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53話「ナッセのライバル? “魔迅の鬼神”タッド!」

 赤い満月が怪しく浮かぶ黒く混濁(こんだく)する空。血の池を思わせる赤い海。黒く(すす)けた大地……。

 その空を魔列車が線路を形成しながら走っていた。


 魔王ジャオガと一緒にオレたちは赤い席でガタンゴトン揺られていた。


「今度の魔境はそういう構造か……」

「ああ、今度は堪えるかもしれん。覚悟はしておけ」


 事前に情報を聞いていて、それは忌避(きひ)したくなるものだった……。

 ヤマミが肩に手を置いてくれて「私がいる……。一緒に覚悟しましょう」と強張っていながらも寄り添ってくれてくれる。

 彼女も同じ心境なのだろう。オレだけじゃねぇ……。


「あたしもー!」


 クックさんも隣の席からひょいと乗り出してきた。

 四魔将は本を読んでいたり、ゲームしていたりと黙々だ。しかし割と魔界の『深淵の魔境(ディープダンジョン)』はかなり遠い所にあるみたいだ。

 一つだけだから、広大すぎる魔界のせいで結果的に遠くなってしまう。


 五日ぐらい魔列車で過ごす事になりそう……。



「トイレ行く」


 尿意(もよお)したので席を立って、トイレへと向かった。

 車内はガタンゴトン揺られて物静かに魔族たちがそれぞれの席に鎮座(ちんざ)している。窓には流れる景色。


 赤い大海原が見渡せて、山のようにでっかい針地獄の山があちこち突き出ている。

 窓からじゃ天辺(てっぺん)は見えない。海から突き出ている太い山腹ぐらいのものだ。最も窓に近づいて上を見れば山頂が見れるかも知れない。


 トイレに着くと、誰かが入っていた。待っているとドアが開けられた。


「あ……スミマセンっす」


 なんとオレより長身の(さわ)やかイケメンの人族……?

 と思ったら、頭には二本のツノが生えている。やや後方へ真っ直ぐ僅かに左右に広げられる三角錐、複数の起伏が連なっていて模様になってる。形状的にまっすぐに伸ばしたヤギのツノって感じか。


「あのー恥ずかしいっす」

「あ、うん……ごめ」


 前髪は一本垂れていて、後はツノと同じような方向に逆立っている。

 ロングコートの下には青いアンダースーツでほぼ全身タイツみたいな感じ。前腕に腕輪、足は白い長靴。


 やっぱ魔族かぁ……。極めて人族に近い“鬼”といった感じか。


「もしかして、あんたも『深淵の魔境(ディープダンジョン)』に挑むっすか?」

「え? おめぇも!?」

「いや~~! ボク不安だったんでチビも参加するなら安心してきたっす」

「チビは余計だぞ……」


 ジト目で見やると「あ~そう言えば名前聞いてないっすね」と気弱に聞いてくる。


「オレは城路(ジョウジ)ナッセだぞ」

「ええっ!? あなたが本物のナッセっすか!? (うわさ)の妖精の白騎士の?」


 二つ名まで知られているのか……。


「いや~~感激っす! まさか教皇を倒した英雄に会えるなんて夢みたいっす!」

「あの! すまんトイレ!!」

「あ! スミマセンっす」


 尿意が爆発しそうなのでトイレへ入って事なきを得た。ふー。

 出ると長身の鬼がまだいた。


「ってか誰だっけ?」

「それヒドイな~! それボクに言う?」

「魔界へ来たばかりなんで……」


 すると更に長身の魔族が「タッド! 遅いではないか!?」とズカズカやってきた。

 どうやらこの男はタッドって言うんだな。


「見てくださいよ! あのナッセっすよ!」

「む?」

「こ、こんにちは……」


 思わず見知らぬ魔族に挨拶(あいさつ)してしまったぞ。すると(いか)つい顔が(ゆる)んできた。


「おお! それはそれは! 妖精の白騎士ナッセ殿ではありませんか! 教皇の件は助かりましたぞ」


 (なご)やかに握手してきてフランクな感じに見受けたぞ。


「妖精王殿、失礼! 申し送れた! ワシは“魔戦卿”シルビュードですぞ!」

「し、シルビュードさん……! よろしくです……」

「そしてこちらは、あなたと同じく他の異世界から来た鬼神族のタッド。あの“鬼神の黒魔王”ブラッドの子孫ですぞ」

「よろしくっす!」


 なんと、オレとは別の異世界からやって来た魔王の子孫らしい。

 鬼神の黒魔王ブラッドはあの世界では有名の魔王。世界を震え上がらせた巨大な力を(ふる)っていたのだという。説明だけじゃピンと来ない。


「ちなみにタッドは一八歳。仮想対戦(バーチャルサバイバル)の一五歳限定重賞大会であるグレイドA級の『ジュニアムーン杯』と一七歳限定三大クラシック『魔城賞』『魔界コロシアム』『天上天下賞』とオールスター対戦『闇の覇王記念』を優勝した五冠冒険者だ」


 わ、分かんねぇ……! 相当すげぇのか??

 そう言えばリョーコがグレイドA級の『大阪杯』を優勝した一冠創作士(クリエイター)っつたから、それより格上なのかな?

 仮想対戦(バーチャルサバイバル)かぁ……。魔界でも流行(はや)ってんだな。


「いやいやいや!! 人族の世界で大魔王倒した英雄と比べれば大した事ないっすよ!」

「都合が良ければ闘争相手になってやってくだされ!」

「えぇ……。うん、まぁ……」

「ナッセさんこそ、その反応はヒドくないっすか!? 眼中にないって感じっす!」

「いや……そういうワケじゃねぇけど……」


 するとザッと魔王ジャオガが後ろからやってきていた。


「シルビュード卿か……。なるほど、そちらも『深淵の魔境(ディープダンジョン)』に挑むのだな」

「うむ! 久しぶりですな、ジャオガ殿!」

「ああ……」


 互い拳を突き合わせて挨拶。不敵に笑み合っている。


「まさかの“魔迅の鬼神”タッドも連れてくるとは……!」

「ジャオガさん?」

「フフッ! いいライバルになるかもしれんぞ? なにせあの黒魔王ブラッドの子孫だからな!」

「では、ここの仮想対戦(バーチャルサバイバル)車両でいかがですかな?」

「それはいい! 軽く手合わせしてやれ!」


 思わず「え?」と見開いてしまったぞ。


「お手柔らかにお願いしたいっす!」


 なんかタッド嬉しそうに顔緩んでるぞ……。やれやれ。




 ────仮想対戦(バーチャルサバイバル)車両では、対戦用魔導装置が並ぶ。

 その一つと連動するモニターで二人の激突が映っている。


 ガキィィィンッ!!


 太陽の剣(サンライトセイバー)でタッドの漆黒の魔剣を受け止める!!

 ビリビリと全身を突き抜ける衝撃! そして下方で地盤がグワンッとめくれ上がって爆ぜていく!


「おおおおおお!!!」


 タッドへ激しい剣戟の嵐を見舞う!

 されどタッドも真剣な面持ちで「魔迅閃(まじんせん)!!」と魔剣を振るって、黒い剣閃を分裂させて周囲へ吹き荒れていく!

 まるで光と闇の流星がぶつかり合っているかのような白熱の激戦だ!!


 幾重もの剣戟が切り結ばれ激突音がけたたましく鳴り響き続ける!!

 仮想とはいえ大地を揺るがし、衝撃波の波が荒れ狂い、なおも激しさは増すばかり!


「ナッセさんも……なかなか容赦ない攻撃っすね……! ヤバイっす!!」

「そちらこそ! やけに攻撃的じゃないかぞッ!」


 タッドの振るう魔剣から繰り出される黒閃は幾重にも分裂して、一人波状攻撃をしかけてきている。

 こっちはメインの光の剣とサブの光の刃によって手数を増やして、対抗。

 身軽なアクロバティックな動きで全身から自在に生やせる刃で攻防一体の手数で凌ぎきっていく。師匠譲りの持ち前の粘りで互角以上に張り合う。


「フォールッ!!」


 一太刀振り下ろすと、上空から一閃が煌めいてタッドは魔剣をかざして防ぐ。しかし地面から一閃が浮き上がる。

 以前のような余計な動作が要らないので、フォール、フォール、ライズ、フォールと絶え間ない連続攻撃を繰り返す事ができる。それで間合い関係なくガンガン攻めていく。

 とはいえ、タッドの防御はしっかりしていて中々崩せない。


 すかさずオレはカッと見開き、剣を正眼に構え駆け出す!


「これでどうだ────ッ!! 流星進撃(メテオラン)────ッ!!」


 タッドの目にはナッセの背後に天の川が横切る夜景が映り、放射状に鋭く走る軌跡が嵐のように襲いかかって見える。


「こっちも負けないっすよ!! 大魔迅閃(だいまじんせん)ッ!!」


 タッドは魔剣をかざし、真上に黒い渦が生まれたと思ったら、螺旋状に黒閃が幾重も吹き荒れてきて容赦のない破壊を()き散らしてくる! まるで漆黒の台風だ!!

 真っ直ぐに飛んでくる光の軌跡と、螺旋を描くかのような黒閃の嵐がことごとく激突しまくって、火山噴火のような大規模の衝撃波が高々と噴き上げられていく!!

 連撃による衝突の連鎖が続けば続くほど、更に噴火は肥大化していく!!


 その最中で吹き荒れる爆煙の余韻(よいん)を、ボロボロながらも「おおおおお!!」と全力疾走で駆け抜ける! まさにオレは一条の流星がごとく速度を増しながらタッドへ迫る!


 それに対し、タッドも掲げた剣に黒い螺旋がヴオオオオと集約!

 禍々(まがまが)しくてブラックホールかと思わせられる濃密度の黒いエーテルが刀身へ収まっていく……!


「サンライトォ────・スパァ────クッ!!」

極式(ごくしき)魔迅閃(まじんせん)ッ!!」


 ガッッ!!!!!


 横薙ぎ一閃振るう最強最速の太陽の剣(サンライトセイバー)と、黒閃が収束されたタッドの魔剣が極限激突し、天変地異クラスの破壊衝撃波を巻き起こすと共に、互い刀身は粉々に砕け散った!!

 その凄まじさでモニターは白光に包まれ、凄まじい威力が伝わって来るようだ!


 ゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 それをモニターで観戦する魔族は退屈(しの)ぎになったらしく血湧き肉躍る歓声が大音響する。

 魔王ジャオガとシルビュード卿はフッと快く笑む。

 クックさんは「いいぞー!! もっとやっれー!!」と拳を振り回して盛り上がっている。しかしヤマミは不機嫌そうに眺めていた。


 ソネラスは「ふむ、自分以外で盛り上がっているからか?」とボソッと。

 ホノヒェラは「ちがいないねぇ」と苦笑い。



 ────終わった後!


「奥義も妖精王も出してないじゃないっすかぁ!」

「あったりまえだろ! 試合で出すモンじゃねーって!」

「出したら、こっちも本気出せるっすよ!」

「……軽く手合わせってただろ!」


 不満なのか、タッドはガンガン文句言ってきて、うっとおしい。

 しかし意外と負けず嫌いで驚かされた。

 ってか終わったんだから、シルビュードさんの元へ帰れよ!


「ナッセ……! 随分(ずいぶん)熱中してたわね……?」


 不機嫌なヤマミの仁王立ちを前に、オレもタッドも血の気を引いてしまったぞ。

 一番怖い鬼は彼女の方じゃないかって思う……。

あとがき雑談w


リョーコ「仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターは全国でリンクしていて、時折重賞戦が行われるよー」


ジャオガ「ちなみに仮想対戦(バーチャルサバイバル)システムは共通ではあるが、チキュー、人族、魔界、御獣とそれぞれ種族ごとに別々になっていて交流はあまりない」


作者「仮想対戦(バーチャルサバイバル)ワールドカップ開幕できそうだなー。面倒だからやらんけどw」

リョーコ「おいwwwwwww」



 次話『魔境は恐るべき事になっていた!? 魔族も苦戦必至!』

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