36話「もはやラストダンジョン級のヤバさ!」
第三階層はフロアボスまでたどり着くのに三日かかった。
それだけヤバいくらい複雑で広大な階層だった。その分、宝箱とか得られる物が多かった。それで時々食料が賄えられるのはありがたかった。
勇者いわく「こんな広すぎる洞窟は初めてだ」との事。
もちろんモンスターも豊富だったぞ。しかも集団で来るし強いのばっか。
ここまで来るとオレとヤマミの出力を抑える封印の『刻印』が仕事していない。加減する暇もなさそうだ。
【憤怒の魔人像】(悪魔族)
威力値:56500
赤く染まった巨大な魔人像。二本のツノを生やし憤怒の表情は見るものを恐怖させる。赤いオーラをまといながら怒り狂って拳を振り回してくる攻撃は恐ろしい。結構素早いので逃げ切るのは難しいぞ。上級中位種。
【呪殺のゲイザー】(悪魔族)
威力値:29000
無数の触手を蠢かせる球状の体に大きな目玉が見開いているモンスター。様々な状態異常攻撃や魔法攻撃などを繰り出してくる強敵。真っ先に潰さないと厄介な事になる。上級下位種。
【ジェノサイドキメラ】(獣族)
威力値:41000
ライオンの体と頭部がメインで右肩にワイバーンの頭部、左肩にヤギ、背中からは竜の翼、尻尾は蛇と色々混ぜたような魔獣。知能が高く言語を理解する。脅威的な身体能力と強靭なオーラ、そして魔法攻撃やブレス攻撃など多彩な攻撃をしてくる。全体的に赤い。上級中位種。
【血祭りの大怪鳥】(飛空族)
威力値:34600
真紅に染まった巨大鳥。四つの翼が奇妙。とても大きくて一軒家を鷲掴みして砕くほどだ。その大きさに関わらずトップスピードは音速を超える。飛び去るだけで村が崩壊するほど。上級下位種。
【皆殺しの魔剣】(悪魔族)
威力値:32000
赤く染まった魔剣。刀身に目と口が付いている。常に飛行している。赤いエーテルを纏って振り回してくる剣技は恐ろしい。生き物を斬殺する事を喜びにしている悪魔。上級下位種。
こんな奴らを相手に連戦を繰り返したおかげでティオス先輩とクックさんのレベルはガンガン上がっているようだぞ。高難易度な分だけ経験値が凄くてレベルアップも早いんだろう。
地上へ帰ったら威力値測定が楽しみだ。
でも、さすがに三日通しで不眠不休で歩き回るのは不可能だ……。
宝箱などが置いてある適度に広い洞窟の部屋などで野宿。
魔除けの結界を張って交代で見張りを付けていく。もちろん『安全地帯』じゃないからこそ、魔除けの結界といえども万能ではない。万が一破られて寝込みを襲われればひとたまりもない。
オレにとっては初めての体験だったが、やはり難なくこなす事ができた。
ここにいる全員は寝込みを襲われようが即座に跳ね起きて、戦いに応じる気構えはある。
それでも見張りはやっておくに越した事はない。
……クックさんは完全に熟睡するからなぁ。どのみち必要か。
フロアボスのいる大広間はコロシアムのような広大な円形闘技場っぽいもの。
「おおおおおおおッ!!!」
太陽の剣で飛んでくる巨大な拳を払う。逸らされたソレは向こうの壁を爆裂させて穿ち壁に大穴が空いた。
相手は巨大な岩石人。顔と胴体が浮いて、更に八つの鋼鉄の手袋みたいな籠手が周りに浮いている。
【執念の岩石人】(精霊族)
威力値:213000
常時浮遊している顔と胴体が本体で、左右側面に上、中、下、それぞれの位置に八つの籠手が浮いている。その籠手で攻撃と防御をこなす。何度砕かれてもくっついて元通りになる。倒すには本体の頭部の中にある核を砕かねばならない。拳に握って飛び交って打撃攻撃、掌から光線を放つ魔法攻撃、輪状の衝撃波の津波を放つ範囲攻撃などしてくる。形状様々な半透明の障壁を張って防御もする。超級上位種。
あちこちビュンビュン飛び交う籠手が勇者たちを攻め立てていく。
アクトもリョーコもひと振り一撃で籠手を砕くが、すぐさま破片がくっついて元通りになる。
ならばと太陽の大弓で光子の矢を連射して岩石人へ集中砲火だ!
ピキンと半透明の赤い障壁に阻まれ、集中砲火ですら貫けず弾かれてしまう。それを囮に周囲に回り込むように屈折してくる包囲網射線にも、的確に障壁を張って防いできた。
「くそー! 見抜かれてたかっ!」
飛んでくる籠手をかわしながら、焦りを募らす。
ヤマミもメーミも魔法を繰り出しているが、様々な形状の障壁で防がれてしまう。
反撃と飛んでくる籠手が壁や床を穿ち、破片や飛沫を噴き上げる。
飛んでくる籠手のいくつかを太陽の剣で弾いていく。真上から急降下してくる籠手を「ライズー!!」と跳躍して斬り砕き、数歩空中疾走して「フォール!!」と岩石人を斬り下ろそうとするが障壁を連ねられて阻まれた。硬い!
「くっ!」
勇者が「ヘヴン・フィニッシュ」と稲光を迸らせるエーテルを纏って突撃するも、幾重も障壁を連ねて再生され続けて威力が殺されてしまう。リョーコの威力の高い技ですら同じ結果だ。
フォールとかスパークとか、オレの技だって全然だぞ……。
反撃と八つの掌から光線が放たれて様々な角度の射線を描いてあちこち破壊しまくっていく。
「ど、どうすんだよ!? これェェ!?」
ティオス先輩は風閃剣を振るって籠手を弾く。クックさんは「わわー、どうすんのー!?」とウニメイスで籠手を打ち落とす。
アクトが「仕方ねぇなァ」と力もうとすると「待ってくれ! ヤマミが! 巻き込むぞっ!」と止めた。
ヤマミの周囲を複数の黒い小人が踊りながら周回している。
「行き!!」
ヤマミが掌を突き出すと、それに従って小人が次々と床へダイブして地面を這うように黒筋が屈折しながら岩石人へ殺到する。
床へ障壁がビキンと張られる。しかし黒筋はそれすら這って越えていく。やはり伝播までは防げない。そのまま岩石人へ飛び上がって黒炎がまとわりつく。ゴゴゴゴ!!
「ギギギギオオオ!!」
岩石人は振り払おうと激しく動くが黒炎は更に獰猛に勢力を増やしていく。
八本の籠手が円陣を組んで床にパンチを打ち込んで衝撃波の津波を輪状に放つ。
慌ててフォースを噴き上げて妖精王化し「攻撃無効化!!」と掌をかざして衝撃波の津波を霧散させる。
範囲外で破壊が蹂躙し、巻き上げられた床の破片が流されていく。
「ギオオオオオオオオオオオオ!!!」
岩石人はジタバタもがき続けるが黒炎になすすべなく貪られていく。
その間も暴れ回るように籠手があちこち飛び交って破壊の限りを尽くしていく。それを攻撃無効化で耐え続けていく。
時間はかかったが岩石人は塵となった……。
「ふうっ……!」
できれば普通に戦って勝ちたかったがなぁ……。
攻撃無効化も黒い小人も普通の人には真似できないスキルだもんな。本当を言えば妖精王でガツーンとやれば勝てていた。
アクトだって一階層で似たような事やってたけど、あくまで人間の範疇かな。
「なぁ、魔王と戦った時みてーにできないのかぞ?」
「ん? ああ、アレは対魔王の特化決戦用だからな。これをやると後がしんどい。しばらく寝込むからな……」
『勇者の魂波動』
脆弱な人間が強靭な魔族の王に立ち向かう為の『勇者』が持つ固有能力。
これをやると信じられないくらい飛躍的に強くなって空も飛べるようになる。魔王はおろか妖精王や竜にも対抗できるらしい。
竜か妖精王の勇者だったら、もっと強くなるんじゃないかと思う所だが前例はない。
そもそも人間でなければ『勇者』というものにはなれないっぽい。
「ちぇー! ワンチャン、オレが勇者になれるってのねーか」
「ははは贅沢言うなァ……。『鍵祈手』ってだけでも充分だろうがァ……」
アクトがオレの頭をポンポン叩く。おい叩くな!
和気藹々と『安全地帯』で一泊した後、ついに第四階層へ踏み入れる事になった……。
ギギィ、と大きな扉が開かれ、広がった光景に唖然とさせられた。
「なっ、なんだこれ……?」
「亜空間??」
「やっば~! 初めて見るわね~!」
数え切れない程の無数の浮遊島、多くこびりつく赤く灯る結晶群晶。
こちらから続く橋のような道があちこち浮遊島と結んでいて心許なさそうな感じがした。そして背景は混濁した赤黒い亜空間でゆらゆら模様が変わっていく。
前の階とは比べもんにならないほどの広大すぎる空間……。
所々浮遊島に聳える岩山には穴が空いていて内部が空洞になっている。宝箱の部屋だったり袋小路だったりするのかもしれない。とにかく奇妙な空間が広がっているのには驚いた。
「まるでラストダンジョンみたいな雰囲気だなぞ……」
思わず息を飲む。
他の『深淵の魔境』もそんな感じかなぞ?
そうだとしたら、ただの『洞窟』感覚でやれない。マジで深淵だぞ。
あの勇者たちですら固まってるんだからスケールが違うのが分かる。これは確かに『聖絶』から作り替えられたヤベー魔境だ。
あとがき雑談w
ヤマミ「ふー、黒い小人じゃなかったら時間かかったかもね」
ナッセ「だなぞ」
クックさん「なんか黒炎カッコいいー! 深淵な響きで渋いー!!」
アクト「もしアイツが周囲を囲むバリア張ってたら届かなかったんじゃねェか?」
リョーコ「何度か戦って分かったんだけど、あのバリア面積が広がるほど脆いから何回か攻撃加えてたら破れるよー」
ヤマミ「障壁そのものを黒炎で燃やすって手もあったけどね……。一番厄介なのは光属性の魔法を使われる事ね。でも使ってこなかったから良かったわ」
ナッセ「あいつ『聖絶』から生まれたんだろ? 光魔法ないってw」
アクト「あァ……そりゃなァ……w」
次話『第四階層はもはや異次元フロア!! 一体どこまで続く?』




