31話「ナッセの新たなる決意!」
塔の魔女……。赤紅魔女サラカート……、青藍魔女エムネ……。
師匠であるウニ魔女クッキーと同格の……存在…………。
オレは仰向けのまま、海中みたいな奇妙な空間で気泡を漏らしながら沈んでいた。
ゆっくり目を開けると水面であろう眩い網状模様が視界に映る。それは遠ざかっていく。
そっか…………オレ死んだのか……。
でもあの二人の魔女はすごく強かったな………………。
《お願い……!》
悲しそうな声……? どうしたの?
それでも絶望に沈んでいく体が冷たくて動いてくれない。
《あの子たちに…………気付かせて…………!》
あの子たち??
《サラちゃんとエムちゃんは……すごく頭いい子だけど……、とても寂しがり屋…………》
深淵の底から巨大な両手がすうっとオレをすくい上げる。
ふわりと背中に触れる懐かしい温もりを感じてホッとしていく……。誰なんだ……?
こちらを覗き込んでくる優しい微笑む顔。
徐々に意識がハッキリしていく。
《私が『鍵祈手』マロハーです……》
美しい銀髪の流れるロング。女神のように柔らかく優しい顔。水色の縁ラインの白いポンチョっぽいが後ろが長くてマントになっている。体のラインに沿ったミニスカの半袖純白ローブ。露出している腕と足は美肌。水色の手袋と長靴。
そして背中からは薄透明のリボンが二対の翼のようにたゆたう。
みぞおちにキラリと輝くものが見えた。────運命の鍵!
あ、あなたが……!?
《そうです……。実は『星塔』システムを構築したのは私……。でも、本当は長い時間をかけて浄化していくもので、『大祓祭』なんてのはありませんでした。後から付け足されたのです…………》
じゃあ…………、な……何の為に…………?
《より災厄を撒いて、より願いのエネルギーを蓄える為に……。でも……それは逆に悪循環を招いて地獄を引き寄せてしまう…………。ああ、あの子たち……気付いて欲しい…………!》
張り裂けるような切ない感情が伝わって来る。
マロハーの悲しみが、想いが、願いが、流れ込んできて心が熱くなっていく。
そして脳裏に『開闢の鈴』が浮かぶ────────!!
ハッと気付けば、ヤマミがびっくりした顔を覗かせていた。次第に涙を溢れさせ抱きついてきた。嗚咽する振動が伝わって来る。
辺りを見渡すとギルドの治療用の寝室だった。
「ここは……?」
するとアクトとリョーコが側にいた。安心したような顔をしている。
「二日間も眠ってたぞォ……」
「治療カプセルで全回復したのに全然覚めないんで驚いたわよー!」
二日間も……?? オレが…………?
オレたちが全滅して横たわっている所を、アクトとリョーコは慌てて担いでギルドの治療室まで運んでいったとの事。勇者たちはティオス先輩ともども復帰して城へ直行していった。
魔王は来た時にはいなくなっていたので、生きているのか分からないらしい。
ヤマミはずっと寝ているオレに付き添って呼びかけたりしてたんだって。
「す……すまねぇ……。ヤマミ……」
「うん……良かったぁ…………」
ヤマミは嬉しそうな顔で安堵していた。手で涙を拭う。
オレは決意を胸にキッと顔を引き締めた。
「聞いてくれ! オレはあの塔の魔女の目を覚ます! そして『開闢の鈴』を完成させてみせる!」
急な宣言にヤマミもアクトもリョーコ面食らう。
続けて夢に出てきた三人目の『鍵祈手』マロハーの事も話した。彼女と二人の魔女の関係は委細分からないが、家族みたいな繋がりが窺えた。
オレはそれをなんとかしたいと訴えた。
ヤマミは「全く……、相変わらず甘いんだから」とため息をつきつつ綻ばせる。
ガラッ!
「ナッセ────────!! 起きった────────────!!」
ドアを開けるなり満面の笑顔でクックさんが飛びついてきた。
無邪気に懐いてくる彼女にオレは「なんだかなぁ」と安堵の笑みをこぼす。
────後日!
ライトミア王国の城壁が一望できる大草原。
ガギィン、とオレの剣と聖剣が交差し火花を散らす。鍔迫り合いして勇者セロスと睨み合い。
「話は分かった!」
「頼む!」
バンと弾かれるように互い飛び退く。互い後ろへ滑るように着地。
それを見守る勇者の仲間のファリアとメーミ、そしてヤマミとアクトとリョーコとクックさん。
「だが、同意しかねる! 塔の魔女は人類の敵だ!!」
勇者は疾走しオレに斬りかかるが、その聖剣を光の剣で受け止める。
剣を切り返して横薙ぎするも聖剣が阻む。今度は聖剣が滑るように斜め上から首元へ襲いかかるがオレも剣を盾にして受けきる。
互い剣戟の軌跡が縦横無尽と踊り、ガギギギンッと斬り合いが繰り返される。
「勝手な願いを押し付けるようで済まん! でも頼まれた!」
「『鍵祈手』マロハーか!」
「……ああ!」
勇者の一周するような薙ぎ払う強烈な一撃にオレは「グッ!」と弾かれる。後退して着地。
「奴らが最後に言っていた言葉を覚えているか? お前も同類だとな────」
……勇者に隙は見当たらない。毅然とした態度で全てを跳ね除ける。
魔族とそれを統べる魔王を倒す使命を背負う男。
オレの話でブレるような軽い気持ちでは、ここまでになれない。魔王とも戦えない。
再び剣を激しく交差し合ってギリギリ力比べ。
「お前は妖精王。今は我々人類の味方かもしれん。教皇や二人の魔女の事で恩義もある。────だが、成長していけば人類も魔族も俯瞰的に見るようになる。そういう可能性をお前は持っている! 魔族魔王同様に危険性を孕む敵となるなら斬らねばならない! 二人の魔女共々お前も……!」
その抉るような言葉にオレは苦い顔を見せる。ぐぐ!
「ナッセはちがう────────!!」
ムキになって叫ぶクックさんの言葉にホッとする。
オレは二段三段と空中で跳ねるように天高く飛んで、勇者へ急下降して流星の軌跡を描く剣を振るう。それに対抗して勇者は発光させた聖剣で振り上げる。
「スターライト・フォールッ!!」
「レイ・フィニッシュ!!」
互い必殺技をぶつけ合い、爆ぜた激しい衝撃波が周囲を荒れ狂った。ビリビリと互い体を突き抜ける衝撃。より反発して弾け飛んで離れた距離でオレたちは着地。
お互い本気モードではないとは言え、真剣勝負に等しかった。勇者もオレも本気の意見をぶつけ合っているからだ。
オレはマロハーの訴えを聞き届け、二人の魔女をなんとかしたいと思った。その為に『開闢の鈴』を完成させたいと決意した。
でも勇者側は塔の魔女を魔族魔王と同様に排除して人類に平和をもたらしたいと確固たる信念を持っている。
その互い譲らぬ平行線は元より覚悟していた。
互い剣戟の嵐の果てに最後の一撃で間合いを離れ、オレはカッと見開く。勇者も同じく!
「流星進撃!! 十ニ連星!!」
「レイ・サウザンドスラッシュッ!!」
天の川映る夜空を背景にオレの放つ同時に等しい渾身の十二撃を、勇者は網目状に軌跡を描く剣戟の壁で全て相殺、けたたましく鳴り響く衝撃音。
互いすれ違って反対側に走り抜けた────……。しばし静寂。
「と言いたい所だが……」
勇者は棒立ちになり聖剣を鞘に収めていく。その様子にオレはポカンとする。
「オレにはそうする事しかできん! 正直『聖絶』を相手にお前は多少なりとも抗する事ができた。対してオレは歯痒く突っ立っている事しかできなかった。これは紛れもない事実。本当を言うとお前に反論する資格などないかもしれない」
「セロスさん……!」
「それに教皇や二人の魔女からも命懸けで助けられたしな」
あの時の事を痛感してか勇者は俯いている。
教皇や塔の魔女に魔王と二人がかりでかかってさえ歯が立たなかった、と言うのもある。
「お前の事は王様から聞いている。あっちの世界で異質の大魔王をも倒したんだろう?」
「ああ……」
この世界の魔王とは全く違う異質の魔王……。
魔族の王ではなく、因子を溜めて限界を迎えた『鍵祈手』が魔王化した存在。マリシャスによって捻じ曲げられた概念。無限大に魔力を増幅し続けて人類を滅ぼし尽くす最凶最悪な存在。
正直言って『開闢の鈴』を錬成できなければ地球は滅んでいただろう。
「一応、これは早い者勝ちでいいか? 二人の魔女を──オレが斬り捨てるのが早いか、お前が諭せるのが早いか、勝負だな」
「セロスさん!!」
「それまでは同じ仲間だ……! 思想は違うが平和を望む気持ちは同じだからな」
快く笑ってくれる勇者。なんだか頼もしい。
それに話も理解して、自分なりに決断したのだろうと窺えた。オレは勇者と握手する。
「ああ! オレは人間だ!! どこまで行こうとも……」
「その意志、果たして貫けるか見届けてやろう!」
オレと勇者は笑み合う。
「何してんだよ!! セロスもナッセも!!」
ティオス先輩が走ってくるのが見えた。
彼にも事情を話すと、やはりというか「あったりまえだろ!! ナッセは俺の後輩だ! 困ったら手ェ貸すぜ!」と言ってくれる。
それだけでも安心できる。
もしかしたら反発されて敵視されるかもとビビっていたからだ……。
「まずは世界各地の『深淵の魔境』を攻略すると行くか!!」
オレたちは勇者ともども、赤黒い結晶の山を見据えた────────!
あとがき雑談w
ヤマミ「でもサラカートとエムネって、腹が立つわね……」
ナッセ「あー、それは思った」
ティオス「見た目が女の子でなけりゃなー! くっそ!!」
サラカート「すみませ~んw 反省してま~すw」
エムネ「……煽らない。煽らない。ザコ煽っても時間の無駄だから……」
サラカート「あんたもひどくない?www」
セロス「分かった! 斬ろう!!」
次話『あの勇者たちと一緒に『深淵の魔境』へ挑戦!?』




