34話「驚きの事実!? 勇者とモリッカ!」
最後の部屋へたどり着くと、巨人が住みそうな広大な神殿内部で等間隔に白柱が並んでいる。
第二階層のボスは巨大な赤い鎧だ。でけぇ!
「ギキィィィィィィィ!!!」
部屋中に響き渡る咆哮で振動がビリビリ伝ってくる。
【大怨霊の魔鎧】(アンデット族)
威力値:164000
意志を持った赤黒い全身鎧の巨大なモンスター。身長はゆうに15mに及ぶ。六つある腕が持つ巨大な剣で敵を叩き潰す。図体に似合わず素早く動き、目にも止まらぬ剣戟を繰り出せる。超級下位種。
「行くぞォォォォ!!!」
士気高揚と、オレたちは全方位から飛びかかった。
大怨霊の魔鎧は殺気立って六つの剣を素早く繰り出し、乱雑な軌跡が幾重と交錯していく。
ガギイン、ッギッギギギン、ギギン、ギィン、ギンギガガッ!!!!
オレ、ティオス先輩、セロス、ファリア、クックさん、アクト、リョーコで大怨霊の魔鎧と激しく斬り合い続けていく。
巨大な剣が高速で振られてくるから、受け止めるのは重い。
しかしオレは「負けるものか!」と粘り強く捌ききっていく。
合間にメーミとヤマミが魔法を連射して、大怨霊の魔鎧に爆発が次々轟く。
防御の為に剣戟が止んだ隙を狙い、「ライズ────ッ!!」と飛び上がって巨大な剣を太陽の剣で斬り上げる。更にクックさんが「うにあーっ!!」とウニメイスで上からガキンと打ち据え、その挟み撃ちで一本の剣を砕く。ギキィンと刀身の破片が散らばる。まず一本ッ!
しかし大怨霊の魔鎧は切断部分から瞬時に刀身をシュバッと再生させてきた。
「な!?」
大地を割るが如くの豪快な振り下ろしを、クックさんを抱えて滞空手裏剣を足場にかわす。通り過ぎた剣が床を穿ち飛沫を噴き上げて破片と粉塵が舞う。ゴゴォン!
「ってか再生できんのかよッ!」
奮迅とセロスとファリアが剣を折っても、再び刀身を伸ばして反撃する。
「スラッシュ・スレイヤ────ッ!!」
エーテルを溜めたリョーコの必殺技でも何本かの剣を犠牲にして威力を殺し、その後でニョキッと再生する。
これじゃキリがない!
「ギギイイイィィィィィッ!!!」
例え剣を折られようが砕かれようが、大怨霊の魔鎧は同じだけ再生して猛攻を緩めない。攻防ともに隙がない。まさにフロアボスに相応しき強敵だ。
剣自体も硬いし、一気にいかなきゃ攻略は難しいぞ……。
「ナッセェ!! 跳んでッ!!」
なんと足元にヤマミの丸い盾が形成された。それは反射仕様でトランポリンのように勢いよく超高速で飛び立った。
クックさんは「いっけー!!」とウニメイスを振り上げる。
カッと気力を漲らせて太陽の剣を正眼に構えた。
「流星進撃!! 十二連星ッ!!!」
大怨霊の魔鎧は「ギイイイィィッ!!」と幾重もの剣戟を繰り出すが、流星群がごとくの軌跡がそれらをことごとく粉砕。全ての剣が破片となって爆ぜていく……。
さすがに向こうさんも「ギキィッ!?」と動揺をあらわにした。
「アクト開けたぞッ!!」「おうよ! 相棒ァ!!」
即座にアクトが「心剣流! 龍閃・紅蓮斬!!」と振るった剣から龍を象った斬撃が拡大しながらナッセを通り過ぎて大怨霊の魔鎧へ直撃!
ガガガガギギギィィギギ!!
独特な音を響かせて弾けた衝撃波が覆う。ビキキッと装甲に亀裂が走った大怨霊の魔鎧は後ろへグラリと仰け反っていく。
そこを勇者セロスは天井の暗雲から聖なる落雷を自身の聖剣に落とし、瞬足で駆け出す。
電撃散らす凄まじいフォースを纏いながら大怨霊の魔鎧へ突撃。
「ヘヴン・フィニッシュ────ッ!!!」
気迫の勢いで勇者は剣を振るいながら神速で通り過ぎると、大怨霊の魔鎧は稲光を放射状に散らしながら木っ端微塵に爆ぜた。
ドグアアアアアアッ!!!
凄まじい衝撃波が荒れ狂い、部屋が大きく震撼した。ゴゴッ!
しばし立ち込める煙幕が流れ、オレたちはボスの巨大な威圧が消えた事を察して緊張が解れていく。
「うおおおッ!! やったぜーッ!!」
一斉に拳を振り上げて歓声を上げた。なんという気持ち良い雰囲気。
勇者たちとやっていくの楽しいい!!
「これで第二階層も撃破だぁ────ッ!!!!」
ボスを倒した事で開かれる『安全地帯』、そしてその先で第三階層への入口が闇を覗かせている。
異世界で買った懐中時計を取り出すと午後八時相当の時刻を過ぎていた。
第一階層よりはちと遅れている……。あれだけ広かったし仕方ないか。
「潜って二日目で二階層か……。並の『洞窟』じゃ三〇階層以上は潜れる。難易度によっては異なるだろうが、オレたちの場合はそうなる」
「そうなのか?? うへぇ~!」
勇者セロスの言葉でビックリさせられた。
異世界の洞窟は入った事はなかったが、魔境と比べるとユルいらしい。まさにここは高難易度の『洞窟』ってか。やべぇ!
「い……一体ここは何階層まであるんだ?」
「初めて潜ってるんだ……。誰も分からん。だが深くないといいな」
「…………だな!」
遅めの晩飯をみんなで平らげていった。
「うにゃ……眠くなってきた……」
腹一杯で眠たい様子のクックさんが脇に抱きついてきたので、ウニ頭を撫でた。
ヤマミは「先にコテージ建てておくわ」とちょうどよい場所へ足を止めると、小さいコテージを置いてボンと煙幕を立てて拡大化させた。
「クックさん行くよ」「ふぁい……」
まるで自分の子供ができたみたいな雰囲気で、クックさんを寝室まで連れて行ってベッドに寝かした。その無垢な寝顔にほっこり癒された。
「おやすみ」
午後十時、オレたちは勇者たちと焚き火を前に色々話をしていた。
勇者たちは元々三人から始まったものではないと聞かされて驚いた。
セロス、ファリアは元々ライトミア王国生まれの幼馴染で、実はもう一人いたらしい。ティオス先輩も同年代だったが幼馴染とはまた違うらしかった。
「忘れようがねぇ……。アイツこそ本当の英雄なんだ」
セロスは焚き火を見つめ、その沈んだような顔が照らされていた。
ファリアとティオス先輩は静かげな顔で沈黙している。セロスは再び口を開いた。
アイツは魔道士として自ら志願して魔法学院で鍛えた後に、勇者の使命を受けたセロスとファリアの力になるべき共に旅立った。王国の人たちの声援と期待を背中に受けながらな。
もちろん楽しいだけの冒険ではない。
戦禍を撒き散らす魔王を打ち倒すべき、過酷な戦いに身を投じる日々だった。
心身ともに傷つき、何度も諦めたくなったり逃げたくなったりもした。その度に仲間に諭されたり励まされたり、時には叱責されて精神的に成長していった。
アイツも人一倍臆病だったが、それでも逃げず一生懸命乗り越えようとついてきてくれた。
そして仲間も二人くらい加わって五人パーティで突き進んできた。
そんな折、遭遇した魔王の幹部である四魔将はとても絶望的な強さを持っていた。
その一人が“残虐なる蟲王”ベルセムだ。
「アイツか……」
はっきり言って全く歯が立たなかった……。
二人殺されて自分たちも瀕死で全滅か、と思われた時にアイツはベルセムに昇天魔法を仕掛けた。
そして臨界に達して上空へ飛び立つ前……。
《すみません。僕の旅はここまでです……。でも楽しかったです…………》
アイツは満面の笑顔で眩い光と共に天へ昇っていった。
その最期に涙をこぼしながら手を伸ばす。
《モリッカ────────────ッ!!!》
それを聞いて思わず「えええええッ!?」と声を上げてしまったぞ!
アクトもリョーコも「え? ええ? マジ?」と顔を見合わせた。
「どうした? その後色々あってエルフの森でメーミと……」
「ごめん! モリッカさんが写っている写真とかありますか??」
勇者セロスは怪訝そうに「……見せるだけだぞ?」とロケットペンダントを取り出してその中を見せる。
かなり前の写真だからか古びている。
背景はライトミア王国。まだ幼げな勇者セロス、ファリア、……そしてモリッカ。
「モリッカ!!!」
なんと、オレたちが知っているモリッカと瓜二つではないか!
何度見ても間違いない。いかにもな魔法使いの緑色のローブを着た細身の黒髪で童顔の青年。違うのは頭上にアホ毛がない事くらいだ。
「モリッカがなんで異世界に…………ッ!?」
なんとモリッカは元々異世界人だった!? しかも勇者の仲間!?
その驚くべき事実にオレたちは目を丸くしたのだった。
「まさかエレナと同じように異世界転生??」
ヤマミの呟きに「たぶん!」と相槌を打つ。
エレナは地球人として死んで、ここに異世界転生した。その逆バージョンなのだろうか?
そんなオレたちの様子にセロスも戸惑い始める。
「チキューの知り合いがいたのか……? アイツはそんな事を微塵にも……」
「おいおい! どういう事だよ!? まさかモリッカ生きているのかッ??」
今度はファリアは食ってかかる。
彼らのリアクションを見るに、相当大切な仲間だったのが窺える。オレは意を決した。ヤマミと目を合わせて頷く。
「……信じられないかもしれないが、モリッカはこっちにもいるんだ。聞く?」
「構わん! 話してくれ!」
「頼む!」
生唾を飲み込むセロスたちに、モリッカとオレたちの関係を話した。
あとがき雑談w
モリッカ「くしゅんっ!」
フクダリウス「大丈夫か?」
モリッカ「……どっかで僕のウワサしてますよね~」
ナッセ「モリッカが変わった事知ったらどう思うんだろうか?」
ヤマミ「そうね。勇者さんの話を聞く限り、大人しい方のモリッカだもの」
セロス「???」
次話『第三階層は更に難易度が高くなって!?』




