41話「この想い届け! ナッセ渾身の突貫!!」
アクトは憤怒の形相で「がああああああっ!! 心剣流! 黒蛇道ァ!!」と突き出した黒い刀から、黒い光線が放たれた。
それは眼前の水晶弾を貫通して砕くと、更に屈折しながら数々の水晶弾を撃ち貫いていく。
それでもなだれ込む弾幕にアクトは「くっ!」と自身の煙の噴出で避けまくっていく。
「っち! だがここは俺が持ち堪えて見せらァ! 相棒ァ……トドメェ頼んだぜッ!!」
目の前に襲い来る水晶大壁を「心剣流・羅刹剣ッ!!」と豪快に粉砕。
しかしさすがのアクトも疲弊の影を見せつつある。
ティオスは「くそ……! とても力になれねぇ!」と遠くの浮遊島で突っ立つしかなかった。
前々から必殺技で応戦していたが、一個砕く事すら敵わなかった。
クックさんでさえ大爆裂魔法で砕いてたのに、と悔しさで身を震わせる。
「負けんなよな!!」
ティオスの見る先にナッセがいた。
「全体守備力強化!! 全体敏捷力強化!! 攻撃力強化ッ!!」
アクトが頑張っている内に、メーミはオレたちに強化魔法を重ねがけしていく。
リョーコは「いっせーのォ!」と斧を構えてエーテルを漲らせる。それに合わせて勇者セロスも天へ聖剣をかざし、聖なる魔法の雷を落として身構えていく。
ヤマミと一緒に剣の切っ先に太陽型の風車を高速回転させて、周囲に旋風が巻き起こる。
「スラッシュスレイヤーッ!!」
初手でリョーコが斧を振るって三日月の刃を飛ばし、水晶障壁をことごとく斬り裂いていく。その際に威力が削がれていくのを見計らってセロスがカッと見開く。
「今だッ!! ヘヴン・フィニッシュ──ッ!!」
セロスは稲光を迸らせながら凄まじいフォースを噴き上げ、剣を振るって突進する。破竹の勢いで水晶障壁を更に斬り裂き続けて奥へと切り込んでいく。
やがて勢いが弱るのを見計らって、ヤマミと共に剣を振るって太陽型の風車を放つ。
「サンライト・インフィニティドッキング∞ーッ!!」
光輪を纏う二つの円が旋風の尾を引きながら互い距離を徐々に縮めていき、閃光を伴って光輪が融合されメビウスの輪を象っていく。それは一気に水晶弾の弾幕を細切れに斬り裂きながら魔王像へと迫る!
「届けぇぇ────ッ!!!」
すると魔王像を包み込む巨大な水晶塊がズゥンと聳えた。
それでも超高速回転球が極大に展開され、無限の回転が執拗に削りきろうと突き進み続ける。しかし数分かけても削りきれず均衡したままだ。
振動を響かせ烈風を吹き散らしながら未だ削り続けている。
ギャガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……!!
一〇分過ぎた辺りで、やがて収縮していって霧散……。
あのツープラトン奥義『無限なる回転』すらも届かない結果に、愕然とさせられてしまう。
「そんな……!! ダメなのか!?」
「ただの障壁じゃないわ。圧縮された超濃密度の水晶壁……しかも超速再生する。破るのはとても……」
側に並ぶ『偶像化』中のヤマミは分析し、絶望的な結論を吐露する。
防御に特化したラスボス。それは想像以上に難敵だった。今のオレたちでは敵わないとさえ思い知らせるほどに…………。
「これで気が済んだ? 退くわよ……」
それでも首を振る。ヤマミは困惑したまま待ってくれる。
勇者たちは「もういいッ! 無理するな! 退け────ッ!!」と叫んでくる。
《より災厄を撒いて、より願いのエネルギーを蓄える為に……。でも……それは逆に悪循環を招いて地獄を引き寄せてしまう…………。ああ、あの子たち……気付いて欲しい…………!》
張り裂けるようなマロハーの悲しみが、想いが、願いが、気持ちを熱くさせてくる。
自然と両腕を上げると花吹雪がそこへ収束。真上で快晴の鈴がキィンと煌く。キラキラ光礫を撒き散らしながら浮く鈴は希望を讃えているようだ。
「快晴の鈴を…………!?」
「かいせいのすずー?」
「妖精王の生態能力。邪悪な心を問答無用で浄化する鈴……」
キッと決死の眼差しで気力を全身に張り巡らせ、腕を左右に伸ばして世界に祈るように集中していく……。
世界のみんな! 今こそオレに力を貸してくれッ!!
こんな『大祓祭』を終わらす為にッ!!
大魔王との決戦にように強く祈りながら『開闢の秘法』を試みた。
しかし、あの時のような奇跡は起こらず、雫が放射状に集まっていって普通に『賢者の秘法』の宝玉が錬成された。
「く……! これがオレの限界かッ……!?」
「まだレベルが全然足りない! あの時はクッキーが力を貸してくれたから……!」
「でもでもすっごいー!! あのギャラクシーなんとか奥義だー!!」
それでもめげず「行くぞ!! 賢者の秘法ッ!!」と鈴と重ね、眩い閃光が溢れた。
すると純白に燦々輝く大鈴が────!
「一回り大きくなって!?」
真上のソレを掴んで、弧を描くように振り回すと光飛礫がキラキラ尾を引いて散っていく。
襲い来る水晶弾へ、「攻撃無効化ッ!」と気張る。するとバシュッと蒸発するように水晶弾が光の小動物へと分散されていく。
これなら鈴だけは無効化中でも撃てそうだ。いける!
「力を!」
ヤマミへ手を差し伸ばして、手を重ね合って力を分けてもらう。するとクックさんもその上に手を重ねてきた。頷いてくる。
ポーズだけでも力を貸したいってクックさんは言いたげだった。
「……ありがとな!」
「えへへー!」
そんな純粋無垢な笑顔が、ホッとさせてくれる。
そうだ! これから一緒に明るい未来へ歩むんだ!! だから!
「ヤマミ……クックさん……! オレ行ってくる!」
「うん! 気を付けて!」
「がんばれ────!」
覚悟を決め、鈴を引っさげたまま魔王像へ飛ぶ。
向かい来る嵐のような水晶弾をことごとく光の鳥に変えて優しく散らしていくナッセの、そんな様子にセロスたちは呆気に取られた。
「…………天使……!?」
温かくて優しい光を纏うナッセの後ろ姿は、八枚の翼を羽ばたかせる熾天使を連想させた。
懸命に水晶弾の嵐を無効化しながら突っ切っていく。
無尽蔵とも思える怒涛の弾幕は猛吹雪にさえ思えた。それでも歯を食いしばって、ことごとく光の動物に変え続け、破竹の勢いで突き進む。
「おおおおおおおお────ッ!!」
光魔法を身に纏って『形態』を上乗せし、更に加速だ────ッ!!
一条の光と化して水晶弾の嵐をことごとく突破し、デカい魔王像へ近づけた!
すると再び難攻不落の巨大な水晶塊がズゥンと阻んできた!!
「こんなものォ──ッッ!!」
そのまま突っ込んで分解していくも効果は鈍い! 超濃密度故に、無効化に時間がかかってしまう!
それでも半分は削れるほどに深々と切り込めていた!
「ぐぐっ!」
身を扮して突っ込み続ける! 少しでも少しでも前へ! 前へッ!!
重い疲労が体にのしかかり、荒い息が苦しく繰り返され、汗でびっしょり全身を濡れていく。視界が霞んで、意識が朦朧していく。それでも必死に先を見据えるのみ!
「おおおおおお────────ッ!!!」
最後に気力を振り絞って突進し続ける。
それでも永遠に届かないんじゃないかってくらい、削られたそばから急速に再生され続ける。
やがて限界を迎え、息も絶え絶えでグラリとよろけていく。
このまま力尽きたら……死…………!?
モニター越しで見ていたサラカートは「あっ!」と思わず立ち上がった。エムネはそんなリアクションに驚きつつも、気持ちは分かる気がした。
いつの間にか握り締める手に汗が滲んでいたからだ。
応援したくなるような熱い気持ちが沸き上がってくる。そんな感情の起伏は数千年も前から久しい。
「その程度でくたばんないでよー! 突き抜けろー!」
そう叫ぶサラカートは力んで身を震わせている。
まるでナッセの必死な形相と連動しているかのようだ。
ち、力が……勢いが……!! く……! く、くそっ!
《頑張れ! あと一息だ!》
どこからか聞き慣れぬ声が響く。それでもどこか懐かしく頼れるような声だった。
そしてオレの背中を何者かの手が支えてくれた。力強く、それでいて優しい温もり……。
マロハー同様、会った事もないのになんだか高揚感を覚えていく。
《ワクワクするような冒険を楽しむんだろ?》
誰なのかは分からない……! だけど、どこか懐かしいんだ……!
なんかオレを見て欲しいって思えるような誰かだ!! だからッ!!
こ、こんなカッコ悪いの見られてたまるか───ッ!!
《そうだ……行けッ! ナッセよ!!》
疲労困憊で諦めかけていた心に活気が燃え上がってきた。強く意識を取り戻し、再び全身から輝きを放った。奮起し「うおおおおお───ッ!!」とめいっぱい叫んだ!
最後の力を振り絞って魔王像の難攻不落の水晶塊さえも木っ端微塵に数百数千もの蝶々の群れへと変え、四方八方へ一斉に飛び立っていく! その様は壮大で優美だ!
さしもの魔王像も「オオゥゥ…………ッ!!」と驚愕の唸りを漏らす。
「これで終わりだぁぁぁッ!!! ファンタスティックヘブン! 極楽の鈴────ッ!!」
一気呵成と渾身を込めて煌びやかな鈴を、魔王像に叩き込む!!
キィ─────────ンッ!!!
眩い音色の輝きが放射状に爆ぜ、光飛礫を舞い踊らせながら光輪が煌びやかに広がっていった!!!
すると上空で渦巻く白き雲が広がり、神々しく温かい光の帯がいくつも降り注いでくる。そして上空中心部から光の柱が魔王像へ差し込んできた。
「オオオオオオォォォォォォ──────ッッ!!」
光の柱に包まれ、断末魔をあげながら魔王像は散り散りと分解していった。その破片が安らかに上空へと昇っていってキラキラ煌めいていく。
すると中から巨大な赤黒いダンジョンコアがあらわになった。
ピキキキッ!
亀裂が広がり、粉々に砕けた。
そして光柱に吸い込まれるように破片は光飛礫となって昇天していく。
「や、やった…………ぜ…………!」
気が抜けてグラリと身が傾いていく。
すると必死に飛んできたヤマミが胸で受け止めてきた。涙ぐみ優しく微笑むヤマミ。それに安心して脱力に身を任せていく。
無事成し遂げた彼らの活躍が、モニター越しで二人の魔女の目にも焼きついた。眩い希望の輝きに心を打たれたのか目が潤んでいく。
サラカートは安堵して綻んで涙が頬を伝う────……。
「……よかった!」
──────ライトミア王国付近の『深淵の魔境』クリア!!
あとがき雑談w
セロス「ふう、あいついなかったらヤバかったな……」
ファリア「防御特化だったが、実質的に魔王像は威力値100万クラスの難敵だからな」
メーミ「って事は、他の『深淵の魔境』もあんな感じの高難易度なの~?」
セロス「……頭が痛いな。魔王魔族もなんとかしなきゃなのに」
ファリア「気長に行くにも限度あるだろ。こりゃ苦しいな……」
メーミ「そうね~(遠い目)」
するとセロスの子どもたちがどどーっとやってきた!
セロスの子どもA「今度はおれの番だー!」
セロスの子どもB「いやおれがー!」
セロスの子どもC「あたしがやったるー!」
セロスの子どもD「俺が長男だし!」
セロスの子どもE「お姉さんに任せなさーい!」以下略……。
メーミ「一体どんだけ子作りしてたの~?」
セロス「見境もなくヤッてたから、嫁数は100万クラスかな?」
ファリア「おい! おいぃぃぃ!!! てめぇ爆散しやがれッ!!」
次話『ついに魔境クリア!! そして秘宝とは??』




