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2話「これが異世界の宿屋! 豪勢な体験!」

 夜になっても光のライトミア王国の都市は(きら)びやかな明かりで(にぎ)やかだった。

 道路には等間隔の街灯が明るく並んでいて神秘的だ。


 オレとヤマミはうっとりしながら歩道を歩き続けていた。


「さて泊まるトコどうしようか?」

「そうね……色々回ろっか」

「うん」


 王国には多数の宿屋がある。どれを選べばいいか迷うほどに多い。


「ソフィアさんが両替してくれたから、通貨は問題ない。どんな高いホテルでも構わないわ」




 ────そう、オレたちは『洞窟(ダンジョン)』を抜けてから異世界の村へ着いたのだ。

 辺境の村リボナ。広大な草原の最中の小さな湖と川を付近に、数十軒の家が寄り添っている田舎だ。

 オレたちがたどり着いた最初の村。そして相棒のアクトと出会って、ライバルのマイシとも戦った所だ。


「あら、久しぶりね。冒険者ギルドへようこそ」


 カウンターに向かうと、ソフィアっていう金髪エルフの職員が笑ってくれる。

 元の世界へ帰ってから起きた事も話した。さすがに大魔王を浄化したという話には驚いていたようだったが信じてくれた。


「……だって前と違って、至高のエネルギーが()れてるもの。まさか二人とも妖精王だなんてね。あれから随分成長したようだし信じないワケないわよ」

「やっぱエルフには視えるか」

「そ、もろバレ」


 精霊族のみならず魔族や妖精族など、精神界に精通する種族なら誰でも視えるモノなのだという。

 例え人間として気を抑えていても隠し通せない。一目見て分かるのだ。妖精王となれば尚更だ。封印もしているのにバレバレか……。


「まいったなぁ……」

「それに背も伸びたようだし、大体一六歳頃かしら? 妖精族は精神界に足突っ込んでるから成長遅いのは必然よ。それはヤマミさんにも……ね」


 ヤマミはソフィアの落としてきた視線に気付いて、慌てて両腕で胸を隠す。

 そう身長はナッセと比べて緩やかなものの、胸の成長はかなりのものだった。谷間ができる程度に大きくなっていた。流石に巨乳であるリョーコと比べればまだまだだが、それでも大きい。


「ヤッてるなら分かるよね~?」

「え? い、いやぁ……」


 (なまめ)かしくニヤッと笑うソフィアに言われ、思わずカアッと顔が熱くなった。

 ヤマミも赤面してて「そ、そ、そんな事はいいでしょ!」とバタバタ手を振って慌てていた。それにソフィアはからかうように笑う。


「さて、ここに来たのは積もる話だけしに来たワケではないでしょう?」

「ええ。異世界の通貨に両替お願いできますか?」

「もちろんできるわ。いくら両替する?」


 ヤマミはドサッと札束の山をカウンターに置く。オレも「あ、こっちも多いんで……」と補足しておいた。

 ソフィアは目を丸くしていたが、ため息をつきながら「そりゃ大魔王倒してたら戦功でそれくらいもらってて不思議じゃないわよね」と納得した。

 そう、世界大戦で勝利を収めた功労者という事で、何代かくらい先まで一生遊べるほどの大金を得た。

 その全部とは言わないが数年は遊んでても不自由しない額を両替してもらった。


「それから隣のエンス町へ行きなさい。あそこに魔導列車が行き交う駅がある。そこから光のライトミア王国へ向かった方がいいわ」


 何から何までソフィアはてきぱきと準備してくれて、大陸の地図など旅するに欠かせないアイテムや情報を与えてくれた。

 更に封印の『刻印(エンチャント)』にも何か付け足してくれた。オレたちの漏れ出す至高のエネルギーが視えないように()()させるもののようだ。完全に視えないようにする事はできないらしい……。


 一日に数回しか行き交わない馬車に乗せてもらって、ソフィアに手を振って別れた。

 馬車に揺られる事、数時間で隣町までたどり着くと、村より規模の大きい住宅街が窺えるエンス町にたどり着いた。


「この町の駅ね」「ああ……」


 エンス町を歩いて、目的の駅に着くと大きな建造物に驚かされた。

 何十年も建っていたのだろうが、古風な感じがしててファンタジーな雰囲気は損なわれていない。

 そこで切符を買って、寝台列車が来た時に乗った。ガタンゴトン、自ら線路を作って走行する列車に驚かされた。

 一日中走っている間にいくつかの町や村の駅を通り過ぎていった。


 ……って事で、オレたちは三日間も列車で過ごしながらここまで来たんだぞ。




 中世ヨーロッパ風味の五階建て宿屋が目に入った。白い壁と赤い屋根が特徴的で、木の破片で文字を(かたど)っているという趣向を凝らした看板が目立っている。

 まさに本物のファンタジー世界へ入ったと実感させられた。


 入ってみると広いエントランスホールで、さわやかな雰囲気が感じ取れた。

 カウンターには亜人間、獣人など含んだスタッフが受け付けていた。そこでオレたちは恐る恐る(たず)ねてみる。


「あの二人で……」

「二名様で宿泊するのですね。かしこまりました。部屋はいかがなされますか?」

「二人で一緒の部屋で頼むわ」

「はい。ツインとダブルどちらですか?」

「ツインで」


 すかさずヤマミがドンドン注文を取り付けていくのを、オレは眺めているしかなかった。名前の署名も、鍵の受け取りも、全部彼女がやってくれた。

 ……なんというか申し訳ない。



 もらった鍵を手に、四階へ向かって該当する部屋へ入る。


 オレはポカンと突っ立ったまま一室を見渡す。大きなベッドにソファー。更に奥行には町を一望できる大窓。結構広くて清潔な部屋だ。

 現代なようで外国っぽいようで、なんか違う。

 ポフンと大きなベッドに腰掛けるヤマミ。ふうと一息をつく。


 ベッド近くの机上のベッドサイドランプは機械仕掛けではなく『刻印(エンチャント)』仕掛けだった。スイッチを押すと紋様が走ってパッと明かりが点く。

 この一室だけでもトイレ、風呂、シャワーなど生活するに十分な施設があった。

 全て魔法製の器具で、オレたちの世界のような機械製の器具は全くなかった。


「そろそろ晩飯にする?」

「ん? そうだな。腹減ったな」


 ベッドに座っているヤマミが笑いかけ、オレはトギマギしながらも頷く。


 宿屋という名のホテルにはレストランが兼備されていた。

 いくつかレストランが並んでいて、どのタイプを食べるのか迷うほどだった。おそらくこの異世界各国の料理をここで食べれる仕様なのだろうか。かなり豪勢だ。



「うまいっ!!」


 とあるレストランで、食してほっぺたが落ちそうな味にオレは感激した。

 元いた世界とは違う料理が並んでいるが、それも絶品だ。肉料理は大概美味い。野菜も負けずに美味い。豆腐っぽいものやパンっぽいものも美味い。ジュースも美味い。

 最後に注文したデザートはアイスだった。これもじんわり冷えてて美味い。


「冷蔵の概念(がいねん)もあるのね……」

「だな!」


 えへへ! ヤマミと一緒に異世界で腹一杯に食えるなんて幸せだなぁ!

 しかも高級ホテルっぽいトコで解放感あるし、異世界来てよかった!!



 混浴の大浴場は最上階の屋根内にあって、これも木造の趣向を感じさせるものだった。

 入ってみると湯気が立ち込める浴場に様々な種族の人がいた。オレは股にタオルを巻いて、ヤマミを探した。


「こっち」


 思わずドキッとした。バスタオルを胸から太ももまで巻いたヤマミの姿に、オレは顔が熱くなった。

 遠慮なくオレの手を引っ張って風呂へ一緒に入った。

 一緒に並んで湯に浸かっているってのもドキドキさせられて落ち着かない。


 ま、ま、まさかイキナリ混浴で一緒に入るなんてててて!!


「はぁ~気持ちいいわ」

「そ、そ、そうだね……」


 男のサガか、ヤマミの胸元に目が入ってしまう。ふっくら膨らんでいて目の保養にいい。

 付き合って二年。もう裸も見慣れているはずなのに、まるで未経験のような緊張が全身を走っている。うわあああ!


「もう今更ね」


 ヤマミは赤面しながら笑い、こちらの肩に手で触れてくる。

 ぐいっと引っ張られて互い肩を重ね合わせて、顔が急接近。心臓がバクバク高鳴っていく。ヤマミの顔が、唇が、近い!

 チュッとほっぺに唇が触れる感触────。


「ちょち刺激が強すぎらぁ……」


 ……数十分して、ちょっとのぼせた感じで浴場を後にした。

 浴場の出入り口で待っていると、浴衣っぽいの着て髪の毛を巻いたヤマミが手を振って出てきた。



「はい湯上りの飲み物」

「おお! ありがと!」


 一緒にビンをゴクゴク飲み干した。ぷぱーおいしい!

 その後も、広大な宿屋内を散策した。結構人通りが多い。店もあったが、お土産、服、武器防具、装飾品など専門店が並んでいるのにも驚かされた。

 もちろん酒場もあったが、とても入る気になれなかった。


 特に盛り上がったのは服の着せ替えだった。


 ヤマミがゲームでよく見る露出度の高めの装備をしてきて、オレは思わず赤面してしまった。

 黒い全身タイツに軽装の鎧で剣と盾持ちの戦士風、長い神官帽にエプロンっぽいワンピースの僧侶風、黒い三角の魔法帽に黒いマントに肩と胸の谷間が露出されているチューブトップみたいなローブの魔法使い風、白い薄布の衣服に清らかな水色のマントの賢者風、と変わり映えしていく姿にオレは興奮してしまう。


 最終的にオレは当初持ってるマフラーを首に巻いて青いボレロっぽいの下地にシャツ。下半身はジーパンから変えて青いズボン。指が露出している手袋。

 ヤマミは全身を隠すほどの黒いマント。胸と肩が露出している紫のローブ。紫の手袋。

 他にも装飾品とか備品とかも買って収納本に入れてある。


「なんか一気に冒険者っぽくなったな!」

「うふふ! そうだね!」


 なんかその気になって、オレとヤマミは互いに手を合わせた。


「……寝るまで時間があるし、散歩しよか?」「うん!」


 気分が高揚してかオレは誘い、ヤマミもそれに乗る。足取りも軽く宿屋を出て夜空の町へ散策を繰り出した。

あとがき雑談w


ナッセ「ゲームの宿屋ってそんな大きいもんじゃないよな」

ヤマミ「そうね。しかも数秒暗転すれば一泊終わり、だしね」


 散策しているとなぜかゲーセンのフロアを見かけた!?

 クレーンゲームも、アーケードゲームも勢揃い!?

 違うのは動きが滑らかで機械みたいな規則的な動きではなかった。どんな構造で動いているんだろう?


ヤマミ「立体でゲームができちゃう!!」

ナッセ「うわあああ!! やられたー! 振動すごい!」


 ここの世界観でのシューティングは飛行船や魔法使いを操作して弾撃ったりするゲームがほとんどで、戦闘機とかそういうのが全然なかった。

 パズルゲームは手で念力のように動かしてコンボ決めたりするとかで、操作性が不思議な感覚だった。

 このようにコントローラーとなるスティックやボタンが存在せず、なんか精神がリンクして思念や直接の操作でゲームが出来る仕様だったぞ。


ナッセ「……思わず夢中になっちゃったw」

ヤマミ「分かるw」

ナッセ「お! エアホッケーみたいなのあるぞ! やろやろー!」


 ……少し没頭してしまったぞ! 異世界楽しいいい!



 次話『騎士が登場!? なんか事件起きてる?』

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