63話「絶望的な力の差!! 凶人王の猛威!」
《第四階層にて“獄鳥の魔王”チバード勢力が全滅したぞーッ!!》
魔境の入口で並ぶ魔王勢力たちがザワザワする。
口々に「マジかよ……?」「あのセキセイインコ好き魔王が?」「う……嘘だろ!?」と戸惑いが広がっていく。
そんな折、荒野のあちこちに赤黒い結晶群晶が不気味に灯っていた。近くでニョキッと赤黒い結晶が生える。
────────宇宙にも届くほどの星塔!
窓のない薄暗い広間で、ソファーにくつろぐ二人の魔女が複数のモニターを静かに眺めていた。
ナッセたちが魔界の魔境で奮戦している場面もあるが、アクトやリョーコたちが勇者たちと一緒に奮戦しているのもある。いくつかの魔境の様子を、複数にモニターで映し出していた。
「……難易度が時間経過と共に増していくのも、初めての事象だね」
「それ、徐々に加速してないー?」
サラカートとエムネも不穏な気配に眉を潜めている。
緩やかな増加だと思ってたが、少しずつ加速していくのが胸騒ぎだ。元より“聖絶”は延々と増幅し続けているモノなのだからか。
これからどうなっていくか不安しかないのだが、二人にできる事はなかった。
「……自ら起こした『ロースプレイ大祓祭』は自分で魔境を攻略できない制約。どのみち指を咥えて待つしかないね……。彼らが攻略して浄化し切るしかない……」
「それはそうなんだけどねー」
サラカートは遠い目でため息をつく。
────ロゼアット王国付近の魔境!
赤と紫で混濁する不気味な空。
墓石みたいな立法長方形の浮遊物があちこち漂い、その上部には西洋の墓がいくつも羅列する墓場。
しかも人魂みたいな薄白い火の玉がゆらゆら飛び交っている。
「来るぞ!!」
アクトとリョーコが並び、そして勇者たちも第四階層のラスボスが動き出すのを目の辺りにしていく。
巨大な棺桶が縦に浮いている。
誰もがゾクゾク背筋に悪寒が走っていた。
そのフタが軋み音を立てながら左右に開かれていく。すると黒く濁ったモヤが溢れ出しながら、白骨の手がフタを押しのけていく。
王冠をかぶった王様風の骸骨がぬうっと巨体で姿を現していく────。
「グフォォォ……! 美味しそうな生命体の鼓動を感じるわい……!!」
途端に強烈な威圧が席巻してきて誰もが身動き出来ぬほど、想像を絶するものだった!
恐怖に竦む勇者たちもアクトとリョーコも絶句するしかない!
【大厄災の死骸王】(アンデット族)
威力値:340000
王冠や王様の衣服を着た巨大な骸骨。左右から屈折したツノを生やす。暗闇の眼孔からは光の目が覗く。
攻撃力よりも特殊な能力が厄介で、威力値では本当の実力は推し量れない。
佇んでいるだけでも周囲の生命力を無尽蔵に吸収し続ける。再生力が凄まじいので圧倒的な力で消し飛ばすか、上級の浄化系スキルなどで昇天させるしかない。コイツを前に死んだ生命体はゾンビとして兵力にされる。
人界に現れると確実に壊滅的打撃を受け、下手すれば侵食されて滅びる。魔王級。
「なによ! これってナッセがいれば楽勝じゃないのッ!」
「あァ……! だが、今は無いものねだりしてる場合じゃあねェ!! 全力でブッ潰すぞァ!!」
アクトは凄まじい気迫の形相を浮かべ────────!
「……万覇羅弐!!!」
────魔界の魔境!
天使の翼を生やした真っ白の赤子のような凶人王が鮮血に塗れた腕を振り、狂気の眼差しでこちらを睨め付けてくる。
すると左右から赤い大津波が挟み込んでドッゴーンと強烈な衝突!
振り向けば、太った“邪淵海の魔王”シャンオールが両手を向けていた。
「気を抜くでないぞ……! 仕留めておらぬ!」
言われた通り、膨大な水量の塊を横一線と裂き、凶人王が抜け出してくる!
まるで海が破裂したかのように轟音を立てながら四散していく。
すかさず水の魔族が飛び出していって一斉果敢と波状攻撃を仕掛けるが、瞬時に全て首をはねられ血飛沫が舞う。
“死霊の魔王”ネクロレースが怨霊が滲み出る鎖で凶人王を絡め取ってギュッと絞め殺す勢いで縛り付ける。ぐぎぎぎ!
「今だッ! 一斉攻撃じゃあ────ッ!!」
魔王ジャオガ、四魔将、そしてオレたちも攻撃準備を始めていく。未だ凶人王はギリギリと震えている。まだ抜け出せていないが死霊の魔王は「グ……! なんて力だ!」と焦りを滲ませていた。
オレはヤマミと手を合わせて『連動』した後に、雫を集め太陽の剣を銀河の剣に変え、その超巨大な剣の切っ先に光子を集めていく。
ヤマミも偶像化で自らを包み、その巨大な杖の先っぽに漆黒の球が降着円盤を伴いギギギギと不協和音を響かせる。
クックさんもデフォルメされたウニの形をした赤い球を作り出す。
「撃てェ────────ッ!!!」
魔王ジャオガさんは超巨大な黒炎玉を撃ち、四魔将はそれぞれ最強の攻撃を繰り出し、“邪淵海の魔王”シャンオールも配下と共に荒ぶる海の波動を放ち、シルビュード卿も竜巻を起こしてそれを球状にして撃ち出す!
オレたちもそれに続くぞッ!!
「ギャラクシィ・シャインスーパーノヴァ────ッ!!」
「ブラックホール・ダークコラプス────ッ!!!」
ヤマミと共に奥義による刀剣波を放ち、極太の光線が大気を切り裂いていく!
クックさんも「“特大”賢者のウニ────ッ!!」と巨大なウニを撃ちだす!
その集中砲火で凶人王を超特大爆発に包んだ!! 全てを震撼させ、凄まじい烈風が吹き荒れていく!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
未だ爆煙が広がり続けていたのだが、まだ悪意が感じられ緊迫する。
徐々に煙幕から四方八方と閃光が放たれていく……。それは神々しいようで神の降臨を思わせる雰囲気で、晴れていく煙幕から凶人王が神秘的な輝きを放って姿を堂々と晒していく。
思わず見惚れそうだが、それはあくまで自分を神聖なものと見せかける演出でしかない。
「偉大なる神の子である人類に歯向かう下賤なる種族よ! 無礼を弁えぬのならば、我が力に滅ぼされるがよい!」
滲み出る傲慢な自己顕示欲と醜悪な悪意は悪魔そのものだ!
水の魔族や怨霊魔族が一斉に群れて襲いかかるが、凶人王はにぃと笑い、瞬時に動き出す!
通り抜けた後、数百数千もの魔族たちは一斉にちぎれ飛び血飛沫を散らしていた。
“邪淵海の魔王”シャンオールも「うがあああああ!!」と吠えて襲いかかる!
凶人王は縦横無尽と駆け回りながら拳の乱打で徹底的に打ち込む。筋肉の塊であろう頑強なはずの体が上下左右と踊って、べこべこに窪みが刻まれていく。思わず絶句する。
血塗れでゆっくり沈んでいく巨躯……。オオオォォォ…………ンッ!
あ、圧倒的すぎるぞ……!
すると大きな仰々しい両手が凶人王を鷲掴みする!
振り向けば“死霊の魔王”ネクロレースが背後に大きな地獄の門を開いていて、中から黒く染まった悪魔が凶人王を掴んだまま「オオオオオ!!」と唸りを上げていた!
「永遠の苦しみに縛られろ!! 永劫地獄門・夢幻煉獄殺ッ!!!」
そのまま扉の中へと引きずり込んで、バタンと扉が閉まった!!
しかしズンと扉が震え、亀裂が走っていって破裂すると共に肉片と化した悪魔が飛び散りながら凶人王が抜け出してきた!
そして死霊の魔王へ迫り、肩から腰まで斜めに手刀を入れて両断!
「が…………!?」
死霊の魔王は信じられぬと絶句し、血を吐く。
凶人王は「不遜ですねぇ……。裁きを受けよ!」と爆発球を連鎖させ、跡形もなく消し飛ばした。
にまりと邪に笑う凶人王。殺戮が好きでたまらないって顔だ。
「くッ!! これほどかッ!?」
魔王ジャオガさんも焦りを滲ませていた。
側でシルビュード卿が竜巻の嵐を周囲に展開し、凶人王へ襲いかからせるが難なく弾かれて霧散してしまう。
じ、次元が……違いすぎる…………ッ!!
「あなたに慈悲を!」
瞬時にシルビュード卿の前に現れ、手で胸に触れる。恐怖で竦む。
すると凶人王は頬を黒い魔剣に殴られて吹っ飛ぶ!!
「やらせはしないっすよ!!」
なんと三叉の鬼神のツノ! そして赤い稲光! 大鬼神タッドだ!!
凄まじいフォースを噴き上げて、吹っ飛んでいる凶人王へ追いかけていく! しかしすぐさま体勢を整えた凶人王がタッドと激しい格闘の応酬を繰り広げていく!
必死に魔剣で黒閃を幾重に放つタッドを、凶人王はニヤニヤ愉しげにあしらっている。
黒閃の嵐をも潜り抜け、タッドの腹に拳を叩き込み、左右の拳によるフックの嵐で顔を殴り続けていく。まるで勝負にならない。
「が……!」
組んだ両手で打ち下ろされ、タッドは下の宇宙都市へ叩きつけられて飛沫を吹き上げる。
「だ、ダメなのか!? とんでもなく強ぇえ……ッ!!」
「悪魔の教皇以上よ!!」
「ああ! 四首領級かも……!」
こちらをぎょろりと悪意の眼差しを向けてきて恐怖で竦む。
魔王ジャオガと四魔将が「そうはさせん!」と阻むが、凶人王の圧倒的力の差を前に蹴散らされてしまう。
ジャオガさん、アマリビグ、ホノヒェラ、ソネラスは絶句したまま血を吐きながら、あちこちの宇宙都市へ吹っ飛んでいった。飛沫を上げた後、四者揃って血塗れで横たわる……。
まさに別格の強さだ! オレたちが束になってかかっても敵わないほどに……ッ!
「に、逃げろ!! ナッセェ!!」
「ヤマミ!! クックさん!! はや……ッ」
ジャオガさんたちが震えながら口々に叫ぶが、恐怖で体が竦む。
凶人王が瞬時にこちらへ間合いを詰め────────!
しかし巨大な黒閃の嵐が押し流していき、遥か向こうで大規模に爆煙が広がっていった。空震と共に烈風が吹き荒れてくる。
思わず呆気に取られる。
「ナッセはボクが勝つっす!! だから邪魔させないっす!」
なんと真っ黒な肌、ライオンみたいなモフモフのタテガミ、そして頭上で稲光を散らすツノセイバー、荒ぶる赤黒い稲光を全身にバリバリ迸らせる男! そう超鬼神タッドだ────────ッ!!
ついに最強形態を開放し、凶人王へ臨む!!
「最強のツノセイバーモフモフ形態きた────────ッ!!」
「モフモフじゃないっすよぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」
とは言え、おかげで強張っていた体がほぐれた。しかし未だ震えは残っている。
あとがき雑談w
もしも凶人王が人間界へ訪れたら……?
勇者セロス「なんて威圧感だ……! 全裸なのに!」
戦士ファリア「魔王魔族なんて目じゃないぜ! ち○こ無いのに!」
魔道士モリッカ「今日から冒険者仲間なんですね~! 赤ちゃんなのに!」
凶人王「…………おい傷つくぞ」
というワケで登録する為に一緒に冒険者ギルドへ!
だが、凶人王(3m強の巨躯幅広)大きすぎて扉へ入れない! ガッ!
三人「…………」
凶人王「…………」
服屋にもガッ! 酒場にもガッ! 食堂にもガッ! 宿屋にもガッ!
凶人王「どこにも入れねぇ……。しくしくしくしく」
勇者セロス「よし! バッ君はダイエットするしかないな!」
賢者メーミ(そういう問題ィ!?)
次話『恐怖を克服して戦え!! ナッセの奮起!!』




