20話「大陸揺るがす、勇者と魔王の死闘!!」
ついに始まるであろう勇者と魔王の決戦────!
オレはヤマミとクックさんと一緒にライトミア王国の道路を疾風のように駆け抜けていた。タタタッ!
「お前もか?」「あ! 先輩!」
なんと“風閃”のティオスが合流してきた。
そして更に“双剣流浪”オズラッチと“魔射手”ヨーレンまでもが加わってきた。それでなくても他の騎士や冒険者も一緒に駆けつけているから不自然な事ではない。何しろ行き先は同じだからだ。
「くっそ! まさか魔王軍が本気出すなんて……! おまえ何かやったのか?」
こちらをチラリと見てきて、思わず「いや! 何もしてないぞ!」と慌てて首を振った。
汗を滲ませたオズラッチは「ともかく城門前に集合して王国を守るぞ!」と言い、ヨーレンは頷く。
ヤマミもクックさんも頷いて、暗雲渦巻く城門前へと走り抜けていった……。
勇者セロスと魔王ジャオガは威圧こもって睨み合い。
双方の威圧感のぶつかり合いで、大気と大地が振動し、周囲に岩飛礫が徐々に浮き上がっていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
「しかし四魔将の“残虐なる蟲王”ベルセムが誰かの手によって封印された事は我らにとっても吉報ッ! あれだけ多くの人間を食い殺し残虐な振る舞いを繰り返しただけに、それ相応の報いを受けて喜ばしい限りだッ!」
フッと笑む勇者に、魔王はわずかに殺気立つ……。
「人間風情が我らに性善説による断罪を語るな! 踏みにじられたくなくば、互いを認め合えるよう己の武力で示せッ!」
「認め合わなくてもいい!! オレは貴様を倒して戦乱を終わらせるだけだ!」
「──ならば! 余は貴様の首をもいで戦禍を撒き散らしてやろう!」
ジャオガは狂気に滲む形相で笑いながら、握った拳を見せつけるように突き出す。
対してセロスはすました顔で鞘から聖剣を抜いて切っ先を突きつける。
弾けんばかりの威圧で勇者と魔王の間から烈風が巻き起こり、波紋状に煙幕を広げていった。
王国の城壁前で立ち並ぶ騎士たちを前に、オレたちは駆けつける事ができた。
「間に合った!!」
少々高い位置に移動し、ヤマミとクックさん共に勇者と魔王の睨み合いを目に入れた。
ティオスもオズラッチもヨーレンも近くで立ち、同じく決戦を見守る。
しかし、まさか王国の手前で勇者と魔王の戦いが見れるなんて思わなかった。
なんかドキドキしてきたぞ。
そして、あのものすげぇ強い威圧を放つ魔人みたいなの、あれが魔王か。本物の魔王……。
「……漫画やゲームの存在でしかなかった勇者と魔王が目の前に!」
「うん。初めて見るけど本物ね……」
ヤマミも息を呑んでいる。
セロスは眩いフォースを噴き上げ、ジャオガも黒いフォースを燃え上がらせた!
「オレが来たからに戦乱の悲劇はここで潰える!! この正義の剣の元で!!」
「余が闊歩する限り昂ぶる闘争は絶えんよ……! この暴焔の拳の元で!!」
二人の相反する激しいフォースによって、急激に大地の振動が激しさを増していき、その唸りが空へ響き渡る!
彼らのフォースがスパークを伴って、足元の岩盤が旋風と共に爆ぜ飛んでいく!!
「“暴焔の魔王”ジャオガ!!!」「“聖雷の勇者”セロス!!!」
互い地を蹴って、勇者の聖剣と魔王の拳が衝突して爆発!!
「うお──っ!! マジで始まったぁ!?」
目に入ってきた爆発の光と、耳に響く轟音、体を貫く衝撃。
瞬時に勇者と魔王が空へ飛んで行くのが見え、縦横無尽に幾多の激突を繰り返して、あちこち激突の花火を連鎖させていくのが脳裏に焼き付く。
心躍る滾る高レベルの激戦。
激突のたびにズシンズシン大気を伝わって来る衝撃で体に響く。まさに天地を左右する決戦なのだとひしひし伝わって来る。
「クッソ……! な、なんてレベルの戦いだよ……!」
こっちとは逆にティオスは顔を青くして震えていた。
「じゃあ『五輝騎士』クラスの?」
「バカ言うな! 王国の騎士全員でかかっても敵わねぇよ! 次元が違ぇ……ッ!」
オレは絶句して、頬に汗を垂らす。
しかしオズラッチとヨーレンは、そんなナッセの様子に訝しげだった。四魔将の一人と遭って無事逃れるワケがないからだ。
なぜ自分たちが無事に生き残れたか、今も疑問が晴れていない。
上空から強襲する勇者が渾身の剣を振りおろし、対する魔王も黒炎を凝縮させた拳を振るう。
「レイ・フィニッシュ!!」
「ダイナスト・ブロー!!」
ガッ!!
四方八方に凄まじい衝撃波を散らす必殺技の激突。
互い致命傷を奪い合う決死の力比べ。睨み合い続ける勇者と魔王は歯軋りする。
「うおおおおおお!!」「ぐぬおおおおおお!!」
再び剣戟と殴打の乱打が繰り返され、周囲に重々しい衝撃波が四方八方吹き荒れ続ける。
「この浮遊大陸さえ真っ二つにしかねない二人に一体誰が太刀打ちできるか? 見ろ、空で戦っているのは地上に被害を及ぼさない為だ」
「そ、そんななのか……!?」
「威力値にすれば四〇万クラスだぞ……!」
よんじゅう……まん……!! それほどに…………!?
「じゃあ四魔将ってヤツはどんくらい強いんだ?」
「そこまでは知らねぇ! 勇者たちなら知ってるだろうがな!」
「あ、そっか会ってないと分からないもんな」
「おい! 四魔将と何かあったのか!?」
オズラッチが訝しげに聞いてきて、オレは「うっ!」と仰け反った。
ヨーレンも狼の耳を立てて目を細めてジロッとしたまま沈黙してるのも痛い。
まんま言っても信じてくれるんだろうか……?
妖精王になってブチのめしました! ……なーんて?
つかギルドのオッサンだって四魔将すら信じてくれなかったしなぁ。どうしよ。
ヤマミをチラッと見やると、首を横に振ってくる。言うなって事か……。
魔王が巨大な黒炎球を高速で撃ち、勇者は剣を振るって真っ二つに切り裂く。二つに分かれた黒炎球は過ぎ去ると地上で轟音轟かす大爆発を起こした。烈風が吹き荒れ、破片が飛び交い、騎士たちも「うわああああ!!」と腕やマントで自身の顔を庇う。
今度は小さい黒炎球で高速連射を始め、勇者は聖剣でそれらを弾ききっていく。
弾かれた黒炎球があちこちでドカンドカン爆発の嵐を起こしていく。大地が穿たれ、山が欠け、建物が砕け、湖が間欠泉を噴き上げ、森林が爆ぜ、巨大な浮遊大陸さえ振動しながら僅か傾いていく。
ズズズズズズ……!
「オズラッチ! まさかあの四魔将と出くわしたとは!」
「ああ! ヨーレンもオレも全滅かと思ってたんだが、全員無事で生き延びて帰れたのが腑に落ちなかったんだ」
「……確かに四魔将は三人しかいないな」
「ああ。オレが見た四魔将が見当たらない。何が起きたか知ってるのは……」
オズラッチとティオス先輩がこちらへ疑り深い目を向けてくる。
「勇者様と魔王の話だと、別の誰かが封印したらしいな!」
なんと見知らぬ騎士の言葉で、二人の目が逸れた。
その瞬間、オレは黒い花吹雪の渦に引き込まれ暗転────。
別の場所へ流れるようにザッと降ろされた。ヤマミとクックさんとも一緒だ。役目を終えた黒い花吹雪は空へ散り散りと溶け消えていく。
「遠い場所へ移動した。ここから決戦の行方を見守りましょ!」
どうやら尋問される前に、ヤマミの時空間魔法で別の場所へ移してくれたようだ。ここでも見知らぬ騎士や冒険者は多い。探されても容易には見つからないだろう。
オレは「す、すまねぇ……」と頭を下げる。
ヤマミは呆れつつも「だから私がついている」とフォローしてくれた。
クックさんはポンと肩に手を置いてくれた。振り向くとニカッと無邪気に笑ってくる。幼いからよく分かってないんだろうけど雰囲気を感じ取って励ましてくれてんのかな?
ジャオガの拳がセロスの顔を殴れば、今度はセロスの剣がジャオガの頭上を叩く!
互い血飛沫が舞う!!
しかしギロッと二人は睨み合って、憤怒と剣と拳が踊り乱れる!
大空のあちこちで激突の火花を散らし続けていく!
一撃一撃徐々に身に受け続けて勇者も魔王も「グハッ!」と吐血。顔面に血筋で濡れ、動くたびに真紅の飛沫が舞い、互いの振るう剣と拳も血をすすって赤く染めていく!
決死の命の削り合いで二人は次第に死の闇へと誘われてゆく。それでもなお打ち倒さんと気迫の勢いで意識を強く保ち、一魂込めた攻撃を振るう。
剣と拳が互いの腹を穿ち合い、共に「ギバァッ!!」と盛大に血を吐く!
「おおおおおおおおああああああッ!!!!」
もう捌き合う余裕もなくなり、ほぼノーガードで殴り合う粗雑な死闘になっていく。
それでも拮抗したままで優劣が決まらない。
最後の激突で弾かれて間合いを離れ、苦しく激しい息を切らす満身創痍の二人はしばし沈黙────。
全てを決する最後の一撃を放つべき、勇者セロスと魔王ジャオガの目がカッと見開く!!
「エクス・ゴッドヘヴン!!」「極・冥黒炎!!」
勇者セロスは天より聖なる雷を聖剣に、魔王ジャオガは天から黒き太陽を自ら身に落とす!
激しく迸る最大最強の全身全霊を一撃に込めて二人は駆け出した!
「ヘヴン・フィニッシュ!!!」
「ダイナスト・ロード!!」
稲妻を撒き散らしながら突進する勇者セロスと、黒炎の飛び火を撒き散らしながら突進する魔王ジャオガが鬼気迫る表情で渾身の一撃を振るい合う!!!
「おおおおおおおおおおおッッ!!!」
最終決戦と互い最高の技を全身全霊ぶつけ合おうとする最高潮に、オレは興奮して立ち上がった!
ガッッ!!!!
最大最強の激突で、爆ぜた白光に全ては包まれた────────!
あとがき雑談w
すかさずヤマミが時空間魔法でナッセとクックさんをさらってエスケープ!!
ティオス「ああ!! いないっ!? あいつら逃げやがった!!」
オズラッチ「やっぱり真相知ってるんだなっ! どこだっ!?」
ヨーレン「……き、消えた!? まさか今のように四魔将から?? これなら確かに全員逃げ帰れても不思議じゃないわ…………」←でも不正解w
見知らぬ騎士「恐ろしく速い時空間魔法。俺でなきゃ見逃しちゃうね」
コイツも十二光騎士の一人で“見極”のシトウ。
クラスは『鑑定士』ながらも自ら戦闘力も高い。敵の初見殺しスキル系も見破ったり、未知のスキルを解析したりなど、何かと役に立つ男。
ナッセたちを怪しんでいて、敢えて二人をダシにしたらしい。
次話『突然の急展開!! これはヤバい!!』




