54話「ガチ深淵! 魔界の魔境はヤバめ……!?」
魔界の『深淵の魔境』へ向かう為に魔列車で五日間乗っていた。
魔王ジャオガと四魔将と一緒に挑むとは夢にも思わなかったぞ。
この五日間は読書やゲームをしたり、魔列車内蔵の仮想対戦で実戦訓練などしたりしたら、あっという間に過ぎ去ったぞ。
ほぼ、しっつこく食い下がるタッドのせいでもあるけどな?
ヤマミのおかげで抑え込められている感じ。でなけりゃ際限なく日中対戦申し込んでくる。どんだけ好戦的だよってウンザリさせられる。
「まだ変身や奥義見せてもらってないっす! だから今度こそ!」
「あー!! それもういいから帰れよ!」
「ボク眼中にないとでも言うっすかぁ!?」
「言ってねぇよ!!」
タッドは負けず嫌いで減らず口を吐いて、やっと去ってくれた。ここまでしっつけぇのは初めてだ……。
魔王ジャオガは「ははは! 退屈せんで良かったなぁ!」と上機嫌だ。
ヤマミも「目付けられて気の毒ね……」と溜め息。
「ぶー! ナッセばっかー!!」
クックさんは不満のようだ。頬を膨らましているのが可愛い。
目的の駅に近付くと放送が繰り返され始めた。
「そろそろ降りるぞ! 忘れ物ないようにな!」
オレたちが降りた駅は最大級のもので、迷宮とさえ思えるほど複雑な構造だった。
多くの行き交う列車が通るだけあって停車用の線路も数え切れないほど並んでいた。地球の東京や大阪より大きいんじゃないか?
縦横無尽と入り乱れる階段と通路は標識がなければ絶対迷う。
おまけに出入り口もあちこちあるので、どこから出ればいいのか混乱するだろう。ジャオガさんがいなければ右往左往してたかもしれない。
あとタッドがいないかキョロキョロ警戒しておく。
数十分かけて駅を出ると、多くの魔族がぞろぞろと群がっている荒野が見渡せた。
彼らが向かうのは山のように高く聳える赤黒い結晶の山だ。
「ここにも魔境の門番いるんだよな?」
「……これだけ勢力がいれば、門番は役目を果たしていない」
とっくに倒しているようだ。
こうして並んでいると東京のコミケでもそんな感じなのだろうか、って思ってしまう。
いつか行こうかなと思ってたけど、結局コミケ行けなかったしなぁ……。
交通費もバカにならないし、人海に揉まれるのは苦手ってのもあった。
《見ろ! “邪淵海の魔王”シャンオール勢力だ!》
ジャオガさんに思念通話で促されて見やると、魚系のモンスターや魔族が赤い水玉に包まれて並んでいる。そして一際巨大な威圧を放つクジラを模した巨大な太った魔王が中心で佇んでいる。
まるで巨人かと思わせられる巨躯……。
《海の中にいる魔王なの?》
《本来はな。だが、こうして自ら陸地に上がって進軍しているのは余程の事であろうな》
暴れだしたら、この辺り色々惨事起きそうだな。
ってか、横にも広がって並ぶ魔族たちは律儀に順番守ってるから意外な光景だ。普通、粗暴な魔族のイメージからすれば順番を争って群雄割拠しそうなもんだけど……。
《あそこには“魔樹王”ヘリギリオン勢力だ!》
反対側を見ると、今度は植物系のモンスターや魔族がワサワサ根を這わせながら進軍。そして何万年も成長してきたかのような圧倒的巨大で恐ろしい形相の大樹が蠢いている。あれが魔王か。
ってか魔列車にどうやって乗ってたんだよ? まさか縮身?
わざわざここでデカくならんでもいいのに……。
《前方には“死霊の魔王”ネクロレースだ!》
ゾンビや幽霊をテーマにしたモンスターや魔族。そして三メートルぐらいだが豪勢なマントを羽織った骸骨の魔王がいた。
なんか不死身そう。でも回復魔法には逆にダメージ受けそう。
《ってか魔王ウジャウジャやべー!》
《魔界はそういうものだ。まだ見ぬ魔王の勢力もどこかにいるのだろう》
《退屈ね……。目に見えているんだから時空間移動できるけれど…………》
《順番に挑戦するのもマナーだよ。気長に待つしかないさ》
目を細めるヤマミに、ホノヒェラが嗜める。
でも確かに『深淵の魔境』が見えているんだし、ヤマミの時空間移動で直接割り込める事はできる。だが、考えてみれば時空間移動はヤマミの専売特許ではない。
並んでいる魔族のいずれかが時空間魔法を使えるのいるんだろうけど、誰も使う様子はない。
《うわぁ────っ!! あの“焦熱の執魔王”イフラーヂェ勢力が第三階層で全滅したぞ────っ!!》
なんか放送っぽく、脳に響いてきた。
向こうの『深淵の魔境』から響いているように思える。なんだかザワザワと周囲の魔族に緊張が走ってる気がする。
《まさか……あの“焦熱の執魔王”が!?》
ジャオガさんに僅かな動揺が見られる。余計不安になるぞ。
《ねぇ、その魔王って知ってるわけ?》
《どんな魔王なのー? すっごくつよいー?》
《……灼熱獄界火山ファレイム地域を支配している魔王。高い火力で絨毯爆撃してくる勢力。誰も相手にしたくない。まさか敗れる……想定外……》
ヤマミとクックさんに、アマリビグが思念通話で答えてくれる。こっちに聞こえるようになっている。
《少しでも敵対すれば、根こそぎ滅ぼしてくる厄介な魔王だ。負けない相手ではあるが、なるべくなら余も相手したくない》
《そ……そんななのか!?》
ジャオガさんですら苦手とする魔王のようだ。
一度対立すれば、勢力を殲滅させるくらい徹底的に攻め続ける執念は恐るべきものと聞かされた。
《お──い!! 聞いてくれ!! あの“氷劫魔神”カリス・オロ・ミデが第四階層で全滅を確認したぞ────っ!!》
《むっ! あやつまでもが……?》
険しい顔のジャオガさん、汗を垂らしている。
《あのさ、オレ魔界来たばっかで分かんねぇけど……》
《そうだったな。“氷劫魔神”は氷系の魔王。永遠の氷河雪原フォーデル地域を支配している魔王。触れるだけで凍らされてしまう巨大な魔力を持つ。彼がいる限り永遠に吹雪で荒れる地獄の地域。まさか敗れるとはな……》
雰囲気から察するに大番狂わせ、ってトコかな?
しかし、こんな厄介な魔王ぞろぞろいたんじゃ勇者セロスも難儀だなぁ。ってか勇者は一人じゃないんだろうけど、魔王魔族を全滅って悲願は遠すぎる気がする……。
横からパラパラと魔族たちが抜け出していくのが見える。
魔王勢力まで団体ごと去っていくのも見えた。挑戦する前から逃げ出すのもいるんだな……。
やべぇ……緊張してくる…………。
《緊張して敵わん》
《ソネラスさんも?》
《ああ……。これだけ大物が軒並み敗れるのは中々聞かない。ワシも緊張するわ》
見やるとソワソワしている。四魔将でも緊張ってのは新鮮だな。
ホノヒェラも顔色悪そう。アマリビグは表情が窺えないけど、緊張してるかも……。
《攻略した魔境と同じと思わん方がいいぞ……。多少難易度上がってるはずだ》
思わず息を呑み込む。
やはり前の魔境は逃げなくてよかった……。
撤退した分だけ、難易度が上がって攻略が難しくなると思うと怖い。当時、退かない事を選んだオレは正しかった。
少なくとも残り六つの魔境なワケだしな。一つなくなってるだけでホッとする。
結局、魔王全滅の放送が二十回以上された一日と半日で、ようやく魔界の『深淵の魔境』へ入れた。
だが、その中の光景にオレは見開いてしまったぞ……。
なにしろ、広大な空洞は簡素な住宅地で埋まっていた。
木の柱を立てて板で張り合わせて、布で“のれん”代わりにしている粗雑な住宅が、大小バラバラで並ぶ。
広い路地、狭い路地、縦横入り乱れる道は平らな荒野。薄く輝く赤黒い結晶が小さいながらもこびりついている。
そしてボロボロの衣服を着た人族がうろついている。
「ま、まさか、本当に人族の村が…………!?」
ヤマミと一緒に絶句してしまった。
情報通り、第一階層はなんと貧困層であるものの人族の村だったからだ。
ドガアアァッ!!
突然向こうで爆発が噴き上げた。あちこちで爆発がドガンドガン巻き起こって破片が飛び散る。
一足先に入場した魔族たちが暴れ回っているのだ。
人族が抵抗するも、理不尽な暴力を前にひねり潰されていく。聞くに堪えない悲鳴が劈く。こうしてる間に多くの人が死屍累々と沈んでいく。
「助けなきゃ!!」
「待て!」
魔王ジャオガに肩を掴まれた。
「こちらに来る人族をよく見ろ!」
魔王へ焦れた顔を向けていたが、言われた通り前へ振り向くと数人歩み寄ってきていた。
ゾンビのようにたどたどしい足取りで近づいてくるが、顔は恐ろしい形相で目は狂気に満ちていた。唸るような声を発している。
すると急に口がガパッと開けられると左右に頬を裂いてギザギザの牙が伸びてきて、急に俊敏な動きで飛びかかってくる。
「うわあああっ!!!」
突然、人間がバケモノに変貌して襲いかかってきたのだ!
あとがき雑談w
作者「魔王らに出番を与えて深みを持たせたいけど、話が長くなるんで省くわw」
“邪淵海の魔王”シャンオール「おい!」
“魔樹王”ヘリギリオン「おい!」
“死霊の魔王”ネクロレース「おい!」
“焦熱の執魔王”イフラーヂェ「おい!」
“氷劫魔神”カリス・オロ・ミデ「おい!」
五輝騎士「未だに俺ら全員キャラ決まってないんだぜ……?」
十二光騎士「ティオス以外はこっちも全然w」
作者「機会があれば出そうと思います」(絶対信用してはいけないw)
次話『人族系モンスターで構成された魔境!?』




