33話「第二階層へいざ!!」
勇者たちは目を丸くして、手に持つカップの『カレー』に「おお……!」と感嘆を漏らしていた。
────オレたちは初日一泊していた。
と言うのもアクトが第一階層のボスを倒した次の部屋が『安全地帯』だったのだ。
なぜなら、この地面に魔法陣が書かれていて『安全地帯』と異世界の魔法文字で記されていたからだ。
もうそろそろ遅いかと野宿を考えていた矢先で、これはありがたかった。敢えて魔除けの結界を張って野宿する必要はなさそうだ……。
現在の時刻に合わせてか、ここでは夜で薄暗くなっていた。
たどり着いたのがオレたちで初めてなのか、誰か来た様子はなかった。
パチパチ火の粉を散らす焚き火を前に、オレたちは囲んで晩飯をいただいていた。
それもヤマミが作ったカレーなのだ。
「それがオレらの世界でメジャーな料理だァ……」
「だよー! でもヤマミも凄いじゃん! 世界の材料で再現するなんてねー」
「ええ……、頑張った甲斐があったわ……」
クールにヤマミはサラッと髪の毛をかきあげる。
クックさんが「おっかわりー!」と言ってきたので、一転して優しい顔で「はいはい」とご飯をよそった。オレはそれを見て綻ばせた。いいなぁ、そういう家庭っぽいの……。
勇者たちとティオス先輩はカレーに夢中でガツガツたいらげている。
ふうと一息。するとヤマミが側に座ってきて、こちらを覗き込んできてドキッとさせられる。
「疲れた?」
「んーさほど。アクトがやってくれたし」
それから勇者たちと和気藹々していった……。
「じゃあ明日またー!」
勇者たちと解散して、それぞれ別々のテントやコテージへ入っていった。
オレはヤマミとクックさん、そして酔ったリョーコとアクトと一緒に一軒家並のコテージでくつろいで話を交わす。やがて夜は更けてクックさんは既に自分の部屋で寝付き、オレとヤマミは二階の寝室へ向かう際に「おやすみー」と、居間のソファーにいるリョーコとアクトに手を振る。
ヤマミと一緒にまどろむ意識でベッドに寝転がり、安穏な闇へ沈んでいった。
「起きて! 朝よ!」
なんか揺すられて意識が呼び起こされていく。
眩しい光が差し込んできてまぶたを瞬きすると、パジャマ姿のヤマミが「おはよ」と綻ばせてきたのが視界に入った。いつもの愛しい彼女の顔。和やかに二度寝とウトウトしかけたらヤマミのチョップがペシーン。
「こら起きる!」
「んん、おはよ……」
身を起こすとここはコテージの寝室……。
窓から朝の日差しがカーテンの隙間から差し込んできている。
窓を開けて上半身を乗り出すと、天井の煌びやかな結晶群晶が太陽のような眩しさを放っていた。そして内部は明るく照らされた鍾乳洞が見渡せた。
うわぁ広いなぁと思っていると、ヤマミも側に来て見渡していた。
「……ああ、そっか。一階層のボス倒して、ここで一泊してたんだっけ」
「そう。今日は第二階層ね」
ヤマミの見据える先には、奥行きの壁に空いている穴から下る階段が闇まで続いていた。
着替えして朝飯食べてコテージを畳むと、勇者たちが準備万端と待っていたようだった。
ティオス先輩は眠たそうにあくびしている。
「よし! 全員揃ったな!! これから第二階層へ挑むぞ!!」
「「「おおおおおおおおー!!」」」
相変わらず勇者セロスはまとめるのが上手い。
例え混合パーティだとしても、何故だか自然と協調性が沸く。さすがは憧れた勇者だけあると、オレはワクワクした。
そしてみんなでぞろぞろと闇へ続く第二階層への階段を下りていった……。
大きな扉がひとりでに開かれ、目にした光景に驚く。
第一階層はまだ普通に鍾乳洞だったのに、今度は高低差が激しい地形で赤黒い水晶柱があらゆる角度で天井と地面を繋いでいた。道端には結晶群晶がこびりついている。
もしかしたら一階層よりも広いんじゃないかって思ってきた。
なんか赤黒い水晶、妖しく発光してね……?
「来るよ!!」
ハッと気付くと、赤くて大きなハエの大群が羽音を立てて群がってくるのが見えた。
【怨念の蠅】(昆虫族)
威力値:10000
赤く染まった巨大なハエ。単体では脅威ではないが、数百匹の群れで襲いかかってくるため厄介だ。消化液は強力な酸性で体を溶かしてしまうほど。中級下位種。
オレたちはキッと見据え、得物を手に身構えた。
「ヒェピラァ!!」「ヒェピアラ!!」「ヒェピアラ!!」
オレとヤマミとメーミは中級氷系魔法の散弾をばら撒いて、次々と撃ち落としていく。多すぎてキリがなかろうとも莫大な魔法力で粘り強く数百数千匹を落とし続けていた。
結構な数を減らした後、勇者セロスは手をかざして真上に稲光を伴う暗雲を発生。
「エクス・ゴッドヘヴンッ!!」
勇者が手を振り下ろすと、暗雲から巨大な落雷がハエの大群へ迸ってバチバチバチチチと激しく縦横無尽に稲光が伝導していって地響きと共に旋風が吹き荒れた。
オレはそんな勇者の最強魔法に目を見張った。
一瞬にして殲滅させ、雄々しく見据える勇者が眩しく見えた。
「勇者すっげぇカッコいい!! 強くて頼りがあって憧れるな!!」
しかし先輩はジト目で「本当はお前も同格に強いからな? 妖精王さんよ」とボソッと。
それは言わないでくれぞ……。
数十分で、今度は赤い液体から数十体の赤い骸骨がぞろぞろと這い出てきた。
突然それぞれが赤白いオーラを噴き上げて、尾を引きながら飛びかかってくる。
「こいつら強いぞッ!!」
【ルビースケルトン】(アンデット族)
威力値:44500
赤黒い結晶でできている骸骨。剣や槍などで武装する。普通のスケルトンとは段違いの力と速度を持ちオーラまで纏って敵を追い詰める強敵。上級中位種。
「うにりゃりゃあああ────ッ!!」
クックさんもエーテルを纏ってウニメイスでガンガン攻防の応酬を繰り返す。
ティオス先輩も風閃剣でガキンキン激しく斬り合い、骸骨の頭を殴るが、お返しとばかりに剣で殴られる。
「ぐっ! 強ぇ……!」
戦士ファリスは剛力で剣を振るってルビースケルトンの剣を砕き、メーミの放つ光魔法による矢で頭蓋骨を射抜いて砕く。
勇者セロスは鋭い剣閃を煌めかし二体を上下に両断。
急降下するオレと地上のアクトは「うおおおおあああッ!!」と上下から切り結ぶ剣戟でルビースケルトンを粉砕。
エーテルを溜めたリョーコの「スラッシュスレイヤー」で五体ほど一気に粉砕。
オレはクックさんの加勢で、アクトはティオス先輩に加勢。
ヤマミの「メガバクボ!!」でドッガアアァンと大爆発を起こした。
赤き結晶は粉々になって虚空へ流れていく────……。
「こりゃ荷が重いな」
「ああ。中堅クラスの冒険者では苦しいぞ」
二階層を歩きながらセロスとファリアは話し合っていた。
確かに苦戦する敵が増えてきた。とは言え第一階層のボスを倒せるレベルならこのフロアは問題ないかもしれない。
ティオス先輩は「くそ……!」と焦りを滲ませていた。
「でも敵が強い分経験値多いからさくさくレベルアップできてるじゃないか!」
「ステータス的にはな!」
ティオス先輩は続けて気にしている事を言ってくれた。
勇者たちは元からコンビネーションはできているし、オレたちもヤマミとアクトとリョーコでスムーズにチームワーク組めている。
クックさんもオレたちに溶け込もうと奮戦しているから時間の問題。
なのに自分は今まで一人で突っ走ってきたせいで、独り善がりな戦いが気になってたらしい。
今になって痛感して、この調子なのだ。
「じゃあ俺らァと来るかァ?」
なんとアクトがニッと誘いかけてきた。オレは思わず「ええっ!?」と声を上げた。
どうもオレとヤマミとクックさんでスリーマンセルが成り立ちつつあるし、アクトとリョーコとしてはもう一人仲間が欲しかったらしい。
元々はオレ、アクト、リョーコとやってきた。しかし今後ヤマミの参入の事もあって、オレ自身も仮想対戦に参戦できなくなっていた為に一人欠員になってしまった。
ティオス先輩なら仮想対戦で引っかからないだろうし、オレの代わりとしてやっていけそうかなとの事。
「そ、そりゃアクトさんの誘いは嬉しいけどよ……」
「うるせぇ!! 俺らァと行こう!!」
ティオス先輩の胸に拳を乗せて、頼もしい笑みを見せる。
「これで新生スター新選組の誕生ね!」
上機嫌でにっこりなリョーコ。
なんか置いてかれた気がして複雑……。しかしヤマミがオレの肩に手をおいて「私がいる。不満なんてないでしょう」と寄り添ってくる。
更にクックさんも「あったしもー!!」とオレの背中をポンポン叩いてくる。
そしてついに第二階層最後のフロアへたどり着いた──────……。
あとがき雑談w
アクト「ビール飲もうぜァ……!」←懲りない1号w
リョーコ「おーっし! 朝まで飲むぞー!」←懲りない2号w
後日、やはり二日酔いwwwww
メーミ「二日酔い回復魔法あったからいいけど、潜ってる間は禁止~! あと全部没収~!(怒りの微笑み)」
アクト「す、すまねァ……!」
リョーコ「すみません……。魔が差しました……」
セロス&ファリア(いつも世話になっては怒られてたのが懐かしい……w)
次話『なんと勇者に秘密が!? そしてそれはオレも知ってるあの!?』




