30話「塔の魔女の恐るべき真意!!」
勇者と魔王の最大の技も、オレの繰り出す大技や奥義すらも、彼女は余裕で跳ね除けてしまう。
そんな途方もない力の差を思い知らされた。
「んふっ!」
赤紅魔女は不敵に笑い、おぞましいほどの濃密なフォースを全身からこもれ出る。
これが……異世界のレベル……!? 目眩がするほどに遠すぎるッ…………!
するとヤマミが「ナッセェ!!」と腕を引っ張られて、ハッと我を取り戻した。
反撃を警戒して咄嗟に飛び退く。その瞬間、勇者と魔王が入れ替わるようにサラカートへ飛びかかる。
果敢と挑む気迫で「うぬあああああッ!!!」と叫ぶ!
「今度はこっちのばーん! かるーく一発っと!」
サラカートは一周するように両手の扇を振り回し、一陣の旋風を巻き起こす。それだけで岩盤が捲れ上がって幾重もの大岩が流されて飛んでいく。
その嵐のような凄まじい大旋風が轟音を伴って暴れ狂った。
ズァウオオオオオッ!!!
「ぐああああああ!!!」
「ぐぬおおおおおおおお!!!」
勇者と魔王はズタボロに引き裂かれながら吹っ飛ばされていく。
「ナッセェ!!」「やばッ!! 攻撃無────」
「おっそ────いっ!」
咄嗟にヤマミと『連動』しての攻撃無効化を発動させる前に、オレたちは弾け飛ぶように吹っ飛ばされていった。最中でヤマミが切羽詰って『偶像化』で包もうとしたが、あえなく粉々に吹き散らされた。
防壁を張ったはずの“剛戦鬼”ファリアもあっさり吹き飛ぶ。
「あああああああああああッ!!!」
オレもヤマミもティオス先輩もなすすべなく、大小破片混じりの暴風に吹っ飛ばされていく。吹っ飛ばされながらもクックさんを抱きかかえて守り続ける。
全身を引き裂くような衝撃で「うああっ!」と激痛に呻きながらも必死に抱え続けた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
浮遊大陸の上半分が削られるほど、大規模の大暴風が広々と爆ぜていった……。
シュウウウウウ…………! 煙幕が数十分ほど立ち込め、収まっていくと岩山や破片でデコボコな荒野で、サラカート一人が岩山の上で突っ立っていた。
るんるんと扇を振りながら小躍りしている。
「ざっこじゃん! ざーっこざっこ! よわすぎー!」
変身が解けてしまったオレは「ぐうっ……」とクックさんを抱えたまま衣服ボロボロ血塗れで地に伏せていた。身を挺したからかクックさんは気絶しているものの、幸い怪我はない。
霞む意識を辛うじて留め、辺りを見渡すと先輩も勇者も魔王も血塗れで横たわっていた。
そんな全滅の光景にオレは思わず言葉を失った……。
「く……くそ……! 教皇なんかと……段違い……過ぎる…………!」
ゲボッと地面に血を吐く。
「んふっ! ちょっと頑張って欲しいかなー?」
サラカートは笑みながら、大地さえ揺るがす重々しい威圧を広げていく。
心を折るには充分すぎるほどの絶望的な…………。
「でもまー、城路ナッセがいれば勇者さんはいらないかー」
殺意の矛先が勇者へ向かうのがゾクッと感じ取れた。
オレは歯を食いしばって、震えながら必死に二の足で立ち上がった。
その不屈にサラカートとエムネは僅かに驚きを見せた。
次第にサラカートは「へー!」と悪戯っぽく笑う。
ブンブン扇を振り回して、その度に広々と旋風が吹き荒れていく。重い威圧と風圧でオレは堪えるのもやっとだった。
「…………させぬぞ!」
オレは再び足元に花畑を広げ、銀髪をロングに伸ばし舞う、背中に羽を展開させていく。
そして吹き荒れた花吹雪で形成させた太陽の剣で正眼に構え、後方の仲間たちを守る為に二の足で踏ん張って目の前の魔女を睨む。
「んふーふっ! さぁー行っくよー!!」
ひと振りの扇による一陣の大嵐。天変地異レベルの衝撃波の津波が轟音を伴って覆いかぶさってくる。
俺はカッと気力を漲らせた。
「デコレーションフィールド!! 攻撃無効化!!!」
勇者やヤマミたちを庇うように無効化空間を拡大し、衝撃波の津波を浴びる。
オレは歯を食いしばり、それを蝶々の群れに飛び散らせて無効化しきる。
その範囲外で剥がれゆく岩盤が大岩となって後方へと流れていく。
「もういっちょー!!」
サラカートは反対側の扇を振るって凄まじい暴風を巻き起こす。
その重々しくのしかかる威力に、オレは「ぐう……!」と呻きつつも必死に踏ん張る。それも無効化に至り、光の鹿やウサギなど動物に姿を変えて後方へ駆け抜けていく。
すり減らされていく精神と、ごっそり持っていかれるMPのエネルギー。それでもオレは目が霞みつつも震える足を踏ん張らせる。
サラカートは意外そうに目を丸くし「へー、耐えるんだー?」と首を傾げて笑う。
左右交互に扇を振るって、次々と暴風の津波をこれでもかと言わんばかりに放つ。
狭まってくる無効化空間、そして近づいてくる轟音。範囲外で大岩が嵐のように流れていく。
「くっ!」
胸に痛みを感じた。
「なんで無駄に粘るかなー? いーかげん楽になったらー?」
少々不機嫌そうながらも笑うサラカートを、霞んだ目で睨みつける。
確かにまだ勇者たち異世界の人と触れ合ったのは浅い。思い出を築くには足りない。世話を焼いてくれるティオス先輩だって、まだまだ知らない事も多い。
だが、それでも…………!
「念願だった異世界の冒険は……まだ……これからなんだっ! だから……諦められるか……っ!!」
その一念でオレは気力を沸き上がらせて踏ん張る。
なおもサラカートの巻き起こす大暴風を、オレは命を削る思いで無効化を持続させ続ける。
とっくに限界は超えている。それでも無理して軋み上がる体から力を絞り出す。それゆえ細胞の悲鳴がつんざいてくるようだ。口から血が垂れる。
「それはそれでムカつくかなー? デッカいの行くよー?」
「……こら! サラ!」
きりきり舞いながら上空へ飛び、扇を左右に広げて大規模の台風を練り上げていく。
大空を覆うかのような螺旋状の旋風の渦。その凄まじさに震撼する大地の岩盤が捲られて破片が次々と呑み込まれていく。
サラカートは扇をこちらへ振るい、圧倒的暴威の台風をぶつけてくる!
心が折れそうなオレの背中を、温かい手が触れてくる。
「あなたとは……一蓮托生ッ! ここは踏ん張るわよ……!!」
なんと瀕死ながらもヤマミがオレの背中にもたれて腕を回して、だき抱える形で支えてくれる。
そして押し潰してくる圧倒的物量の台風が破壊の衝撃を撒き散らして、容赦のない蹂躙が繰り返されていく。
「ぐうぅ……ッ!!」
オレの顎から止まらぬ血が滴り落ちていく。それでもなお必死に抗う。
ま……まだまだ……異世界冒険は、これからだから!
知らない事たくさんで、興味あるものばかり!
夢いっぱいに胸をワクワクときめかして、これからの明るい未来へ足を歩む!
知り合った勇者とも、先輩とも、友達として……みんなで笑い合って…………!
ほどなく力尽きたヤマミが背中からずり落ちて地面に伏せていく。
一人残されたオレは、それでも非力に打ちひしがれながらも目の前の明るい未来を夢見て、疲労困憊の体に鞭打って踏ん張り続ける。
例え、どんな絶望的な壁が立ちふさがっても、オレは…………!
乗り越え…………!!
ようやく台風が過ぎ去り、緩やかになっていく風が通り過ぎ、煙幕が足元を流れる。
荒い息を繰り返すオレは震える膝を堪えるのも限界で、地面に落とす。
朦朧する意識を必死にこらえ、揺れる体を踏ん張らせようとするも、眠気と脱力は容赦なく覆いかぶさってくる。
「ここまで……なの……か…………」
まだまだ……これからなの……に…………! 冒…………け………………!
ついにオレは沈むように地面に伏せた。
ゲホゲホと血を吐き、自分の運命が終わるのかと諦念に覆われていく。
「むー! サラやりすぎだよ……!」
「ごっめーん! 久々だったしー!」
てへぺろするサラカートを差し置いて、今度はエムネが歩み寄る。
「ごめんね。でも安心してよ……。私たちは中立の立場……。むしろ味方だよ……」
「んふふっ! そうそう、大災厄の円環王マリシャスを滅ぼす為にも大事な事なんだよねー!」
「そう……それが私たちの最大の目的……」
安心していいものか複雑な心境……。
マリシャスはオレたちにとっても敵。必ず倒さねばならない。世界を地獄に変えられない為にも対抗策を見つけねばならない。
だが、あの二人の魔女はその策があるというのだろうか…………?
「この星限定とはいえ『星塔』で大災厄エネルギーを吸収して変換して『深淵の魔境』を生成して、あなたたち人類が責任を持って浄化していくのが今の概要……。前にも言った通りだよ……」
「そうそうー! それを全ての世界に適用できるようにするのが最終目的なんだよー!!」
「もっと多くの人が死ぬけどね……。うふっ」
瀕死ながらも魔王と勇者は訝しげだ。
「い、今……起きている事を……、他の異世界にも…………?」
勇者の声が微かに聞こえる。
力尽きて声を発するのもままならぬオレは、諦めのままに霞んだ目で魔女をおぼろげに見る。
「あったりまえじゃんー! 人類ってどこぞの家畜害虫みたいに勝手に増えるんだもんねー! 浄化はもちろん間引きは必要っしょー!」
「それも兼ねて……だね……。うふっ」
二人の身を包むようにおぞましい黒い墨が溢れ出していく。ズオオ……!
なんと二体の巨像『偶像化』が黒いシルエットで具現化していく。上には上がいる、そう思い知らされるほど絶句させられた。
四首領以上の格上……絶望すら感じた。
「ナッセ、ヤマミ……あなたたちも幼いとはいえ、私たち上級生命体の仲間……。いずれ理解できるよ……」
「んふーふっ! それまで脆弱で愚かな人類とがんばってねー!」
そのセリフを最後に、オレの意識は途絶えた…………。
あとがき雑談w
二日酔いで寝込んでいたが、危機を察して飛んできたアクトとリョーコだったが時は既に遅し……。
ナッセたちは行き倒れになってピクリとも動かない。
破壊し尽くされた地形と煙幕で、想像以上の破壊力だと察した。
リョーコ「それよりも早く運ばないと!!」
アクト「あァ……。そうだなァ」
二人だけでひょいひょい多くの人間を抱えて、冒険者ギルドへ猛スピードで駆けて治療カプセルへどーん!
アクト「くっそ! 晩遅くまで飲まなきゃよかった!」
くくぅ~っと悔しがりながらビール缶を開けて……! ←おいw
次話『三人目の『鍵祈手』現れる!?』




