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16話「異世界の敵対勢力! 魔族!!」

 オレとヤマミとクックさんは、“双剣流浪”オズラッチと“魔射手”ヨーレン二人と組んで、ライトミア王国のはるか東側にある古城の調査(けん)討伐のクエストを引き受けていた。

 馬車で行けば早いのだが、()えて徒歩を選んだのはオズラッチの提案だった。


 急造パーティのままで本番のクエストに(のぞ)むと、支障(ししょう)をきたすからだそうだ。

 まず徒歩(とほ)しながら会話などでお互いの距離感を把握して、度々のエンカウントでチームワークの調整をしていくのが一番だという。それでそれぞれの個性を知って、どうするべきか分かればやりやすくなるとの事。


 ほぼ日中歩き通しでもう日が沈み、夜になっていた。

 星々煌く夜空の下の大草原。獣道が横切っている。(はる)か遠くで森林と山脈が見える。獣道から離れた草原で、()()が火の粉を散らしながら燃え上がっている。


 ……そう、オレたちは野宿する事にしたのだ。



「いっくぞー!!」「来い!!」


 大地を蹴って爆発させて超速で飛びかかるクックさんを、オレは太陽の剣(サンライトセイバー)で迎え撃つ! ガン!

 クックさんは猛攻を繰り返し、オレは粘り強く捌き続ける。ガガッガガガッガッガッガガガと幾重も交錯する激突の嵐で余波が吹き荒れ、焚き火が横倒しになっていく。

 いつもののように冷静なヤマミに対して、オズラッチとヨーレンは汗をかいて戦々恐々としていた。


「い、いつもそうしているのか?」

「そうしないと大人しくならないから」


 オズラッチの問いに、ヤマミはさらっと答える。

 とは言え、彼らにとって威力値四〇〇〇〇のクックさんをこれほど捌けるナッセも驚異に映って見えてる事だろう。

 現にクックさんの攻撃の余波で、地面があちこちボカンボカン爆ぜて土砂を巻き上げていく。

 一撃一撃直撃すれば家一軒など瓦解(がかい)するほどの威力だ。


 しばらく続けていると、眠たくなってきたクックさんを連れてコテージへ寝かした。

 そしてオズラッチさんたちと少々話をした後、ヤマミと一緒に寝る前の『心霊の会話(スピリチュアル)』を行う。瞑想しているオレとヤマミの周囲をホタルのような淡い点々が飛び交う様子に、オズラッチさんたちは驚いてしまう。


 咄嗟(とっさ)に「寝る前の儀式みたいなもん」って適当に答えた。

 まぁ怪訝そうな顔してたから、薄気味悪い印象に見えてるかもなぞ。


「おやすみなさい」「ああ、おやすみ……」


 焚き火の火が消え、深夜の静寂の下で二階建ての家型コテージと二人用の一階建ての家型テントが並ぶ。




 地平線から太陽が日差しを溢れさせる早朝。

 朝露漂う大草原で、オレたちはコテージとテントを畳む。そして互い集合して「行くぞ」とオズラッチが先頭で歩みだした。


 そんな調子で三日かけて歩いていると、ようやく目的地が近づいてきた。


「……あそこだな」

「気を引き締めるわよ」


 山脈を背景に森林に囲まれた古城が目視できる。オレたちは緊張する。広い獣道と分岐する細い獣道へ進む。あまり人の出入りが少ない為か、道から草が少々湧いている。

 やがて森林に囲まれて道も坂になっていく。更に歩いていくと、ようやく古城が大きく見えるようになってきた。


 古びて廃墟のようにも見える。長らく放置されていてあちこち欠けていて亀裂も走っている。

 当時は白く綺麗な城だったに違いない。

 ちょい後六〇〇メートル歩けば……!


 すると、突然黒い円が遥か向こうから広がってきて緊張が増す。エンカウントだ!


「森林へ隠れろッ!! 急げッ!」

「あ、うん!」


 反転空間へと誘われる時、オレたちは横へ飛んで木々に飛び込んだ。深い茂みに体を埋めて息を殺す。あのオズラッチとヨーレンが警戒するほどの、ただならぬ対応にオレも従った。クックさんは真似ただけで「なになに?」とオレの(すそ)をぐいぐい引っ張ってくる。


「静かにしろ。エンカウントの広がり方が違っていた。つまり、それだけ広い地域を大勢の敵が巣食っているという事だ」

「そ、そうなのか……?」


 オレはクックさんの口を(ふさ)いだまま、ボソボソ話し合う。

「むむー!」

「ミッションスタート! 『潜伏して敵のアジトを暴け!』よ」

 ヤマミがクックさんを言いくるめて、当人はコクコク頷く。ナイスフォロー!


「……見て! 魔族よ!」


 狼の耳を立てて警戒するヨーレンに(うなが)されて、道の方へ見ると二人いた。正確に言うと人間ではなく人型モンスターっぽいぞ。

 オレたちのように髪の毛とか衣服とかはなく、まるで昆虫をテーマにした風貌だった。両目はオレたちと変わらず瞳を泳がせている。特徴的なのが頭のツノ。見張りをダルそうにしている挙動(きょどう)は人間そっくりだ。


 一人はバッタをテーマにした緑色の足が強靭な全身甲殻の男。かたや一人はカマキリをテーマにした細長い胴体と首が特徴の黄緑の全身甲殻の男。……性別はどうだか知らないけど、そんな印象。

 人サイズの大きなハチっぽい昆虫モンスターが何匹か羽音を立てて低空飛行している。


「昆虫型の魔族か……。まさかこんな近くに……!?」


 オズラッチは汗を滲ませて呟く。

 オレは「魔族?」と聞く。ヨーレンに「初めて見るの?」と言われ、ヤマミと共に頷く。


「あれこそ裏世界に住まう我らが敵対勢力だ。オレたちのように高い知能を持って、それぞれ己の勢力を拡大するべき群雄割拠している好戦的なヤツらだ」

「そう! ヤツらは闘争を誇りに思っていて、戦乱に明け暮れているのよ」


「そんな事してたら共食いで絶滅しねぇ??」


 しかしオズラッチは首を振った。


「ヤツらは死んでも、何らかの代償を払って蘇ってくる。しかも赤子からではなく完成体としてだ。だから延々(えんえん)と争っていられるんだ」

「魔界オンラインみたいね……」

「魔界オンライン?」

「地球でそういう敵対勢力がいるんだ。話せば長くなるから、また後だぞ!」


 ……だからか。

 漆黒の魔女アリエルはこちらの世界に、この世界の魔族勢力とそっくりな魔界オンラインを組み込んだ。そうする事で異世界へ行っても違和感なく馴染(なじ)めるようにしてるのかもしれない。


「なぁ、同じ知能を持った人同士なら和解できないのかぞ?」

「あんなのとできるか!」


 オズラッチは声を抑えたまま怒鳴ってくる。


「そうよ! (いく)万年も昔っから魔族は私たち人類をオモチャかエサとしか思っていない……! 絶対分かり合えるワケがないわ!」

「そうだ! 魔族は我ら世界にも容赦なく踏み込んでくる。それも脆弱な人間どもと見下し、殺戮するのを喜びとしているようなヤツらだ! 甘い考えは捨てろッ!」

「ええ……。下僕(げぼく)となる多種多様なモンスターを開発して生産し続けるのも、闘争と殺戮を好むが故よ……」


 オレは息を飲む。モンスターは武器、兵器みたいなもんか。

 やっぱ魔界オンラインとそっくりだ……。


「で、どうすんだ? 引き返すのか?? 報告だけでもクエストクリアになんだろ?」

「いや!」


 オズラッチは間を置いて「……あくまで古城を調査だからな。ここで退いても達成した事にはならん!」と反射光を煌めかす得物を抜き出す。

 ヨーレンも頷いて弓を手にする。

 オレたちも意を決して「分かったぞ」と頷く。


「ソニックアロー!!」


 ヨーレンの放つ最速の矢が一条の軌跡を描いて、見張りのバッタっぽい頭部を射抜こうとする。が、咄嗟に気付いた見張りは片手で矢を(つか)んで止めてしまう。余波として疾風がブオッと通り抜けた。

 バカな……!? 完全に不意打ちで音速近い速度だったのに、とっさの反応だけで受け止めやがった……!

 相手が人間であれば、今ので頭は吹き飛んでいた。例え万が一反応して受け止めようとも手ごと持っていく。


「おおう! やばった!」

「敵襲っき!? てめぇら出て来やがれっきき!!」


 森林からオズラッチが瞬時に抜け出して双剣を振るうが、もう一人のカマキリっぽい魔族は長い片腕をかざしてガァンと轟音を鳴らして防ぐ。その際に足元の地面が爆ぜて陥没する。

「チィ!」

 後ろへ弾かれてオズラッチは着地しつつ地面を滑っていく。ズザザザ……!


 なんという強靭な甲殻! まるで鋼鉄みたいだぞ!


 炎を纏う矢が十本飛んできて、バッタっぽい魔族は長い脚で素早くバババッと弾いてしまう。

 ヨーレンは前屈みで「ヴヴーッ」と歯を剥き出しに耳と尻尾をビンビン立てている。


「へっへっへ! 見張りで退屈してばった……、少しは楽しませろった」

「おい! そこの三人いるの分かってっき! 出てこいっき!」


 バッタとカマキリ二人の見張りは薄ら笑みを浮かべる。

 オレもヤマミもクックさんも木々から出ざるを得なかった。汗が頬を伝う……。

あとがき雑談w


オズラッチ「更に言うと魔族はモンスター同様オチン●ンはない。無チンとも呼ぶ」

ナッセ「へー!」

ヨーレン「言い方ァ!」


クックさん「ねぇねぇ、どうやって増えるのー?」


オズラッチ「何度死んでも永遠に蘇り続けるから、減るとか増えるとか無チンには関係ないんだろう」

ヨーレン「まさに戦うだけのハゲね!」

ヤマミ(言い方ァ……!)



 次話『魔族は強敵! 一筋縄ではいかない!』

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