26話「再会!! 久しぶりのあの二人!!」
塔の魔女であるサラカートとエムネの『ロープスレイ大祓祭』開催宣言を受けて、世界中から七大王国の王様たちが急遽国際会議を開いたそう。
もちろん主催者である二人の魔女も同席している。
なんでも数百年前にも同じような大災厄が起きて、その度に大きな儀式が行われる事で乗り越えてきたので最優先で執り行われるらしい。
慌ただしい雰囲気は見て取れた。
サラカートいわく「失敗したら、この星ドッカーンだよっ」との事。
そりゃ慌てるわ。
早朝、時空間魔法による固有の亜空間でオレはヤマミと軽めの組手を行っていた。
「おおおっ!!」「はあっ!」
嵐のような打撃を繰り返しながらも綿密に捌ききっていく。お互い体術のみの軽いウォーミングアップだ。
バシッと弾かれて間合いを離して「ふうっ」と息をつく。
「朝練はここまでね……」
「ああ。サンキュー」
タオルで顔の汗を拭いサッパリした。
「ともあれ、まさか祭とはなー。てか浄化に繋がってんのかな?」
「二人のどちらかが『鍵祈手』。『運命の鍵』の願いでそのような仕組みにしたって不思議じゃない」
「そっかー。それと同じかー」
黒い花吹雪の渦から流れるように現実空間へ降り立つ。
クックさんが待ち構えていて「あさめしー! あっさめしー!」とねだってきた。ヤマミは「はいはい」とキッチンへ向かう。
各国の国際会議を前に蚊帳の外であるオレたちにできる事は何もない。
いつものように暮らすだけだ。ただ────……。
「ああっ! “妖精の白騎士ナッセ”だ!!」
「“黒魔の妖精ヤマミ”もいるわっ!」
道を歩いていると騒がれるようになってきたのだ。
おまけに二つ名までいつの間にか付けられているぞ。まぁ、あれだけ大暴れしてりゃ目立つわな。教皇キラリストを倒した冒険者という事で数日の間に王国中に知れまわっていた。
勇者と魔王すら歯が立たなかった教皇を倒したという強烈なインパクトもあって、民衆の見る目が変わってしまったなぞ……。
「あったしはー! あったしの二つ名はーっ!!」
クックさんは頬を膨らましてプンプンだ。
そんなこんなで冒険者ギルドへクエストを受けようと足を運ぶ。
「ああ“妖精の白騎士”さんかい。今は無理な」
「そんな……またか!」
受付のオッサンは首を振って、未だクエストを受け付けてくれないのだ。
魔族側も教皇の事で大人しくなっているのもあり、モンスターの出没も減っていた。それにオレたちは強制的にSランク冒険者に昇格されてしまい、B以下のクエストが受けられなくなっていた。
「そんな~~融通してくれよ~~!」
「まさか教皇倒した報酬を使い果たしたのか?」
「いえ、全然。普通に生活してただけなので有り余ってます……」
ヤマミも目を逸らしながら首を振る。
昨日も一昨日もそんな調子なのだ。低ランクのクエストも受けれない。かと言って最近は高ランクも出てきていない。
ヒマすぎて退屈してる状況だ。
「つーことだ。王様が店員やるようなもんだ。たぶんクエスト依頼人だって、お前らを見たらビックリして恐縮するだろうよ。例え昇格しなくたって教皇の事でみーんな知ってる」
オレはがっくり肩を落とす。それを見てオッサンはため息つく。
「Sランク冒険者は英雄クラスだ。国から金出てる。生活に困らないのに、わざわざお使いしたいのか?」
「だって! 異世界来たばかりであまり知らないのに英雄になっても!」
「あっちで大魔王倒すまで活躍してたんなら仕方ないだろ……。こっち来るのが遅すぎたんじゃねぇか?」
後ろの方でザワザワ騒ぎが大きくなってきている。
「妖精王ナッセはここにいるのかしら?」
つい反応して振り向くと、出入り口の逆光を浴びた高貴な女性が優雅な足取りで歩んでくるのが視界に入った。
水色の流れるようなロング、左右の垂れる前髪、ティアラによってデコが窺える。高く止まったような傲慢そうな笑み。優美な扇を片手に携えている。白と水色と青を織り交ぜたドレス。
そして両脇にムキムキな侍女が二人。
冒険者たちは呆気にとられて、ギルドには場違いの高貴な女性に釘付けだ。
「え……誰??」
「申し遅れましたわね。わたくしは水のブルークア王国の第三王女マメードでございますわ」
丁重にペコリと頭を下げる。
って、ええええ?? 王国のお姫様?? なんでここにっ??
なにか困ってる事あるのかなぞ???
「そう固くなさらなくてよ。なんせ貴方にわたくしの婿になっていただく……」
「えーいやだ」
ついポロッと口走ると、マメードはビキッと引きつって硬直。
しばしの静寂。周りの冒険者は息を呑む。後ろのヤマミは目を細めている。オッサンは疲れた顔でため息。
「ふ、ふふふふ! そうですわね。いきなりの事に思わず失言したようね。でもわたくしは許します。妖精王たる貴方こそ、わたくしの王族に相応しき男。そして私の夫……」
「いやぁ……オレ彼女いるし。他あたってくれねぇかな?」
後頭部をかいてヤマミの方へ見やる。
「そういう事です。悪いけれど安易に寝取らないでくださりますか?」
と、言いながらオレの腕に組み付いてヤマミは言ってのける。
マメードは悔しそうに扇をかじる。ぬぐぐ!
両脇のムキムキ侍女が殺気立って身構えてくる。そんな緊迫溢れる最中、マメードは激情あらわに!
「王の権力をもってすれば────────!!」
「よさんか!」
なんと、今度はマメードの後ろから長身の王様がのそっと現れた。後ろに騎士が一人。
「ブルークア王国の王様サギハン様までいらしゃった!?」
ギルドのオッサンが後ろから畏まった口調で言い出して、オレも思わず緊張。
まさか別の国の王様までここに??
「いつもの悪い癖だぞ。第三王女として自覚が足りん。それに勝手な婿取りは許さん。どこぞの馬の骨ともしれんヤツを王族に入らせるワケにはいかないからな。妖精王だかなんだか知らないが、教皇の件もどうせ勇者の手柄を横取りしたのだろう。卑しいガキめ。……帰るぞ」
こちらをジロッと冷たい視線を向けてきてゾッとした。
この方もライトミア王様とも同等の実力者。その威圧は尋常じゃない。あの四魔将に匹敵しそうな猛者だ。
「お、お父様……!!」
「お前に相応しい男はいくらでもいる。それとも折檻されたいか?」
「…………無礼いたしました。お許しいただく」
「それで良い」
どこか怯えが含まれる王女はお辞儀をし、父と一緒に去っていった。
すると入れ替わるように後ろに控えていた一人の騎士が踏み込んできて剣を引き抜く。その煌く切っ先がオレの鼻の先に突きつけられた。
「礼儀も知らぬ冒険者風情が! 万が一、マメード様に指一本でも触れてみろ! この水の王国一とも謳われた“水勇の蒼騎士ウォタレン”が貴様を切り刻んでやるぞ!!」
金髪の七三分けでやや長め。整ったイケメン顔だが眉毛のグルグルが気になる。水をイメージしたような光沢を放つ青い騎士鎧を身に包み、青いマントをなびかせる。
その鋭い視線は殺気立っている。
コイツも相当な威圧感を滲ませている。恐らく五輝騎士級かも。
とにかく異世界は相当な猛者だらけだ……。
「わりぃ……。そんなつもりじゃねーんだ。イキナリここに王女様が来るなんて思ってもみなかったぞ。ビックリしてただけだから、そんなつもりは……」
「もういい! 下賎な言い訳など耳が穢れる!」
殺気と共に剣を鞘に収め、踵を返す。
ありゃー見下してるなぁ……。まぁそれだけ実力があるって事なんだろうな。
騎士ともども王様は王女を連れて馬車に乗って去っていった。
「ギルドのオッサン。わりーな。こんな事になっちまってさ」
「気にすんな。だが教皇の件は既に会議で各国へ伝わってるみたいだな。今のように信じてない人もいるがな……。ってかこっちも信じてなかったクチだが」
以前、古城に関するクエストで「四魔将が現れたので倒した」と報告はしたが、当時はオッサンは信じていなかった。
だが教皇との戦いを目の当たりにしてしまった以上、信じないワケにはいかなかった。
依頼主の王国の騎士団へ改めて正しい報告書を提出し直した。
向こうさんも納得したらしい。
「古城の事は本当に済まなかった。信じてやるべきだったな……」
「も、もういいよ。終わった事だし……」
まぁ、妖精王になって四魔将ブチのめしたって言っても普通信じないもんな。
まさに“百聞は一見にしかず”ってヤツだなぞ……。
夜空の下で、オレたちは自宅へ着いた。
クックさんは「あー楽しかったー!」とバタバタ靴を脱ぎ捨てて、居間へ走り去っていてしまった。
ヤマミは「もう!」と靴を揃えて置き直した。
……ギルドを後にしてからはブラブラして遊んでいたからなぁ。
キッチンでヤマミが料理している間、オレはボケーッとソファーでくつろいでいた。
するとピンポーンと鳴り響いてハッとした。
「誰だろ……?」
後頭部をかきながら立ち上がって玄関へ向かう。
まさか王女様とかあの騎士とかじゃねーよな……。勘弁して欲しいぜ。
「やっほー!! 元気にしてたー!?」
「あァ……。久しいなァ相棒……」
なんと見慣れた金髪のおかっぱの巨乳斧女子リョーコ、そして黒髪のパンチパーマで背が高い大柄な侍アクトが来たのだ!!
元の世界にいるはずの二人に会えてブワッと感激が湧き上がった!
「リョーコ!! それにアクトも!! 来てくれたんかー!!」
なんだか信じられない! なんか安心してくる!!
「ナッセ様ー!! またまた来ましたわー!!」
なぁんと! 水の王女様マメードが笑顔で入り込んできて、オレはビキッと固まった!
リョーコは「え? なになに? おしかけ女房~??」と妙にワクワクしてる。アクトも「隅に置けねーなァ」とニヤリする。
「待てァァァァァァァァ!!!」
あとがき雑談w
サギハン王「フン! 下賎な冒険者など!」
ウォタレン「あ、あの……半魚人になられてます……」
なんとサギハン様は魚に手足をつけたような半魚人になっていた!
ピチピチと尾びれを揺らしている。
サギハン「む! 感情的になるとついな……」ピチピチ!
ウォタレン(焼いたら美味しそうだな)
マメード「もうこんなの嫌ですわー!」
こうしてナッセの自宅まで飛び出したらしい……。
※本編の設定と異なる場合があります。
次話『ついに開催!? 一体どんな行事に!?』




