17話「予想外! ムチャクチャなヤツら!!」
薄暗くて小汚い広い空間。そこには立派な王座が二つ並び、無残に破けた赤い絨毯が敷かれている。
かつては王様が座していて客人と謁見する所だったであろう場所。
しかし人手付かずになって数百年、既に老朽化していて荘厳な雰囲気は見るも影もない。
代わりに王座にふんぞり返る人影があった。
バリボリと人の腕の一部であろう肉片を貪っていた。その口は人間っぽいが、そこから抜け出ている牙は昆虫でいうハチのそれと酷似していた。左右から挟み込むように肉はおろか骨までも噛みちぎっていく。
じゅるるる、と血を啜る音を響かせると牙を引っ込めていく。
「……魔王様の命令とはいえ、ライトミア王国の監視役とはな」
「は! ですぼ“残虐なる蟲王”ベルセム様! 勇者めが王国に緊急帰還してる事なのぼ」
「まぁ、付き合ってもらうぞ。腹心の“天空の捕食蟲”オニマギ」
「は! 仰せのままぼ!」
ベルセムを前に、魔族が跪く。
その魔族はトンボをテーマに背中に二対の細長い羽。太くて細長い尻尾。六つの手足。目は大きく丸い複眼。醜悪な風貌だ。
「しかし、ここに来る下等な人間どもは弱すぎて退屈させられる。せめて骨のあるヤツが来ないものか。王国の五輝騎士全員来てくれれば面白くなりそうだがな」
ベルセムは「キキキ」と含み笑いする。
その古城から離れた位置にある、崩壊しかけの城門前。
左右を森林で囲み、大きなハチ型モンスターが無数徘徊していた。それぞれ軍隊のように隊列を組んで飛び回っているようにも思えた。
【軍隊蜂】(昆虫族)
威力値:4500
人間ぐらいの巨大な軍隊蜂。鉄の鎧並の甲殻を持ち、槍のように鋭い尻尾の針は厄介。何よりも数百体もの大群で襲いかかるのが一番厄介。昆虫タイプの魔族が好む下僕。下級中位種。
雑兵の守護:階級の高い軍隊蜂系の防御力に永続強化(極小)を付加する。同階級の重複不可。
オレことナッセとヤマミとクックさんは後方に控え、“双剣流浪”のオズラッチはカマキリ型魔族と、“魔射手”ヨーレンがバッタ型魔族と交戦前だ。
「これから食べられる前に名前は覚えておいた方がいいっき。私は“狩魔”カマンテ」
「こっちは“脚撃”ババッタった!」
「え? 嫌だよ! 虫なんかキモくて食べたくねぇ……」
嫌そうな顔で手をパタパタ振る。
「アホ! 違うっき! てめーらが食われるっき!! 食われる方っきき!」
思わずカマンテが慌てて突っ込んでくる。
ヤマミのチョップが頭を小突いてきて「ボケてるヒマないでしょ」と呆れてきた。クックさんは「あっははは! おもろー」と笑ってくれる。
漫才のダシにされた事が許せないのか、カマンテはフルフル怒りに震え出していく。
「もう許さないっきー!! そこの銀髪ひき肉にしてやるっき!!」
「オラは草がいいばった……」
「うるせえ!! 行くっきき!!」
カマンテとババッタが地を蹴ってくる。
「全力で対処する!! ナッセ、ヤマミ、クックは軍隊蜂のモンスターを!!」
「私がバッタの魔族をやるわ! 頼んだわよッ!」
オズラッチは両手の剣を鞘にしまい、心臓部分に左手を置いて刻印を浮かび上がらせる。すると、うねる水が剣を象っていく。それは左右の手に双剣として具現化された。
「刻印創『双水青剣』!!」
ヨーレンも弓を背中に収納し、両手で組むと左右の手の甲から刻印が浮かび上がった。すると灰色の木が成長してきて立派な大きな弓へと象った。
「刻印創『魔鳴樹の弓』!!」
オレは思わず見開いて「おお!!」とロマンを感じた。
ヤマミは氷塊を『衛星』で浮かび上がらせ「バカ! それよりザコ片付けて!」とオレにツッコミを入れる。
構わずオレも手の刻印を浮かび上がらせて、握った杖から星を象った光の剣を生み出す。
「刻印創『星光の剣』!!」
口上を真似てキリッと構えたぞ。
襲いくる軍隊蜂の大群へ、無数の剣戟の軌跡を煌めかすとズババババッと肉片に散らしていく。口ほどにもない!
ヤマミも氷の矢による弾幕で軍隊蜂の大群を撃墜していった。
「よ──っし! あたしも張りっ切るぞ──!!」
クックさんはそのままウニメイスを生み出し、激しくエーテルを噴き上げた。事もあろうかヨーレンが身構えるより速く疾走してババッタの頭をガツンと殴り飛ばす!
呆気に取られるオズラッチとヨーレン。
「このガキ! まずは貴様から血祭りにあげるったァァァ!!」
頭に血が上ったババッタは自慢の強靭な脚でクックさんに振るう。しかしウニメイスでガキンと防ぎ、嬉しそうにクックさんは飛びかかる。
「うにりゃりゃりゃあ──っ!!」
ウニメイスによる乱打に、ババッタは焦りつつ連続キックで対抗。絶えない怒涛の猛攻にババッタは「ぎ……ぎっ!」と汗を垂らしながら防戦一方に追い込まれていた。
バキッ、ドゴッ、とウニメイスが何発か当たっていく。
「バ、バッタァァァア!! ガボブッ! グギァァ!!」
次第にボコられていくババッタが可哀想だなぁ。同情はしないけど。
むしろやっちまえー!!
「な、なんなのよ……もう!」
置いてかれたヨーレンは耳と尻尾をヘナヘナさせてゲンナリするも、切り替えて軍隊蜂型モンスターへ火炎の矢を無数撃って数十匹も撃墜していった。
それでも軍隊蜂は続々とここへ集まってきているようで、キリがなかった。
昆虫族モンスターの特記すべき恐ろしさは硬い装甲でもしぶどい生命力でもなく、異常な繁殖だ。
放っておけば食えるもん全て貪り尽くして大繁殖しまくるからだ。
多種の魔法で迎撃を続けるヤマミと共に、剣を振るい続けて、軍隊蜂を次から次と地に落としていく。
傍目で見れば、オズラッチが水の流れるような変幻自在の刃を振るって、カマンテと互角に斬り合っていた。一進一退と譲らぬ攻防を繰り広げられている。
決着がつくまで時間はかかりそうだなぞ。
「なぁヨーレンさん? いつまで続ければいいんだ?」
「いつまでって……?」
剣で斬り散らしながら聞くと、ヨーレンさんなんか呆れて耳を垂れてきたぞ。
「もちろん全滅させるのが理想ね」
ヨーレンは火、氷、雷、風と多種多様の矢を撃って大群の軍隊蜂を撃墜しながら、そう言ってくれた。
「なぁんだ! 最初っからそう言えばいいのに!」
「え?」
正直ホッとした。
オズラッチさんの様子を見て、特訓の為に敢えてやってるのかと思ってたけど、別にそんな事なかった。
どうせ魔族は敵。倒さなきゃならない相手。
ちまちまやるのは面倒だって思ってたぞ。一気に行くか!
「って、この量よ! 魔族がいるだけでも厄介なのに、全滅だなんて……」
「一気にいくぞ────っ!!」
オレは『太陽の大弓』と大きな弓を左腕に具現化。真上へ向けて太陽のような巨大な光球を轟音響かせて撃ち放つ。
その発砲による余波で旋風が吹き荒れて、オズラッチとヨーレンはおろか魔族までもが驚きに見上げていく。
「くらえーッ!! サンライト・ソーラーデストロイッ!!!」
真上へ撃ち出された灼熱の光球は輝きを増して、一気に爆散するように四方八方へと無数の光線をばら撒いた。
全弾炸裂弾で絨毯爆撃する光線の嵐がドドドドドドドと容赦なく降り注ぐ。数千数百もの軍隊蜂型モンスターはことごとく爆散されて一掃されてゆく。更に魔族にも降り注ぎ、爆撃の嵐を身に受けて「うがああああ!!」と苦悶を上げていく。
それは数十秒続き、収まる頃は軍隊蜂型モンスターは流れる煙と共に全滅していった。
「こ、これが……ナッセの『血脈の覚醒者』の生態能力……!?」
ヨーレンはゾクッと戦慄して身震いした。
私が同じ事をやろうとすれば、一気にMPが空になって不発の上に極度疲労で倒れてしまう。
でも見上げているナッセはまだ余力を残しているようにも見える。
こんな『弓兵』以上の反則的な能力と火力はまさに『血脈の覚醒者』。
強すぎるから仮想対戦で参加禁止になってるのもムリないわ……。
と、ヨーレンが耳をパタパタさせながら勝手に勘違いしている最中、オレは魔族の方を見やる。
ババッタとカマンテは既にボロボロの満身創痍。呻き声を発してワナワナ震えていた。
「ク、クソが……! ブ、血脈の覚醒者を連れているなんて……聞いてないっき!」
「これ……ヤバった! 早く逃げ……!」
「フッ!!」
「うにああああっ!!」
オズラッチの水のように流れる双剣の刃がカマンテを八つ裂きにし、クックさんのウニメイスがババッタを頭から叩き潰した。
粉砕された魔族は爆発四散。ドドン!
ふう、とオズラッチは息をつく。オレへ振り向くと困惑した顔を見せる。
「……助けてくれた事には礼を言うが、お前らムチャクチャだな」
ヨーレンもウンウン頷く。意図が聞き取れず「ん?」と首を傾げた。
ヤマミはやや呆れ顔。クックさんは「えへへー」とスッキリ満足げだ。
「なんか、やっちゃいました??」
あとがき雑談w
↓以下、ナッセが全滅させたモンスターども↓
【軍隊蜂】(昆虫族)
威力値:4500
人間ぐらいの巨大な軍隊蜂。鉄の鎧並の甲殻を持ち、槍のように鋭い尻尾の針は厄介。何よりも数百体もの大群で襲いかかるのが一番厄介。昆虫タイプの魔族が好む下僕。下級中位種。
雑兵の守護:階級の高い軍隊蜂系の防御力に永続強化(極小)を付加する。同階級の重複不可。
【隊長蜂】(昆虫族)
威力値:7800
軍隊蜂を統率する司令官。単体でもそれなりの戦闘力を持つ。昆虫タイプの魔族が好む下僕。下級上位種。
兵の守護:階級の高い軍隊蜂系の防御力に永続強化(小)を付加する。同階級の重複不可。
部下庇護:軍隊蜂系の部下に永続強化(小)を付加。
【将軍蜂】(昆虫族)
威力値:11500
隊長蜂と軍隊蜂をまとめる総司令官。個体数は少ないものの戦闘力は高い。昆虫タイプの魔族が好む下僕。中級下位種。
兵の守護:階級の高い軍隊蜂系の防御力に永続強化(中)を付加する。同階級の重複不可。
部下庇護:軍隊蜂系の部下に永続強化(小)を付加。
【王様蜂】(昆虫族)
威力値:17600
王冠に似た形状のツノが特徴。将軍蜂以降の軍隊蜂系をまとめる唯一の王。戦闘力は異常に高い。昆虫タイプの魔族が好む下僕。中級下位種。
王の無限交尾:毎日、女王蜂とずっこんばっこん。
王の労い:一定時間ごとに軍隊蜂系の部下を少量回復。
女王の守護:女王蜂の防御力に永続強化(強)を付加する。
部下庇護:軍隊蜂系の部下に永続強化(中)を付加。
【女王蜂】(昆虫族)
威力値:10000
ティアラに似た形状のツノと女体を模した体型が特徴。軍隊蜂系を統べる女王。戦闘力は高いが、主な行動は巣の中で大量繁殖行為。昆虫タイプの魔族が好む下僕。中級下位種。
女王の産卵:一定時間ごとに軍隊蜂系モンスターを一定数増殖。
ナッセ「なぁ? あのハチみてーなの繁殖できるっけ?」
オズラッチ「実際のハチをモデルに生産されたモンスターだからな。魔族にエッチが気持ち良いっていう概念はない。認識しているのは『増える機能』ってだけだ」
カマンテ「えっ!? 他にも付属効果あったっきき?」
ババッタ「単に複製能力だけと思ったった」
オズラッチ「ふふん! 貴様らにはオ●ニーの事も知らんだろう」
カマンテ「なんかのスキルっき!? 貴様まだ能力を!?」
ババッタ「気を付けるった! まだ恐るべき能力を隠してそうだ!」
ヨーレン「バカな事言ってないで戦いなさい!」
次話『いきなり魔族の大物が登場!? 大ピンチに!』




