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113話「絶景! これが世界樹の頂上!!」

 異世界ロープスレイ星で世界最大の世界樹……。


 緑のフォレスト王国が張り付いている範囲が微々たる距離になるほど、幹の周囲長は太すぎる。上層地殻に根を下ろしている坂部分を階段状に舗装(ほそう)し、緑のフォレスト王国を建国している。世界樹から流している水を川として引いて、王国外の田舎村にも及んでいた。

 だから田舎村の畑や田んぼが(うるお)っているのだ。


 オレ、ヤマミ、クックさん、ウイルで(みき)のふもとで見上げて、傘になっている緑生い茂る葉っぱから漏れる光を、眩しそうに目を細めた。

 風で揺れる葉っぱが無作為にキラキラを撒き散らすのも神秘的だ。


「しかし、普通に登ろうとすれば時間かかっかな?」

「飛んでいけるんじゃない?」

「飛ぶっか────?」

「それじゃ登る意味ないしなー」


 妖精王になりゃスイスイ飛んでいけるんだろうけど、個人的に登って達成感味わいたいなぁ。

 クックさんはジャンプし、数メートル先の幹にしがみついた。


「俺はムリだぞ! こんな絶壁のぼれるかよっ!」


 普通にロッククライミングしようと思ってたのだが、ウイルは青ざめているみてーだ。

 ヤマミもクックさんも普通にできるって顔なんだがなぁ。


 そーいや、ウイル普通の人間だったな……。


「じゃあウイル背負わないとね」

「しょうがねぇな……」

「待てよ! 俺は行くとは言ってねぇ!」


 ビビりまくっているウイルはじりじり後退(あとずさ)りしてる。



「あー! いたいた!」


 なんと勇者ププラトがやって来て、手を振ってきた。


「登りたいんだって聞いて、飛んできたよ」

「え? 誰にも言ってねぇのに?」


《私です》


 なんと幹にニュッと顔が作り出されて、モゴモゴ口を動かしてきたぞ。

 ウイルが「うわぁ!! なんか出てきた!!?」と飛び退いた。


「大精霊のドリアさまです。世界樹の中に入っているんですよ」

「ほへー……」


 説明を聞くに、世界樹そのものじゃなくて憑依するみたいな形で入っているらしい。

 そして緑のフォレスト王国を見守っている。

 こんな落ち着いた物腰ではあるが、塔の魔女と大差ないほどの実力を誇る。そして人外としてオレたちの先輩でもある。

 戦ったらコテンパンにのされそうだなぞ。


《登るより、私が運んだ方が早いですよー》


 すると淡く灯る緑の葉っぱが吹雪のように吹き荒び、それらは地面へと集合していって綺麗な円に象っていった。広さ的に直径五メートルくらいか。


《さぁ、この円に乗ってください》

「あ、ああ……」


 登っていたクックさんは「わー! 面白そー!」と飛び降りてきた。

 勇者ププラトと一緒にオレとヤマミとクックさんは円に乗った。ウイルは恐る恐る「大丈夫だろうな?」と歩み寄ってくる。

 するとシュルシュル灯るツルがウイルを捕らえて円へと運ばれていった。

「離せー!」「高いの怖いんだー!」「うわあー」

 入れられるウイルを、苦笑いしながら受け止めた。それでもウイルはすかさず飛び出そうとするが、見えない壁に阻まれて「ぶ!」と顔を打ち付ける。


「ガラスみてぇなの形成されてんぞ……」

「しかもかなり高密度で不純物全く無し! 凄いわよ!」


 円の床を包むように円柱状のガラスのような膜が形成されているぞ。


《行きますよー》


 ギュンッと急上昇して、眼下の王国が急速に小さくなっていった。

 次々と枝を落とすかのように葉っぱの茂みもビュンビュン下へ流れていく。エレベーターのように幹に沿って上昇しているようだ。

 ウイルは「ひえええええ!!」とオレの腰にしがみついている。


 白い雲まで下へ流れていく。相当な高さまで来てるぞ。

 そして眼下の大陸が収縮していって周囲の雲海と、隣の浮遊大陸まで見えてきて、その広大さに呆気に取られる。


「うわぁ……。あの向こうに光のライトミア王国あるんだよな?」

「ええ……」


 雲で霞む向こうの大きな大陸の青く見える山脈の向こうには光のライトミア王国があるのだろうと呆然。

 雲海の地平線は綺麗な平らで、その上は少しの雲と壮大な青空が窺える。

 すると頂上に近づくに従って世界樹も細くなっていく。そして上方に花が咲いたかのように幹の傘が開かれていた。

 具現化エレベーターがその傘を抜ける穴を通り抜けて、ようやく停止。

 取り巻いていたガラスのようなのがスーッて引っ込んでいく。


「これが……世界樹の頂上!?」


 花があちこち咲く草原。木がいくつか点在。そして世界樹が中心部から伸びていて葉っぱの茂みを広げている。

 ……その側で一軒の家が建っている!?


《私の家です》


 なんと草原からスーッて木と同化したような女性が抜けて出てきたぞ。

 幹のようなのがドレスを象っていて、女体のラインを覆っている。そして髪の毛の代わりに緑の葉っぱで茂っている。

 これが大精霊ドリアさまの本体!?


《人間のような生活に興味を持っていたので、拵えました。リルちゃんから色々教えてもらって、人間の真似事してます。それが案外楽しくて……》


 リルちゃんとは、月の魔女リルラーナだ。

 彼女は元々人間だったから、ドリアに教えていたのだという。


「うわあー!! すっげぇ!!」


 ビビってたのはどこへやら、ウイルは感嘆してた。

 傘の上から広がる、雄大な世界に感激しているようだ。ミニチュアのような浮遊大陸の数々。それを覆う白い雲。更に下の雲海と、隙間から覗く中層地殻の浮遊大陸。

 まるで神々になったかのような高揚感を覚える。


 いや、実際ドリアさまが住んでるんだけどね。神様のようなもんだし。


「なぁ、描いていいか??」

「ドリアさま?」

《……絵を描く、のですね?》

「うん。この光景を描きたい!」


 ウイルは無邪気に笑っている。嬉しそうだ。


《いいですよー》

「だってさー」


 許しをもらえてウイルは「やったー!! ありがとー!!」と大はしゃぎ!

 早速とスケッチブックを取り出して、絵の具で塗っていく。既に構図を描き連ねているから大したもんだ。迷いなくスラスラッと描いてるのには毎回驚かされる。

 まだ興奮しているらしく鼻息フンフンしてる。


《それが絵なのですね》

《ほうほう》

《うむ。このように塗っていくと風景が張り付けられるか》


 それを周囲からミニドリアさまが覗いている。

 精神生命体(アストラル)だから分身もお手の物。興味深そうにウイルの絵描きを眺めている。


《……元がマリシャスだったとは思えないですね》

「ああ。まだクソガキ残ってっけどな」


 事情を知っているドリアさまは不思議そうな目で見ている。


「本当は許されない事をやってきた張本人なんだけどね。まぁ、英雄さまだから、こうして大目に見れるんですよ」

「すまねぇな。ププラト」

《ふふっ。こうしてみんな丸く収まっているのが奇跡ですものね》

「クックさんのおかげかな。でなきゃ、オレとヤマミは今頃消えてたまんまだ」


「そーだーよー!! ぷんぷーん!」


 なんとクックさんが頬を膨らませ口を(すぼ)めて、オレの背中から抱きついてくる。

 こうしてみーんな無事ってのも、彼女が先走ってくれたおかげだ。世界復活までできたのは結果オーライとしか言いようがない。どっか一つ欠けてたら『今』はなかった……。


《妖精王さま……、この世界を救っていただきご感謝致します……》


 なんとドリアさまがお辞儀してきた。

 種族的立場で言えば、オレとヤマミは上なんだろうけど実感わかねぇ。


「そういうの分かんねぇけど、丸く収まったからいいなって」

「ナッセさん、意外とアバウトすなぁ」

「そうかー?」


 オレのキャラを知ったププラトは呆れ笑い。

 彼にとってはオレは『秩序』を象徴する光属性の妖精王だから、キチッと整えたような人柄ってイメージだったらしい。


《マリシャス……、いえウイルを頼みますね》

「ああ。オレの息子だからな」


 フッと笑ってみせる。 



 ドリアさまの家は木を変形させた感じの作りで、内部の空洞は木目模様の部屋をいくつか。形だけの暖炉とテーブルにイス。そして上の階はベッドに本棚。木の葉が毛布代わり。

 本棚には童話が並べられている。


《唯一の趣味ですのよ。童話でまったりのんびり楽しめます。文字はリルちゃんから教えてもらいました》


 ああ。だから子どもが読める文字の童話なんだな……。


「って事はドリアさまは元々は人間ではないんですか?」

《いいえ。元は一輪の花でした。妖精の種(フェアリー・シード)を根から摂取して、何世代もサイクルを重ねて知能と意思を獲得して、こうして精神生命体(アストラル)へと成体になりましたのよ》


 植物でも種の成分を根から摂取して、それに適合すれば上位生命体へ独自進化もできるらしい。

 オレたちもそうだったように何千万分の一の確率で適合さえすれば、進化の条件は整うようだ。

 人間のように意思を持っているものの、文化や習慣に対しては(うと)い。

 読み書きが苦手ながらも、リルラーナの熱心な教育で少しずつ学んだらしい。複雑な文字とか意味とかはまだちんぷんかんぷん。

 会話する分には難しい言葉とか平気でできるんだけども……。


「ベッド……、寝れるんですか?」

《倒れていると落ち着きますね》


 寝る習慣がないなら、そうだろうなぁ……。

 そもそも下の階で生活感がなかった。なぜなら食物の類がない。あるのは水が入ったツボぐらい。飲んで肉体が新陳代謝するワケではなく、単に気持ちいいって感じ。

 本当に道楽の為にあるものなのだ。


「僕も時々連れられて、ドリアさまとリルラーナさまと話したりします」


 勇者ププラトはそう言ってきた。ほーん。

 数時間くらい世界樹の頂上を満喫したった。ここの夕景は絶景だったぞ。




「ありがとう! またなー!」

《ええ。また遊びにいらっしゃい》

「ああ」


 陽が沈み薄暗くなっている中、緑のフォレスト王国でオレは勇者ププラトとドリアさまに手を振って、気持ちよく別れたぞ。

 そうして再び宿屋へ……。


 しかしまさか、ウイルがパノラマ風に360度もの頂上からの風景を描いてたとは思わずビックリさせられた。複数の絵を一周させるように並べれば、あの風景を再現……。

 クオリティも上がってて、完全に才能で負けたとオレは悟ってしまったぞ。


「はは……。だが、まだまだだなー」


 と、苦笑いで負け惜しみ。

あとがき雑談w


月の魔女リルラーナ「えええ!? 頂上に招待してた??」

大精霊ドリア「ええ。楽しかったですわよ」

リルラーナ「ずるーい!? そんなら起こしに来てよー!?」


ププラト(頂上の更に上の『三日月島』まで起こしに行けないっての)

ドリア(何度か起こしに行ったけど「あと五分」ばっかりでしたし……)


 頂上から伸びる世界樹の先端の茂みで見えなかったが、豆粒ほど遥か上の三日月型の浮遊島がリルラーナの家なのだ。

 惰眠(だみん)を貪っててタイミングを逃した模様……。とほほ。



 次話『次はどこの王国いこかー!?』

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