29話「恐るべき二人の魔女、現る!!」
薄暗い部屋。モニターを背にサラカートは妖しい笑みでカツカツとエムネへ歩み寄る。
「城路ナッセ……。気になっちゃったかもー」
「珍しいね……。いつもはゴミみたいに見ているのに……」
「んふーふ! 人間はねー! 勝手にウジャウジャ増えちゃうんだもん!」
「それは同意するけど……」
ソファーに座っているエムネにサラカートが寄り添う。
二人は艶かしく互い指を絡ませて握り合う。
「城路ナッセと遊んでみたいなぁ」
「しょうがないね……。傍観したいけど、男の妖精王……気になってきたよ……」
ヤマミは屈んで、ティオス先輩のケガに回復魔法の光を当てていた。未だ妖精王のままオレはクックさんと一緒に見守っている。
ちなみに生き残っていた冒険者は先に帰らした。
そんな折、“聖雷の勇者”セロス、“剛戦鬼”ファリア、“水仙賢”メーミが降り立つ。
オレは思わず「え! 勇者たちも!?」と振り向く。
「翼竜が暴れていると聞いて飛んできたが……?」
「コイツが一撃で倒したんだよ」
「うん……。まぁ……」
ティオス先輩はオレを親指で差して告げた。気恥ずくて後頭部をかく。
勇者は辺りの惨状を見て「なんという事だ……」とギリッと怒りを滲ませた。
オレは意を決して、塔の魔女が垣間見せた邪悪な笑みの事を伝えた。
「ああ、やはりか……!」
「奴らは一体何が目的で『深淵の魔境』を作りやがった!?」
「でも『聖絶』の危機から救ってくれたみたいだけど……」
もし邪悪な存在なら、そのまま『聖絶』で滅んでからにすれば邪魔者も片付けて都合がいいはずだ。それとも弊害になるから救った形になっただけなのか?
「それは余も気になる所だな!」
なんと“暴焔の魔王”ジャオガまで来ていた。
オレは思わず緊張が走って「ま、魔王まで!?」とおののく。魔王がこちらを一瞥してきて思わず身が竦む。
クックさんも青ざめて「うわわ……!」とオレの裾を握ってくる。
好戦的な彼女がこんなにもビビるなんて……。
「んふーふ! もう役者は揃ったねー!」
ゾクッと背筋が凍り振り向くと、旋風が吹き荒れ中から二人の魔女がニコリと微笑みながら現れてきた。
直に会ってみると、可愛らしい見かけによらず底知れぬ威圧が秘められているのをゾワゾワ感じ取れた。
クックさんはサッとオレの後ろへ隠れる。なんか震えている。
つい「ど、どうしたんだ?」と聞くと「こ、怖い!」と柄になくビビっていた。
「翼竜のせいで多くの冒険者が犠牲になった! 説明してもらおうか!!」
勇者セロスは堂々と剣を引き抜き、精悍とした眼差しを二人の魔女へ向ける。
しかしサラカートは首を傾げて鼻で笑う。
「やだなー! 怖いよー? いちいち正義を振りかざすのって大変よねー! 勇者のおつとめご苦労さんー!」
「そういう人を食った態度してたら失礼だよ……。まがりなりにも、脆弱な人類と強靭な魔族のバランスを保つ立派な役目を背負ってるんだから……」
「魔族と比べて人間弱いもんねー! だからわらわら増えてくるんだー!」
「ふざけるな!! お前ら何様だよ!!」
今度はティオス先輩が腹を立てて怒鳴っている。
バカにされたようで黙ってられないようだ。風閃剣を握り締めたまま食ってかからん勢いだ。
「んふ! 八つ当たりなら付き合ってア・ゲ・ル」
両手に扇を携えて、余裕綽々とオレたちへ向き直り不敵に笑んでくる。
“聖雷の勇者”セロス、“剛戦鬼”ファリア、“水仙賢”メーミ、“風閃”ティオス先輩、“暴焔の魔王”ジャオガ、オレとヤマミ、クックさん勢揃いを前に平然とする塔の魔女。
思わず息を飲む。
ヒュオオオオ……、と双方の間を風が駆け抜けていく。
「……この世界にあんたたちは余計な存在だ! 去ってくれ!」
「んーふっ! やーだっ!」
勇者は一歩一歩踏み出しながら、剣を握り締めて戦意を昂ぶらせていく。それを笑顔であしらうサラカート。
魔王も「教皇もそうだが、やはりこのガキ魔女も同類だ。気に入らん」と拳をバキバキ鳴らす。
サラカートは片手ずつ扇をブンブン振るうと、余波として旋風が渦巻いた。ブオッ!
ビリビリと全身を貫くような威圧にオレは「くっ!」と気圧される。
「あんたたち、どれくらい強いか確かめるよー! かかっておいでー!」
控えているエムネが「勢い余って殺さないように……」と釘を刺してきて、サラカートは「わかってるよーだ!」とよそ見して軽口を叩く。
その隙を突いてメーミはカッと見開く。
「エンカーバルッ!!」
メーミを起点に左右から炎の壁が走り出し、超高速でサラカートへ追尾して挟み撃ちするように炸裂すると超高熱の火炎の壁がゴウッと爆ぜるように天高く噴き上げた。
「ナッセェ!! 畳み掛けましょ!!」
「お、おう!!」
更にヤマミが追撃と無数の黒い小人で次々と地面を走らせて黒炎が覆い、妖精王状態でのオレが白く燃え盛る超巨大な火炎球を『衛星』でズズゥ……ンと重々しく浮かし、それを投げた。
「ホノバーンッ!!」
赤、黒、白それぞれの炎が絡み合って、獰猛に燃え盛る極太火柱となって天へ向かって噴き上げられた。
大地を揺るがすほどの灼熱の火柱は全てを塵にしそうな威力だ。
ドドドドドドドド……!!
吹き荒れる熱風。オレは思わず腕で顔を庇う。
しかしサラカートはよそ見したまま扇のひと振りであっさり霧散。驚くメーミ。
サラカートは振り向いて「んふーふっ! 不意打ちでこれー?」と小馬鹿に笑む。
「なんですって!!」「……ッ!」「マジかぞッ!?」
オレはマジで放ったんだぞ……?
危険を感じてか“剛戦鬼”ファリアはスッと前に立って堅強な障壁を張る。
「だが、わざわざ元凶が来ているのだ! 今ここで始末してやる!!」
「悪いが正義の名の下で斬り伏せてもらう!!」
勇者と魔王は大地を爆発させて、超速でサラカートへ飛びかかる。
オレは思わず「ちょっ……待……ッ!!」と危機を募らした。だが遅いと悟り焦燥する。ボウッと全身からフォースを噴き上げて花吹雪を吹き荒れさせて追いかける。
「ヘヴン・フィニッシュ!!」「ダイナスト・ロード!!」
稲妻を撒き散らしながら一閃を振るう勇者セロスと、黒炎の飛び火を撒き散らしながら突進する魔王ジャオガが鬼気迫る表情でサラカートへと迫る!
全てを吹き飛ばさんばかりの気迫の勢いで二撃がサラカートへ直撃!!
ズガガアァァァァンッッ!!!
天地をも揺るがす衝突で、広範囲の岩盤を一気に剥がしながら衝撃波の噴火が空へと勢いよく駆け昇っていって雲をも四散させていく。
吹き荒れる煙幕が徐々に収まっていくと、なんとサラカートは扇二本を交差して二撃を受け止めていた。
無事な様子のサラカートの笑みと、絶句する勇者と魔王が対照的だった。
「な……!?」「何ッ!?」
追いついたオレも太陽の剣を構え、歯軋りしてカッと見開く!!
喰らえ!! これが渾身の……ッ!!
「流星進撃!! 百二十連星────────ッッ!!!」
サラカートの目には、オレの背後から天の川横切る夜景が映り、数多の鋭い流星が襲い来るのが見えた。
しかし彼女は鼻で笑い、扇を振り回してことごとく捌いていく。
その連撃の余波だけで、大地は蹂躙され続け飛沫が絶えず吹き荒んでいる。
それでもオレは「おおおおおおおッ!!!」と吠えて、更なる追撃を放つ!
「二百五十連星────────ッ!!」
更に更に速さを増して数を増やして、尋常じゃない連撃で畳み掛けようとするが、サラカートは踊るように扇でことごとく軽やかに捌ききっていく。ただの一撃すら入れさせてくれない!!
だが、まだまだ────ッ!!
「ナッセェ!! 受け取ってッ!!」
「更にこれが────────ッ!!」
駆けつけたヤマミが賢者の秘法を、オレの太陽の剣に投げつけて眩い閃光を放つ。
煌びやかな光飛礫を撒き散らしながら、何本かの刃が放射状に螺旋状の形状で広がり、一本だけが長く長──く伸びる巨大な刀身……!
銀河を象った超巨大な剣!! 銀河の剣ッ!!
「ギャラクシィ・シャインスパァ────クッ!!!」
思い切って振るう超巨大な一閃がサラカートを斬り込み、衝撃波が凄まじく四方八方に爆ぜていく。
だがしかし、彼女は扇で振り下ろして地面へ叩き伏せた!
粉々に砕かれる銀河の剣、そして叩きつけられた超威力の衝撃波が大陸を裂き、震撼させながら遥か下まで貫通していった。
なんと大陸が次第に真っ二つへと分かつ……。ズズズ……!
その瞬きすら許されない細く狭い一瞬の間、オレは絶句しながら余裕そうなサラカートの笑みを視界に入れていた。
絶望的なほどに力の差を思い知らされた。
こちらの全身全霊の奥義に四首領ヤミザキですら大技で対抗してきたのに、赤紅魔女は技すら見せてもいない。
「んふっ!」
これが……異世界のレベル……!? 目眩がするほどに遠すぎるッ…………!
あとがき雑談w
ナッセ「異世界のレベルが途方もなく遠いなんて……!」((((;゜Д゜))))
ジャオガ「……四魔将は置いてきた。この戦いに付いていけそうにない」
セロス「ああ。その方がいい」
ジャオガ「それはそれでムカつくな。そのアッサリ感が」
ヤマミ「あの四首領ヤミザキは異世界レベルで言うとB級妖怪……」
ナッセ「B級だって!? あんなにメチャクチャ強かったのにッ……!?」
ヤマミ「ええ! サラカートたちはS級妖怪よ!」キリッ!
サラカート「そこー勝手に妖怪にしないでくれるー?」ぷんすかー!
エムネ「憤慨と共に遺憾の意だよ……!」ふんす!
ヤミザキ「私は妖怪なのか…………?」(ショック)
次話『赤紅魔女の実力とは……!?』




