39話「これがシャイニングロード!!」
第四階層──。
あちこち細長い道で繋ぐ無数の浮遊島、それにこびりつく赤く灯る結晶群晶。
周囲の背景は混濁した赤黒い亜空間。
そんな広大すぎる階層で、オレたちは厳しい冒険を強いられた。
「ブモオオオ────────ッ!!」
【血塗られた玄武】(水族)
威力値:75000
赤く染まった巨大な亀。鎧のようなゴツい手足と頭の二本のツノ。尻尾から巨大な蛇が獰猛で龍を彷彿させる。ただでさえ硬い守備力を更にバフをかけて強固にしていく。
見た目の割に素早く噛んでくる。翼竜でさえ食いちぎられる攻撃力を持つ。超級下位種。
【朱戦騎カンガルー】(獣族)
威力値:87000
赤く染まった鎧を纏う凶暴なカンガルー。鋼鉄よりも硬い手甲で殴ってくる。エーテルを纏って様々な技を繰り出す器用さも持つ。
腹袋に潜む小さな分身『分霊』で二段攻撃もしてくる。超級下位種。
「ホーリーレヴッ!!」
両手を巨亀へ向けると、ミント色の極太光線が一直線と放射される。それは対象を呑み込んで消し飛ばし、遥か向こうで光の爆発が轟音を響かせた。
ヤマミから教えてもらった光魔法で磨きをかけていくぞ。
自分と同じ属性魔法なら威力も精度も高くなるから覚えた方がいいってたなー。
確かになんかスゲー使いやすいって感覚ある。
「うにああああ────っ!! ウニメイス・スパーク!!」
クックさんもオレの真似事で凶暴なカンガルーを粉々に爆散させた。おおー豪快だー!
ヤマミとメーミが上級炎熱魔法で灼熱の火炎壁を噴き上げて、数体巻き込む。
アクトとファリアとティオス先輩が「うおりゃあああ!!」とバッサバッサ斬り伏せていく。
溜めに溜めたリョーコが放ったスラッシュスレイヤーで数体を両断していく。
そして勇者セロスが上級雷魔法でまとめて轟雷に散らす。
足場が少ない細い道を伝って、オレたちは緊張感が解れぬまま多くの浮遊島を渡り歩いていく。
ここに入ってからもう五日目になる。
空洞のある浮遊島で寝泊りしてる時でも、結界が効かないモンスターが強襲する事もあって安心はできなかった。
勇者たちと一緒に同行したのはハッキリ言って助かる。
こういう高難易度の『洞窟』が相手では、人数が少ないと交代しながら休息する余裕ができない。
日に日に心身ともにすり減らされていくのを感じる。
ホント、イヤになるよな……。
もしかして終わりがないんじゃないか?
「ふう……どこまで続くんだ?」
「焦るな。どんなに長くても広くても、必ずゴールはある。辛抱強く意志を持てば大丈夫だ」
疲れてため息をついていると、勇者が励ましてくれたようだった。
こちらと違って、勇者セロスは数え切れないほど魔族のしかけた『洞窟』を潜ってクリアしていった経験がある。
この長い探索の間に勇者たちとも色々な話もした。
「そりゃねぇ~、まさか洞窟を数えるほどしか潜ってないなんてビックリだもん~。大魔王倒してるクセにアベコベよね~」
メーミがそんな事を言う。
思えば、オレたちは駆け足で大魔王まで突き進んだ気もする。
洞窟を一回潜っただけでマイシと戦い、急に隕石を降らせる人造人間とも戦い、そして世界大戦で四首領と大魔王と戦うハメになった。
驚く事に学院へ入学してから夏までに起きた事なのだ。半年にも満たない。
勇者たちが言うに、オレたちがたどり着いたレベルは並の冒険者なら数十年はかかるって言ってた。
「シャアアアアアッ!!」
なんと真っ赤かな火の鳥が数羽、群がってきた。
【呪われし朱雀】(飛空族)
威力値:139000
鮮血のような鮮やかな火の鳥。常時回復するのでしぶどい。
羽ばたけば音速を超えて周囲に破壊を撒き散らす。休まずに世界一周するほどの筋力と体力がある。灼熱の息吹は国ごと焼き尽くすほど。超級中位種。
「よし! ここはオレに任せてくれ!」
オレは光魔法を身に纏って『形態』を発動し、それに伴ってエーテルを噴き上げる。すると足元から扇状に光が噴き上げながら光飛礫がキラキラと舞い散っていく。
クックさんは「おおー! キラキラー!!」とはしゃぐ。
「これでオレは“刹那の世界”に到達する!!」
地を蹴ると、まるで自分自身が光となったかのような一体感と共に朱雀の群れへ飛びかかる。
その時、周囲の動きがゆっくりになって視えた。視界の中で流れる景色が遅い。妙な感覚だ。普通なら逆なのにな。
まるで時が止まりつつあるような錯覚だ。
こちらのひと振りが刹那の一閃となって、一羽一羽斬り裂いていく。一撃で倒しているように見えるけど、一羽ごとに数撃交錯させて致命傷を与えているぞ。
「シャギャ────!!」「シャア────ッ!!」
しかし仕留め損なったヤツは即座に再生して舞い戻ってくる。よーし!
「フォールッ!!」
これまでのように跳躍して急降下斬り下ろしせずとも、そのまま剣を振り下ろすだけで刹那の一閃が上空より朱雀の一羽を地面に打ち伏せた。
急降下してくる朱雀に、すかさず刹那の「ライズッ!!」で振り上げると地面から一閃が飛び出して斬り裂く。間合いを取ろうとする三羽目に向けて最速の剣閃を空振りする。
「スパァークッ!!」
すると、間合いより遥か離れているはずの朱雀は爆散して、破片を散らした。
機動力、威力、速度、射程距離がかなりパワーアップしてる。しかも使い勝手良くなったぞ。
これなら、以前の龍も同じように倒せっぞ!
「シャア────ッ!!!」
朱雀は狡猾にオレの素早い動きを先読みして、膨大な灼熱を吐き出してくる。その極悪な超高熱が光の軌跡を呑み込んだ。
しかしそれを浴びたのは剣だけだった。
引っかかったなー! オレは背後にいるぞーっ!
「ミーティアフォール!!」
そのまま急降下して振り下ろした光の剣と左右に並べて浮く無数の光刃が連動し斬り裂く。
短冊切りされた朱雀はほどなく爆散────。
「……イケる!」
あいつがオレの動きを読もうとしているのが『視えた』からだ。
だから剣だけ軌跡に乗せたまま、自分だけ抜け出した。そんで体内に閉じ込めたまま光の軌跡を見せず、高速移動して背後に回ったって事。
つまり光の軌跡さえフェイントにできる。
とは言え、体内に閉じ込めるのがキツいの内緒だけど……。
勇者たちはポカンとしてるようだ。
ナッセそのものが流星となって、更に剣で流星を操って敵を斬り伏せているかのように見えた。しかも僅か数秒で全滅させている。
「ほう! 光の軌跡で分かりやすく思わせつつ、それをオトリにもするのか」
「ヒヤヒヤしてたけど、その辺は心配ないわね~。まだ課題はあるけど~」
ファリアもメーミも感嘆してくれた。
勇者は「なるほど、これなら今までの技も腐らずに済むか。さすがだな」と笑ってくれる。
「ああ。ヒントはヤマミの小人だぞ。伝播する時、物凄い速さで移動できるからなぁ。さすがに伝播自体は真似できねぇけど……」
「そういう事ね」
クールぶってるけどヤマミは嬉しそうに口元が緩んでいる。
「あんま多用するなァ……」
「そうそう! 一日一分! 無理してやらないでよね!」
なんとアクトとリョーコがダメ出ししてきた。
初めて見せたのに、まさか見抜かれるとは思わなかった。やはり長い付き合いだから分かるんだろうか。
「レベルが上がって頑丈な体になっても、過度な速度による負荷にはそうそう耐えられるものじゃない。腕と足、痺れてるでしょ」
なんとヤマミがオレの肩に手を当てて回復魔法をかけてくれる。
「ごめん。気を付ける……」
「間違いないね……。あれはマロ姉さんが得意としていた『シャイニングロード』だね……」
それをモニターで見ていたエムネは呟く。しかし側でサラカートは黙り込んだまま。不機嫌なのかどうかも分からない。
二人の魔女はソファーで佇んだまま、ナッセたちの動向を見続けていた。
マロ姉さんも元々光属性の冒険者。光魔法で『形態』して、常軌を逸した素早さで戦っていた。
まるでそれを再現しているかのようだ。
するとサラカートはソファーから立ち上がり、踵を返して「もー寝る」と去っていく。
明らかに葛藤を抱いている。
これまで長い年月の間、そこまで感情が起伏した事はなかった。やはり彼を意識している。
エムネは微かに笑む。
「私もなにか期待しているんだろうね…………」
魔女としてずっとずーっと退屈で変わらぬ閉鎖的な生活が続いていた。それは生きながら死んだような虚無なものさえ感じる。
マロ姉さんとパヤッチがいなくなってから、私たちは死んだように『星塔』の管理者をしてきた。
それは永遠に続くんじゃないかと諦めもあった。
二度とマロ姉さんとパヤッチとも会えず、変化もない暮らしを続けていくのかと……。
管理者、魔女、と人類を見守る上位生命体と銘打っているが、心に燻る虚無感は滞ったままだった。
それを解放してくれそうな期待感が胸に湧いてきていた。
「あなたは『大祓祭』で何を求めているのかな……? ふふっ」
ナッセが輝きを放って並み居るモンスターを斬り伏せてるのを見ながら、物憂げな微笑みを向けていた。
あとがき雑談w
サラカート「学校行ってきまーす!」
エムネ「行ってくるよ……」
マロハー「うん! 行ってらっしゃい!」
そしてお昼…………!
マロハー「あら? サラちゃん弁当忘れてる? あ、もう昼じゃない!? はやく持ってかなきゃ! シャイニングロード!」シュパーン!
15kmを僅か数秒で疾走して学校へ! ←トンデモ速度w
マロハー「はい! また弁当忘れてたでしょ」
サラカート「はーい!! いつもありがとー!」
エムネ「また……だね。マロ姉さんに甘えてばっかり……。ワザとしてない……?」
サラカート「ごめーん! 私うっかり屋さんだしー」てへぺろーw
エムネ(絶対ワザとだね……)イラッ!
マロハー「さーて掃除しなきゃね!」シュパーン!
次話『ついに最深部へ……!? そこには一体何が……!??』




