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44話「ええっ!? 魔王ジャオガの訪問!?」

 昨夜(さくや)、モリッカを連れた後に自宅に招待(しょうたい)してアクトとリョーコと一夜を過ごした。

 九時相当の時刻で早々に寝たクックさんを追いかけるように、その二時間後にオレとヤマミは就寝。アクトとリョーコとモリッカはビールを片手に深夜まで盛り上がってたようだった。

 参加したかったがヤマミに(さと)された……。しょぼん。


 その翌朝、居間のソファーでアクトとリョーコはガーガー寝込んでいた。

 すっげぇ臭いがしてたので換気や消臭の掃除系家事魔法で処理した。テーブルに多く並ぶビール缶もゴミ処理魔法で片付けた。ヤマミの嫌そうな顔が印象的だったぞ。


 モリッカはケロッとしてたので、アルコールに強いのが分かって意外だった。



 勇者セロスの家へ着くと、初めて会う両親に歓迎された。

 しかし肝心のセロスは夜更けまでファリアとメーミと飲んでたせいか、まだ寝ているようだ。


 なので母が笑顔で「ゴメンねー。起こしに行くから待っててー」と、バタバタ階段を駆け上がっていった。


「お前が“妖精の白騎士”、そして“黒魔の妖精”……。かねがね話は聞いておるぞ」

「ど、どうも……。お邪魔します」

「失礼します」


 するとモリッカは「わー懐かしいですねー」と嬉しそうだ。


 父親は元気そうだったが「剣を振るうだけなら問題ないが、技を繰り出すなど負担の重い戦闘は無理だ」と言っていた。

 だから魔王の襲撃時に参戦できなかったらしい。

 母は相当なレベルの僧侶。父と同じパーティだった。一緒に冒険者を引退して娘二人を世話してるとの事。

 娘二人は剣を腰に勇敢な雰囲気があったが、小学高学年相当の年頃なのでクックさんと遊ぼ遊ぼしていった。


「しかし、まさか異世界転生してたとはな!」

「あっははー! でもこういうのも悪くないですよ~」

「そうか。元気でなによりだ」


 父もモリッカを知っているようだった。

 昔っからセロスと一緒にこの国で育ったんだなって(うかが)い知れた。例え人格が変わったとしても父は全く気にしている様子はなかった。

 ただ、生きていたって事には安心しているようだ。


「おはよう……」


 眠たそうなパジャマ姿のセロスが降りてきて、意外な面に驚かされたぞ。

 いつもは信念を抱いて真剣に戦うイメージが強かっただけに、だらしない様子にギャップを感じた。


「お、お前は!! モリッカ!?」

「あーまたまた寝ぼすけさんですねー! 相変わらずー」


 驚くセロスと嬉しそうなモリッカの会合(かいごう)に、なんだか安堵させられた。

 人格が変わったとしても全然気にしてなかった。杞憂(きゆう)に終わったようで安心安心。積もる話をしようとしていたが、母に「歯磨き! 着替え! 朝飯!」と怒鳴られてスゴスゴ……。


「いや、見苦しい姿を見せて申し訳ない」


 父も苦笑い。オレは驚いたが「気にしないです……」と告げた。

 なんだか勇者セロスも親近感わくなぁ。

 色々済ませるとファリアとメーミに会うべき家を出た。その際に父と母は「また遊びに来てな」と手を振ってくれる。

 クックさんと娘二人は名残惜しそうだったが、元気よくバイバイー!


 気を引き締めた勇者セロスは「行くぞ!」と言うが、以前とは印象が違って見えた。

 移動魔法で時計台の広場へ降り立つと、既にファリアとメーミが待っていた。


「おお!! モリッカ! モリッカじゃないか!!」


 ファリアが駆けつけてきた。


「ファリアさん老けましたねー!」

「てめ! 言ってくれんじゃねぇか!」


 モリッカが抜けた後に入ってきたらしいメーミは「へぇ~意外と明るいわね~」と初印象の反応だ。

 懐かしむように和気(わき)藹々(あいあい)とセロスたちがモリッカと喋り始めて、オレは安堵して顔を綻ばした。



「うわ────ッ!! 魔族の襲撃だ────ッ!!」


 ところが突然の騒ぎで広場の人々が逃げ惑っていく。

 思わず緊張する。すると向こうの道から魔族が一人、血気盛んに魔弾をあちこち放って建物が破壊されていく。

 思わず身構えようとすると、背後に恐ろしい威圧感を感じた。

 咄嗟にかばうようにクックさんに腕を回して振り向こうとする。


「動くな!」


 なんと漆黒のロングコートをかぶった大男が背後にいた。半顔で見やると顔の下半分しか見えないものの、まさかの魔王ジャオガだったぞ。

 嫌な汗をかいて戦々恐々。下手に戦えばこの辺りが焦土(しょうど)と化すぞ。


「あのバカを庇う気はない。お前らと話をしたいだけだ」

「一体何がしたいワケ?」


 不機嫌そうなヤマミに、ジャオガは「まぁ待て。あのバカが片付くのを見てろ」と自ら動く様子はない。



 暴れだした魔族はウサギの形状をした爬虫類のような気味の悪い風貌をしていた。

 同じ場にいたセロスが聖剣を構えて交戦しようとしている。


「これ以上好き勝手させんぞ!」

「誰かと思えば、教皇にボコボコにされたヘタレ勇者じゃねーか! ここでブッ殺して名を挙げてやるぜッ!! この“兎蜥蜴”ラピリード様のな!」


 オレはクックさんを庇いつつヤマミと一緒に、魔王ジャオガに背を向けたまま成り行きを見守る。

 ファリアとメーミとモリッカは動く様子はない。

 バカ魔族ラピリードが喜々とセロスに飛びかかるが、逆にボコボコにされて吹っ飛んで地面を滑って横たわる。弱っ!


 とは言え後ろの魔王ジャオガは加勢する様子も見せない。


「くそ!! こうなったらこの辺りを吹き飛ばし……ガッ!!」


 起き上がろうとするバカ魔族を、すかさずセロスが重い一撃を加え沈めた。


「あのバカはともかく、少数で人族の国に侵略するなど自殺行為。普通はやらん。この余もな」

「ってか、なんで来てんだよ?」

「話がしたいだけだと言ったろう。あのバカみたいに暴れる無粋(ぶすい)な真似はやらん。見ろ!」


 魔王ジャオガに(うなが)されて、見やると横たわっているラピリードにセロスは聖剣で突き下ろしてドスッ!

 すると突き刺された魔族は「うがあああああ!!」と悲鳴を上げながら、散り散りと分解されていく。跡形もなく消し去ってしまったようだぞ……。


「我々魔族が何度でも復活するのは知っていよう?」

「あ、ああ……」

「だが、あんな風に『聖剣』でトドメを刺された魔族は致命的な損失(そんしつ)(こうむ)る。一つの代償で済むはずが、聖剣によって全てを奪われてゼロからの復活となる。しかも復活までの期間も倍になる」


「一体何を言っているんだ……? なぜそんな事を教えてくれるんだ??」

「聞け。ああいう危険(リスク)を考慮して、国を攻める場合は軍を率いる。あのバカみたいに単独で襲うなど自殺行為はしないという事だ」

「あなたもそういう運命になると思わなかった?」


 気付けば、ヤマミの黒い小人が囲んでいた。しかし魔王ジャオガは至って冷静だ。


「まぁ待て! 余は戦う気はないぞ?」

「あんたたちは私たちにとって敵! ナッセが聖剣を持ってたのは悪いタイミングだったわね」

「知っている。それでも来た」


 殺気立つヤマミ。しかし平然と無防備を(さら)す魔王ジャオガ。


「や、ヤマミ! 待ってくれ! まだ分からない事がある!」

「…………ナッセ?」


 怪訝そうなヤマミだったが、殺気が薄らいでくれた。


「ジャオガ……さん? 質問していいか?」

「それは願ったりだ。話が分かる妖精王(おまえ)で安心したぞ。だが場所は移させてもらおう。来い!」


 フッと煙を残して高速移動していった。

 オレたちは慌てて高く跳躍して、家の屋根をピョンピョン飛んで気配を追いかけていく。きっと勇者セロスがいるからだ。あのままだと気付かれて激戦になるのは必至だろう。

 かと言ってスルーした結果、あっちで暴れられても困る。



 人気のない薄暗い路地で、ロングコートのジャオガが待っていた。

 妙に静かなのが逆に不気味だ。


「いつでも質問いいぞ」


 息を飲んだ。今でも信じられないが、妙に戦意が全く感じられない。


「予め言っておくが、子どもに危害は加えんよ。それこそ失礼を欠く」


 オレの後ろにいるクックさんは狙わないようだ。なんか律儀(りちぎ)だな。

 とは言え、エンカウント空間に引きずり込んで襲ってくる気配もない。

 もしも戦う事になったら妖精王で早めにケリをつける。四魔将ベルセムん時みてーに大技で畳み掛けてやる!


「本当に……オレと話し合う為に来ただけなのか?」

「少し違うな。ヤマミ、クックも一緒だ。だが勇者セロスたちとは話し合う気はない」


 オレとヤマミならともかく、クックさんにまで??


「…………えらくピンポイントね?」

「当然だ! ナッセ、ヤマミ、クックは()()人族じゃないからな!」


 魔王ジャオガがそんな事を突きつけてきて驚かされた。

 確かにオレたちは妖精王に変身できるんだもんな。しかもクックさんが妖精王なる事も既に知ってた。どっか見聞きされてたんかな?


「だがお前たちは人族から生まれた妖精王。まだ人族の時の習慣(クセ)が染み付いている。余に対して懐疑心(かいぎしん)を抱いている。魔族が人族と敵対関係という認識だからだ」

「そりゃオレは人間だけどさ……」

「その認識は改めろ。もはや人族の輪廻(レール)から外れているのだ。戻れんよ」


 ヤマミを一瞥(いちべつ)すると、戸惑っているのが窺える。

 不安からか、こちらに振り向く。


「まず言っておくぞ? 妖精王は何も人族から()()生まれるとは限らん、御獣(ミケモ)族、エルフ族、魔族からも出るのだ」

「み、ミケモ??」

「人族の言い方だと、()()()の意味で『獣人(じゅうじん)』だ」


「「ええっ!?」」


 初めて聞いたが一般的に獣人と認識していたのは、御獣(ミケモ)という種族だったらしい。

 獣人はあくまで人族側の呼称(こしょう)でしかない。人族に友好的な御獣(ミケモ)が多いから、そういう呼称が一般的な認識らしい。


 だが、人族や魔族とも線を引く()()()()こそが御獣(ミケモ)族。

 御獣(ミケモ)だけの社会がどこかに存在していると、魔王はそう説明してくれた。


「まだ予備知識のない子どものお前たちだから、こうして親切に教えてやってるんだ。人族、御獣(ミケモ)族、魔族それぞれ別々と敬意を払う必要がある。もし御獣(ミケモ)族の国へ訪れる事があれば『獣人』などと失言するな! 種族ごとに社会と認識が違う! 故に最低限マナーは必要だ!」

「あ……、はい」


 なんだか親に叱られるみてぇだ……。


「何も知らぬまま、人族ばかり肩入れして(はり)(むしろ)になりかねん。お前たちの為に言っている。まずは我らが魔界へ来てもらう」


 するとエンカウント空間が広がってきて、オレたちは呑み込まれていった……。

 一体何が起きているんだぞ…………?

あとがき雑談w


 あの後、忽然と消えたナッセたちが気になって、家まで訪れていた。


セロス「ん? ナッセたちは帰っていないのか?」

アクト「…………あァ、心配いらねェ! 帰ってくらァ!」

リョーコ「ナッセとヤマミだったら大丈夫でしょ!」


 晩になっても帰ってこない……。翌日、国中探したけど全く見つからない……。


アクト「がああああ!! しまったァァァ!!」(大慌て)

リョーコ「どうしよどうしよ!! まさかこうなるなんて!!」(大慌て)

セロス「一体何が起こってるんだ……??」


モリッカ「あっはっはっは! 相変わらず騒々しいですねぇー!」



 次話『魔王ジャオガの罠!! ナッセとヤマミ、ピンチに!』

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