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46話「ナッセたち、魔界ギルドに登録する!」

 闇のダークロス王国。魔王ジャオガが統治(とうち)してるらしい魔族の国。

 岩山に穴をくり抜いただけの粗雑(そざつ)な建物が並び、様々な形状の魔族が行き交う。そういえば子どもや同じ姿をした魔族は見ないなぁ……。


「魔族の中にも多くの種族がいるって事か?」

「何の話だ?」


 道路を歩きながら見渡しながらぼやくと、魔王は怪訝な顔をしてきた。


「ああ、そうか。人族はそういうものだったな」

「え?」

「ゴブリン、オーク、人族、エルフなど共通とする容姿を持つのを一つの種族として見ているんだろう?」

「あ、ああ……」


 魔王が向かう先に大きな屋敷が見える。そこだけ何故か立派な建築だ。装飾も()っている。

 まるで人族が作ったみたいな四方立方体な形状だ。


「……魔族は魔族。唯一無二の姿。繁殖(はんしょく)は不可。寿命はあるものの同一転生。(ゆえ)にそれぞれ異なる容姿してて当たり前だ。ただし」


 屋敷の中へ入っていくと、立派な紳士服を着た青白い人が「ようこそいらっしゃいませ」と迎えてくれた。

 魔族たちが多い中で、青白い紳士服の人が色んな役職で受け持っていた。


「同じ魔族に分類されているものの、亜魔族と呼ばれる存在がいる。この吸血鬼(ヴァンパイア)族などのように一つの種族として括られているのがそうだ。我々と違い人族と同じように眷属(けんぞく)を増やせるタイプだからな」


 言われてみれば吸血鬼の従業員は同じような容姿で、人族と同じように男と女が存在している。

 しかし、ここはどことなくギルドっぽいな。魔界のギルド??


「新規の冒険者を連れてきた。登録しておきたい」

「へへっ! かしこまりました! 魔王さま!」

「ナッセ、ヤマミ、クック、サイン契約だ。血を流せ」


 面食らって「えっ!?」と仰け反る。


「血だ。血の承認(しょうにん)だ。別に物騒な事をするワケではないぞ?」

「なぁんだ。そんな事か……」

「それでも引くわ」

「いったそー!」


「ご心配なく。自ら分泌(ぶんぴ)できましょう」


 受け付けの吸血鬼が差し出した親指に赤い点が膨れてくる。……血?

 今度は魔王も親指の先っぽから血を出してみせる。


「毒を分泌する方法、列車の中で教えたろう? それの応用だ」


 恐る恐る意識して親指から分泌しようとすると、確かに血が吹き出る。

 自分で出入り口を開いて血を出すみたいな?

 それを契約紙の血印として付ける。すると名前、クラス、属性といった基本的な個人情報が浮かび上がってきた。


「血を媒介(ばいかい)にする事で強力な魔法陣を創るのもあるぞ。覚えておけ」


 血を使った魔法陣は創作あるあるだったが、リアルにもあるとは思わなかった。

 受け付けの吸血鬼のオッサンがなんか作業してて、それが終わるとオレたちにカードを差し出してくれた。

 禍々しい紋様ではあるが、ちゃんと血印と共に名前などが記載されている。


「これは……冒険者カード!?」

「人族のと違うから、間違えるんじゃないぞ? だが、これで魔界内でお前たちの身分証明書となる」


 すると受け付けの吸血鬼のオッサンはニタニタ笑む。


「ダンナさん、エルフ族かと思いやしたが妖精王とはねぇ……」

「まだ幼少期だからこそ、常識を学んでもらわねばならんのでな」

「よ、幼少期……??」


 まだガキって事?? 失礼だなぁ、もうこれでも成人なのに!!

 確かに見た目じゃガキっぽいのは否めないけど、やっぱ傷つくぞ……。


「な、何言ってんだよ? オレはもう二十歳過ぎてっぞ!」

「あたしも立派なレディだーっ!」ぷんぷーん!

「クックさんはまだ子どもでしょう」


 両拳を突き上げるクックさんに、ヤマミはジト目でボソッと突っ込む。

 魔王は首を振ってため息をつく。


「人族では成体なのだろうがな、妖精王としてはまだまだ子供って事だ」


「ははぁ、そういう事ですかい。確かに人族出身の妖精王じゃあ、まだまだ学ぶ事多いねぇ。あちらさん頑固で偏見(へんけん)多いですし」


 吸血鬼のオッサン、やっぱ人族好きじゃないんかな?


「人族に例えるとお前らは十歳ぐらいだ。人族は短命で使い捨てだから精神レベルはそれでいいのだろうが、妖精王はそうはいかん」

「使い捨て……」


「ダンナさん。元は人族だったんですから優しく諭した方がいいんじゃないですかい?」


 魔王はオレの頭に手を乗せ「学ぶのが遅いくらいだ。多少追い込んでおかねばコイツらの為にならん」と言い切る。

 なんか親みたいなセリフだな。てかナデナデすんなよ!


「はぁ、そうかねぇ?」

「そういう事だ。最近物騒になってるのでな」

「……(ちまた)で言う深淵の魔境(ディープダンジョン)ですな」


 魔王は頷く。

 続く会話を拾ってみると、この魔界にも『深淵の魔境(ディープダンジョン)』が現れたらしい。

 てっきり人族の異世界で七つばら撒かれたと思ったが、実際は少し違うようだ。この異世界で繋がる世界全ても対象に入る。

 やはり高難易度の洞窟で、魔族側も相当被害を被ってる。

 やられていく威力値が一〇万級の魔族も少なくないらしい。それでも興奮冷めやらぬ様子で挑戦者は絶えない。


「人族だけの問題じゃなかったのね……」

「てっきり魔界は無関係かと思ってたぞ。思ったよりスケールでけぇな」

「なーなー! また行くっかー?」


 クックさんは興味アリアリっぽいが、オレとしては勘弁(かんべん)したいぞ。

 あんな高難易度だらけだったら息が詰まる。

 できれば他のヤツがクリアして欲しいんだが!


「人族の世界も含め色んなトコに繋がっている世界構成だ。従って『聖絶』がそのまま行われたら一緒に滅ぶ。こちら側も死活問題だ。……それと明後日にとある竜族と討議(とうぎ)がある。参加してもらうぞ」

「え? 竜族と……討議?」

「同盟を組んでいる竜族とだ。社会見学の為に見ておけ。後学の為にもなる……。魔境への挑戦はその後でいい」


 魔王と一緒に去る際に、吸血鬼のオッサンは「ごひいきに~」と手を振る。

 なんかフランクだなぁ……。

 これじゃまるで人族と変わらねぇじゃんか。てっきり悪の組織みたいな殺伐した感じと思ってたぞ。


 人族のギルドと同じく掲示板には多くの依頼票が張られている。それを見ていると魔王に「今は登録だけだ。城へ帰るぞ」と言われた。

 今はダメだと親に言われたみてぇな感覚だ。

 しかしクエストは……!


「人族の討伐あったー!」


 そう、野生のゴブリンやオークの退治のみならず、人族関連の討伐依頼もあったのだ。


「侵略してくる人族は少なくないが、あっちの世界でも開拓して領地を増やされないように討伐の依頼も来る」

「あっちにも魔族の領地とかあるの?」

「基本的にはない。が、人族が増えすぎると厄介な事になる。大昔にそういう事があって自然が壊滅的被害を被った。それを守ろうと世界大戦にも勃発(ぼっぱつ)してまで人族をかなり減らして、事なきを得たのだ」


 ハッと思い当たる事が浮かぶ。元いた世界がまさにそれだった。


 人間だけの世界で、ほとんどの土地を開拓して多くの国ができた。文明も発達して経済社会として進歩を繰り返してきた。

 オレが生まれる頃は不自由ない生活が送れるようになっていた。

 水も電気もその場で供給されて、あまり動かなくても快適な暮らしができる。


 しかしその一方で環境破壊がついてまわった。


 有害な薬の垂れ流し。森林伐採。大気汚染。滅亡兵器開発。分解できないプラスチック。……他にも色々あるが、人が増えれば増えるほど星への被害は大きくなっていく。

 人間だけの世界だとああなるのは明白で、魔族のやってる事を非難する事ができない。



《あったりまえじゃんー! 人類ってどこぞの家畜害虫みたいに勝手に増えるんだもんねー! 浄化はもちろん間引きは必要っしょー!》

《それも兼ねて……だね……。うふっ》


 サラとエム、塔の魔女が言っていたのはそういうワケだったのか……。

 あん時は冷酷な魔女だって印象だったけど、理由があったからこその発言とも言える。

 オレたちが人間としての偏見で勝手に“悪”と捉えるように見ていただけなのか……?


「何が正しいんだか…………分からない……」


 するとオレの肩にポンと魔王の手が置かれる。


「そう悩むな。だからこそ我々魔族が“闘争”を主においてバランスを取っている。憎まれ役も楽ではないがな」

「ジャオガさん……」

「種族それぞれに役割があるって事ね」

「リエーラ婆さんの言ってた通りだっやー!」


 クックさんによると、婆さんからも「人族と魔族は表裏一体みたいなもんさね」と日頃から言ってたみたい。

 人族に(かたよ)らないように森で暮らしているのも、それが理由だったらしい。

 そしてエルフや竜族、御獣(ミケモ)族などの社会にも訪問して見聞を広げていた。流石に魔界は数える程しか行っていないっぽい。


 帰る途中で魔王はあちこち店で色々買って、収納本に収めていく。




 魔王の城は黒い岩山を連ねた大きなもので無数の小さな穴から明かりが漏れている。

 入口の大きな扉がギギィと開くと、鍾乳洞みたいなダンジョン風だが赤い絨毯(じゅうたん)が道に沿って続いている。等間隔に灯りが不気味に並んでいる。

 魔族の兵が「魔王さま! おかえりなさいませ!」と敬礼。


 歩いていくとあちこちに人型の鎧が飾られているが「リビングメイル。防衛用の物質族モンスターだ」と魔王が教えてくれた。

 リビングメイルに限らず、色んなモンスターを潜ませているとの事。


「魔族製のモンスターの事も教えてやろう」

「ど……どうも……」


 魔王が言うに、多くの魔族は自分でモンスターを生成して勢力を拡大していく。だからワンマンで動く魔族が多い。ジャオガさんのように徒党(ととう)を組む魔族もいないワケではないが、人族ほど群れる事はなさそう。


 二階三階と登っていくと、広間で四魔将の三人が待っていた。

あとがき雑談w


アクト&リョーコ「環境適応魔法(テキオーラ)って何??」


環境適応魔法(テキオーラ)

 魔法力で自らを覆って、その膜が自動で外部の環境との接触を変換する事で普通に生命活動が可能になる魔法。

 ただし、覚えれば誰でもどこでも暮らせるワケじゃない。

 あからじめ変換の仕組みを理解する事。


 例えば、海の中なら水中で酸素をどう体内に取り込めるか?

 宇宙なら、真空状態で体にどれくらい影響を及ぼすか? そして酸素のない空間で呼吸できるか?


 ちなみに『環境適応魔法(テキオーラ)』会得の為のデータバンクのアクセスが創作士(クリエイター)センターやギルドなどでできるので、通いながら徐々に馴染んでいける。

 そして持続時間を増やす練習などをして、初めて会得資格を得る。


 ただし会得までに数ヶ月かかるらしいのだ! 割と会得難易度高い!



セロス「ナッセとヤマミは環境適応魔法(テキオーラ)覚えてたようだしな。ずっと前に色々練習してたんじゃないか?」


アクト「そんな事、一言も聞いてねェ!!」

リョーコ「そんなの初耳よ!」


作者「すまぬw この設定は今思いついたw いわゆる後付けーw」



 次話『四魔将と一触即発!? ベルセムの仇!』

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