い結晶生えてねーか? あれ魔界のじゃなかったっけ?

 なーんか気になるなぞ……。

あとがき雑談w


ナッセ「マシュ様は元は犬だったんだよな?」


マシュ「ええ、もうずいぶん前の事になります……」

ヤマミ「どれくらい昔なのかしら?」

マシュ「私のは第七世人類時代ですね。現在では第十七世人類時代です。よしなに」

ナッセ「なんだそれ??」


ジャオガ「人類の発生から壊滅または絶滅までを一世代として数えている事だ。つまり現在まで少なくとも数回くらい絶滅したって話だ」


ナッセ&ヤマミ&クックさん「な、なんだって────!!?」


 この惑星ロープスレイが誕生してから人類が生まれて、幾度もなく絶滅を繰り返し続けてきたようだぞ。

 昆虫人だったり恐竜人だったり、様々な人類がいた模様……。


マシュ「私が生まれたのは388億年前ですね。よしなに」

ナッセ&ヤマミ&クックさん「な、なんだって────────!!?」


 思わずポカ────────ンとしたぞ! 顎が外れそう!



 次話『全裸のエルフとばったり出会います。よしなに』

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