60話「これが更なる進化! 妖精王2!!」
赤く透き通った湖に捻れた魔界の木々、そして毒々しい紫の草原。
人族にとってはおっかなくて落ち着かぬ風景なのだが、魔族にとっては憩いとなる自然風景も同然だ。
もちろん、ここは第三階層をクリアした後の安全地帯である。
ジャオガさんと四魔将に加え、シルビュードさんとその配下たちも一緒だ。タッドはショボンとした感じでドリンク飲んでる。
いきなり最強変身したせいで負担ハンパなくて、回復が芳しくないようだ。
でも明日には元通り元気になるそうで安心だ。
ヤマミとクックさんに見守られる中で、妖精王のオレは広い所で突っ立っていた。
足元に淡い光の花畑が急速に咲き乱れ続けていて、花吹雪が舞っている。背中には花弁を拡大させた八枚の羽が浮いて神々しい風貌だ。
「……よし行くぞォ!!」
カッと気力を漲らせて体内から爆発させる感覚でフォースを噴き上げていく!
更に地響きが激しくなり、オレは「おおおおおおッ!!!」と額に血管を浮かばせながら踏ん張り続ける!!
なんと咲き乱れ続ける花畑が、今度は枝分かれしながら花咲かせる細い木へ育っていく花木にグレードアップする!
そして髪の毛が少々逆立ってきて、後ろ髪もブワッとやや放射状に舞っていく! 羽も少々変形して先っぽのフチがギザギザに伸びていく!
「これが妖精王第二形態……、妖精王2……ってトコか」
「うっわー!! すっごーい!! ナッセー超パワーアップっだー!!」
クックさんは目をキラキラさせてピョンピョンはしゃぐ。
しかしヤマミは「ナッセ?」と、こちらの浮かない顔を察しているようだ。
「多分、更に妖精王3にも変身できる思う。こういう系の変身は大して難しくねぇ……」
フォースや花木を霧散させて、元通りの人族へ戻って一息。ふう……。
なんか少し怠い。体が重く感じる。軽い倦怠感みてーなものだな。立ってるだけでも少々辛い。
もし妖精王3になってたら、タッドのように数日はへたばるだろう。たった数十秒で数日間の損失は痛い。試したいとは思わない。
首や肩を鳴らしアグラを組んで座り込むと、クックさんが背中から肩を揉んでくる。
「肩こりーもみもみー! もっみもっみー!」
小さな手によって解されてて気持ちいい。
「先走ったタッドの三段階変身を見て試したんだが、やっぱ妖精王2でさえ軽く体調崩すくらい負担大きすぎら……。とてもじゃないがダンジョン探索にはぜってー向かねぇ……」
「そこに気付いてくれたのなら良かったわ」
「え? ヤマミ??」
ヤマミも気付いていたのだが、オレが無茶しでかさないかと心配だったらしい。
劇的パワーアップって事で舞い上がりそうだよな。オレも思う。こういうパワーアップ系はロマンあるし。
「更に妖精王4、5、6……と度重なる変身もできるだろうけどリスクが過ぎる……。これは『人族から妖精王に変身する相対的なパワーアップ』ではなく『ムリして出力を広げた強引な変身でパワーアップ』だな。これだと下手すっと体壊しかねねぇ」
「そうね」
「ともかくコレはナシな。そのまま妖精王1で底上げしてた方がいい。遠回りになるけどそれが一番だと思う」
「ふふ」
ヤマミは感心するような微笑み。
クックさんはにこーって笑顔で、オレの背中に抱きついて懐いてきた。
「だいぶ賢くなってきたじゃないか」
なんとジャオガさんが嬉しそうに歩いてきていた。
「そうかな……?」
「生物学的に人族より妖精王の方が知能が高い」
「じゃあ、ナッセもヤマもあったしも頭いいんだー!!」
ジャオガさんが言うに、既に人族の知能レベルを超えているから相対的に思考能力も上がってるらしい。
自分で言うのもなんだけどオレはバカだ。でも妖精王の中では、という話かも知んねぇ。人族から見れば天才……?
「人族の知能指数基準で言うと、妖精王幼少期で一五〇は超える。ちなみに人族は一〇〇だ。これは平均的な数値だがな」
「あんま実感ねーけどな……」
「おまえは最初に余の話を聞こうとしてくれた。魔族がまだ敵だと思い込んでいるのにも関わらずにな。それが知能の高い証拠だよ」
「そ、そうなのか?」
そういえば、魔界へ誘われる時に魔王の強襲かと緊張してたけどワケありのように見えたから、事情を聞こうとしてたっけ?
「むしろ人族の方が知能も品位も低すぎて泣けるくらいだ。プライドが高く意固地で相手の事情を知的に理解しようともしないからな。だから話も聞かず自分都合で“敵”を決め付けて叩いてくるのだ」
呆れてくるジャオガさん。
「だから友好関係を持とうとしない?」
「ああ、気に入らなければ難癖をつけて差別や駆除したがるからな。向こうは『どうやれば良くなるか?』よりも『どうやれば自分の思い通りになれるか?』みたいな征服感が強めだ。故に権力に固執し、そのせいで争いが起きやすい」
ヤマミは目を細め「それで敢えて敵対関係を保ってるワケね」と呟くと、ジャオガさんは頷く。
「でもさぁ、頭が良くなると悪い事考えやすくならない?」
「それは実は知能と比例しない。単に人族の低俗な品位が原因だろう」
「……そうなんだ」
むむー種族が違いすぎっと、こんな差異がでてくるものなのかー。
今まで同じ人族ばかりの世界で暮らしてたしなー。
ジャオガさんはポンポンと優しくオレの頭を叩きながら「だから秀でた知恵と力を持つ神々は直接干渉を禁じ、辛抱強く見守るのだ」としんみり言ってくる。
思えば師匠もそれ以上の事はしてこなかったっけな……。
その気になりゃ四首領も大魔王も悪魔の教皇もコテンパンにできっけど、人類の成長を邪魔するので我慢して見守ってるって事かなぁ?
徹底的に人間社会を管理して正しい秩序の下で平和を保つ事もできっかもしんねーけど、やらないんだよなぁ……?
オレも「極悪人許せねーから全滅させてぇ!」「腐った政府に代わっていい国にしてやりたい!」「ネコなど小動物を虐待する奴は同じ目にあわせてやりたい!」「侵略をもくろむ敵国を壊滅させてぇ!」とか思ってしまうなぁ。目の辺りにされたらガマンできないかも……。
ってかコレ勇者セロスの考えと変わらねぇな。師匠はよく我慢……。ん?
その時、ふと恐ろしい結論がよぎって青ざめる。
オレってば、まだ幼少期なんだよな……? 成長している途中なんだよな??
って事はいずれ……?
いやいや! 考えないでおこ! 今は異世界を楽しもう!
思わず顔をブンブン振る。
「なぁに、お前にはヤマミとクックさんがいるではないか?」
「え?」
ポンポンと頭を叩いて、去っていく。……なんか見透かされた気がした。
ひとまず今日は休息する事にした。ぐーぐー!
荒れ果てた光のライトミア王国……。
かつて華やかだった都市は今や瓦礫の山だ。もう見るも影もない。
所々死骸が転がり、瓦礫の隙間から突き出ている手が悲惨さを物語っている。
「セロス……! もう戻れねーんだな?」
悲愴な想いを胸に、目の前のセロスと敵対せざるを得ないと対峙していた。
しかしセロスは無表情で無言。
その頭には二本のカルマホーンが仰々しく伸びていた。
「まさか人類の希望だった勇者が……自ら故郷を……!」
「フッ! 感傷しているのか? オレ同様、人ならざるものの存在が? まぁいい、もはや勇者と魔王の関係……、神々、魔族、獣人、竜族、更に文明すらもこれで終わる。そして業が深い人類に希望や夢など要らん。この世を永劫の地獄に変えるついでだ、お前も在りもしない『空想』の彼方へ消してやるよ。化け物!」
もはやセロスは凶行を止めてくれそうにない……。
「例え化け物────、人ならざるものの存在になろうとも……」
決意を固め、足元に花畑を広げて背中から咲かせた花弁を六つ拡大して浮かせ、銀髪が長くなびき、両目の虹彩に星マークが浮かぶ。
地を揺るがすフォースを吹き上げると共に花吹雪が周囲を舞う。
花吹雪が聖剣を握る右手の元で集約して太陽の剣を形成する。そして身構えつつセロスをギンと見据える。
「オレは人間であり、そして『空想』から可能性を広げていく創作士だ!」
「どこまでも戯言を……!」
「それが────、オレの信念だ!!」
揺るがぬ想いを胸に、希望に輝くフォースを噴き上げていく。
「セロスァァァァァァァァッ!!!」
思わず寝床から飛び起きた────!
側で眠っていたヤマミがビクッと目を覚ましビックリしたが、不機嫌そうに「なんなの……? 朝っぱらから……」と恨めしく吐いてくる。
「なんだ夢か……!?」
妙にリアリティあったな!
ここはコテージの中。窓から赤い月の日差しがカーテンの隙間から差し込んできている。
窓を開けて上半身を乗り出すと、天井の煌びやかな結晶群晶が魔界の赤い月のような眩しさを放っていた。そして内部は明るく照らされた風景が見渡せた。
そして地面には魔法陣が書かれていて『安全地帯』と異世界の魔法文字で記されていた。
奥行きの壁には下る階段が闇まで続く穴が開いていた。……第四階層!
ヤマミも窓際にいるオレの側に並ぶ。
「悪い夢でも見た?」
「────なんというかセロスがカルマホーン生やしてた」
「え?」
鮮明に覚えている夢をヤマミに語った。
自分の故郷を壊滅させた勇者セロスは、これから世界を地獄に変えようとしていた。更にセロスは自身とオレに人間を止めていると事実を突きつけてきた。
だがそれでもオレは確固たる信念として「オレは人間だ」と言い放った。
「どんなになっても『人間らしく』と師匠も言ってたなぁ……」
「そうね。クッキーは妖精王であり魔女でもあるけど、人間臭いもんね。変に威張られたり、見下したりされるよりは親身あるわね」
「ああ!」
これから起こるのかもしれない未来……? 予知夢…………??
あとがき雑談w
有り得たかもしれない未来……?
ナッセ「セロス! 妖精王を超えた妖精王を更にもう一つ超えて見せるか?」
悪セロス「なに!? まだあるのか!?」
ナッセ「はあっ!!!」
咲き乱れる花畑が木々になり、全身から光飛礫がポワポワ溢れていく。羽の先っぽがギザギザになり。髪の毛も少々逆立って、後ろ髪がやや放射状に舞い上がる。
ナッセ「これが妖精王2! そしてこれを更に超えた……!!」
悪セロス「まだあるのか!?」
ナッセ「はあっ!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
世界が震撼していく!! 周囲の花木が更に広がり地平線彼方にまで花園となる!
そして妖精としての二本の触覚が生え、肌が白くなっていって、髪の毛がモフモフに伸びすぎてオバケみたいなのになっていく!
羽も一〇〇枚になってて孔雀みたいに背後で美しく並ぶ!
ナッセ「待たせたな! これが妖精王3だ……!」
悪セロス「い、威力値……五〇〇〇万!!? しかも超絶モフモフ!?」
ナッセ「覚悟しろー!!!! 喰らえー!!」
なんと伸びすぎた髪の毛がブワーッとセロスに巻きついてモッフモッフ!!
ナッセ「浄土真剣奥義! 極楽天上幸福!!」モフアアアア!!
癒セロス「がはあっ!! い、癒されが過ぎる……!」
次話『貧困層→中世→近未来で人族発展しすぎィ!! では第四階層は??』




