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37話「フィニッシュ! 勇者の揺るがぬ信念!」

 第四階層────────────!


 あちこち細長い道で(つな)ぐ無数の浮遊島、その島に多くこびりつく赤く灯る結晶群晶。

 周囲の背景は(おく)()きが(つか)めぬ、混濁(こんだく)した赤黒い亜空間。ゆらゆら模様がうつろう。不安にさえ思える。



「シャギャ────ッ!!」


 なんと怒れる赤き龍が長い体をしならせて牙を剥きながら獰猛に吠えてきた。

 しかもそれが六匹、こちらを包囲するように飛び回っている。


激怒(アンガー・)の深淵龍(ディープナーガ)】(ドラゴン族)

 威力値:128000

 赤く染まった巨大な龍。硬いウロコに覆われた長い巨体をしならせて空を翔る。鋭い爪は衝撃波すら生み出し遠くの物体も粉砕する。口から吐き出される赤黒い光線は貫通力が高く、いかなる敵も滅殺する。上級中位種。


「野郎ッ!!」


 ティオスは汗を滲ませて風閃剣を振るう。横一線の竜巻が龍の体に直撃してドオオンと爆ぜた。しかし平然と身が流れていく。


「くそ!! これじゃ『五輝騎士(シャイン・ファイブ)』以上じゃねぇか!!」


 クックさんも上からウニメイスで「ウニフォール!!」と龍の頭をど突くが、下へ仰け反った分跳ね返されてしまう。それに煽られたクックさんは宙へ放り出される。

 龍は牙を剥き出しに「ギャオオオオ!!」と飲み込まんとクックさんへ猛突進。


「クックさんッ!! サンライト・ライズーッ!!」


 超高速で急上昇し斬り上げて、龍の顎を上に弾き飛ばす。

 空中を数歩疾走してクックさんを脇に抱えると、咄嗟に飛び退く。その後で龍が通り過ぎて長い体が流れていく。

 それでもしっつこく追い回す龍に、杖がわりと太陽の剣(サンライトセイバー)を向けた。


「ホノバーンッ!!」


 突っ込んでくる龍の顔に火炎球を叩き込んでドオンッと大爆発。

 空中を自由自在に屈折しながら疾走し、足場となる浮遊島へと逃避しようとする。技や魔法でもあまり決定打にならず、素早く包囲してくる龍に焦燥する。

「ホノバーンッ!! ホノバーンッ!! ホノバ──ンッ!!」

 必死に魔法を連発するが、足止めにしかならない。くっ!



「レイ・フィニッシュ────────ッ!!!」


 視界の(すみ)から閃光が煌き、気付くと勇者が光り輝く剣閃を描いて龍の頭を斬り裂く。そして()いで体にも斬撃が走って巨体が真っ二つ。血飛沫が四散────。

 オレは思わず、そのマントを(なび)かせて背中を見せる勇者の頼もしい勇姿に心を奪われた。

 毅然(きぜん)と最後まで信念を貫き、迷いなき剣を振るう。まさに完璧。





 こんな感じで苦戦しながらも一日が終わった……。


 とある浮遊島の空洞でオレたちは魔除けの結界を張ってテントなどを建てた。

 焚き火の前でオレはシチューを手に考え込んだ。


「どうしたの? 冷めるわよ」


 ヤマミの声に気付きハッとする。止まっていた手を動かしスプーンでスープを口に運んでいく。



 ……敵が強くなっていくにつれ、浮き彫りにされていく自分の火力不足。

 高く跳躍しての真っ向斬り下ろすフォール。跳躍して急上昇で斬り上げるライズ。刀身にオーラなど込めて斬った瞬間に爆裂させるスパーク。

 いずれも今回の階層で龍にあんまダメージ入ってなかった。

 もちろん三大奥義があるからこそ、これまで乗り越えられてきた。


「新しい技……編み出さないといけねぇかな?」

「その事で考えてた?」

「ああ」


 ヤマミも察してくれた。

 側で嬉しそうにシチューを平らげているクックさんは幼いゆえに呑気(のんき)だ。だが、勇者の視線がこちらを定めている。

 思わず勇者と視線を合わせた。


 あの“フィニッシュ”とかいう技はアクトの心剣流やリョーコの斧技にも引けを取らないほどの高威力だ。

 三大奥義も使わず、あの龍を引き裂ける威力は驚かされた。


「ナッセ! お前は何が目的で剣を振るう?」


 真剣な眼差しの勇者が問いてくる。思わず息を飲む。

 周りも答えを待っているかのように静まり返っている。余計プレッシャーになるぞ……。


「い、異世界をワクワクしながら冒険する為に……?」

「そうか」


 一旦目を伏せる勇者。

 ……っても勇者セロスさんのような立派な目的じゃない。笑われても仕方ない。

 しかし笑わないでいてくれたものの、呆れられたのかもしれない。


 すると勇者は聖剣を鞘から抜き、足元に突き刺した。


「オレは闘争の元凶である魔族を滅ぼし、人類の世に平和をもたらす為に剣を振るう! それが代々家系に伝わる悲願だ」

「魔王……魔族を滅ぼして……」

「そうだ。人は魔物や魔族に怯えてこの世を生きている。ヤツらは闘争を重んじ、我々人間を脆弱(ぜいじゃく)だと見下して争いを強いる悪の元凶。それを終わらす為に“秘剣フィニッシュ”をオレは振るい続ける」


 勇者の決意漲る眼差(まなざ)しには信念がこもっている。

 本気で魔族を滅ぼして人の世界を平和にしようとしているんだ。オレなんかとは比べモンにならねぇ……。


 だが、それは矛盾だと察してしまった…………。


「も、もし、例え魔族を滅ぼしても、今度は人類同士で争い始めて結局変わらないと知っても?」


 つい口走ってしまい、勇者の眉が跳ね上がらせた。

 そんな反応に、内心ビクビクする。

 本当なら黙っていた方がいいのかもしれない。何も知らず勇者は勇者で悲願の目的を達成すべく邁進していけばいいのかもしれない。だが、これは知って欲しいと思ってしまった。


「……おいおい! 人類同士で争うって? また教皇が?」


 まだ理解が追いつかぬ勇者の仲間であるファリアは怪訝そうに、メーミは「ナッセちゃん??」と首を傾げてくる。

 張り詰めた空気にドギマギしていると、ヤマミの手がオレの手に重ねられた。安心感が差し込まれる。


「我々の世界は、最初は人類だけの世界だった」

「なに!?」


 今度はヤマミが喋り、勇者たちは注視した。ティオス先輩もだ。

 アクトもリョーコも成り行きを見守っている。パチパチと焚き火が火の粉を散らして燃え上がっている。


「ナッセは元々人類同士で争い合う地獄のような並行世界(パラレルワールド)から来た人間」


 ゴクリと息を呑む……。


 確かに日本という裕福な環境に生まれたが、それでも争いの火種は様々な形として世界中の至る所で開花を繰り返してきたのを見聞してきた。

 遠い海外で未だ紛争地帯があり、日々命を散らす発展途上国。

 兵器を増強させながら、次々と周辺の国を侵略して世界の覇権を握ろうとする大国。未だカースト制度や人身売買がある国。

 ……例え高経済社会であったとしても、競争社会でひしめき合い群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)している。

 個人の周りでさえ、人間関係で(いさか)いを起こして悪い影響を心身にもたらす。


 我慢するしかない社会で、仕方なく企業に人生を捧げてしまう人は多い。

 環境は裕福なのに誰もがストレスに苦しまされている。笑顔で人生を謳歌できる人はひと握り……。


 悪意と欲にまみれた残酷な世界から、オレは抜け出せた。



 ────というような事をヤマミが丁寧(ていねい)に説明してくれた。

 勇者たちは聞き入っていた。

 まるで信じられない、といったような驚愕が顔に表れていた。息を呑む音がする。


「そうか。だから、その目的か……」


 だが勇者は()に落ちたかのように、柔らかい顔でオレを見つめてそう言ってきた。

 同時に突き刺さっている剣をギュッと握る。


「だがそれでも! オレは人の世を平和にすべき魔族との戦禍に終止符を打つ!!」



 すげぇよ……。この話を聞いたって揺ぎもしねぇ……。

 恐らく人の世に平和をもたらしても、形を変えた戦禍にも同じように剣を振るうのかもしれない。

 確固たる信念を抱く勇者のなんと素晴らしい事か。マジで憧れる。


「勇者セロスって、ほんと尊敬する……」


 だが勇者は否定するように首を振る。


「親父となる先代の勇者も同じ信念を抱き、魔王軍とも戦い続けた。だが限界を迎えて引退した。聖剣と技と信念は後継者のオレに引き継がれた。これをずっとずっと昔から繰り返されてきたんだ。もちろんオレも一生かけても叶えられないかもしれない……」

「そんな……昔から…………??」


 勇者は立ち上がり、剣を引き抜いて身構えるとエーテルを刀身に流していく。


「それでもオレは魔の時代を終わらせるべき“フィニッシュ”を放つんだ!」


 自ら望んで背負った想いを聖剣に込めて一撃を振るう。その煌く鋭い剣閃が瞬時に駆け抜け、遥か向こうの岩壁をぶち抜いて大きな風穴を開けた。

 研ぎ澄まされた洗練された必殺の一閃。その威力が感じ取れた。


「ナッセ! 新技にこだわる必要はない」

「え?」

「……この“秘剣フィニッシュ”は元々オーラを込めたただの渾身の一撃だ。だが日々鍛錬と改良を重ね続け究極の必殺技に昇華し得た」

「昇華…………」


「お前はレベルが高く三大奥義まで会得しているから、これまで問題はなかっんだろう。ちょっとした格上でも通用していただろう。だが、真に強敵と対峙した時にボロが出た」


 先ほどの戦いで、あらゆる技が決定打になってない事を思い返した。


「新技を作るなら構わん。だがダメだったらまた作るのか?」

「うっ……!」

「お前の技はまだ(あら)さが目立つ。まるで借り物のような感じはあった」


 ギクッとする。

 そうなのだ。オレの技は好きな漫画やゲームからパクって名前を変えただけなのだ。

 その主人公なりきれた気がして調子に乗ってたのかな……?


「師匠から教えてもらったか知らんが、これだけは言っておこう……。お前は師匠のコピーじゃない。また誰かのコピーでもない。お前はお前だ。お前で洗練し進化させろ! そして自らの技に昇華するんだ!」

「オレの……技として……!!」


 勇者は拳をオレの胸に乗せた。


「異世界をワクワクしながら冒険したいんだろ? もしそれが真剣な想いから来るのならば、それを込めて剣を鍛え上げて、それを振え!!」

「…………ッ!!」

「必ず剣はその想いに応えてくれる!」


 フッと勇者は笑ってくれた。


 なんだか心が奮い立つような衝動が全身を駆け巡っていく。

 この自分の想いを……、この剣に!

あとがき雑談w


ナッセ「フォールとかライズとか安易だったかな……」

ヤマミ「クックさんにも真似られるくらいだもんね」

クックさん「次はスパークだー!!」


ナッセ「スパークは発射速度と命中時に二発『炸裂(バースト)』させるから、最速最強みたいな?」

クックさん「ふむふむー!」

ナッセ「同じ『炸裂(バースト)』でも剣を振る速度をズバッと加速、命中した時にバーンって爆裂って感じで!」


クックさん「魔の時代を終わらせるー! ウニメイス・スパーク!!」


 バゴーン、岩壁を粉砕して風穴が開く。


セロス「むやみに穴あけるとモンスターが来るからヤメといてくれ……」

メーミ「こら~! 子どもが真似するから、フィニッシュむやみに撃たんといて~!」

セロス(むしろナッセの方を真似てるんだが……)


ナッセ(すまんぞ…………)



 次話『あの四首領(ヨンドン)ヘインたちを瞬殺した道化師が!?』

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