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65話「魔界の魔境クリアの余韻……!」

「「「うおおおおおおお────────ッ!!」」」

「やったぜ!!」「これで魔界は平和だぜ!!」「また“戦祭”ができるぞ!!」


 魔界では魔境クリアで歓喜に賑わっていた!


 魔境があった場所の上空で『深淵の魔境(ディープダンジョン)クリア! 最下層のラスボスの撃破者は“魔迅の鬼神”タッド! 秘宝取得完了!』とデカデカと書かれていて、タッドのバストアップ像が映し出されていた。

 一緒にクリアしたオレたちの顔や名前が小さく羅列されていた。


「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」「タッド!!」


 下半身タコのタコヤキンに背負わされたまま、タッドは嬉しそうに手を振っている。


「あいつ……スゲー人気者なんだな」

「にんっきものー! にんっきものぉー!!」


 周囲の魔王魔族は嬉しそうに焚き火を中心にワイワイ騒いで盛り上がっていた。

 嬉しそうにはしゃぐクックさんを肩車しながらオレはヤマミと一緒に、その様子を感無量(スッキリ)と眺めていた。

 トドメを刺したのはタッドだけど、クリアできたワケだし上等上等。

 やはり元から大人気なタッドが魔界の顔になるのは喜ばしい結果かも知れない。


 するとタッドを背負ったタコヤキンがこちらへ近付いて来た……?

 快く笑って「おめでとうタッド。負けたよ」と祝った。


「これやるっす」


 なんとタッドは漆黒の剣を象った首飾りを差し出してきた。思わず仰け反る。


「これ……は??」

「魔境クリアした時にもらった秘宝っす。『無断の首飾り』って言うらしいっす。所有者に降りかかる無限の概念を断ち切り、その再発が不可能となるって説明されたっす」


 漠然とした説明に、眉を潜めて首を傾げる。

 タッドも秘宝をもらう際にそう説明されたけど、ちんぷんかんぷんだったらしい。

 ってかどういうタイミングで使えばいいのかオレも分かんないけど、秘宝ってたから相当レアなんだろうな。


「おいおい! とんでもねぇレアかもしれねーんだぞ……?」

「嫌でも受け取ってもらうっす! 大体、ボク一人で撃破したワケじゃないのに独占勝ちってのもスッキリしないっす!」

「タッド……!」


 ぐいぐい胸に押し付けてくるので手に取ってしまう。

 すると漆黒の首飾りが薄ら半透明になってポワッと淡い光を放ってきて驚いたが、ほどなく収まっていく。何が起きたか分かんないけど、なんともないみてーだ。

 それに発光する際に半透明になってたはずが、再び漆黒に戻っていた。


 呪われた、とかじゃねーよな?


「どうせボクに使い道ないっすから、ここは貸しっす。返さなくてもいいっすけど……」

「後で返せっつっても知らんからな?」

「大体、あの鈴で致命傷だったしボクのは蛇足っす。棚から牡丹餅っす」


 なんか変に意地張るよな、とオレは苦笑い。

 せっかくなので首飾りを首にかけてみた。オシャレしてるみてーでむず痒い。

 クックさんは「カッコいいー!」と目をキラキラさせていた。


「────って事で決着はお預けっす! 次こそボクが勝つっすよ!」

「ああ! だがオレが勝つからな!」


 タッドの突き出した拳にオレも拳で突き合わせた。コツン!

 そして再戦を誓うようにしみじみする。いつかまた競争する為に、互い認め合うライバルとして心に固く刻んだ。

 この魔境で得られたものは秘宝だけじゃない。かけがえのない通じ合い。宿敵と書いて友と呼ぶ。


 オレはタッドって友達を得たんだ…………!



「タッド戻るぞ。シルビュード様が待っている」

「了解っす」

「ああ。またな」


 ビシッと挨拶のポーズを見せるとタコヤキンと共にタッドは去っていき、声援と魔族たちに包まれていった。

 オレは秘宝を手にしたまま呆然としていたが、スッキリしたように口元が緩んだ。

 こういうのも悪くないかもな。


 ……本当を言うと、凶人王(バッドロード)はオレ一人じゃ勝てなかった。


 歴戦の魔王魔族を蹴散らし全滅に追い込んできたほどのラスボスだ。

 タッドと競い合う事で結果的に助け合いになってたんだ。だからあれほどまでに力を限界以上に引き出せた。今思えば一気呵成で倒したから呆気ないように見えっけど、ギリギリ届いたって感じの紙一重の勝利だった。

 自分でもあれほどの力を出せたのは初めてだったしな。


「今夜は寝かせないわよ?」「え?」


 拗ねたヤマミに腕をつねられた。また絞られるなぁ……。

 クックさんは意味が分からずキョトンと首を傾げる。




 ────ガタンゴトン!


 魔境があった所で一晩過ごした後に、魔列車で闇のダークロス王国へ向かっていた。

 クリア後の余韻か疲労か、オレたちは一日中泥のように寝入っていた。

 ……ヤマミとの営みも含めて疲労すげーから、ほぼダラけた乗車だったなぁ。ジャオガさんと四魔将も瞑想が長かったから強靭な魔族でさえ激しい疲労だったようだ。

 乗車の内、後半の四日間はボケーと景色を眺めて余韻に浸るみたいな感じだったぞ。


 それに遠くの風景がゆっくりで、近くのものほど速く過ぎ去っていくのも風情があっていい。

 流れゆく等間隔の明かりが電車内をパッパッパッと点滅するように照らしていくのも感慨深い。トンネルの中を通り過ぎる時に薄暗くなって、心許ない等間隔の明かりが過ぎ去っていって再び外に出た明るさで開放感を感じるのも幼い頃を思い出させる。

 ……なんか赤い結晶あちこち生えてたのが気になったが魔界だしな。


 オレの肩にもたれかかるヤマミの頭の重さで自分が孤独じゃないと安心させられる。


 ガタンゴトン、電車の断続的な揺れと流れる景色に酔いしれる。

 こんな驚くほど静かなのは久しいかも知れない。まぶたを閉じると心地よい眠気に支配されて意識の闇へ沈んでいく……。




 突然弾けるような緊迫感で目が覚めると、ジャオガさんが黒炎玉を片手に浮かせて見下ろすのが視界に入った。


「ふむ、たるんでないようだな。ぶち込まずに済む」

「ん? もうそろそろ?」

「ああ。降りる準備しとけ」


 黒炎玉を霧散させて、席に腰を下ろした。

 ヤマミとクックさんは既に起きていたようだった。最後オレか……。

 窓から見ると、向かう先に都市の明かりが遠景で見えていた。闇のダークロス王国だ。




「「「うおおおおおおおおおお────────ッッ!!!」」」

「惜しかったな!!」「だが、よく帰ってくれた!!」「話を聞かせてくれ──っ!!」「こっち来いよ! 奢ってやるぜ!!」

「さぁさぁ、宴だ────────っ!!!」


 駅へ着くなり、大勢の魔族たちが歓声上げて迎えてくれたぞ!!


 タッドにクリアされたにも関わらず、上機嫌でもみくちゃしてくる。嬉しそうで楽しそうで活気満ちる魔族たちにオレもなんだか嬉しくなってきた。

 王国の空で絶えない花火が派手に彩ってくる。様々な花火が繰り出されて飽きない。


 そしてワイワイガヤガヤと魔族たちで色んな料理と飲み物で盛大に祝っていく。

 食べて、飲んで、踊って、歌って、明るく楽しい雰囲気で王国は賑わっていった。


 オレたちも思いっきり日中のように楽しんだおかげで、また疲れがドッとのしかかったのだった……。




 魔王城のバルコニーの外で花火を見上げながら、ヤマミと一緒に余韻に浸っていた。

 大きな花火、連鎖する花火、パチパチ弾ける花火、噴水のような花火……、ドドンドンドン、音の衝撃が全身を突き抜ける。


「これで『深淵の魔境(ディープダンジョン)』は残り五つ……」

「順調ね」

「ああ……!」


 だが、どうにも不吉な予感がぬぐい去れない……。

 勇者セロスが悪堕ちする夢のせいかもしれないが、もっと別にあるような気がする。


「ぶっちゃけた方が楽になれるわよ?」


 やはりヤマミは見透かしていた。いや、見透かしてくれた。

 それだけでオレは安心できる……。


「……分かるんだな」

「付き合い長いからね」


 首を傾げて笑ってくれるヤマミが眩しく見えた。





 王国の外側の荒野……。あちこち点在する赤黒い結晶群晶が怪しく灯っていた。

 にょきにょき、新しく結晶が地面から生えてくる。


 誰も気付かない緩やかなスピードで不穏に増殖を続けていた………………。

あとがき雑談w


 実はジャオガとシルビュード卿以外にも生き残り組がいた。


“邪淵海の魔王”シャンオール「ボコボコにされたけど死んでないわい!」

“死霊の魔王”ネクロレース「ワシもな!」にゅっ!


 消されたはずのネクロレースが現れて、シャンオールはビクッと竦む。


シャンオール「消し飛ばされたはずでは……?」

ネクロレース「言ってなかったが、緊急用の時空間魔法で間一髪逃れたのじゃ。それで精一杯だったがな」

シャンオール「しかしチバード殿は残念でしたな」

ネクロレース「…………見ろ!」


 なんとミニサイズのニワトリがパタパタ翼を羽ばたかせている!?


チバード「コケケココケケ!(ヤツに切り飛ばされた腕で再生したのだ!)」


シャンオール「チバード殿が遺したニワトリだ!」

ネクロレース「うむ! 彼の尊い犠牲を無駄にすまい……! 美味しくいただこう!」

チバード「コ! コケッコケッ!?(おい! 待て待てっ!?)」


 グエ────!!



 次話『マイシ、魔境クリアできたのか!?』

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