42話「魔境攻略──その後!」
ついに最下層にいるラスボスを倒すと、周囲の奇妙な風景が光に包まれていく……。
もちろん魔境へ踏み入れた後続の冒険者たちも戸惑いながら、光に包まれていく。
ダンジョンコアが破壊されたからだ。
それにより『深淵の魔境』は消滅しようとしている。
二人の魔女が、世界滅亡級の大災厄である『聖絶』を分けて複数のダンジョンコアを錬成し『深淵の魔境』を構築している。
つまり、この消滅は『聖絶』の一部を浄化した事を意味する。
辺り一面、眩くて水色の澄み切った光の世界────。
《おめでとう……! ナッセ!》
濃い青い髪の長身の男。顔立ちが整っていて凛々しい。青いマントを羽織っていて、軽装の白い鎧。手に持っている青くて長い柄の口金からは宝玉を中心に左右側の三日月の刃と剣のような刀身が伸びる三叉の槍だ。むしろハルバードじゃないかな?
マロハー同様、初めて会う人間なのにどこか懐かしい雰囲気がする。
すると、その男はオレの頭を撫でてくる。
《地獄のような並行世界に落とされたというのに、お前は本当に強い子だな……。まさか舞い戻ってきて大魔王をも倒し、この高難易度の魔境をもクリアしてみせるとはな……。これには正直驚かされた》
「ええっ!? そ、そこまで見てたの……?」
《ああ、ずっと見ていたよ。よく頑張ったな》
優しい笑顔で労われ、じんわり心が揺れ涙が溢れてくる。思わず抱きついた。
《こういうのは今になっても慣れないな…………》
しばしの抱擁に浸っていると、その男は《さて》とオレを優しく引き剥がしてきた。
そして槍を差し出してくる。つい手に取る。すると青い槍は光を放つと同時に収縮していって杖になってしまった。
刀身が短剣よりも収縮して装飾程度に収まってしまう。
「これは……!?」
《ふむ、おまえサイズってところか。……これは『聖剣』だ》
「聖剣?? まさか、これが!?」
《ああ、正式の名称としては『蒼明剣』。元々は水のブルークア王国の伝わる『六柱蒼』の武具が一つだ。遥か昔、オレはそれに認められて所有者となった》
「せ、聖剣ブリュアゾ!??」
《現在では失われた古代遺物扱いだ。呼びにくいなら自分で好きに付けて構わん。オレは『パヤッチの槍』って名付けてたがな》
今までヨネ校長、ヤミザキの息子、この異世界の勇者、それぞれが持つ聖剣を見かけてきたけど、まさかこの手に取るとは思わなかった。
《元々はオレが愛用していたモノだったが、おまえが持っていた方がいい》
「えぇ……。でも、そんな大事なモン受け取れねぇって……」
《いや受け取ってくれ! なんせ『深淵の魔境』クリアの秘宝なんだからな!》
そういや、魔境のダンジョンコアを砕けば極上の秘宝を授かるとか、塔の魔女は説明してたな……。
《あと、サラとエムの事もよろしくな…………》
遠のきながら薄らと消えていく男に、オレは思わず引き止めようと手を差し出す。
誰だか分からない内にいなくなってしまうのが嫌だった。
「あなたは一体────────?」
《パヤッチ……! ひと時でも、おまえに会えて良かったよ。じゃあな》
清々しい笑みで挨拶のポーズの指を見せると、スウッと消えてしまった……。
どことなく寂しい気持ちが心に燻っていく。
理由は分からないけど、もっと一緒にいたいって気持ち湧いてくる。なぜなんだろう……?
そして辺りは完全に光に包まれていった。
気付くと、自分は光に包まれながら徐々に夜に染まった地上へ降り立っていく。
そこでヤマミたちが待っていた。
見渡せば『深淵の魔境』があった場所だ。今はもうなくなってしまったようだけれども……。
駆け寄ってくるヤマミとクックさん、安堵しているアクトとリョーコに勇者セロスたち。そして遠巻きで見知らぬ冒険者が何十人いた。
「何があったの??」
「ナッセいないって慌ててたー! でも上のやつで待ってたー!」
クックさんが指差した上空を見ると『深淵の魔境クリア! 最下層のラスボスの撃破者は“妖精の白騎士”ナッセ! 秘宝取得完了!』とデカデカと書かれていて、オレのバストアップ像が映し出されていた。
よく見てみれば一緒にクリアしたヤマミたちの顔や名前が小さく羅列されていた。
まるでゲームみたいな感じだ。
「その杖……?」
ヤマミの視線に気付き、手に持つ杖を眼前に挙げてみた。
「ああ。なんか秘宝らしいな。ラスボス撃破したからゲットしたみたいだなぞ」
「聖剣?」
「どうやらそうらしい。元は槍だったけど手に取ると杖になった」
蒼明剣ってたから、最初は剣だったのかもしれない。
「本物の聖っ剣ー!? しゅっごーい!! まるで勇者みたーい!」
はしゃぐクックさんにも見せるように貸すと、目をキラキラさせて杖をさわりさわりしていく。
剣のようにブンブン振り回すクックさんに苦笑い。
すると転んで杖が宙に放り出されると、それはオレへ飛んできて受け取ってしまう。
「も、戻った!?」
「意思を持っていて所有者に自ら戻っていくんだ。おまえはその聖剣に認められたんだ。良かったな」
勇者が柔らかい笑顔で歩んできていた。
同じ聖剣の所有者だから、こういう仕様なのは知ってて当然か。
「パヤッチの杖……」
そう口走る。
なぜだか、そう呼びたくなってきた。あの男の名前を付けた聖剣……。
ギュッと握り締め、じんと気持ちがこみ上げてくる。
「それが聖剣の名前か。それもいい。さぁ帰ろうか……」
「ああ。そうだな」
安堵するままにライトミア王国を見やると、朝日が地平線から光を漏らすのが見えた。
この日、異世界全土にライトミア王国付近の『深淵の魔境』が攻略された事が知らされた。
各地、既に高難易度の魔境だと苦戦している冒険者にとっては驚くべき朗報だった。
賞賛する者。妬む者。感激する者。疑問に思う者。歓喜する者。驚く者。……それぞれ反応は様々だったが、魔境はクリアできると判明されて希望を見いだせた。
なぜなら、今日までに各地の『深淵の魔境』で戦死した冒険者は少なくなかったからだ。おまけにナッセ以外、クリア報告はない。
最初の門番で多くの戦死者を出し、無事乗り越えて魔境を潜った者も次々と力尽きていく。しかも現在進行形で更に犠牲者は増えていく模様……。
想像以上に散々たる結果が各地を騒がしていた。
────魔境をクリアした後、オレたちはギルドにその報告をしてから二日ほど休養を取らされた。
「わああああああああああああっ!!!!」
その間、ライトミア王国ではお祭り騒ぎで明るく賑わっていた。
路地には屋台が多く並び、様々な食べ物やゲームなどが出店されていて、子どもにも喜ばれている。
とある演技なども行われ、盛り上がりも上々だ。
古今東西、お祭り騒ぎは盛大な祝い方でもあった。
それだけに今回の吉報は相当嬉しかったのだろう。
教皇の件で世界滅亡級の『聖絶』に誰もがなすすべもないと思い知らされ、魔境と形を変えてさえ鬼畜な難易度に人々は底知れぬ絶望に打ちひしがれていたのだ。
三日目になると王様に招集を呼びかけられた。
「皆の者、大変ご苦労! よくぞ魔境をクリアしてくれたな!」
ライトミア城の謁見の間にて、オレたちは勇者セロスたちと並んで王様“剣将王”オルキガに労われていた。上機嫌でニッコニコだ。
王妃“凛麗騎”ミラディナも凛とした笑顔だ。
両脇に十二光騎士と五輝騎士が勢揃いしていて、拍手し始めた。
こうしてパチパチと周囲が祝福してくれると気恥ずかしいな。
「さすがは大魔王を打ち倒した者。何か成し遂げるだろうと思っておったが、案の定だったな」
「ええ。教皇との戦いも見ていた通り、只者ではございませんでしたわ」
「うむ! 事前にS級冒険者に高飛びさせたが、まさしく評価通りだったな」
「いえ、勇者たちと協力したからであって、オレ一人ではどうしようもなかったです」
「何を言うか! 協力できるほどに絆を築くのも実力の内、決して怠ってはならぬものじゃ! 今回はそれが功をなしたという事よ」
「はい……」
思えば魔境を潜ってる時でも勇者たちと色々会話していったな。
モリッカとの関係や秘剣フィニッシュにまつわる勇者の逸話なども聞けて良かった。
それにヤマミと相思相愛。リョーコとアクトと馴染みの付き合い。新しくできたティオス先輩とクックさんとの繋がり。
更に言えばマロハーとパヤッチの後押しもあって、ようやく攻略に至った。
どこか見えない繋がりがオレを強くしてくれてる気がした。
「またどこか行くのかな?」
「うん。もっとワクワクしたいから!」
ヤマミとクックさんと並んで、明るく頷いた。王様もニコリ!
「名残惜しいが、引き留める事はせん! もっと楽しむのだぞ!」
「はい!」
未だ見ぬ異世界の各地を夢見て、先の明るい道が見えた気がした。
あとがき雑談w
サラカート「秘宝もらう場面見れないんだけどー?」
エムネ「おかしいね……。授与式も見れるはず……?」
~概念の世界~
パヤッチ「会いたくなって、授与式乗っ取ったからな」
マロハー「ズルいですよ! 私も祝いたかったのに!」
パヤッチ「ファーストコンタクトしたのに?」
マロハー「むぅー!」
パヤッチ「ともあれ元気そうでよかったよ」
マロハー「そうね……」
パヤッチ「夜は寝かせないからね!」
マロハー「ああん、もう!」
パヤッチとマロハー、イチャイチャタイム! (おい!)
次話『新章は意外なあの国へ!?』




