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6話「ナッセ、異世界の王様に会いにいく!」

 ほぼレンガのタイルで()()められた王国内の主要道路には、歩道側に等間隔で街灯が並び、車道には馬車が走れるよう幅が広い。

 そしてはるか遠くに見える白い城。


「あれがライトミア王国の城だ。王様がそこにおられる。行こうか」

「あ、ああ……」


 オレとヤマミは、ティオス先輩の後をついて行って、馬車に乗る。

 走り出すとアスファルト道路でもないのに振動も感じない。スムーズだ。窓の景色が流れていく。

 先輩に聞いてみると、車輪に衝撃吸収の『刻印(エンチャント)』があって、どんな悪路もスイスイ進めるらしい。よほどの段差でもなければ滑るように走れるらしい。


「『刻印(エンチャント)』を文明に……?」

「ああ。そっちの世界はどうだか知らんが、こっちは『刻印(エンチャント)』で成り立ってるっつー感じだ」


 ヤマミにも答える先輩。気さくだなー。


「ナッセ君。お前のそれも『刻印(エンチャント)』だろ?」

「え? あ、ああ……?」

「俺たち騎士団や冒険者は取って置きとして記されてるんだ」


 ティオスは「こうだ!」と右手を少し前方へ差し出す。なんと『刻印(エンチャント)』が白く浮かび上がる。

 先輩の手に旋風が巻き起こってそれは白くて半透明の刀になっていく。

 まるで翼を曲刀にしたかのような見事な造形……。


「『風閃剣(ふうせんけん)』だ。二つ名の通り、コイツが俺の真の武器だ」


 思わず呆気に取られた。まさかオレと同じように武器生成できるなんて!

 卑怯者との戦いは出すまでもなかったって事か!

 ティオスは具現化した剣を旋風に変えて霧散させた。


 今度はオレが手の甲の『刻印(エンチャント)』を輝かせると、星を象った剣が刀身を伸ばす。


「そうそれだよ! チキューでも広まってんのか?」

「……師匠クッキーに教えてもらったからなぁ。ヤマミにも教えてるし」

「ええ、(シールド)だけだけど……」


 ヤマミも小さな丸い盾を生み出してみせる。

 ティオスは「かー!」と額に手を当てて、背もたれに背を預けた。


「クッキーが何者かは知らないけど、相当すごい人なんだな……。今ここにいんのか?」

「あ、いや……。オレとヤマミだけだけど……」


 先輩は「そっか。一目会ってみたいもんだな」と快く笑んでいた。



 数十分、馬車に揺られていると、ついに城門前についた。

 降りると城門の高さと城の大きさに圧倒される。まるで高層ビルみたいだぞ。門前に屯所(とんしょ)があって騎士が不動で立っていた。

 この国って大阪並みに広い上に、城もすごく大きい……。


「これがライトミア城だ」


 ティオス先輩が衛兵となんか会話して頷く事数回。

 なんか創作士(クリエイター)カードを提示して衛兵にピッピしてもらってから、進むと城門の鉄格子が左右に開かれていく。

 先輩に続いて門を潜ると、ポワンと波紋みたいなのが広がった。


「え? 『洞窟(ダンジョン)』に入る時と同じ……?」

「でも周り変わってないわ」

「……厳重な結界を敷いている。鉄格子は形式みてーなもんだ。実際は不審者が通れぬよう城を囲んでいる。俺が許可しているから、あんたらも通れたってワケだ」

「さっすがー!」


 ヤマミは「これも『刻印(エンチャント)』による結界……?」と庭園を見渡している。


「ああ。防衛上、絶対にオフされないがな。……だから手順を踏まないと誰も絶対に入れない」

「へー……」


 庭園は広くて瑞々しい黄緑の草原に木が点在している。花畑もある。

 入口までの道は静寂で、左右に等間隔で街灯が並んでいる。大きな城が近づくと、大きな入口がパックリ開けていた。

 踏み入れると、天井が高くて広々とした広間が視界に入った。左右に高く続く階段もある。

 真ん中を歩いていると兵士たちが行き交いしている。先輩と挨拶(あいさつ)し合っている。


 小さな袋小路に入ったと思ったら、逆向きに(きびす)を返して「驚くなよ?」と、側のスイッチをポチポチ押す。

 すると閉じ込められるように左右から扉が閉じ、床がグンと上昇しはじめた。


「え、エレベーター!?」

「それも『刻印(エンチャント)』式の!」

「なんだ知ってんじゃねーか。そっちの世界にもあるのか?」

「あ、ああ……」


 暗い筒状から抜けたと思ったら、縦に大窓が連なってあって、低くなっていく王都が一望できた。

 思わずオレは目を見張って、ファンタジー広がる王都に感嘆を漏らした。

 ガクンと上昇が止まり、反対側の扉が開く。


「着いたぞ。……粗相(そそう)のないようにな」

「ああ……」


 息を飲んで踏み出すと、柔らかい絨毯に驚かされた。

 周囲は左右に通路が伸びていて、等間隔に白い柱が並ぶ。更に外壁は大窓が連続で続いている為、景色が一望できていて明るい。

 ……そして目の前の大きな扉にはライトミア国旗にあるマークの彫刻が刻まれている。それがゆっくりと開かれていく。

 すると広く奥行きがあって、絨毯が奥に続く。その左右を騎士たちが厳かに並んでいる。


「心配するな。付いてこい」


 ヤマミを見ると彼女も顔を強張らせているのが窺える。オレもブルッと緊張するままに先輩に続く。

 絨毯を長々と歩いていくと、更に扉があって開かれていく。

 なんと王座が二つ、王様と王妃が静かな面持ちで座している。左右に幹部らしき人が立つ。


 王の間に入ると、騎士が扉に立つ。塞がれた形だ。


「連れてきました」


 ティオス先輩は丁寧に跪いて頭を垂れる。オレたちも慌てて跪いて頭を下げた。

 王様は「ふむ。ご苦労であった」と労ってくる。


「面を上げよ。ようこそチキューの者よ遥々(はるばる)来られた……」

「は、ははぁ!」「はい!」


 王様はにこやかな爺さんだ。立派な衣服と王冠を着けてはいるが、内に秘める威圧はただならぬものを感じる。

 王妃もにこにこで、元は美人だったもが窺えるほど顔立ちが整ってる婆さんだ。

 二人はただの人間ではない。創作士(クリエイター)。それもかなり手練の……。


「あまり堅くせんでも良い。……二人とも名を聞かせてもらっても良いかな?」

「は、はい! 城路(ジョウジ)ナッセでございます」

「はい。友夏(ユウカ)ヤマミでございます」


 すると先輩が「クラス名も言うんだ」とボソッと。

 なのでオレは「剣士(セイバー)」と、ヤマミは「魔道士(マジシャン)」と付け足した。


 王様はチラッと右の人に目配せした。すると右の人はしばしして一度傾げてから、何度か頷く。

 まさか邪教団と疑われて……??


「ふむ。余は光のライトミア王国を治める王。“剣将王”オルキガじゃ!」

「わたくしはその王妃。“凛麗騎”ミラディナです!」


 堂々たる威厳漂う王様と王妃……。これが異世界の…………!

 すげぇ……本物の王様だ!!


「ナッセ君だったかな? 確かに君は『剣士(セイバー)』と名乗っておるが、それは二次的なものとみていいですかな?」

「は、はい……?」


 なんか先輩がこっちを怪訝に見ている。


「ご無礼いたしました。こちら城路(ジョウジ)ナッセは確かに『剣士(セイバー)』ですが、スペリオルクラスの『鍵祈手(キーホルダー)』でございます。どうかお許しを」

「よいよい。騙す気がないのは分かっておる。悪意も見られん」


 なんか見破られてる?? つーか悪意の有無も分かるのかぞ?

 王様って『鑑定士(アプレイザー)』以上の鑑定スキル持ってんのかな?


「まぁ、あの『勇者(ブレイバー)』と同等の『鍵祈手(キーホルダー)』と会えるなんて僥倖(ぎょうこう)ですわね……」


 なんか王妃が目を輝かせていた。


「残念ながら、もう願いを叶える力は無くなってます……」

「そういう事は求めてはいない安心せい。主が思うように『鍵祈手(キーホルダー)』を(まっと)うするがいい」


「は、はは!」

「ありがたき言葉でございます」

 ヤマミが付け足してくれた。ナイスフォロー。


「さて、この異世界へ訪れた目的を聞かせてもらっても良いかな?」


 目を細める王様に、オレは息を呑む。

 するとなんか「立て」と王様が手でジェスチャーして来た。先輩は驚いていたが「さっさと立ってあげられよ」とボソボソと言ってきた。

 オレは慌てて「あ、はい! 失礼します!!」と立ち上がる。


「改めて聞こう。主がこの世界へ来た目的を!」

「は、はい!」


 オレは深呼吸して落ち着かせてから、胸を張った。


「元いた地獄を乗り越えて異世界へ行くという夢を叶え、今度は憧れた師匠のようにたくさん冒険がしたいんだ!!」


 王様も王妃も先輩もは目を丸くしたようだった。ありゃ呆れられた?

 立ち上がったヤマミはオレの肩に優しく手を置いて「ええ。私も……。その為に見聞を広めるべき、この世界を回ってみたいんです」と付け足してくれた。

 おお! フォローすげー助かる! さすが頭脳明晰!!


 王様はまた右の人に目配せして、微笑みと頷きを確認していた。

 こちらへ優しく微笑むとパチパチと拍手してきた。つられて王妃も拍手し始めた。騎士まで拍手してきたぞ。でも先輩固まってる。


「素晴らしい……! 澄んだ心を持った主の、純粋な目的に余も感服した! 励むが良い! 応援しておるぞ!」


 照れ恥ずかしいなぁ……。なんか王様に褒められて、なんか嬉しいや。

 ヤマミと見合わせて微笑みあった。

あとがき雑談w


オルキガ「ナッセとヤマミを見ていると若い頃を思い出すな」

ミラディナ「ほほほ。あの頃はわたくしも少々オテンバでしたわね」

オルキガ「…………そうか?」


 若い頃のミラディナは「てめぇら私の幻竜のエサにするぞ!!」とモンスターを蹂躙して駆逐しまくっていって、二つ名は『暴走騎のミラディナ』と呼ばれていた。つまり『凛麗騎のミラディナ』は自分で広めた。

 大人しくしていれば美女なんだが、口より手が出るヤベーヤツだったw

 街の中でも遠慮なく幻竜召喚して被害拡大した事も少なくないw


ミラディナ「何か疑問でも?」(冷たい微笑み)

オルキガ「い、いえ……、あの頃も慎ましく落ち着いた絶世の美女でしたな」(顔面蒼白)

ミラディナ「よろしい!」(満面の笑顔にこー)



 次話『ナッセとヤマミいきなり高飛び!?』

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