14話「感激! これがオレたちの家だー!」
リエーラ婆さんのクエストを終えて再びライトミア王国へ帰った、その翌日で冒険者ギルドにて、受け付けの馴染みのオッサンに報告していた。
「まさかそういう事だとはなぁ……」
オレとヤマミがクックさんを連れてきたのを見て、なんか察したようだ。
クエストのクリアを報告して依頼票通りの安い報酬をもらったのだが、実は更に続きがあるらしい。
「リエーラさんがここに来て追加の報酬出すって、言い出したからなぁ」
「つ、追加!?」
「リエーラ婆さんがー!? どんなどんなのー!?」
オレとヤマミとクックさんは目を丸くして食い入る。
ライトミアのとある地区で、静寂を保っている一軒の家……。
二階建てで中世ヨーロッパ風の家。白い壁に木の柱が拵えていて、周囲の住宅とほぼ変わらない。
オッサンが言うには「リエーラさんが前に使っていた家だ。要らないから好きに使えって事さ」らしい。
しかしまさかドンと一軒の家をよこすなんて思ってもみなかった。
最初の報酬だけを見れば、確かに誰も引き受けないよな……。最初っから家を与えるつもりだろうけど、まず七日間で信用するに足る冒険者か見定めてから、なのかもしれない。
「一から土地を買って家を建てるとなると、さすがに莫大な時間や金がかかるから、この追加報酬はありがたいなぞ……」
「そうね。あの婆さん抜け目がないわ」
オレの裾をグイグイ引っ張るクックさんを見やる。
「ここ、あたしがまだ五つの時にリエーラ婆さんと一緒に暮らしたんだー!」
「そ、そうなんだ!?」
「うん!」
なんで森へ暮らすようになったんだろ? まぁいいか。
クックさんは遠慮なくドアを開けて「入って入ってー!」と笑顔で手を振ってくる。なんだかむず痒い気がして口元が緩みそうだった。ヤマミと頷きあって入っていった。
玄関は広くて、部屋もいくつかあって、三人以上は余裕で暮らせる広さだったぞ。ちょっとした旅館だぞ。
二人にしては広いから、以前は他の誰かと一緒に暮らしてたのかな……?
「あたしの部屋ー!!」
クックさんはひとつの部屋でベッド上でポンポン跳ねている。
本棚も、タンスも、三面鏡も、充実していた。
二階の方に二人が寝室に使える広さの部屋があったので、午後に買い物をしてベッドなどを運び込んだ。後は地球でマンションを引き払う時に収納本に格納してある家具を並べたりして、結構充実してきた。
なんだか自分の部屋になったみたいでスッキリ落ち着いてきた。
「二人で寝るの? 寝るのー? いっけないんだー!」
ドアの隙間から悪戯っぽくニシシと含み笑うクックさん。
なんだか娘がいるみたいでほのぼのしてくるなぁ。そして思い返してみれば、意外とホコリがない気がする。
何年も放置していたはずなのに、誰か掃除しているのかなぁ?
窓の夕景を眺めてボンヤリしてしまう。
────その夜。
キッチンルームでヤマミはカレーを煮込んでいた。
地球と似た材料を買って、それで実験しているとの事。この異世界にもカレーっぽいのはあったが、あんかけみたいな感じだった。それも美味しいんだけどね……。
けど辛味があってトロトロした茶色の液体をかけた白いご飯があってこそカレーというもの!
ヤマミは密かに一から作れるだけの知識を地球で勉強していて、それに近い味が出せる材料をこのライトミア国中から集めてきたらしい。
ドン、と食卓に並べられるカレー。匂いが香ばしい。
クックさんは目をキラキラさせてヨダレ垂らして「うっまそー!」とはしゃぐ。
「ナッセもどうぞ」
「ああ。いただきます」
ヤマミは笑顔で催促して、オレは頷いて合掌。クックさんも真似てきた。
おそるおそるスプーンですくって口に入れていく。口内に広がっていく辛味と旨味。咀嚼してノドに飲み込んでいく。じわじわ広がる暖かい味。
「美味い!! マジで美味い!!」
「うっまーい!! うっまーい!! ナイスだよぉヤマー!」
「ふふ! それは良かった」
嬉しそうに微笑むヤマミ。
オレは思わず食うのが止められない。美味しくてたまらずドンドン口に入れてしまう。それがカレーの魅力。まさか異世界で食えるとは思わなかった。
地球本場のカレー、異世界で初食いだー! わはははー!
食後、クックさんにねだられて将棋に似たボードゲームや巷で有名なカードゲームで遊んであげたり、絵本を読んであげたり、沸いたお風呂で体を洗ってあげたりした。
九時すぎになると、眠たそうなクックさんを部屋に連れてベッドに寝かした。
この一連で、割とリエーラさんが面倒見ていたのが分かった。
あんな素っ気ない婆さんなのに、思いっきり可愛がってたんだなぁ……。
意外すぎる。
しばらく広間でヤマミと色々話をした後、一緒に寝室へ入って心霊の会話を行ってから、明りを消してベッドへ入っていく。
暖かくて柔らかいマットレスとシーツに包まれて、安らかに寝心地よく意識は落ちていった。スヤスヤ…………!
リエーラさん……ありがとうございます…………!
眩しい朝日がカーテンの隙間から日差しがこもれ出る。
「おっきろー!」
なんとシーツをバッと剥がしてきて、オレはビックリして飛び起きる。ハキハキなクックさんが胸を張って「朝だぞー!」と元気の良い声を響かせた。
ヤマミも眠たそうにムニャムニャ目をこすりながら起きる。
「あと五分…………」
「おっきる時間ー!! 朝飯ー朝飯ー!! 腹すいったー!」
眠たい意識に、その元気良い声は刺激的すぎる……。
子供って元気なんだなぁ。渋々ヤマミと一緒に身支度を整えていった。朝飯はオレとヤマミで料理して、クックさんと一緒に召し上がった。
しかしご飯あるなら、納豆欲しいなぁ……。
目玉焼きはともかく、地球で馴染んだ大半がここにないのは不便かな。
午前一〇時にオレたちはギルドへ足を運んで、低ランクのクエストを夕方まで続けて、依頼人の笑顔を堪能してきた。
クックさんがいるから「娘ですか?」としばしば勘違いされる事も……。
でもそのおかげで、依頼人の顔が柔らかくなって幸福度が増した気がする。
そんな折、その翌日の午前でクエストを受けようとギルドに入った時の事だった。
「お前がナッセか!」
「初めまして!」
若い二人組がいた。二刀を背中に差していて黒いロングコートを着た背の高い茶髪男と、背に弓を抱えるクール風の緑髪ベリショートの狼獣人の女性だ。
突然絡んできてビックリ。すると後からギルドのオッサンがやってきた。
「低ランクのクエストばかりで住民から好評あるのはいいんだが、もう少し冒険した方がいいかと思って推薦した」
「私たち三人でいいと思ってますが?」
ヤマミは目を細めてて少々不機嫌そうだ。オッサンは「まぁまぁ」と宥めてくる。
「……この二人は十五年歴のBランク冒険者。既に色々な冒険者とも組んで経験を積んできた者だ。そこでアンタたちの冒険としての経験を積ませるにはうってつけだと思った。それに彼らも快く引き受けてくれている」
「ああ。言われた通りだ。さて自己紹介するぜ。オレは“双剣浪人”オズラッチだ。クラスは『剣士』」
「私は“魔射手”ヨーレンよ。クラスは『弓兵』」
いかにもな冒険に慣れた感じの風格……。
「ほ、本物の異世界の冒険者だ!! じゃあオレは城……」「悪ぃ、もう紹介してる」
「あたしはウニ魔女の末裔クックさんだー!! クラスは『僧侶』だぞー!」
オッサンが苦笑いで割り込んで遮られたが、クックさんはハキハキと自己紹介した。
彼が言うに、住民だけではなく他の冒険者とも関わりを持って人脈を広げるのも、冒険者としての心得だってさ。
確かに他の冒険者の事は考えてなかったもんな……。
なんだかんだで二人組と組む事になった。ノリノリなクックさんはともかく、人見知りなヤマミは不満だったが、オレが「やってみたい」との事で渋々付き合ってくれた。
正直、他の冒険者と組むのってウキウキするなぁと思ってる。
オズラッチは依頼票を見せてきた。
【古城に巣食うモンスターの調査と討伐】Bランク
依頼者:王国騎士団
「最近、ライトミア王国から東側へ数十キロ先の古城に見慣れぬ手強いモンスターが住みついたと噂を聞く。必ず五人以上のパーティで挑む事。倒せそうなモンスターなら討伐を、危険を感じたら無理に戦わず撤退する事。要報告」
報酬額:236000円(場合によっては追加報酬有り)
「今日はこれをやろうと思う。お互い油断せず行こう!」
「ああ!」
「うわおー!! 冒険だ冒険っだー!!」
あとがき雑談w
ナッセたちを他の冒険者と組ませて冒険させようと思って、ギルドのオッサンは引き受けてくれた冒険者二人と色々話をしていた。
ギルドのオッサン「……ってな事だ」
オズラッチとヨーレンはナッセとヤマミの履歴書っぽい紙を吟味していた。
印象としては顔は幼っぽくて冒険の経験がなさそうな感じに見えた。
オズラッチ「色んな冒険者と組んできたが、こんな若いのがA級冒険者とか初めてだな」
ヨーレン「どういう事?」
ギルドのオッサン「……王様の命令だ。一見コネかと思ったんだが、話をしてみればどうも事情は違うようだ」
オズラッチ「まぁいい。一緒に冒険すれば化けの皮かどうか分かる事だ」
ヨーレン「ダメだったら降格させてもらうわ。それがあの二人の為だもの」
ギルドのオッサン「ああ。だから見極めてもらいたい」
オズラッチ&ヨーレン「「承知した!」」
次話『正直すぎるナッセ、早くもボロを出して……!?』




