47話「ナッセに絡む四魔将! それぞれの心情!」
魔王ジャオガが住まう魔王城へ連れられていった。
黒い岩山を連ねているだけの建造物ではあるが、中はちゃんと空洞になっていて階段とか部屋とか施されているので生活に不自由しない。
三階ぐらいへ上がると広間に出て、そこで四魔将の三人と出くわす。
その後ろの城壁には赤く逆五芒星が描かれていて、四つある宝玉は禍々しく灯っている。その中の一つは砕けたであろう残骸の一部が見えていた。
「一者いないが、余を慕ってくれる四魔将だ。紹介しよう……」
骸骨を模した白い紋様が走る漆黒の重鎧の大男。“重鎮の深淵卿”アマリビグ!
竜をそのまま人間にした小柄な体格。鎧を身に包み、剣を背中に背負う男。“天空の独裁者”ソネラス!
氷の右半身と炎の左半身の女。頭を一周する輪っかの上から氷と炎を模した髪が逆立っている。露出度の高い衣服風の氷と炎で恥部を隠す。“氷炎の魔女”ホノヒェラ!
すっげぇゾクゾクするほど強い威圧感を感じる……。
あの“残虐なる蟲王”ベルセムと同等なのが三人揃っているのだ。気圧される。
でもホノヒェラって女、こちらを睨んでなくない?
「そいつがベルセムを消滅させたのねっ!?」
「おい! ホノヒェラッ!」
魔王の制止も無視して、カツカツ歩み寄ってくるとガツンと頬を殴ってきて地面に転がされた。
「あんたっ!」
殺気立つヤマミは黒髪ロングをブワッと舞い上がらせ、威圧が膨れていく。そして黒い小人を周囲に────!
すると魔王が「待て!」と間に割って入り、腕を横に伸ばしてヤマミを抑える。
ふてくされるホノヒェラを魔王は睨む。
「まだ幼少期の妖精王に当たるのは短絡的だぞ!」
「フン! これで勘弁してやっただけよっ! 人族だったら八つ裂きだからっ!!」
ホノヒェラはそっぽを向いて暗闇の中へ歩き去っていった。魔王はため息。オレを見やって「大丈夫か?」と気遣ってくれた。
いたた、とクックさんに寄り添われて身を起こす。
ヤマミは憤慨しながらも、こっちへ歩み寄って立たせてくれた。
「気を悪くするな。あやつは短気……勘弁してやってくれ」
骸骨模様が入った漆黒の黒鎧男のアマリビグはペコリと頭を下げる。
竜人のソネラスはツカツカ歩み寄ってくると、オレの汚れたズボンを軽く払って「失礼したな」と頭を下げてきた。
思わず「あ、いえ……」と返す。
「……ベルセムを殺された事は水に流す。なぜなら教皇の件で救われたからだ。主が戦ってくれなければ我々は全滅していた。正直言って歯が立たなかったのも事実」
「我も同じ心中である。感謝する」
そう言うとアマリビグとソネラスは穏やかに立ち去っていった。
「フー、部屋は用意してある。来い」
魔王にそう言われ、ついていくと一つの部屋の前で止まった。
既に用意してたらしい部屋は、ベッドが三つ、三面鏡、本棚、冷蔵庫、クローゼット、そして手洗い、トイレ、シャワー室も完備されていた。ちょっとしたホテルの一室みたいだぞ。
魔王は収納本から色々取り出してテーブルの上やらに並べていく。
チェス盤、小さいピアノ、パズルなどのゲームの他に、観光に必要な魔界のガイドブックだ。ひょっとして帰る前に買ってたのコレ?
「人族の暮らしを参考に用意した。ベッドには柔らかい生地を重ねておいたが合うかは自信がない」
「ってか、まさかジャオガさんは寝たりしないの?」
「我々魔族は強靭な生命力故、数十分の瞑想だけで体内調整が済む」
「体内調整??」
「脳の整理や身体の休息を促す生理現象の事だ。御獣族や人族など大半の生物は睡眠をする事で行われるらしい。種族によって差異はあるが人族は約六~八時間の体内調整を要すると聞いている」
「そ、そうなんだ……」
ヤマミは疑惑を抱いたのだろうか、目を細めた。
「随分効率的な体をしてるのね」
「ああ」
「じゃあ、それを利用して効率の悪い人族を攻め続ければ絶滅できるんじゃないの?」
しかし魔王は首を振る。
「我々は“種族を絶滅する”為に闘争はしない。前に言ったように競い合う事こそ闘争たるもの。互いベストコンディションで挑んでこそのもの。寝首をかいて勝っても自慢にならん」
「なんだか魔族への見方が違ってきそうだぞ……」
「とは言え、戦略や戦術の上で騙し討ちや化かし合いはそれに該当しない。騙される方が悪い。そうならぬ為に各々対策や防衛を張り巡らせて闘いに臨むものだ」
戦いの最中で人質を取ったり、土を蹴って目くらまししたり、そういう事は許容範囲らしい。
やっぱ魔族はクソだ! なんだかんだ身勝手なだけじゃねぇか!
「もし何かあったらこのスイッチで呼べ。こちらから用事があれば呼ぶ。それまで自由にしてろ」
そう言うなり、スイッチを渡してからドアを閉じて去っていった。
ヤマミと顔をしばし見合わせる。後ろでクックさんはベッドで気持ちよさそうに跳ねていた。
ドアが固く閉められたかと思ってノブに手をかけると、普通に開いた。
赤い絨毯が横切る静かな通路を見渡す。等間隔でランタンが灯っている。
凶悪なモンスターがウヨウヨ徘徊しているってのが魔王城感がしそうなもんだが、いやに静かすぎる……。壁の窪みにリビングメイルがあるけど動かなさそう。
そもそも殺気とかそういうの感じないし…………。
バタンと閉めた。気付けば内側から鍵かけれるタイプだった。
別に監禁してるワケじゃないんだな。自由にしろってたから、城の中を歩き回っても全然オーケーなんだろうか?
ってかいざとなれば脱出して帰る事もできるんかな?
「突然抜け出したから、アクトたち心配してっかな? 勇者セロスも不審に思わねーかな?」
「それはそうね……」
募ってきた不安で、行動を起こそうと思った時!
「おい!」
ホノヒェラが不意にドアを開けてきてビクッと身が竦んでしまった。
氷の右半身と炎の左半身の女。赤と青のコントラストで分かれている艶かしい女体。しかし勝気な表情。
「詫びだよ」
そう言うなり、蠢いているシュークリームが入った袋を三個渡してくる。
「私ね、短気だからつい手が出てしまう。ベルセムとは腐れ縁だったからさ。あと、これ取って置きだからな? 美味しいぞ」
「へ、へぇ……」
「心配いらないわ。ベルセムでしょう? 生きてるわよ?」
「ホントかい?」
ヤマミの言葉にホノヒェラは疑心ながらも食ってかかる。
「人間として転生したの確認したわ。異世界に来るって言ってたから会えるわよ」
「フン! 人族にか! 余計な事してくれたものね……」
不機嫌ながらも、どこか安心したような雰囲気がする。
本当にベルセムを大切な仲間だって思ってるんだな。なんだか悪い事したな……。
「話、いいか?」
「え? うん……?」「なに??」
気付けばクックさんはベッドの上でグースカ熟睡してた。
「……ベルセムと戦った時の事さ、聞かせてくれないかしら?」
「カッとなるなら止めといた方がいいんじゃないの?」
「殴ったの悪かったわ……。でもこれきり! 最期にどうなったか聞きたいだけ!」
ヤマミの方へ振り向いて「いいんじゃない?」と言うと、ため息をつかれた。
そしてベルセムとの一連を覚えている限りの事を告白する。
強烈な殺意と威圧感は印象的で、もぎ取った足を貪るなど残虐な行為。それにカッとなった相方が吹っ飛ばされたのを機に、オレが激情任せにベルセムをブチのめした事までを伝えた。
「はー! そりゃそうなっても仕方ないわねー」
「怒らないの?」
「ベルセムっていつも人族には残虐だから、恨み買われてるの多いから」
肩を落とすホノヒェラの反応が意外だった。
「まさか幼少期とはいえ妖精王が人族と一緒にいるとは思わないでしょ? 見た目はまだ人族と変わらないからね。それに戦いを挑んだ上での結果じゃしょうがないわ。不可抗力っていうじゃない」
「妖精王の浄化で魔族は死に、人間に転生するって事ね……」
「そうなるとは思わなかったんだよ!」
「もし人族だったらブッ殺してたトコだけど、あんたらならしょうがないわって思うわ」
首を振って肩を竦ませる。
人族は許せないけど、妖精王なら仕方ないか、って事なのか……?
「でも、変な気を起こすのは止めてくれな? 浄化できるからって暴れられたら、この国もガタガタになるしさ」
「そ、そんな事しないよ……」
「場合によってはするかもね……。ナッセは甘いけど、私は甘くないから」
ヤマミが挑発めいた事を言い出してきて、オレはドキリとする。
「敵対は勘弁だよ。ただでさえ『大祓祭』の事もあるしさ」
「……そう」
「ぶ、無事に帰らしてくれるんなら、何もしないよ」
「心配するな。竜族との討議が終わったら好きなようにすればいい……」
なんと竜人のソネラスがやってくるなり、そう告げてきた。
その際に反転空間を介して元の世界へ帰れる方法も教えてやるとの事。
来たのはホノヒェラが何かしでかさないかと心配だったらしい。
ホノヒェラは「またね」と手を振り、ソネラスと一緒に去っていった。
その一時間後、アマリビグがやってきて大きな手を差し伸べてきた。
「……やろう。我が作った」
なんと小さな飛行船の模型を渡してくれた。大柄な割に手先は器用で、色んな模型を作る趣味があるらしい。
もし興味があれば四階にある部屋まで遊びに来てもいいとも言ってた。
寡黙に去っていくアマリビグを見送りながら、不思議な感覚を覚えた。
ベッドに座りながらヤマミと一緒に、穴から夜景を眺める。上空の赤い月が印象的だ。
「……ベルセムも彼らみたいに友好的だったのかな?」
「さぁ? どうだっていいわよ」
「え? ちょっ……近っ!」
艶かしく迫るヤマミに押し倒される。間を置かず重ねてくる唇。有無を言わさない情熱的な絡みに体が熱く滾っていく。
あとがき雑談w
魔王城の岩山上で四魔将は赤い月を眺めていた。
ホノヒェラ「ナッセとヤマミ何してるの? 人族の踊り??」
ソネラス「お楽しみというヤツだ……(赤面)」
彼らは『察知』で密かに様子を感触していたのだ。
でも何で二人が絡むのか理解が追いつかず、不思議に思っているようだ。ソネラスは元竜族なのでなんか知ってるみたい?
アマリビグは無言で材料を重ねて組み立てていた。
全裸の二人があんな事やこんな事……恥ずかしいポーズを鮮明に再現ッ!
ソネラス「おっと! 滑ったァ!」
倒れ込んでソレを粉砕。グシャア!
アマリビグ「ソネラス……コロス!」
赤く目を光らせ、巨大な斧をメキメキ生成して飛びかかった。ズガーン!
次話『これが魔族の日常!? 意外な顔!!』




