38話「暗躍する白面の疫病神!?」
焚き火も燻って僅かな煙を吹いていた。
「おおおお!!」
木刀を激しく振るってアクトの木刀に交差し、しばし力比べで震える。
アクトの押し切る木刀に弾かれるように離れた後、地を蹴って絶え間なく剣戟を浴びせ続けていった。
しかし心剣流こと蒼天心剣術を極めたアクトに余裕で捌かれていく。
焦るままに地を蹴って高く跳躍――――!
「フォー……」
「遅ェ!!」
それより速くアクトの横薙ぎ一閃で脇を打たれ、地面に転がされた。
ケホッと激痛と共に咳き込む。
「ナッセ、オメェが魔道士として俺と組んでいたが、剣術の方ァまだまだ粗いなァ」
「き、気付いていたのか……?」
震えたまま這って取り落とした木刀を手にする。アクトはフッと笑う。
「あァ……」
「なぜ、言わなかったんだ?」
「俺ァアドバイスは上手かねェ……ってのもあるが、人の意見でホイホイ自分の方向性を変えて欲しくなかったってのもあるなァ。なんせおめェは素直すぎるからなァ……」
よろけながらも立ち上がり、木刀を正眼に構える。
リョーコ、ティオス先輩、ヤマミは静かに見守っていた。クックさんは既にコテージの中で熟睡だ。勇者セロスたちはテントに入っていて、この場にはいない。
「師匠から鍛えられた粘る防御型の戦法をメインに洗練するか、これまで通り多種多様のスキルで臨機応変に戦うか、魔道士として魔法をメインにした戦い方にするか、あるいは全て捨てて剣一本に生きるか、可能性はまだ広がっているァ……」
た、確かにオレは『鍵祈手』として多くのクラスの才能を蓄積させて、多種多様のスキルを兼ね備えている。
今の『剣士』を始め、『魔道士』『弓兵』『槍士』『暗殺者』『格闘僧』『僧侶』『鑑定士』などの才能がオレの中にある。
アクトが言ってたように可能性は広がっている。どんな戦い方にするか迷うくらい……。
「何度迷ってもいい。だが、勇者さんの言ってたように目的に懸ける想いを込めれる道を見つけた時こそ、おめェは強く眩しく輝けるなァ……!」
「強く輝く……!!」
気持ちが湧き上がっていく。体も熱して地を駆け抜ける。
昂ぶるままに「うおおおおお!!」と剣を振りおろし、アクトがかざした木刀を打つ。
師匠のコピーでもない! 他の誰でもない! 師匠は師匠! オレはオレだ!!
この信念と想いを剣に込めて……これからの道を自らで切り開くッ!!!
「自分の足でッ、憧れた異世界を駆け抜けッ、ひた向きに努力を積み重ねてッ、尊敬する偉大な師匠を超えるんだああッ!!!」
思念込めた渾身の一撃を振り下ろす! それは眩く流星の軌跡を描いた!
ガガァン!!
コテージのベッドの上で天井をじっと見つめる
側でヤマミが「悔しくて寝れない?」と呟いてきて、首を振る。
あの後、結局アクトに完敗したけど問題はそこじゃない。どんな風に進化していくか、そればかり頭を巡っていたからだ。
「今すぐには変われねぇ……。あの『心霊の会話』同様、地道に積み重ねないと成果は出ない。これまで通り戦うさ」
「そう……」
「今、自分自身の想いに気付いたんだ。これからそれを軸に磨いていこうと思う」
これまでは漫画やゲームのキャラや師匠みたいになりたいと振るってきたが、これからは違う。
各々の使い慣れた技にはオレの想いを込めて振るい続けていく。そうした先に可能性が広がるのかもしれない。憧れた師匠を超えるべき自分だけの技に昇華できるよう極めていこう。
「オレはもっと強くなる! 強くなってやる!!」
ヤマミが寄り添って頭を胸に乗せて上半身くっつけてきた。
愛しい気持ちで満ち足りる。自分の愛する人が理解して信じて付いてきてくれる。
「そんなストイックだから好きよ…………」「ヤマミ……」
互いぬくもりを感じながら意識は安らかに闇へ沈んでいった。
そんな映像をモニター越しで見る、ソファーでふんぞり返るサラカート。
後から来たエムネはカツカツと歩み寄り「まだ見てるの……?」と小声で聞く。返答はない。後ろ姿だけでも不機嫌そうなのが窺える。
エムネはその気持ちは分からなくもなかったが、こんなにも執着するのは珍しい。
一緒にソファーへ座るつもりだったが、その背後で足を止めた。
「マロ姉さん……パヤッチ……」
ああ、そうだ。その時もサラはヤキモチ焼いてたね……。
パヤッチはマロハーの愛する人。ベテランの冒険者。厳しく寡黙だが寂しげで優しい男。それに惹かれてかマロ姉さんは寄り添っていった。
あれ以来、サラは構ってくれないとワガママ言い出したりして困らせる事も少なくなかった。
嫌い、とよく口にした。
それでも……それでも……パヤッチはとても強い男。
どんな辛くても気丈に振る舞い、愛するマロ姉さんと手を取り合って戦い続けてきた。私も尊敬していた。
サラはとても頭がいい。
感情では毛嫌いしながらも、頭ではマロ姉さんの事を大切にしているのを認めていた。
そして密かに二人とも幸せになって欲しいと願ってるとも…………。
でもいつまでたっても素直になれない。
だからか、あの悲劇で二人が引き裂かれるのを目の辺りにして誰よりも涙を流して慟哭した。強く後悔もしていた。その懺悔とも言える弱気な言葉は私しか聞いていない。
《わたしのせいだ…………! わたしがっ……!!》
肩を震わせ、頭を抱え、身を屈めながら悲しむサラを、私は優しく抱きしめた。
いなくなったマロ姉さんとパヤッチの後を継ぐように『星塔』の管理者になった。どこへ行ったかも分からずも、いつか会えるように上位生命体へ昇華し、気の遠くなる年月を生きてきた。
「気に食わないなら……見なくてもいいのに…………」
サラの後ろ姿に呟くが、聞こえていないかのように返答はない。
だけど、こうして食い入るように眺めるのって久しいなとエムネは微笑んだ。
「あっれぇ~~~~珍しくセンチなんですかぁ~~~~?」
なんと逆撫でするような陽気な声にエムネはムッとする。
なんと床に黒い水溜りが広がり、中からドロドロした黒い泥が流れ落ちながら道化師風の男が抜け出す。
その男、緑色の髪の毛を逆立たせていて、顔面は化粧されたように真っ白。目の縁に青いラインが沿っていて、赤い口紅が左右に釣り上がるように染めていて笑顔を連想される。
不気味なまでに陽気な感じでニカッと白い歯を見せて笑っている。
「あっらあら~~エムちゃん! おこ?」
「トビー! 空気読んでよ……!」
おちょくる道化師トビーにエムネは不機嫌そうに黙り込んでいる。
「センチになるくらいなら、サッサと消してしまえばいいんじゃなあ~い??」
「トビー!!」
「ナッセ君を消せば、アラ不思議! 肩が軽~くなって胸が弾むように元気になっちゃう~カモ? じゃあじゃあさ、ねぇ、ボクが消してきてあげよっか? ねぇ?」
おちょくるような感じで腰を振り、腕を踊らして、片目ウィンク。
すると怒気を孕んだサラが振り向き首を傾けて「は?」とドスを効かせてくる。尋常じゃない殺意が威圧となってビリビリ周囲が震撼していくも、トビーは相変わらず笑顔を絶やさない。
「消していいんですね? 消しても~~??」
むしろニンマリと煽るようにニタニタ笑に歪ませる。
「城路ナッセは私がやるから!」
「へいへい~ご先客でしたか~~! これはこれは早とちりで済みませんね~~!! お気に入りですもんね~~~~? ナッセ君~~」
「あんたウザ!!」
殺気まみれに扇が振るわれ、トビーの後方の壁が突然木っ端微塵に砕け散った。轟音を立てて衝撃波が外部へと噴出されていく。ゴゴォ……ンッ!
「お~~~~怖っ!」
おどけるような感じで、怖がるポーズをしてみせる。
それでも影に覆われたままのサラは二つの眼を見開いて威嚇してるような顔で沈黙していた。
「トビーいい加減にしてよ……。で、向こうはどうだったの……?」
「んまぁ~チョイチョイ異世界で四首領ヘインの『七皇刃』となり、時には漆黒の魔女の仲間となり、遊んでたんですがね~~、まぁ要するに大災厄の円環王マリシャスはあっちへ行けなくて苛立っててね~~、そんでねコッチの世界から攻略しようってワケなんすよね~~~~」
「そう…………」
「あら? ねぎらいの一つもないい~~? ボク寂しいな~~」
それでも突き放すようなサラカートとエムネの沈黙に、トビーは苦笑い。
するとペンキのような液体が溢れ出し、シュルシュルと不気味に薄い装甲を型どり、下半身のない巨大なピエロが象られ、内部を絵の具のような液体で満たす。周囲で浮く無数の仮面がグルグルと周回し続ける。
ピエロの無機質そうな仮面は「ギヂギヂギヂギヂッ」とカクカク揺らす。
トビーの『偶像化』だ。
「それではこきげんよう~~! まったね~~!」
巨大なピエロに抱かれながら、足元の黒い水溜りへと沈んでいく……。
サラカートは冷めた目で見送ると、再び背を向けてソファーへ座り込む。エムネは疲れたようにため息する。
「相変わらず“白面の疫病神トビー”ふざけてるね…………」
あとがき雑談w
サラカート「えっとローファンタジー編のレコードっと……」
エムネ「それはそこの棚だよ……」
サラカート「知ってたの? まさか……??」
エムネ「うふっ整理整頓してるからね……(見てるとは言ってない)」
ローファンタジー編を閲覧中……!
サラカート「大魔王やっばいじゃんー!」
エムネ「そこからだよ……ここでナッセは……」
サラカート「えっ? 見てる!?」
エムネ「さぁ?」
サラカート「絶対見てるでしょー! ずっるいー!! 私も……」ハッ!
エムネ「私も……??」ニマニマw
サラカート「な、なんでもないよー! なんでもないからっ!!(赤面)」
次話『遺伝されるスキル?? シャイニングロード!』




