57話「第二階層は騎士モンスターの巣窟!」
第二階層は、なんと中世の城をモチーフにした広大な迷宮だった……。
最初こそ草原と木々が生えていて、石レンガで積み立てられた城壁の門前。そして深い堀を渡る跳ね橋の先に大きな金属製の扉。
一見すれば普通にどこかの地下城の風景と思う。
だが、中に入ると外殻と一体化している塔、建物の端に建つ側塔、三角錐の屋根の塔、四角い大きな塔などが柱のように伸び、階段も含めて縦横無尽と通路が入り乱れている。場合によっては建物の中を通るのもあるのだろう。
誰が建てたかなどではなく、こんな奇妙な迷宮が『深淵の魔境』所以たる異質を醸し出していた。
「クセ者!! クセ者じゃあ!! 悪鬼どもが来たぞお!!」
なんと塔から鋭い斜線で何かビュンビュン飛んできて避けると、ドガアッとミサイル爆撃のようにレンガの建造物が大きく木っ端微塵に砕け、破片が四散する。
飛んでくるものを良く見ると強靭な鋼鉄の矢だった。射線の奥を見ると塔の窓から強力そうな弓で矢をつがっているのが見える。それで射ると超高速で矢が真っ直ぐ飛んできて直線状を貫いて木っ端微塵に破片を散らしていく。
あそこまで異常な威力だなんて……人族のレベルじゃねぇ!
【破壊矢の弓兵】(人族)
威力値:32055
重量級の剛弓で鋼鉄の矢を放つ弓兵の人族モンスター。視力が一〇を超える。夜目も利く。射る為の腕が異様に長く筋肉質。高い所に潜んでいて敵を射る。彼らのもつ弓は鋼鉄製で弾力性十分で、つがえた矢を放つと超高速でほとんどを貫通する恐るべき威力になる。
接近戦が苦手なのは変わりがないが、鋼鉄製の弓を扱う膂力は厄介。上級下位種。
「バリスタでだって、こんな威力じゃねぇ!」
「魔境なんだから何があっても不思議じゃないわ!」
ジャオガさんが黒炎玉を数発撃ち、いくつかの塔を爆破四散。四魔将も高い塔を狙って遠距離攻撃を行っていく。
すると通路から全身鎧を着た騎士たちが隊列を組みながら槍を構えて走ってくる!
「正義は我にあり! 悪鬼どもは皆殺ししろ!!」
「神よ! 我々に祝福を──!」
「神聖なる神の国へ土足で上がる愚か者ども!! 我が槍のサビにしてくれる!!」
「殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!!」
【突貫の槍騎士】(人族)
威力値:30170
オーラで覆う重い全身鎧を纏ったまま時速230kmで槍を構えて突進する人族モンスター。中身はクローンのように同じ容姿と顔を持つ三十代の男。
ただ高速で突進するだけで、そこに穴があろうとも崖があろうとも、構わず進んで落ちていく。
異常なまでに信仰と正義に固執してて怖い。上級中位種。
次々とオーラを纏いながら速度を上げて突進してきて、思わず飛んで避けた。避けられた槍騎士はそのまま足場のない所へ突っ込んで転がり落ちていく。また壁に突進した槍騎士は風穴を空けながら突き進み続ける。
「流星進撃!!」
一瞬連撃で流星の嵐を幾重も放ち、突き抜けながらことごとく槍騎士を粉砕していく。
クックさんも「爆裂乱舞ミラージュ・ウニメイスーッ!!」と連撃で蹴散らしていく。最後にヤマミが数発の黒炎球を『衛星』で浮かし弾幕を張って絨毯爆撃する。
ホノヒェラは掌から冷気を放ち、直線上の床に氷柱を生やしながら次々と凍結。
アマリビグが巨大な斧で横薙ぎして槍騎士を上下に両断していく。ソネラスは龍を象った水流を撃ちだして押し流していく。
ジャオガさんは「ダイナスト・ロード!!」と黒炎を纏いながら猛スピードで突進してことごとく槍騎士を消し飛ばし、向こうの大きな塔を木っ端微塵に砕いてしまう。上部の屋根が傾きながら落下。
それでも隊列を組んで阻もうとする騎士たちが剣を手にザッザッザと押し寄せてくる!
「おのれッ!! この悪鬼どもがぁぁぁあ!!」
「神に代わってキサマらを滅殺してくれよう!!」
「死ね!! そして地獄で一生苦しむがいい!!」
「我らが神の使徒!! 覚悟せよ──!!」
【銀装の剣騎士】(人族)
威力値:23700
重い全身鎧で装備しオーラを噴き上げて片手剣を振るう人族モンスター。数が多く、数十人単位で隊列を組んで層が厚いため、突貫するのは難しい。加えて個人個人で技も繰り出す。
この小隊だけでも小国を制圧できるほどの力を持つ。信仰と正義に盲信しすぎ。中級上位種。
「おし!! 『賢者の秘法』で!」
剣を構え、雫を収束させていく。
今度は自然霊に頼まず、自力で力を集約しようとする。ぎぎぎ、荒ぶるような獰猛な重さを感じる。圧縮しようと思うが、あちこち溢れ出しそうで慌てて安定化しようと悪戦苦闘。
しかし抑えきれず暴発してドガァァッと大爆発。オレは吹っ飛ばされて床を滑る。
「ナッセ!!」
「ぐ……、やはりダメだ!! 昨日ン時から変わってねぇ!!」
ヤマミは巨大な氷塊をぶっぱなし、吹雪の大爆発が吹き荒れて剣騎士を数十体を吹き飛ばす。
こっちへすっ飛んで来て「大丈夫?」と心配そうにしゃがみ込む。
「悪ぃ! 大丈夫だ……」
とはいえ、自力でやろうとすると暴れだして手に負えねぇ!!
自然霊はこんなのを抑えてくれたのか……! すっげぇな……!
なんと巨大な斧を振り上げる騎士がズンズン歩み寄ってくる。
【巨大な斧騎士】(人族)
威力値:54090
まるで十メートル強の巨人。長い柄の斧を振り回すその膂力は脅威。図体に似合わず素早く動いたり振るったりする為、場合によっては大国も壊滅を被りかねない。
オーラを込めた戦斧を地面に振り下ろすと周囲に衝撃波を放って壊滅させてくる。上級中位種。
「悪鬼どもがぁあ!! 神に代わって叩き切ってくれるわぁ!!」
ドスドス走り出して戦斧を振り下ろしてくる。オレとヤマミは咄嗟に飛び退いて、そこを戦斧が通り過ぎて建物を豪快に裂いていった。派手に破片が四散し煙幕が広がる。
斧騎士は巨大な目でギロリと睨んでくる。即座にヤマミは黒い小人を複数放って黒炎で覆う。
「ぐああああああ!!!」
獰猛に燃え盛る黒炎に苦悶し、斧をメチャクチャに振り回してあちこちを破壊しつくしていく。
思わず「ヤマミ!!」とライズで剣を振りあげて、彼女に降ってくる大きな破片を軌跡で斬り上げた。ジャオガさんが黒炎纏う拳で斧騎士の頭を木っ端微塵に打ち砕く。
首を失った斧騎士はフラリと傾き、倒れる軌道上の建物を崩しながら沈んでいった。
「ナッセ、ヤマミ、大丈夫か?」
ジャオガさんはこちらを一瞥。オレは「すまねぇ」と頷く。
四魔将の三者も集合してきて「危うかったな」と声をかけてくれた。とはいえ!
「……自力でやろうとすると、やっぱ難しいよな」
刀身が砕けた光の剣を見下ろし、ため息。
今まで師匠の言われた通りに自然霊とコミュニケーションを取る事で『賢者の秘法』を完成させた。だが、今は自力で完成させようと思ったが予想以上に困難を極める。
渦潮のような膨大な量の激流を、この手で圧縮して玉に収める……。
「私も一人でやろうとすれば難しいわね」
「……やっぱ一人でないとダメか?」
ジャオガさんは「ダメだ!」と首を振って返してくる。厳しいなぁ。
ヤマミは黒い小人で囲んで、なんとか完成させたがジャオガさんは「ずっとそれに頼るつもりか?」と否定的だった。
オレとヤマミ二人で完成させるのもダメらしい。
協力する類のスキルに頼らず、自分一人だけで完成しなければならない。
ウニ魔女クッキーこと、師匠は言っていた……。
数多くの創作士が『賢者の秘法』を完成させるべき数十年もかけて修練を重ね続けてきたという。されど、その過程で爆死したり四肢を失ったりするなど危険極まりない失敗がつきものだった。
だから挫折してしまった人間は数え切れない。
本来なら習得するのに数十年も長い年月を必要とすると言っていた。
だからクッキーは『心霊の会話』を行う事で最速の取得方法を編み出した。
オレたちはそれに倣って取得し得たのだが……。
「早く気付く事だな。猶予はないと思え」
「ちえ……分かってるとはいえ、きっついな!」
ジャオガさんの言ったように、時間はもうない。
数十年は途方もない時間だ。その間に『深淵の魔境』がどんどん難易度を増していく。数十年悠長に完成させようとすれば詰むだろう……。
「くぅ~! なんか一日で一年になる特別な空間とかあればいいのにな!」
「そんな都合の良い亜空間があるか! そもそも必要ない!」
「でもよ……」
方法なんて皆目つかねぇ……。
「確かに何十年もかけねば完成できぬ。人族ならな」
「え? 今なんて?」
「……脆弱な人族では『賢者の秘法』は難しいという事だ!」
なんかピーンときた気がする。
オレは足元に花畑を広げ花吹雪が舞うと共に、背中に咲いた花から花弁が四つ浮き出して翼のように拡大化。全身から眩いフォースを高々と噴き上げていく。
地響きと共に威圧が膨れ上がって四魔将は「うわ……何を!?」と腕で顔を庇う。
両手を離れた間隔で合わせ、その中心に雫を集めていく。
荒ぶる激流も“意識”で抑え込めると確信し、更に圧縮するように集中を研ぎ澄ませる。
花畑と一緒に足元の地面が窪むほど、凄まじい威力が一点へ押し込まれようとしている。そしてギュッと一玉に縮め、ついにそれは完成した!
螺旋状の装飾と共に生き生きとした輝きを放つ珠が、オレの両手で浮いていた!
「やったぞ──っ!! 自力でできたぁ──っ!!」
するとジャオガさんはフッと笑みながら「やっと気付いたか……」とボヤいた。オレは「え?」と素っ頓狂になってしまったぞ。
側のヤマミもポカーン。クックさんは「うにゃ?」と首を傾げる。
「第一、人族ではムリだろうが妖精王なら可能だ。精神世界に精通しているからな。ハナっからできる事なのだぞ?」
「でも師匠は……!」
「魔女クッキーはどこか抜けていると有名だ。まるで人族のように、な」
言われてみりゃそうだよな……。
本来なら神様みてーな立場のはずなのに、ドジったりするし喜怒哀楽が豊かで俗っぽい。彼女は妖精王ながらも人間に準じている。単に素かもしれないけど。
魔王ジャオガさんがため息をついてくる。
「別に師匠と似なくてもいいとは思ったがな……」
「ごめ、鈍いのは元からかも」
でも師匠と似てるってのがなんだか嬉しい。それがなんだか誇らしい気がした。
側のクックさんも満面の笑顔でにっこにこ──!
あとがき雑談w
ティオス「ふう、魔境って骨が折れるな」
アクト「あァ……」
アクトたちも第一階層をクリアして、安全地帯でキャンプしていた────。
勇者セロスも戦士ファリアも魔道士モリッカも斧女子リョーコもウィ~ヒック! みんな酔っ払って心地よく余韻に浸っていた。ただエルフのメーミだけは飲んでなくてシラフだ。
ティオス「思ってたんだけどよ……ナッセは飲んでるのか?」
アクト「ヤマミがうるせェからなァ」
リョーコ「ホントにね! たまにハメ外すのもいーじゃないって思う!」
ティオス「ってか並行世界だっけ? それで二人でやってた時期あったんだろ? 飲まなかったのか?」
アクト「…………あいつァ……別れたヤマミの事ばっかりで酔う気分になれねーって禁欲してたみたいだァ……」
リョーコ「別居してた時期あったもんねー」
メーミ(言い方ァ……)
次話『奥義のバーゲンセール開幕!! 大破壊サービス!!』




